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Omega Investment株式会社

テンポイノベーション (Company note – Full report)

本年10月1日より持株会社へ移行
配当金総額は上場以来年率+31.5%で成長

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サマリー

  • 持株会社体制への移行により、持株会社がグループ全体の経営を統括し、各子会社は各事業の推進に注力することで、グループの企業価値を最大化。2025年3月期は、成約数(新規+後継契約)が466→570件(前期比22.3%増)、転貸物件数が2,445→2,757件(同12.8%増)と好調に推移し、売上高は前期比18.1%増を予想。営業利益は、各事業の積極的な拡大に伴う人員増による販管費増の影響により、前期比6.9%減となる見通し。2025年3月期は今後の成長加速に向けた過渡期と位置付けられ、機会確保のための営業体制やサポート体制の強化に向けた先行投資が利益を圧迫する状況が続く見込み。
  • 2024年3月期から配当方針を変更し、目標配当性向を30%台から40%台に引き上げることを発表した。上場以来、配当金総額は年平均成長率+31.5%で推移し、DOEは2024年3月期に10%を超え、配当性向は2025年3月期に2年連続で50%を超える見通しである。今後の成長を加速させるために必要な投資を行う一方で、株主還元の強化も経営の重要課題として取り組んでいる。

テンポイノベーション: 安定的、かつ持続力ある二桁高成長を実現

出所:同社決算説明資料よりオメガインベストメント作成

財務指標

株価 (7/29)95425.3    P/E (会予)25.4x
年初来高値 (24/1/4)1,05025.3    EV/EBITDA (会予)13.2x
年初来安値 (24/5/30)83524.3    ROE (実績)20.5%
10年来高値 (23/3/10)1,34024.3    ROIC (実績)19.9%
10年来安値 (20/4/6)47724.3    P/B (実績)4.82x
発行済株式数 (mn shrs)17.67425.3    DY (会予)2.20%
時価総額 (¥ bn)16.861 
EV (¥ bn)12.676 
Equity ratio (3/31)24.2% 

オメガ・インベストメントが考えるテンポイノベーションの魅力

 2017年10月の上場から2024年3月期までの過去7期において、売上高は年率+14.9%、営業利益は年率+17.7%、配当金は年率+31.5%で成長しており、DOEは2024年3月期に10%を超え、配当性向は2025年3月期に2期連続で50%を超える見通しである。P1下段のグラフに見られるように、稼働店舗転貸借契約数の2ケタ成長は、外食市場との相関がなく、極めて安定的かつ持続的である。本レポートでは、新中期経営計画の下でのテンポイノベーションのビジネスモデルの強みと展望を検証する。

目次

はじめに  
  日本の外食産業の概況、パンデミック後の動向 4
事業内容  
  事業内容、ビジネスモデルの強み、沿革 11
業績レビューと中計の修正目標値  
  2024年3月期第4四半期決算、及び持株会社移行後の見通し 23
株価に関する洞察  
  株価・バリュエーション推移、株主還元方針 29

テンポイノベーション東京首都圏飲食店向け転貸借のスペシャリスト

テンポイノベーションが考える、常に需要の高い店舗転貸借物件を選ぶ3大基準
・店舗物件は1Fで、動線(人通りが多い)に面している【駅近は問わない】
・月額賃料の絶対額が手頃である【平均40万円/月程度】
・居抜き物件である【初期投資コストを抑えられる】

PART ①はじめに

JF外食産業月次・年次調査

 ミクロレベルのデータとしては、日本フードサービス協会(日本フードサービス協会)が月次・年次で実施している外食産業実態調査から、外食・中食事業者の直接回答をもとに外食産業の動向をタイムリーに把握できる。スカイラーク・グループは、全国に3,000店舗以上を展開し、年間約3億人が利用する日本最大の直営テーブル・サービス・レストラン・チェーンであり、1970年7月に東京・府中にスカイラーク1号店をオープンした後、1974年に農林水産省の認可のもと、外食産業の発展と日本の豊かな食文化の創造に寄与することを目的に日本フードサービス協会(JF)が設立された。日本フードサービス協会は2024年に創立50周年を迎える。正会員(外食チェーン展開企業)、賛助会員(外食関連メーカー、商社等)を含め、正会員・賛助会員数は800社を超え、日本最大の外食産業団体となっている。

 下の2つの円グラフは、「日本フードサービス協会市場動向調査 2024年5月結果報告書」が37,136店舗を運営する229社(調査データ全文はP9参照)からの回答に基づいている。基本的な傾向を正確に反映するには十分なサンプル数であり、外食業態別の内訳を示している。2つの円グラフの上にある表は、経済産業省が採用している定義と分類方式に基づいた、各外食業態の説明である。日本フードサービス協会は、毎年「外食産業市場規模推計」を発表しているが、確定値の発表はかなり遅れる(P5参照)。2019年1月から2024年4月までの日本フードサービス産業市場動向調査結果報告書(2014年から2023年までは年次報告書)の年次、四半期、月次データをP6-9にまとめた。

 2021年3月以降の日本フードサービス協会の調査結果レポートでは、前年同月比のトレンド数値に加え、2019年同月比(パンデミック前)との比較も掲載しているのが大きな特徴であり、これだけでは誤解を招きやすい前年同月比のボラティリティの高さを排除することで、回復の度合いを測りやすくしている。2024年5月現在、総売上高は対2019年5月比で+15.0%と回復しているものの、総店舗数はまだ-6.7%である(P7上図参照)。

出所:日本フードサービス協会(JF)。
注:新規開店を含む全店データ。 http://www.jfnet.or.jp/data/data_c.html 

日本フードサービス協会(JF)外食産業市場規模推計(兆円)

2020年の総売上高は前年比-15.1%、1994年の調査開始以来最大の落ち込み

 新型コロナウイルス感染症の発生を受け、政府が2020年4月に非常事態宣言を発令したことで、月次総売上高は前年比-39.6%となり、後述する「3C」回避による居酒屋の-95.9%から、ドライブスルーやテイクアウトなどで売上を維持できるファーストフードチェーンの+2.8%まで幅が広がった。2023年5月に厚生労働省が新型コロナウイルス感染症を5類感染症(インフルエンザと同じ)に引き下げたことや、2023年4月末の入国規制緩和(有効な予防接種証明書やコロナウイルス検査陰性証明が不要になった)によるインバウンド需要の再開もあり、2023年の総売上高は2年連続で前年を上回ったものの、2019年(パンデミック前)と比較すると、総売上高は+7.7%増、総店舗数は-7.6%減にとどまった。需要は着実な回復基調に入ったが、力強さに欠けている。

JF外食産業市場 前年同月比調査-年次実績報告書

年次実績報告書より店舗形態別四半期動向

出所:グラフはいずれも日本フードサービス協会の年次実績報告書よりオメガ・インベストメント作成。注:データは新規出店を含む全店舗のものである。

新型コロナウイルス感染症「3C」の影響:
新型コロナウイルス感染症では、「閉鎖空間(closed)」「混雑場所(crowded) 」「密着場所 (close-contact) 」の3Cを避けることを目的とした営業時間短縮等の政策規制により、パブレストラン・居酒屋が最も大きな打撃を受けた。
2019年5月(つまり5年前)と比較した2024年5月時点でも、居酒屋の総売上高は-32.8%、総店舗数は-34.4%である。

全業態および関連する4つのサブセクターの月次動向

 日本フードサービス協会のデータは外食チェーンが中心であることに留意する必要がある。テンポイノベーションのテナントには、「ふたご」ブランドの焼肉・総菜店を展開する未上場のFTGカンパニーや、焼き鳥「鳥よし」、海鮮居酒屋「磯丸水産」を展開するSFPホールディングス(東証:3198)などがあるが、大半のテナントは、ラーメン、中華、焼肉、居酒屋など、1店舗以上の飲食店を展開する中小企業のオーナー経営者である。

日本フードサービス協会 市場動向調査 月次結果報告 – 全業態

日本フードサービス協会 市場動向調査 月次結果報告  – ファーストフード・麺類

4つのサブセクターのうち、カジュアルな中華と焼肉が大幅増

 前述の通り、日本フードサービス協会市場動向調査結果報告書の大きな特徴は、前年同月比のボラティリティの高さを取り除いて回復の度合いを測るために、2019年同月比(パンデミック前)を掲載していることである。黒の点線は売上高対2019年同月比、オレンジの点線は店舗数対2019年同月比である。以下の両サブセクターの店舗数は対2019年比で増加している。

日本フードサービス協会 市場動向調査 月次結果報告 -ファミリーレストラン・中華

日本フードサービス協会 市場動向調査 月次結果報告 – ファミリーレストラン 焼肉(韓国焼肉)

新型コロナウイルス感染症における中小企業向け「ゼロゼロ融資」の返済ピークは2024

 テンポイノベーションは、回復が遅れている下記居酒屋を含む外食産業について、インバウンドを含めた客足の正常化に伴い、本格的な回復を見込んでいる。しかし、人手不足の深刻化、光熱費や原材料費の高騰など事業者にとって厳しい状況に加え、新型コロナウイルス感染症における中小企業向けゼロゼロ融資(無担保・実質ゼロ金利)の返済が2024年にピークを迎えることから、撤退を決断する外食事業者も出てくる可能性がある。

日本フードサービス協会 市場動向調査 月次結果報告 – 居酒屋・パブレストラン

テンポイノベーションの転貸借取引は外食産業店舗市場と相関しない

 新型コロナウイルス感染症の最盛期である2020年においても、稼働店舗の転貸借は微減にとどまり、通期では前期比増収となった。ビジネスモデルの強みについては後述するが、要は東京都心部を中心に、①通りに面した1階(駅近に関わらず)、②月額賃料が絶対額で手頃(平均40万円前後)、③居抜き物件(初期投資コストを抑えられる)、といった厳選された店舗物件は常に需要が高いということだ。平均回転率は長期的に安定しており、毎年約10%、つまり5年で約50%に相当する。2019年3月との比較では、日本フードサービス協会の全業態が-8.6%であったのに対し、テンポイノベーションの稼働店舗物件は+67.6%(5年間の年平均成長率+10.9%)増加している!

転貸借物件の月次推移:安定的かつ持続可能な高成長

出所:同社決算説明資料よりオメガインベストメント作成

PART ② 事業内容

事業内容、ビジネスモデルの強み・魅力

 当社のウェブサイトにアクセスし、トップページを開くと、東京都心の空撮映像が表示される。そして、右下をクリックすると、1分24秒の派手なYouTube動画がキャッチーなサウンドトラックとともに流れ、東京のレストラン市場の魅力がわかりやすくハイライトされている。

東京× TENPO INNOVATION

東京を掴め。
世界一の乗降客数   新宿駅:359万人
世界一の飲食店数   東京都:79,601店
世界一の美食都市   ミシュラン掲載店数:226店

最高のポテンシャルを秘めたこの都市で、私たちは勝負する。
世界一の横断者数   渋谷
世界一のサブカル街  秋葉原

やれることはもっとある。
未開拓市場99%
立ち止まらず、突き進む。
それが大きなうねりとなり、この都市を包み込んでいく。
だからやれる、をだからやる。

飲食店店舗物件の転貸借スペシャリスト「テンポイノベーション」

 当社は不動産会社であるが、一般の不動産会社のように仲介業務や管理業務は行っていない。また、当社は、店舗に特化した不動産会社であり、一般的な不動産会社は、住宅、事務所、倉庫、駐車場等を取り扱っているが、当社はこれらを一切扱わず、店舗物件にのみ特化している。契約の約90~95%が飲食店向けであることからも、当社は飲食店向けの店舗転貸借事業のスペシャリストと言える。

 当社は、主に店舗の居抜き物件を不動産所有者から賃借し、飲食店経営者に転貸する事業を行っている。当社によれば、オーナーとの賃貸借契約の標準的な契約形態は、3ヶ月前の解約予告を必要とし、当社が解約しない限り、原則として継続的に賃貸借契約を更新できる賃借権が自動的に付与されるものであるとのことであり、この賃借権は、P.10に示すように、当社の転貸借事業を長期的に安定させる重要な要素である。飲食店との標準的な転貸借契約では、解約は7カ月前に通知することが規定されており、また店舗経営者は、賃料の10カ月分の保証金を預け、賃貸借契約の連帯保証人を立て、家賃履行保証契約を結ぶ必要がある。

 店舗転貸借事業の収入は、「イニシャル収入」と「ランニング収入」に分けられている。初期収益は、1)日本市場特有の慣習であり、新規テナントが家主に支払う必要があり解約しても返還されない「礼金」、と、2)什器付き物件に新規テナントが入る際の備品売却代金、から構成されている。営業収入は、店舗のテナントから毎月支払われる家賃から構成されている。当社によれば、その内訳は、初期収益が10%、ランニング収益が90%程度とのこと。外食産業は比較的失敗が多いと言われており、平均契約期間は事実上重要ではないが、当社によれば、平均回転率は毎年約10%、5年で約50%と長期的に安定している。

東京都心部を中心に、比較的小規模で低家賃の居抜き飲食店店舗物件を発掘し、転貸借するノウハウを持っていうる。

株式会社セーフティーイノベーションの店舗家賃保証事業

 2020年4月より改正民法が施行され、店舗賃貸物件の家賃保証は、物件の貸主と借主の双方にメリットがある制度として社会的に広がりを見せている。従来では、テナントが申込時に家賃保証契約を締結し、外部の家賃保証事業者に業務を委託していたが、当社は17年以上にわたる2,000件以上の飲食店店舗物件の転貸借経験と独自の審査ノウハウにより、転貸借物件のリスク評価を十分に行うことが可能。この収益源を自社に取り込むことを目的に、2022年4月に店舗セーフティー株式会社(現株式会社セーフティーイノベーション)を設立した。

 同社によると、成約数に応じて家賃保証契約を締結する必要があり、家賃保証料は家賃の約1カ月分に相当するという。このうち大多数を新設した株式会社セーフティーイノベーションが担当し、リスクが高いと判断した一部は外部に委託している。従って、成約数は四半期当たり100件を超えるのでその大多数が四半期毎にグループの利益に直接貢献している。このビジネスは事実上100%の営業利益率を誇り、成長は成約数に直結している。収益性の高い後継契約の増加とともに、店舗家賃保証事業が今後の利益率の構造的な原動力となるだろう。

*注)2024年2月、店舗セーフティー株式会社から株式会社セーフティーイノベーションに商号変更。

株式会社セーフティーイノベーション 店舗物件の家賃保証事業の概要

 同社は不動産売買事業も手掛けており、これは販売用不動産の売却等によって計上される収益である。転貸借物件については、魅力的な店舗物件の調達が重要なポイントであり、不動産業者は当社の希望に合致する有力な候補物件情報を提供してくれる有力な情報源である。しかし、不動産業者から見れば、テナント探しの手数料は賃料の1カ月分、おおよそ20~30万円が相場であり、大きな金額ではない。一方、物件の売買手数料は数百万円から1千万円にもなる。

 不動産業者は転貸借物件に関する貴重な情報を持っているため、不動産業者とのリレーションシップを強化することや取引先における不動産売買のニーズに応えることを意図している。不動産の平均購入価格は8,000万円前後と小さく、すぐに転売に回されるため、平均保有期間は約7.5ヵ月(1年以上の場合もある)で、空室で仕入れた物件をグループ内でリーシングすることにより、価値を上げて売却する場合もあることから平均粗利率は35%程度である。

 次に、主力の外食店舗の転貸借事業について、主な3つの領域における典型的な業務の流れを見てみよう。

オーナーからの店舗物件リース(仕入れ)

 主要駅エリアごとに配置された営業担当者による不動産業者への営業活動、取引先や既存店舗運営者からの紹介、店舗買取に特化した自社サイト「店舗買取り.com」を通じて、撤退を検討している店舗の情報を収集し、当社で取り扱う物件の調査を進めている。当社は、長年にわたる店舗物件の取扱いとその後の検証・分析により、物件評価に関するノウハウが蓄積されている。

注)店舗買取り.com居抜き店舗.comは当社が運営するサイト。

居抜き店舗物件専門サイト「居抜き店舗.com

 本レポート執筆時点で、会員(出店希望登録者)数は100,617名、累計掲載物件数は84,280件、現在は東京23区を中心に、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県を含む2,680件の物件を掲載中で、不動産仲介業者からの直接紹介を武器に、市場に出回っていない隠れた優良居抜き店舗物件を発掘している。

 各物件の調査は、当社の仕入担当者の経験と専門知識により培われたノウハウに基づいて行われ、物件の取り扱いを支えている。物件調査後、候補物件の貸主または不動産業者と交渉し、賃貸借契約の詳細を取り決め、保証金等の契約金を支払い、物件所有者と当社との間で賃貸借契約を締結する。

店舗物件の転貸借について

 賃貸借契約を締結している店舗物件については、不動産業者を仲介するほか、出店希望者が物件を探しやすい仕組みである居抜き店舗物件を中心とした情報提供サイト「居抜き店舗.com」の会員に紹介することで、入居希望者を募っている。日々入手する物件情報をスピーディーに掲載・更新することで情報価値を高めており、出店希望者と店舗をマッチングさせる当社の強みとなっている。出店希望者から物件申込を受けたスタッフは、信用審査、転貸借物件の内容交渉、敷金等の契約金の受領、テナントとの転貸借契約の締結を行う。

店舗の物件管理

 物件管理業務では、不動産オーナーや物件管理会社が抱える家賃回収やトラブル対応などの課題に対し、テンポイノベーションが蓄積したノウハウを活用し、業務を代行し自ら行っている。また、トラブルの未然防止や早期発見・対処のため、物件のチェックや情報収集、店舗運営者等との関係構築を行っている。

物件管理
転貸借物件の現地調査結果をもとに物件管理を行う。トラブルの未然防止に注力しており、物件仕入れの段階から、雨漏りや設備の不具合など、物件ごとに詳細な点検記録を作成している。
問題の内容や段階に応じたスクリーニング管理を実施し、最短時間で対応する組織体制を構築し、重大なトラブルの未然防止に万全を期している。不動産管理スタッフ1人あたりの担当物件数は約140件で、年間1,000回以上出動している。

会社沿革

 当社は、2007年12月の株式会社テンポリノベーションの分社化に備え、2007年11月に株式会社テンポリノベーションを設立し、テンポリノベーションから飲食店舗出退店支援事業(出店希望者への物件紹介・支援、撤退希望者への店舗施設購入・支援)の一部を譲り受けた。

 旧株式会社テンポリノベーションは、2001年10月に株式会社レインズインターナショナルの子会社として、飲食店の経営を目的として設立(設立時の商号はレイフィールズ株式会社で、日本最大の焼肉チェーン「牛角」をはじめ、居酒屋、しゃぶしゃぶ店等のブランドを有していた)。

 2005年4月には、新たに飲食店舗出退店支援事業を開始(現会社の事業活動の実質的な開始)。2007年12月の会社分割に際し、飲食店舗出退店支援事業をレインズインターナショナル物件に係る事業とレインズインターナショナル物件以外の物件に係る事業に分割し、レインズインターナショナル物件以外の物件に係る事業を当社に承継させた。

 同年テレウェイヴ(現アイフラッグ)の連結子会社となり、2009年にクロップス株式会社(9428)の連結子会社となり、2013年に社名を現在の「テンポイノベーション」に変更。

テンポイノベーションの魅力的なビジネスモデルの原点

 2007年の設立当初は、不動産業ではなく、飲食店の撤退・出店を支援するコンサルティング業であった。都内で飲食店の出店に関わる事業を行うことだけは決まっていたが、どのような形で収益化を図るのかは明確には定まっていなかった。当時最も力を入れていたのは、飲食店の店舗物件を扱うだけでなく、フランチャイズという形で繁盛店のビジネスモデルを紹介すること、店舗物件の工事を請け負うこと、不採算店の売上向上のためのコンサルティング業務などであったが、需要が少なく不採算となったため、これらの業務はすべて中止し、経営陣は都内の好立地の居抜き店舗物件の紹介が最も需要が高いと判断し、その分野に注力した。

 当社は、転貸借によるストック収入を定期的に得るため、コンサルティング事業を不動産事業に転換した。これは重要な転機となった。不動産に精通しているとはいえ、この分野で成功するのは難しかっただろう。店舗物件の市場は、不動産業界の中でもかなり狭く、専門性が高い。経営陣の経歴は焼肉店「牛角」を経営する会社であり、不動産の分野では素人であった。しかし、飲食業のプロとしてのノウハウや、蓄積された店舗物件のノウハウがあった。

 経営者の狙いは、総合的に不動産業に参入する計画というより、店舗物件に専門特化した独自の事業に取り組むことだった。適切なビジネスモデルに辿りつくのに時間はかかったが、これによって当社は持続的な成長軌道に乗った。

転貸借物件の選定基準、テナント選定の基本方針

 転貸借の目的で物件を選定する際の基準は主に3つある: 1)通りに面した1階の店舗であること、2)絶対賃料が手頃であること、3)居抜き店舗であること、である。従来の常識では、人通りが多く、駅に近く、大通りに面しているのが「良い店舗物件」とされてきた。ファーストフード店や大手外食チェーン店であれば、それが必須条件となるだろう。しかし、個人・零細企業の飲食店経営者にとっては、ランニングコストに加え、初期立ち上げコストを考慮すると、そのような店舗物件に高い賃料を設定することは、経済的に無理がある。テンポイノベーションが蓄積してきた経験では、駅から多少離れていても、賃料の安い居抜き店舗物件の需要は常に高い。賃料の安さと同様、居抜き物件も初期投資コストの低さがポイントだ。

 同社によれば、テナント選定の条件は実はそれほど多くないという。転貸物件の選定はかなり厳しいが、入居希望者の場合、定期的な信用審査を経て、敷金10カ月、連帯保証人、家賃保証契約を締結することが義務付けられている。実際、飲食業は開店と閉店の比率が高く、失敗しやすい店舗が多いため、新規テナントが飲食店経営を成功させるかどうかの判断は非常に難しい。テンポイノベーションのビジネスモデルは、仮にテナントが出店して失敗しても、店舗物件が前述の条件を満たしていれば、常に需要の高い店舗物件であるため、次のテナントを募集すればよいという仕組みになっている。

 出店に有利なテナントの属性としては、既存店があり実績があること、ローンを組まずに出店資金を調達できることなどが挙げられる。業態については、テンポイノベーションのポートフォリオは市場全体の一般的な傾向を反映している。例えば、居酒屋やラーメン店のテナントが多い。

テンポイノベーションのビジネスモデルが成長と安定を両立できる理由

 安定性については、同社がオーナーから店舗物件を賃借する際に自動的に付与される賃借権がポイントとなる。原則として、同社が解約しない限り、賃貸借契約を更新し続けることができる。2020年2月にCOVID-19が世界的に大流行し、東京都知事による非常事態宣言、自宅待機命令、飲食店の営業時間短縮・停止などが発令された際、同社は慎重を期して4月に一定数の賃貸借契約について3カ月前告知を実施したため、同年7月から10月にかけて解約が相次いだ。しかし、同社が厳選した店舗物件に対する底堅い需要が、急速な回復を支えた。

 成長性については、転貸借物件を着実に増やすことによる成長がある。しかし、店舗転貸借事業の利益率の上昇による構造的な成長要素はあまり理解されていない。具体的には、礼金や契約関連費用など、新規貸借契約締結に伴う初期取得コストがある。転貸借契約の年間解約率は長期的に安定しており、毎年平均10%、5年ごとに50%となっている。同社の既存テナントが事業から撤退し、新たなテナントを募集する場合、前述の転貸借物件の取得コストは最初の契約時に埋没しており、2回目以降の契約では、礼金やその他の初期収入は実質的に純粋な利益となり、取得コストは発生しない。現在の転貸借契約の約35%が後継契約に置き換わっているが、この比率は時間の経過とともに着実に上昇しており、その結果、今後の利益率は構造的に着実に上昇していくことになる。

トピックス:持株会社体制への移行について

 当社グループは、経営資源の最適配分を図り、次世代経営人材の育成を推進するとともに、グループ各事業により一層注力することで事業拡大を推進し、柔軟な意思決定と経営環境の変化への柔軟な対応を可能とする体制を構築するため、持株会社体制への移行に向けた準備を開始することとした。持株会社体制への移行により、持株会社がグループ全体の経営を統括し、各子会社はそれぞれの事業の推進に注力することで、グループの企業価値の最大化を図る。

 分割方式 当社を分割会社、分割準備会社を承継会社とする会社分割(吸収分割)により、分割する事業を 100%子会社(分割準備会社)に承継させる。また、当社は、持株会社として東証プライム市場への上場を継続する。2024年6月17日開催の第18期定時株主総会において、吸収分割契約および商号を株式会社イノベーションホールディングスに変更する定款の一部変更が承認された。(吸収分割の効力発生日:2024年10月1日)に商号変更する吸収分割契約および定款の一部変更が承認された。新持株会社体制、新商号・新コーポレートロゴ等の詳細は以下のとおり。

会社分割のスケジュール
1) 分割準備承継会社の設立承認取締役会決議 2024年2月2日
2)分割準備承継会社「テンポイノベーション分割準備株式会社」を設立 2024年2月9日
3)持株会社体制への移行を承認する取締役会決議 2024年5月17日 
4)吸収分割契約承認取締役会:2024年5月17日  
5)吸収分割契約締結日 2024年5月17日 
6)吸収分割契約承認株主総会、商号を「株式会社イノベーションホールディングス」に変更する定款一部変更決議 2024年6月17日 
7)吸収分割の効力発生日 2024年10月1日(予定)

2024年10月1日からのグループホールディングス新体制について

出所:ホールディングス体制への移行に関するIR決算説明会資料および関連プレスリリースよりオメガ・インベストメント作成

20253月期 ホールディングス体制下での事業拡大への取り組み

 新ホールディングス体制下での新中期経営計画の数値目標はP2の表の通りである。新中期経営計画の初年度である2025年3月期は、成約数(新規+後継契約)466→570(前期比22.3%増)、稼働店舗物件2,445→2,757(同12.8%増)が好調に推移することで売上高は前期比18.1%増を見込むものの、各事業の積極的な拡大に伴う人員増に伴う販管費増の影響で営業利益は同6.9%減となる。20253月期は新中期経営計画の1年目として、今後の成長加速に向けた転換期と位置付けられており、営業体制の強化に向けた先行投資による利益圧迫は続くものの、今後の成長機会は大きい。

株式会社テンポイノベーション  店舗転貸借事業

ビジョン:転貸借業界の商慣習を変革し、店舗物件の新たなスタンダードを創造する

① 営業面

  • 仕入拡大(物件開発部)、リーシング業務の分業化・専門化(営業部)に取り組む
  • 仕入拡大とともに、WEB購買を中心とした仕入ルートを確立し、有力サプライヤーとのリレーションを構築する
  • 従来の一括リーシングから事業別分業にシフトし、全体最適と専門性を追求する

② トレーニング

  • 経験の浅い営業担当者を短期間で戦力化する研修制度
  • 動画などeラーニングツールの積極的活用による効率的な教育
  • 各部門のミッション・ビジョン・バリューの確立と浸透、調達ノウハウの整理とマニュアル化

③ 採用活動

  • 前年実績(営業職23名採用)を踏まえ、引き続き積極的な採用を継続
  • 前年度の営業開発部を継承し、「採用推進部」を新設し、営業職のみならず、プロパティマネジメント職の採用も積極的に行う
  • 効率化とコスト削減を図りつつ、応募者数の最大化を目指す

④自社サイト

  • 自社サイト「居抜き店舗.com」(居抜き店舗のテナント探し)「店舗買取り.com (退去備品の買取)」の訴求力・存在感を向上させる
  • 「居抜き店舗.com」の取扱物件拡大とSEO対策やLINE等を活用した利便性向上、「店舗買取り.com」の取扱物件拡大と広告による認知度向上、専門チームによる運用開始

株式会社セーフティーイノベーション 家賃保証事業

ビジョン:事業用不動産の家賃保証契約数で業界No.1を目指す

 事業用不動産に特化した家賃保証により、グループ外案件を積極的に獲得する。店舗物件ノウハウの活用とエージェントへの付加価値提供によるシナジー効果で事業拡大を図る。

① 立ち上げ準備

  • まずはグループ取引先へのアプローチを優先し、下期より本格的な募集活動を開始する
  • 転貸借事業を手掛ける不動産会社(1,000社規模)への営業活動を実施し、首都圏での認知度向上を図る
  • 今期下期より本格的な採用活動を開始予定(15名程度の採用を予定)、首都圏に支店を設立予定

② 業務フロー

  • ITの積極的活用と業務フロー・マニュアルの整備、教育・研修体制の確立。
  • クラウドサービスやOCRを積極的に活用し、契約・審査・回収の業務フローやマニュアルを整備する。
  • お客様の利便性向上・負担軽減を図るとともに、業務効率化・教育体制を整備する。

株式会社アセットイノベーション 不動産売買事業

ビジョン:商業用不動産流通のリーディングカンパニーを目指す

① 顧客の開拓

  • 会社設立を機に組織力・営業力を強化し、積極的な情報収集と顧客開拓を行う
  • 山手線及び周辺駅への仕入営業強化(今期営業人員2名増員予定)、不動産売買以外の販路開拓
  • 不動産業者、不動産オーナーへのダイレクトメールによる仕入機能の強化

② 研修・連携

  • ノウハウの整理、マニュアル作成に着手し、グループ連携の勉強会を開催する
  • 組織化したノウハウ・マニュアル化により、人材の短期戦力化を図る
  • 年2回のグループ会社勉強会を開催し、仕入・販売情報の共有化を図る

20243月期連結売上高+9.1%、営業利益-19.6

 前編で述べたように、2023年の外食産業の売上高は、新型コロナウイルス感染症がクラス5に移行されたことや、ゴールデンウィーク前後に入国規制が解除されたことでインバウンド観光客の回復が促され、客足が順調に正常化し、2期連続の増収となった。しかし、全業態合計の売上高は前年比14.1%増となったものの、インフレを反映した平均単価の7.3%増が大きな要因となった。人手不足の深刻化に加え、光熱費や原材料費の高騰など、外食事業者を取り巻く環境は非常に厳しいものとなった。業態別では、居酒屋が店舗数前年比9.7%減(対2019年比33.6%減)と回復が遅れている。

 こうしたなか、テンポイノベーションは、稼働店舗転貸借物件が前年同期比10.3%増の2,445件となったことが寄与し、売上高は同9.1%増となった。成約数(新規契約数+後継契約数)は、2023年10月の営業再編(P10参照)の影響もあり、前年同期比3.3%減と若干減少したものの、四半期平均で116.5件と高水準を維持している。結局のところ、Part 2で述べたように、転貸借物件を選定する際に、実績のある厳しい基準を設けているビジネスモデルの強みが、入れ替わりが激しいと言われる業界において、必ず需要を掘り起こすことができているのである。

PART ③ 決算レビュー

2024年3月期第4四半期四半期別売上構成比推移

 売上高は増収となったものの、転貸借物件の積極的な仕入れ(空室賃料、工事費、仲介手数料等)や前期に不動産売買事業で収益性の高い大型物件を複数売却した反動によるコスト増で粗利率は1.3pt低下した。営業利益は前年同期比19.6%減となったが、これは主に給与・採用費の増加による売上高販管費率の上昇、前期の好業績に伴う役員報酬の増加、電子契約化等のDXシステム投資によるものである。2025年3月期の期初予想は以下の通りである。売上高は、前期に実施した営業体制の再編により成約数が2ケタ増に転じたこと、稼働店舗の転貸借が前期比12.8%増となる見込みであることなどから、前期比18.1%増(16期連続増収)を見込んでいる。一方、営業利益は、2024年10月1日付の持株会社体制下での各事業の積極的な拡大に伴う人員増に伴う販管費増の影響を受け、前年比6.9%減と2期連続の減益となる見通しである。20253月期は新中期経営計画の1年目として、今後の成長加速に向けた過渡期と位置付けられており、営業体制強化のための先行投資による利益圧迫は続くものの、今後の成長機会は大きい。

 また、2024年3月期より配当方針の変更を発表し、目標配当性向を従来の30%台から40%台へと実質的に引き上げた。左側のグラフから分かるように、大きな成長機会を捉えるための積極的な先行投資とともに、2017年10月の上場から2024年3月期までの過去7期において、配当総額は年平均成長率+31.5%で推移し、DOEは2024年3月期に10%を超え、配当性向は2025年3月期に2期連続で50%を超える見通しとなっている(下表参照)。現在の配当利回りは2.36% で、過去の平均を75% 上回る水準で推移している(P29のグラフ参照)。

四半期決算参考資料
2023年3月期 4Q
2024年3月期 1Q – 3Q

20233月期 連結売上高+14.5%、営業利益+33.2%

 2023年3月期より、新たに設立した100%子会社である店舗セーフティー株式会社の決算を連結しているため、前年同期比は前期単体実績に対する参考値として記載している。売上高は前期比14.5%増、営業利益率は同33.2%増、粗利率は18.3%→19.3%、営業利益率は8.0%→9.3%であった。店舗転貸は、収益性の高い新規家賃保証事業の寄与に加え、新規後継契約が135件→197件(前年比45.9%増)と増加したことが寄与した。店舗の転貸借の売上高は同16.7%増(転貸物件は2,216件、同13.6%増)、営業利益は962百万円(同32.9%増)となった。

 不動産売買事業では、大型収益物件を含む5物件を売却したことが寄与した(下グラフ参照)。2023年3月期は5物件売却、8物件取得(Q4では売却物件なし、取得3件)し、2023年3月期末の当社保有物件数は6物件となった。不動産売買事業の売上高は前年同期比9.6%減となり、営業利益は同34.7%増の251百万円となった。この事業は、不動産仲介業者との良好な関係を維持するため、転貸借物件に関する優良な情報提供の対価として有意義な手数料を支払うことを主な目的としているが、最近では既存のオーナー家主からの購入希望もあり、紹介のない安定的な供給パイプラインが強化され、本格的なビジネスとなっている。

20243月期第1四半期の連結売上高+13.5%、営業利益-14.6%

 COVIDによる移動制限の解除やインバウンドの再開など、外食業界を取り巻く環境は第1四半期から緩やかな改善が続いたが、外食事業者にとっては、食材や光熱費の高騰、慢性的な人手不足などの逆風が吹き荒れた。しかし、同社の比較的小規模で1階路面、手頃な賃料、居抜き物件の転貸借物件に対する個人・小規模飲食事業者の関心は引き続き高く、店舗の転貸借売上高は12.4%増加した(転貸借物件は2,272件、+12.8%)。しかし、転貸物件の積極的な仕入れによる空室賃料の増加で営業利益が粗利率で1.8%減少したほか、給与・採用費の増加や前年の好業績に伴う役員報酬の増加、電子契約化等のDXシステム投資で販管費率が0.5%増加したため、営業利益は14.0%減少した。

 不動産売買事業は2物件を売却、5物件を取得し、6月末の在庫は9物件となった。売上高は前年同期比44.3%増となったが、営業利益は市況低迷を反映した利益率の低下により同18.4%減となった。下表の通り、営業利益の進捗率は19.2%と若干遅れているが、第1四半期決算から読み取れる重要なポイントは、転貸借店舗の積極的な調達と人材採用により利益率は低下したが、今後9ヶ月間でこれらを活かすことができるだろうということである。

20243月期上期 連結売上高 +16.3%、営業利益 -5.3

外食産業は、新型コロナウイルス感染症「5類」への移行後初の夏休み、猛暑による外食需要の増加、円安に支えられたインバウンドの回復などにより、売上高、客数ともに増加した。飲酒店は、遅い時間帯の客数や大宴会需要が徐々に戻ったが、店舗数の減少により全体としては回復が遅れた。店舗の転貸売上高は+12.2%(転貸物件は+2,335件、+12.3%)となった。成約数は115件(2Q)と高水準を維持しているが、営業組織の再編により当面はややペースダウンが見込まれる。店舗転貸営業利益は、積極的な転貸物件仕入れに伴うコスト増(空室賃料、工事費、手数料等)により粗利率が1.3%低下したほか、給与・採用費の増加、前年好調に伴う役員報酬の増加、電子契約化等のDXシステム投資により売上高販管費率が0.4%悪化し、17.3%減となった。

 不動産売買事業は、経済・社会活動の正常化に伴い市場の様子見傾向が薄れたため、6物件を売却、6物件を取得し(2Q単体では売却4物件、取得1物件)、9月末時点の在庫は6物件となった。売上高は39.1%増、営業利益は35.0%増加した。下表は計画に対して上期の利益は若干未達であったことを示しているが、上期決算のポイントは、転貸借店舗の積極的な仕入れや人材採用により利益率が低下したことであり、下期はこれらの施策の貢献が期待されることである。

★営業人員の上期採用が奏功
中期的な目標達成に向けた最大のリスクは、営業人員の採用・教育・配置計画の成否にある。特に転貸借物件の仕入れが重要。仕入担当者は3月末14名から9月末16名と2Qで2名増加した。仕入権限移譲の効果は下期から来期にかけて発揮される見込みである。
新たに設置した営業採用専門の「営業開発部」(部長:営業幹部)では、上期に15名の営業スタッフを新規採用した。

20243月期第3四半期(累計) 連結売上高 +6.6%、営業利益 -29.6%

 外食産業は、猛暑による外食需要の増加や円安によるインバウンドの回復により、売上高・客数ともに増加した。飲酒店は、深夜時間帯の客数や大宴会需要が徐々に戻ったが、COVID-19の影響で店舗数が減少し、全体としては回復が遅れた。店舗転貸売上高は+11.6(転貸物件は2,382件、+10.7%)となった。成約数は116件(3Q)と高水準を維持したものの、営業組織の再編により10月は40件から28件に減少、12月には過去最高の52件とV字回復した(P2のグラフ参照)。転貸営業利益は、積極的な転貸物件仕入れに伴うコスト増(空室賃料、工事費、手数料等)により粗利率が減少したことに加え、給与・採用費の増加、前年の好業績に伴う役員報酬の増加、電子契約化等のDXシステム投資により売上高販管費比率が上昇したため、15.6%減となった。

 不動産売買事業は、経済・社会活動の正常化に伴い市場の様子見ムードが薄れるなか、6物件を売却、8物件を取得し(3Qのみ売却0物件、取得2物件)、12月末時点の在庫は8物件となった。売上高は45.2%減営業利益は販売時期の後ろ倒しにより69.5%減となった。以下のグラフから読み取れるのは、3Qは販売時期の関係で物件売却が少なかったが、4Qには回復し、それに伴い4Qの利益も回復する見込みであるということである。通期予想は据え置かれた。

PART ④株価動向

7年間の月足株価チャート、6M/12M/24M MA、出来高、評価額の推移

出所:過去の価格データよりオメガインベストメント作成。予想値は最新の会社予想に依拠

主な要点
❶ 現在のPERとPBRは、過去の平均からそれぞれ2.3%と11.5%のディスカウントで取引されている。EV/EBITDAは8.1%のディスカウントで取引されている。重要な点は、配当利回りが過去の平均を63.9%上回って取引されていることである。
❷ 自己資本比率は24.2%と一見低いように見えるが、これはB/Sが多額の預り金で構成されていることを反映している(P31のB/S参照)。当社は無借金経営であり、B/Sは極めて健全である。
❸ 2024年3月期から配当方針を変更し、目標配当性向を従来の30%台から40%台に引き上げたことを受け、DOEは10%を超え、25年3月期は2期連続で50%を超える。

粗利率・営業利益率の10年間月次相対株価推移とトレンド

過去3四半期における株価の急激なアンダーパフォーマンスは、新持株会社体制下での今後の大幅な成長機会を獲得するための先行投資による短期的な利益率悪化が織り込まれたためであることは明らかである。
営業利益は2年連続で前年同期比マイナスという残念な結果となったが、株価下落でその点はほぼ織り込まれたと思われる。投資家の期待は低下しており、今後、営業組織強化が本格化することを考えればポジティブ・サプライズの余地がある。

連結貸借対照表

出所:2024年3月期有価証券報告書よりオメガ・インベストメント作成。