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Omega Investment株式会社

キッズウェル・バイオ (Company note – 3Q update)

株価(3/4)134 円予想配当利回り(25/3予)ー %
52週高値/安値185/88 円ROE(24/3実)-166.6 %
1日出来高(3か月)685 千株営業利益率(24/3実)-54.9 %
時価総額55 億円ベータ(5年間)N/A
企業価値65 億円発行済株式数 40.677 百万株
PER(25/3予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(24/12実)5.62 倍
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バイオシミラー事業の黒字基調定着。2025年3月期業績会社予想に対して好進捗。重要イベントに期待が高まる局面へ。

20253月期第3四半期決算ハイライト:損益は順調推移

同社が2025年2月12日に発表した2025年3月期第3四半期決算(連結)は、累計ベースで売上高30.3億円、営業損失1.3億円、経常損失1.6億円、親会社株主に帰属する四半期純損失1.8億円となった。前年同期非連結の数値と比較すると、売上高+194%増、売上総利益+119%増、営業損益1.3億円の改善であり、順調に推移している。

 細胞治療事業において後述の脳性麻痺(遠隔期)に関する臨床開発の順調な進展に伴い、研究開発費が先行する局面のため連結赤字ではあるものの、業績の中身は良化している。バイオシミラー事業において、需要が高止まりしているGBS-007とGBS-010に対して計画通り原薬等を供給し大幅な増収を遂げ、円安・物価上昇の影響による粗利率の低下を打ち返し売上総利益額が増加した。さらに販売管理費の効率化の効果で営業赤字が縮小している。バイオシミラー事業を担う単体決算に限れば営業黒字基調が定着し、その額も四半期ごとに増大している。

20253月期通期業績予想は据え置き:超過達成の可能性も

同社は3Q決算において2025年3月期通期業績予想(売上高40.0億円、営業損失10.0億円、経常損失10.0億円、親会社株主に帰属する当期純損失9.5億円)を据え置いた。しかし、3Qまでの進捗を加味すると保守的に見える。

 同予想と3Q実績の差分をとると、4Q(1-3月期)に売上高9.6億円、営業赤字8.6億円になることを意味することになる。同社によれば、4Qにおいてバイオシミラー事業の急減及び研究開発費の急増等を想定しているわけではないようだ。さらに、細胞治療事業において当期中にライセンスアウトを目指しているがこの収益は業績予想には織り込まれていない。

 以上を踏まえると、バイオシミラーが順調に売上高計上する限りにおいて、特に利益面で上振れの余地が残されている。注目したい。

バイオシミラー事業:黒字定着から業績拡大への布石が打たれる

バイオシミラー事業は、拡大する市場において同社の強みを発揮できるため、同社の今後の安定成長を担う重要な事業であり、円安や海外インフレ等の逆風を受けながらも営業黒字を3四半期連続で計上している。

 3Qまでのポイントは次のとおりである。

 第一に、同社にとって5番目以降の製品の展開のため、複数の国内外製薬企業と協議を進めており、海外市場における事業展開も見据えた共同事業化契約等を締結する目途を具体的に2025年9月末までと示したことである。

 第二に、バイオシミラー製品の旺盛な需要と円安・海外物価上昇により増大する製造運転資金について、パートナー製薬企業との協議・調整が実を結び10億円を超える圧縮を達成しており、今後同様の事態になった場合にも今回と同様の対応が期待できること、この結果運転資金不足に対する懸念が緩和されたことである。

 第三に、バイオシミラーの安定供給と製造原価低減を担う新たな製造体制への移行が当局の承認タイミングの遅れから2026年度になることが改めて表明されたことである。2025年度は医療機関に向けた安定供給を最優先事項とし、既存製造受託機関に追加発注した原薬等を先行して出荷することになるため、新規製造受託機関で製造した原薬等による原価低減効果の発現は2026年度になる。ただし、増加運転資金の資金繰りに対する適応力は製造運転資金の圧縮効果に合わせて、2024年12月に公表した後述の新株予約権の発行によるリファイナンス等の施策、間接金融の活用等、多岐に亘って向上しており、リスク耐性は強まったと見ておきたい。

細胞治療事業の開発状況:着実に前進

今後の事業価値の飛躍的向上を担う細胞治療事業(再生医療)に関して、3Qまでのポイントは次のとおりである。

 第一に、名古屋大学主導による脳性麻痺(遠隔期)を対象とした自家SHEDの臨床研究が順調に進んでいることである。2023年10月の第一症例の患者の登録開始以降、順調に全症例の登録が進み、現在1例目及び2例目の患者へのSHEDの投与及びその後の観察が進行中で、今後実施が予定されている3例目の患者への投与・観察を経て、2025年9月頃には当該臨床研究の中間解析結果が名古屋大学より発表されると見込めるとのことである。

 第二に、構築済みのマスターセルバンク(MCB)を用いた、日本国内における脳性麻痺(遠隔期)を対象とした同種(他家)SHEDの企業治験についても、治験製品の製造準備、PMDAとの相談等が進んでいることだ。2025年3月期に開発パートナーとの契約締結、2026年3月期に当該開発パートナーによる治験計画届出を目指すことを同社は改めて表明している。さらに、海外市場における脳性麻痺(遠隔期)を対象とした臨床開発に向けた取り組みも継続しており、海外治験の開始に向けて同社が取得済の非臨床試験データと構築中の製剤製造プロセス、及び今後の試験計画について、その充足性の評価を海外開発受託機関に委託しており、必要なデータ取得及びプロセスが順調に進んでいることが確認されたとのことである。

 第三に、製造技術についてのアップデートである。初期治験製剤については試製造を実施していること、後期治験及び商用に向けて独自の大量培養製法の開発に成功し、2025年5月に米国で開催予定の国際細胞治療学会(ISCT)にて発表が予定されていること、さらに、後期臨床試験及び商用製造への適用に向け、ニプロ株式会社と共同開発契約を締結し、株式会社S-Quatreからの技術移管を進めているとのことである。

◇エクイティファイナンスの依存度低下へ

同社は新株予約権による資金調達を早期に終了し、株式市場において適切に事業価値が評価される環境の整備を進めている。

 バイオシミラー事業の増加運転資金を抑制することに成功したことは前述のとおりであるが、これに加えて2024年12月26日に、第15回及び第18回新株予約権(既存予約権)の買入消却と第23回及び第24回新株予約権(新規予約権)の発行(リファイナンス)を決議し、2025年1月14日付けで新規予約権の発行に伴う払い込みが完了している。発行株数を7.1%縮小し、かつ行使期間を短縮することで早期に資金調達を完了させ、株式希薄化の懸念を軽減する狙いである。

 今後、バイオシミラー事業、細胞治療事業のいずれも事業拡大のために研究開発投資が必要になるが、これに対しては同社単体が前者事業に、連結子会社のS-Quatre社は後者事業に特化し、プロジェクトの優先度を適切にコントロールしながら、資金面に関しては開発パートナー、各種助成金、間接金融等多様な調達手段を柔軟に活用する方針である。

20273月期営業黒字達成への損益ガイダンスと重要な事業イベントが示された

同社は3Q決算説明資料において、2026年3月期及び2027年3月期の業績見通しをレンジで示している。2025年3月期業績予想と併記すると次のとおりである。

2025年3月期 売上高40.0億円、営業損失10.0億円
2026年3月期 売上高45.0-50.0億円、営業損失10.0-20.0億円
2027年3月期 売上高55.0-60.0億円、営業利益1.0-10.0億円(営業黒字化)

想定為替レート:150-160円/ドル

 2026年3月期に関してはバイオシミラーの原価低減が見込めないため増収ながら損失拡大の公算になるが、2027年3月期は営業黒字化を目指す計画である。

しかし、損益以外に重要な事業イベントが以下の通り控えている。

2025年3月期 SHED開発パートナーとの契約締結
2026年3月期 名古屋大学主導のSHED臨床研究中間解析結果発表(2025年9月頃)
新規バイオシミラー等に関する共同事業化契約締結(2025年9月末まで)
SHED開発パートナーによる治験計画届出(同社資料に筆者付記)

 すなわち、2026年3月期は損益的には厳しいものの、事業価値の今後を占う重要なイベントが控えている。為替動向は不確実ではあるが、円高傾向に進めばバイオシミラー事業において確実に利益面へのアップサイド効果が得られ、資金管理の高度化と資金調達手段の多様化に加えて、リファイナンスによる株式希薄化に対する懸念の軽減が図られれば、このようなイベントの成否を株価が素直に織り込んでいく局面にあるといえるだろう。

◇株価動向と今後の注目点

同社の株価は長期にわたり下落基調にあったが、2025年2月に入り反発しはじめ、3Q決算発表後も株価は堅調に推移している。これは、株式市場がこれまでの企業価値向上に向けた取り組みを評価し、事業ポテンシャルに目を向け始め、株式希薄化に対する懸念が後退したからだと言えるのではないか。

 株価が同社の事業価値を適切に織り込んでいくとすれば、当面の注目点は、2025年3月期の業績の着地(上振れの有無)、及び前述の事業イベントの成否となる。

 なお引きつづき為替動向、海外物価動向、及び資金管理の巧拙について一定の留意は必要である。

※ここまで

主要財務データ

単位: 百万円 2019/3 2020/3 2021/3 2023/3 2024/3 2025/3
会社予想
売上高 1,078 997 1,569 2,776 2,431 4,000
EBIT(営業利益) -1,161 -970 -976 -551 -1,336 -1,000
税引前収益 -7,314 -1,000 -550 -656 -1,421  
親会社株主帰属利益 -7,316 -1,001 -551 -657 -1,422 -950
現金・預金 2,033 1,461 1,161 1,067 2,231  
総資産 3,592 3,934 3,470 3,895 5,086  
債務合計 2,575 2,575 2,575 2,575 2,575  
純有利子負債 344 344 344 344 344  
負債総額 2,105 2,324 1,767 2,661 4,254  
株主資本 831 831 831 831 831  
営業活動によるキャッシュフロー -1,325 -1,267 -1,170 -1,421 -454  
投資活動によるキャッシュフロー -137 -22 527 -29 0  
財務活動によるキャッシュフロー 1,222 718 369 1,356 1,618  
フリーキャッシュフロー -1,327 -1,267        
ROA (%) -216.99 -26.61 -14.88 -17.85 -31.67  
ROE (%) -346.86 -64.66 -33.25 -44.78 -137.73  
EPS (円) -264.7 -34.8 -17.9 -20.8 -40.2 -23.7
BPS (円) 53.8 54.4 54.2 38.5 21.4  
一株当り配当(円) 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 27.65 29.06 31.44 31.90 37.31  

出所:同社資料よりOmega Investment 作成、小数点以下四捨五入

 

株価推移

 

四半期トピックス

第3四半期損益実績

出所:同社資料

2025年3月期業績見通し

出所:同社資料

2026年度までの業績見通しと期待される事業イベント

出所:同社資料

財務データ I(四半期ベース)

単位: 百万円 2023/3期 2024/3期 2025/3期
  3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q
[損益計算書]                  
売上高 611 1,049 46 536 985 864 483 1,267 1,286
前年同期比 -5.0% 464.2% -92.5% 6.1% 61.3% -17.6% 950.4% 136.4% 30.6%
売上原価 233 597 1 351 352 688 259 998 748
売上総利益 378 453 45 185 633 176 224 269 538
粗利率 61.8% 43.2% 98.1% 34.5% 64.3% 20.4% 46.3% 21.2% 41.8%
販管費 524 868 500 449 580 845 383 372 414
EBIT(営業利益) -147 -415 -455 -265 53 -669 -159 -104 125
前年同期比 -915.9% 90.4% 1097.7% -638.6% -135.9% 60.9% -65.1% -60.9% 136.8%
EBITマージン -24.0% -39.6% -989.7% -49.4% 5.3% -77.3% -32.9% -8.2% 9.7%
EBITDA -146 -415 -455 -264 53 -668 -159 -103  
税引前収益 -152 -462 -470 -309 35 -676 -176 -65 107
当期利益 -152 -463 -471 -310 33 -675 -177 -65 54
少数株主損益 0 0 0 0 0 0 0 0 0
親会社株主帰属利益 -152 -463 -471 -310 33 -675 -177 -65 54
前年同期比 -141.3% 1.3% 481.4% -909.1% -121.6% 45.9% -62.5% -79.0% 64.4%
利益率 -24.9% -44.1% -1023.6% -57.8% 3.3% -78.0% -36.6% -5.1% 4.2%
                   
[貸借対照表]                  
現金・預金 1,500 1,067 625 622 2,187 2,231 1,167 1,695 1,318
総資産 4,173 3,895 3,044 3,194 5,199 5,086 4,609 4,646 4,575
債務合計 2,075 1,950 1,850 1,775 2,275 2,575 2,402 2,131 2,034
純有利子負債 575 883 1,225 1,153 88 344 1,235 436 715
負債総額 2,485 2,661 2,276 2,119 3,755 4,254 3,895 3,789 3,523
株主資本 1,688 1,234 769 1,075 1,444 831 714 857 1,052
                   
[収益率 %]                  
ROA -16.14 -17.85 -28.50 -37.43 -25.82 -31.67 -29.48 -22.54 -17.65
ROE -34.05 -44.78 -86.81 -100.55 -77.27 -137.73 -152.15 -91.46 -69.11
[一株当り指標: 円]                  
EPS -4.8 -14.4 -14.7 -9.3 0.9 -17.5 -4.5 -1.6 1.3
BPS 52.7 38.5 24.0 30.0 37.6 21.4 18.1 21.1 25.9
一株当り配当 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 31.90 32.06 32.06 37.09 37.31 38.43 39.41 40.66 40.66

出所:同社資料より Omega Investment 作成

 

財務データ II(通期ベース)

単位: 百万円 2014年
3月期
2015年
3月期
2016年
3月期
2017年
3月期
2018年
3月期
2019年
3月期
2020年
3月期
2021年
3月期
2022年
3月期
2023年
3月期
2024年
3月期
[損益計算書]                      
売上高 301 61 1,161 1,089 1,060 1,022 1,078 997 1,569 2,776 2,431
前年同期比 397.8% -79.9% 1817.7% -6.2% -2.7% -3.6% 5.5% -7.5% 57.5% 76.9% -12.4%
売上原価 142 15 501 398 423 413 653 120 553 1,251 1,393
売上総利益 159 45 660 692 637 609 425 877 1,017 1,525 1,038
粗利率 52.8% 74.5% 56.9% 63.5% 60.1% 59.6% 39.4% 88.0% 64.8% 54.9% 42.7%
販管費 672 403 1,480 1,876 1,551 1,414 1,586 1,847 1,992 2,076 2,374
EBIT(営業利益) -512 -358 -820 -1,184 -913 -806 -1,161 -970 -976 -551 -1,336
前年同期比 43.1% -30.1% 129.1% 44.4% -22.9% -11.8% 44.2% -16.5% 0.6% -43.5% 142.4%
EBITマージン -170.0% -591.6% -70.7% -108.7% -86.2% -78.8% -107.8% -97.3% -62.2% -19.8% -54.9%
EBITDA -512 -358 -820 -1,184 -913 -805 -1,161 -969 -973 -550 -1,335
税引前収益 -517 -374 -786 -1,222 -903 -854 -7,314 -1,000 -550 -656 -1,421
当期利益 -519 -377 -788 -1,225 -905 -856 -7,316 -1,001 -551 -657 -1,422
少数株主損益 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
親会社株主帰属利益 -519 -377 -788 -1,225 -905 -856 -7,316 -1,001 -551 -657 -1,422
前年同期比 37.7% -27.4% 108.9% 55.5% -26.1% -5.3% 754.4% -86.3% -45.0% 19.3% 116.3%
利益率 -172.3% -622.9% -67.9% -112.4% -85.4% -83.8% -678.9% -100.5% -35.1% -23.7% -58.5%
                       
[貸借対照表]                      
現金・預金 1,610 887 817 2,380 1,891 2,009 2,033 1,461 1,161 1,067 2,231
総資産 1,887 922 1,694 3,706 3,025 3,151 3,592 3,934 3,470 3,895 5,086
債務合計 775 0 810 0 0 0 1,225 1,100 700 1,950 2,575
純有利子負債 -835 -887 -7 -2,380 -1,891 -2,009 -808 -361 -461 883 344
負債総額 834 34 1,291 206 421 420 2,105 2,324 1,767 2,661 4,254
株主資本 1,053 888 403 3,500 2,604 2,731 1,487 1,610 1,703 1,234 831
                       
[キャッシュフロー計算書]                      
営業活動によるキャッシュフロー -730 -305 -607 -1,759 -438 -860 -1,325 -1,267 -1,170 -1,421 -454
設備投資額 0 0 2 0 0 0 2 3 0 0 0
投資活動によるキャッシュフロー -2 -0 -122 -150 -50 -0 -137 -22 527 -29 0
財務活動によるキャッシュフロー 1,454 907 947 3,472 0 978 1,222 718 369 1,356 1,618
                       
[収益率 %]                      
ROA -36.97 -26.84 -60.21 -45.35 -26.88 -27.73 -216.99 -26.61 -14.88 -17.85 -31.67
ROE -53.51 -38.85 -122.00 -62.74 -29.64 -32.10 -346.86 -64.66 -33.25 -44.78 -137.73
[一株当り指標: 円]                      
EPS -60.0 -59.6 -75.7 -68.5 -47.3 -43.8 -264.7 -34.8 -17.9 -20.8 -40.2
BPS 110.4 106.7 34.9 182.9 136.1 134.3 53.8 54.4 54.2 38.5 21.4
一株当り配当 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 8.59 9.54 10.85 18.74 19.14 19.68 27.65 29.06 31.44 31.90 37.31

出所:同社資料より Omega Investment 作成