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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス

証券コード
マザーズ:4583
時価総額
11,805 百万円
業種
医薬品業
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4583OIV210709JN
Company Site
Link address
IR窓口
ir@chiome.co.jp

Conclusion

カイオム株式はハイリスクですが長期の投資では面白みの大きい投資だと考えます。研究開発は着実に進んでおり、今後 12 ~ 15 か月のニュースフローに期待がかかる局面にあるとみています。 2020 年以来、株価は CBA-1205 と LIV-2008 の進捗状況に関する発表に大きく反応しました。しかし、概して投資家の姿勢は慎重で、研究開発の進歩が生み出しうる最終的な結果に対する期待は、株価に十分には反映されていないようです。このサブセクターの PBRは必ずしも有力な尺度ではありませんが、その比較を一つの目安とするならば、時価総額 200 億円未満のバイオメディカル株式群の中でカイオム株は割安です。当社は医薬品抗体開発ライフサイクルの初期ステージにあり、売上は伸びているものの、研究開発費の負担により営業赤字が続いています。

Investment view

バイオ医薬品株価は、創薬パイプラインの開発進展とそれがもたらす経済的利益への期待を織り込みながら形成されます。当社においては、2014年の株価崩壊以来、投資家の関心は離散したままです。しかしこの間にも抗体候補品のパイプラインは順調に進捗してきました。現在、開発プロジェクト品目を含めて11品目に及ぶ創薬パイプラインは、一般的に観測されているように開発成功確率が10%~20%であるならば面白い段階に入ってきたと考えられます。

今後の株価カタリストとして特に注目されるのはCBA-1205(ヒト化抗DLK-1 モノクローナル抗体)に関するニュースフローです。これは世界に競合品のないファーストインクラスのがん治療用抗体候補です。日本、米国、欧州、中国他で特許が成立しており、経営陣によれば目下の開発は順調です。想定適応疾患は肝細胞がんや肺がんなどの難治性がんです。経営陣の期待どおりに、2023年に初期薬効の兆候が確認された場合、大きなライセンス供与契約もありえます。すでに会社は事業提携や導出を模索して、積極的に動き始めているようです。共同開発の場合、売上は減少しますが、その見返りに支出は減少し、カイオムは安定した利益を得ることができるでしょう。CBA-1205は現在、国立がん研究センターでフェーズ1試験前半での安全性確認が進んでいます。当社は引き続き、肝細胞がんの有効性の初期評価に向けて、試験後半の開始を2021年後半に目指しています。

さらに、悪性中皮腫や固形がんの治療用抗体であるCBA-1535(ヒト化抗5T4・抗CD3二重特異性抗体)は、2021年末以降に英国または日本でフェーズ1試験の治験届申請を見込んでいます。CBA-1205とCBA-1535はいずれもアンメットメディカルニーズを満たす新しい治療薬を生み出す可能性を秘めた抗体です。

世界の医薬品市場に目を向けますと、バイオテクノロジーがすでに30%を占めており、その成長ドライバーは抗体医薬品です。2020年の世界の医薬品売上げトップ10品目のうち7つは抗体医薬品でした。カイオムが目指すものは、必ずしも数兆円規模の新薬につながる抗体の開発だけではありませんが、研究開発の成功が大きな経済的利益をもたらす市場で活動しているのが当社であるということです。

抗体医薬品は低分子医薬品よりも副作用が少ないことが知られています。これは、疾患細胞へのターゲット特異性が高く、正常な細胞・組織を傷つけにくいためです。低分子医薬品の10倍から20倍の値段がつくことも珍しくない一方で、開発のコストは高額です。従ってビジネスはとりわけハイリスクハイリターンです。

年度売上高
(百万円)
EBITDA
(百万円)
EPS
(円)
PER
(CE)(倍)
PBR
(倍)
ROE
(%)
12/172600-330.02.10.0
12/182130-570.01.50.0
12/194480-420.02.40.0
12/204810-330.02.30.0

Share Price Observation

こうした必ずしも遠い先でもない医薬品市場での当社について高まりつつある期待は、株価には十分に反映されていないと感じます。 2014年 の株価崩壊以降、 TSRは大幅なマイナスが続いています。振り返りますと、ADLib®システムの実用化への過大な期待により2013 年には時価総額は600 億円を超えましたがほどなく崩落、投資家の不信感が依然として感情の足を引っ張っているのかもしれません。 2014 年までに、上位の主要な機関投資家はほぼ全てのポジションを手放し、当社を去りました。

Total Return

1M3M6MYTD1Y3Y5YIPO
(Dec.2011)
4583-8.7-10.2-1.913.4-40.4-13.4-20.9-3.1
TOPIX-4.2-2.410.45.131.43.69.413.6
Returns over 1 years are annualised
出所:各種資料よりオメガインベストメント作成

当然のことながら、投資家は、研究開発の成果に対する期待は、開発企業と導出先企業とで必ずしも一致せず、投資家の期待に沿うような結果が必ずしも得られないことに留意すべきでしょう。

2017年には経営陣が一新され、第三者委員会の答申を受けて、小林新社長率いる新経営陣は、研究開発評価の結果が会社の期待通りにはならない場合がある、また、契約交渉が決まらない可能性もある、というリスクを丁寧に伝える姿勢を欠いていたと公式に表明しました。現在、経営陣はIRにおいて、会社の期待からはある程度控えめなところで投資家と対話するよう努めているとのことです。ハイリスクの株式投資において保守的なIRにはそれなりの安心感がもてます。

さりながら、経営陣が指摘したとおり、新薬候補が複数ある場合、開発が進むのもあれば止まるものもあります。事実、2021年5月の決算発表時にはファーストインクラスの導出候補抗体であったBMMA(ヒト化抗セマフォリン3A抗体)の共同開発ライセンスと独占的オプション契約の終了が発表されました。同時に、英国Mologic社と、カイオムの抗体作製技術 ADLib®システムを用いた診断薬用抗体を作製する共同研究契約の発表がありましたが、結局は株価は動きませんでした。

Business

カイオムバイオサイエンスは抗体医薬の研究開発をおこなうバイオベンチャーです。当社はフェーズ1の臨床試験までのライセンスアウト(導出、ライセンス供与)を狙っています。現在のパイプラインは、導出品2品目、臨床試験1品目、前臨床試験3品目に加えて創薬研究プロジェクト5品目を合わせた11品目で構成されています。

当社は自社の抗体作成技術であるADLib®システムと抗体創製のための技術プラットフォームを持っています。これらにより、自社創薬研究と初期臨床開発を進めています。ADLib®システムはトリの免疫細胞を利用してヒト抗体を圧倒的にスピーディーに作製する革新的な抗体作製技術で、国立研究開発法人理化学研究所が独自に開発したものです。抗体は動物実験を必要とせず、試験管内で作成することができます。2005年の当社設立からはプラットフォームのライセンシング、すなわち、ADLib®システム技術の導出を目指していましたが、2017年に新経営陣は新たな事業戦略として、アンメットメディカルニーズに応える医薬品抗体の開発を開始しました。

Revenue Stream

当社の収入源は創薬事業と創薬支援事業の二つです。創薬事業では前臨床試験や臨床試験の段階で新薬候補を導出し、契約一時金、開発マイルストーン、ロイヤルティを受け取ります。この事業の売上は数億ドルから数十億ドルにのぼることもありますが、一方で新薬候補の発見から導出契約までには長い年月と莫大な費用がかかります。したがって、このビジネスはハイリスク・ハイリターンです。

創薬支援事業は、タンパク質の発現・培養・精製に関するサービスを提供し、製薬企業やバイオ企業の創薬研究を支援しています。抗体作製もその中の1つです。主な顧客には、中外製薬、小野薬品工業、協和キリン、アステラス製薬などがあります。いずれも抗体医薬品とバイオ医薬品の分野での大手企業です。利益は大きくはありませんが、安定した収益源であり、着実に成長を続けています。現在の売上高は約5億円ですが、利益率は50%以上あり、医薬品開発市場の一般的な臨床研究よりも高い収益性です。経営陣はこの事業を、莫大な創薬研究開発費の資金補填に役立つものと位置付けています。

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4583OIV210709JN
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IR窓口
ir@chiome.co.jp

Conclusion

カイオム株式はハイリスクですが長期の投資では面白みの大きい投資だと考えます。研究開発は着実に進んでおり、今後 12 ~ 15 か月のニュースフローに期待がかかる局面にあるとみています。 2020 年以来、株価は CBA-1205 と LIV-2008 の進捗状況に関する発表に大きく反応しました。しかし、概して投資家の姿勢は慎重で、研究開発の進歩が生み出しうる最終的な結果に対する期待は、株価に十分には反映されていないようです。このサブセクターの PBRは必ずしも有力な尺度ではありませんが、その比較を一つの目安とするならば、時価総額 200 億円未満のバイオメディカル株式群の中でカイオム株は割安です。当社は医薬品抗体開発ライフサイクルの初期ステージにあり、売上は伸びているものの、研究開発費の負担により営業赤字が続いています。

Investment view

バイオ医薬品株価は、創薬パイプラインの開発進展とそれがもたらす経済的利益への期待を織り込みながら形成されます。当社においては、2014年の株価崩壊以来、投資家の関心は離散したままです。しかしこの間にも抗体候補品のパイプラインは順調に進捗してきました。現在、開発プロジェクト品目を含めて11品目に及ぶ創薬パイプラインは、一般的に観測されているように開発成功確率が10%~20%であるならば面白い段階に入ってきたと考えられます。

今後の株価カタリストとして特に注目されるのはCBA-1205(ヒト化抗DLK-1 モノクローナル抗体)に関するニュースフローです。これは世界に競合品のないファーストインクラスのがん治療用抗体候補です。日本、米国、欧州、中国他で特許が成立しており、経営陣によれば目下の開発は順調です。想定適応疾患は肝細胞がんや肺がんなどの難治性がんです。経営陣の期待どおりに、2023年に初期薬効の兆候が確認された場合、大きなライセンス供与契約もありえます。すでに会社は事業提携や導出を模索して、積極的に動き始めているようです。共同開発の場合、売上は減少しますが、その見返りに支出は減少し、カイオムは安定した利益を得ることができるでしょう。CBA-1205は現在、国立がん研究センターでフェーズ1試験前半での安全性確認が進んでいます。当社は引き続き、肝細胞がんの有効性の初期評価に向けて、試験後半の開始を2021年後半に目指しています。

さらに、悪性中皮腫や固形がんの治療用抗体であるCBA-1535(ヒト化抗5T4・抗CD3二重特異性抗体)は、2021年末以降に英国または日本でフェーズ1試験の治験届申請を見込んでいます。CBA-1205とCBA-1535はいずれもアンメットメディカルニーズを満たす新しい治療薬を生み出す可能性を秘めた抗体です。

世界の医薬品市場に目を向けますと、バイオテクノロジーがすでに30%を占めており、その成長ドライバーは抗体医薬品です。2020年の世界の医薬品売上げトップ10品目のうち7つは抗体医薬品でした。カイオムが目指すものは、必ずしも数兆円規模の新薬につながる抗体の開発だけではありませんが、研究開発の成功が大きな経済的利益をもたらす市場で活動しているのが当社であるということです。

抗体医薬品は低分子医薬品よりも副作用が少ないことが知られています。これは、疾患細胞へのターゲット特異性が高く、正常な細胞・組織を傷つけにくいためです。低分子医薬品の10倍から20倍の値段がつくことも珍しくない一方で、開発のコストは高額です。従ってビジネスはとりわけハイリスクハイリターンです。

年度売上高
(百万円)
EBITDA
(百万円)
EPS
(円)
PER
(CE)(倍)
PBR
(倍)
ROE
(%)
12/172600-330.02.10.0
12/182130-570.01.50.0
12/194480-420.02.40.0
12/204810-330.02.30.0

Share Price Observation

こうした必ずしも遠い先でもない医薬品市場での当社について高まりつつある期待は、株価には十分に反映されていないと感じます。 2014年 の株価崩壊以降、 TSRは大幅なマイナスが続いています。振り返りますと、ADLib®システムの実用化への過大な期待により2013 年には時価総額は600 億円を超えましたがほどなく崩落、投資家の不信感が依然として感情の足を引っ張っているのかもしれません。 2014 年までに、上位の主要な機関投資家はほぼ全てのポジションを手放し、当社を去りました。

Total Return

1M3M6MYTD1Y3Y5YIPO
(Dec.2011)
4583-8.7-10.2-1.913.4-40.4-13.4-20.9-3.1
TOPIX-4.2-2.410.45.131.43.69.413.6
Returns over 1 years are annualised
出所:各種資料よりオメガインベストメント作成

当然のことながら、投資家は、研究開発の成果に対する期待は、開発企業と導出先企業とで必ずしも一致せず、投資家の期待に沿うような結果が必ずしも得られないことに留意すべきでしょう。

2017年には経営陣が一新され、第三者委員会の答申を受けて、小林新社長率いる新経営陣は、研究開発評価の結果が会社の期待通りにはならない場合がある、また、契約交渉が決まらない可能性もある、というリスクを丁寧に伝える姿勢を欠いていたと公式に表明しました。現在、経営陣はIRにおいて、会社の期待からはある程度控えめなところで投資家と対話するよう努めているとのことです。ハイリスクの株式投資において保守的なIRにはそれなりの安心感がもてます。

さりながら、経営陣が指摘したとおり、新薬候補が複数ある場合、開発が進むのもあれば止まるものもあります。事実、2021年5月の決算発表時にはファーストインクラスの導出候補抗体であったBMMA(ヒト化抗セマフォリン3A抗体)の共同開発ライセンスと独占的オプション契約の終了が発表されました。同時に、英国Mologic社と、カイオムの抗体作製技術 ADLib®システムを用いた診断薬用抗体を作製する共同研究契約の発表がありましたが、結局は株価は動きませんでした。

Business

カイオムバイオサイエンスは抗体医薬の研究開発をおこなうバイオベンチャーです。当社はフェーズ1の臨床試験までのライセンスアウト(導出、ライセンス供与)を狙っています。現在のパイプラインは、導出品2品目、臨床試験1品目、前臨床試験3品目に加えて創薬研究プロジェクト5品目を合わせた11品目で構成されています。

当社は自社の抗体作成技術であるADLib®システムと抗体創製のための技術プラットフォームを持っています。これらにより、自社創薬研究と初期臨床開発を進めています。ADLib®システムはトリの免疫細胞を利用してヒト抗体を圧倒的にスピーディーに作製する革新的な抗体作製技術で、国立研究開発法人理化学研究所が独自に開発したものです。抗体は動物実験を必要とせず、試験管内で作成することができます。2005年の当社設立からはプラットフォームのライセンシング、すなわち、ADLib®システム技術の導出を目指していましたが、2017年に新経営陣は新たな事業戦略として、アンメットメディカルニーズに応える医薬品抗体の開発を開始しました。

Revenue Stream

当社の収入源は創薬事業と創薬支援事業の二つです。創薬事業では前臨床試験や臨床試験の段階で新薬候補を導出し、契約一時金、開発マイルストーン、ロイヤルティを受け取ります。この事業の売上は数億ドルから数十億ドルにのぼることもありますが、一方で新薬候補の発見から導出契約までには長い年月と莫大な費用がかかります。したがって、このビジネスはハイリスク・ハイリターンです。

創薬支援事業は、タンパク質の発現・培養・精製に関するサービスを提供し、製薬企業やバイオ企業の創薬研究を支援しています。抗体作製もその中の1つです。主な顧客には、中外製薬、小野薬品工業、協和キリン、アステラス製薬などがあります。いずれも抗体医薬品とバイオ医薬品の分野での大手企業です。利益は大きくはありませんが、安定した収益源であり、着実に成長を続けています。現在の売上高は約5億円ですが、利益率は50%以上あり、医薬品開発市場の一般的な臨床研究よりも高い収益性です。経営陣はこの事業を、莫大な創薬研究開発費の資金補填に役立つものと位置付けています。