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Omega Investment株式会社

フジクラ (Price Discovery)

Sell

Profile

 電線大手3社のうちの1社。情報通信部門は光ファイバ、ネットワーク機器、産業用裸アルミ線、エナメル線などを製造。エレクトロニクス部門はプリント配線板、メンブレンスイッチ、コネクタ、センサなどを製造。自動車部門ではワイヤーハーネス、自動車部品などを販売。1885年に藤倉善八氏により設立。事業別売上高比率% (OPM %): 情報通信 37 (13)、エレクトロニクス 21 (10)、自動車 22 (1)、エネルギー 17 (6)、不動産 1 (46)、他 1 (-12)【海外】72 <FY3/2024>

証券コード
東証PRM:5803
時価総額
1,559,792 百万円
業種
非鉄金属

Stock Hunter’s View

AIデータセンタ向け需要が旺盛。生産能力の増強前倒し、追加増産も。

 電線御三家の一角であるフジクラはAIデータセンタ向けの光配線部品、光ケーブル等の需要が旺盛。

 生成AI関連のデータセンタは従来型に比べて多くの光配線部品が必要であり、業界全体で需要好調が続いている。米ハイテク企業の決算内容からもAI投資の勢いが止まる気配は無く、同社への追い風も当面続くとみられる。

 11月7日発表の第2四半期(4~9月)決算は売上高4475億3900万円(前年同期比14.2%増)、営業利益551億4100万円(同79.2%増)だった。同時に通期予想を上方修正し、営業利益について従来の890億円から1040億円(前期比49.7%増)へと引き上げた。一方、下期の為替前提を1ドル=140円とするなどやや保守的な印象であり、情報通信が牽引役となって一段の利益上乗せが期待できる状況にある。

 同日の決算説明会では、生産能力増強の前倒しや追加増産の方針が示された。会社側は生成AIサーバー向け需要について「少なくとも当面は強い」との見方であり、需要の好調が続けば2025年以降も適宜生産能力の増強を図るとしている。

 

Investor’s View

Sell。AI投資ブームは株価の好材料だが折込み済み。歴史的に同社は低採算で、優れた事業ではない。ブームを追う設備投資サイクルにより利益率は低下するだろう。資本効率を重視した経営陣の目標は市況頼みであり、高い株主資本比率にこだわる姿勢は投資家の求める姿ではない。

 同社株価は年初来で4倍に上昇している。この暴騰を追うべきであろうか?PBRは昨年末まで長らく1倍程度であったが足元では4.5倍まで拡大している。表層的には、ROEがここ数年間で15-20%のレンジに達しBPSが飛躍的に拡大したことに、生成AIによる恩恵というセマティックインタレストが重なって株価が暴騰したと捉えられる。

Price

PBR

PER

ROE

EPS

BPS

 2020年3月期の底からのPL利益率の劇的な上昇には目を見張るものがある。つれてROEのレンジは大きく切り上がり、また、2022年3月期に至るまで赤字であった経済価値も良好に創出されるようになった。考えるべき点は、目下の高い利益率が今後も維持されるかどうか、だろう。この点に関してはまず。AI投資による光配線需要は同社に大きな恩恵となろうが、このブームの長さや大きさ、サイクルの予想は容易ではない。また、同社の中計によれば設備投資はこれから本格化する見込みで、あらたな償却負担増サイクルに入る。斬新な生産性改革がなければEBITマージンを下押ししよう。

 PLの利益率が劇的に改善したとはいえ、恒常的な低採算が製造業としては普通程度に回復したという点に留意したい。過去20年間のEBITマージンは4.3%、税後利益マージンは1.4%である。同社が優れた製造業であるとは思えない。

 経営陣はROICスプレッドを拡大させることを3年間の目標であると中計にうたっている。営業利益率と資産回転率をあげることでROICを向上させるという予想の一方で、3年後も自己資本比率は50%程度とみている。経営陣のレバレッジの取り方は過剰であり、何を恐れて資本利益率を犠牲にするのか疑問である。