Japanese Home
Omega Investment株式会社

シイエヌエス (Company note – 3Q update)

2025年5月期 第3四半期業績は概ね計画線上
創業40周年を記念して年間配当を53%増配

本ページのPDF版はこちら
PDF version

サマリー

  • CNSは、2025年5月期第3四半期累計(6-2月)決算を4月11日15時に発表した。トップラインの数値は、売上高が前年同期比4.1%増、営業利益が同17.9%減、親会社株主に帰属する四半期純利益が同14.5%減となった。これまでの四半期フォローアップレポートでも指摘してきたように、売上高は二桁成長を続ける一方で、今期の利益は以下の理由により減速している。1)今後の成長機会を確実に捉えるために必要なプロフェッショナル人材の確保・維持を目的とした戦略的な給与引き上げを行い、期初から基本給および定期昇給を計画的に10.8%増額した結果、第1四半期の売上総利益率が賃金引き上げや管理職増員、人材育成および採用費の増加、バックオフィス業務アウトソーシング費用の増加などにより押し下げられたこと、2)今期中の再編を見据えた新規コンサルティング事業の縮小による影響である。このため、当初予算は利益を下期に重点配分しており、以下に示す進捗率にはやや遅れが見られるものの、9カ月累計業績は概ね計画通りである。通期業績予想に変更はない。
  • 第3四半期決算における最大のポイントは、第1四半期の落ち込みから第2四半期、第3四半期へと利益が順調に回復していることであり、これはP.2掲載の表のとおりである。四半期ごとの推移は以下の通り。売上高前年同期比:第1四半期▲0.1%→第2四半期+4.2%→第3四半期+8.3%、売上総利益率:第1四半期23.0%→第2四半期24.7%→第3四半期24.9%、販管費率:第1四半期18.1%→第2四半期16.2%→第3四半期14.3%、営業利益率:第1四半期4.8%→第2四半期8.5%→第3四半期10.7%、営業利益前年同期比:第1四半期▲43.6%→第2四半期▲19.5%→第3四半期+3.0%。上記より、利益の明確かつ連続的な回復が進行している。

財務指標

株価 (5/7)1,60325.5    P/E (会予)9.5x
年初来高値 (25/5/1)1,62925.5    EV/EBITDA (会予)1.9x
年初来安値 (25/4/10)1,29424.5    ROE (実績)13.2%
10年来高値 (21/8/20)3,03524.5    ROIC (実績)12.6%
10年来安値 (23/1/17)1,27025.2    P/B (実績)1.22x
発行済株式数 (mn shrs)2.90625.5    DY (会予)4.68%
時価総額 (¥ bn)4.658 
EV (¥ bn)1.312 
Equity ratio (3/31)77.5% 
  • デジタル革新推進事業: CNSの実績が評価されたキャッシュレス決済サービス案件におけるサービス提供範囲の拡大に加え、ServiceNow導入支援案件や生成AI関連案件など既存プロジェクトの体制拡大が、高成長を下支えした。
  • ビッグデータ分析事業: 第1四半期に立ち上がった新規顧客案件に加え、既存プロジェクトの着実な拡大が、高い二桁成長を牽引した。
  • システム基盤事業: CNS独自サービス「U-Way」への需要が継続して増加し、新たに3社のエンドユーザーから受注を獲得した。さらに、地方自治体におけるガバメントクラウド案件開始により、顧客事情によるプロジェクトの凍結・延期の影響を相殺し、第3四半期に成長がプラスへ転じた。
  • 業務システムインテグレーション事業: 経済安全保障関連や証券会社向けシステム構築案件における体制拡大が着実に進み、ERP関連案件において実績構築を目指した取り組みも開始したことで、一部既存顧客向け運用・保守案件の大幅縮小の影響を相殺し始めている。

四半期別事業別売上高推移(単位:百万円)

出所:CNS社IR部門提供の事業別資料より作成
*システム基盤事業には、クラウドとオンプレミスが含まれる

  • コンサルティング事業: 同社では今期中の事業再構築を目指し、組織を大幅に縮小している。同時に、既存プロジェクト向けの人員増強と、新規顧客に対する提案活動を推進している。新たなコンサルティング人材の採用と顧客基盤拡大への取り組みにより、売上総利益は損失を計上した。
  • 創業40周年記念配当の実施: 同社は4月17日、年間配当予想について、26.0円の記念配当を含める49.0円から75.0円(+53%)へ修正することを発表した(詳細と最近の増配推移についてはP6下部のグラフを参照)。
  • 本社移転: 同社は、2月14日に開催した取締役会において本社を東京都品川区に移転することを決議し、2025年10月~11月を目途に移転を目指すと発表した。2025年8月開催予定の第40回定時株主総会において、定款変更の承認を求める議案を提出する予定である。移転理由については、COVID-19感染拡大以降、迅速かつ効率的にオンライン環境への移行と業務の再構築を行い、便利な労働環境を実現してきたが、オンライン環境に起因する課題も増加している。同時に、リモートワークの利便性・生産性向上へのニーズが高まっている。本社移転の目的は、こうした課題への対応、従業員の労働環境最適化、業務成果の向上、積極的なイノベーションの促進、出社意欲を高める職場環境の提供、オンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッドワークモデルの導入による企業価値のさらなる向上にある。
  • 新たな総合型DXコンサルティングサービスの開始: 同社は、2月21日にDX診断・戦略策定から人材育成までを伴走型で総合支援する新たなDXコンサルティングサービスを開始すると発表した。背景として、DXによる企業価値向上の取り組みは道半ばにあり、多くの日本企業が十分な成果を得られていないと報告されている。IPA「DX白書2024」によると、製造業、建設業、流通業、ITC、サービス業などの業種において、全社戦略に基づき全社横断的にDXに取り組んでいると回答した企業は4割未満にとどまり、DX推進には多くの課題が存在していることが示されている。
  • 「ServiceNow ITSMクイックスターターパッケージ」の発売: 同社は4月15日、中堅企業向けに「ServiceNow ITSMクイックスターターパッケージ」を発売したと発表した。同ソリューションは、ServiceNowの導入を最短1カ月で実現できるものであり、ServiceNowのITサービスマネジメント(ITSM)機能の中核であるインシデント管理と問題管理にフォーカスしている。これにより、中堅企業がServiceNowというグローバルスタンダードの導入に際して感じていた導入期間の長さや初期コストの高さといった障壁を解消することを目指している。

株価とバリュエーション

3年間の週足株価チャート、13週/26週/52週 移動平均、出来高とバリュエーションの推移

主要なポイント:
❶ PBRおよびPERは、それぞれ過去の平均を5.0%および5.5%下回る水準である。
❷ EV/EBITDA倍率1.9倍は業界最低水準であり、 過去の平均を4%下回っている。
❸ 3.39%の予想配当利回りは、まだ配当を行っていない企業もある同業他社の中でも最高水準であり、過去の平均を13%上回っている
➡次ページの東証マザーズ指数を用いた東証グロース市場の流動性の低さを考慮しても、CNSの株式バリュエーションはすべて上場来レンジの下限で取引されており、その底流にある強固な収益性や今後4~5年間に2桁成長が続く見通しとは齟齬がある。

主要顧客およびパートナーの株価に対する3年間の株価パフォーマンス

注:累進配当方針は年間配当に適用され、記念配当は含まれまない。

株主還元方針
大手システムインテグレーターとの信頼と実績、および継続的な関係を基盤に、ICT業界の変化を素早く捉え、新しい分野への挑戦を積極的に展開することで事業を拡大 → これらの事業特性により、CNSは安定した収益を確保できる。株主とともに持続的な成長を実現するため、利益成長に応じた増配を基本とする積極的な配当政策を継続し、目標配当性向は30%以上としている。

オメガ・インベストメントが考えるCNSへの投資の魅力

オメガ・インベストメントは、CNSが小型成長企業の中でも、いずれ発掘されるべき稀有な隠れた宝石であるとみている。会長と社長が大株主であり、株主と直接利害が一致していることは心強い。さらに重要なのは、経営陣が予想が難しい契約ベースの受注に依存しない高マージンへの利益構造の転換など、現在のDX主導の高成長市場から、市場環境に左右されない持続可能な成長への着実な移行を確実にするための措置を講じていることだ。