証券コード |
マザーズ:2158 |
時価総額 |
52,186 百万円 |
業種 |
サービス |
本稿では投資家の疑問と期待を簡単に整理して、投資戦略の一考としたいと思います。事業の細かい点については他の資料を参照してください。お薦めは会社HPの守本社長の動画決算説明です。図表やデータも豊富です。
まず、Fronteoには主要な収益源が三つあることを念頭においておくと理解しやすいはずです。ライフサイエンス AI、 ビジネスインテリジェンス、 リーガルテックです。会社は前者2つをまとめてAIソリューションと呼んでいます。さらにライフサイエンス AIを AI 診断と創薬(drug Discovery) に、リーガルテックをKIBIT活用によるリーガルテックAIと従来型のビジネスとに分割し、売上高を開示しています。
Conclusion
Fronteoの株価は2020年の3ヶ月間に6倍近く上昇し、バイオサイエンス銘柄並みの高いマルチプルを得て、株式市場で高く評価されています。経営陣の目標は、 AI ソリューションを推進することで、ステージ4で売上300億円、営業利益60億円を達成することです。しかし、それがいつなのかは明らかにされていません。2021年3月期の売上高は105億円、営業利益は5億円でした。ROEは9.5%と好調、BPSは114円でした。現在の時価総額は約400億円です。会社が長期目標を達成し、その時点で株価が20倍のPERで評価されれば、時価総額は700億円強です。ステージ3は6年かかりました。ステージ4も6年先だと仮定すると、目標達成は2027年3月期です。大雑把な試算ですが、今のPBRが変わらず、株価はBPSの成長だけを反映すると仮定するなら、時価総額はROEが11%に維持されるなら6年後に倍になります。PBRが5倍にディレートされるなら、ROEは20%を超えている必要があります。機関投資家が中長期に明るい見通しを立て、当社株式の購入保有にある程度の自信を持てるようになるには情報はまだ不足していると感じます。しかしながら、Fronteo株式は長い年月を経るうちに大きいリターンを得る可能性もある銘柄だとはいえるでしょう。
年度 | 売上高 (百万円) | EBITDA (百万円) | EPS (円) | PER (CE)(倍) | PBR (倍) | ROE (%) |
---|---|---|---|---|---|---|
3/18 | 12,218 | 1,369 | -22 | 0.0 | 8.9 | 0.0 |
3/19 | 11,262 | 1,216 | 1 | 1,489.5 | 4.7 | 1.2 |
3/20 | 10,471 | 0 | -24 | 0.0 | 2.5 | 0.0 |
3/21 | 10,370 | 1,469 | 9 | 3,191.5 | 7.1 | 9.5 |
Thoughts on the long term
ここ最近、守本社長はFronteoを全社的なAI事業に転換し、ソリューション事業を拡大することで事業拡大が進むと投資家に熱心に語っています。一言で言えば、コアビジネスはこれから労働集約的な従来のリーガルテックからAIビジネスに移行する、ということです。その成果はすでに業績に表れています。
守本社長の説明では、ステージ4で3事業はそれぞれ100億円の売上げとなります。ライフサイエンスは営業利益率30%で営業利益30億円の貢献、ビジネスインテリジェンスは営業利益20%で営業利益は20億円、リーガルテックは営業利益率10%で10億円の営業利益をあげます。全社合計では営業利益率20%、営業利益率60億円を達成します。ライフサイエンスのドライバーは、国の医療保険収載を狙う医療機器であり、そうなれば爆発的な売上成長につながります。ビジネスインテリジェンスでは、顧客数が現在の200社から400社に倍増し、1社あたりの売上高は3倍に増加すると見込まれます。そのために、製品数を増やしながら単価を引き上げていきます。リーガルテックはAI製品の割合を現在の19%から100%に引き上げることで売上だけではなく営業利益率も引き上げます。
会社資料に基づいて、ステージ4を6年後と想定して、会社の売上と市場規模を数字にしてみました。数値はステージ4の目標から計算された成長率を掛けただけの単純な計算です。実際には非線形の展開となるでしょう。一見すると、AIソリューションの市場拡大は魅力的で、年率24%で成長していきますが、Fronteoは2026年度の目標を達成するために自社のAIソリューションを40%以上成長させる必要があります。ライフサイエンスでは50%の成長率が必要ですから、かなり高いハードルです。一方、リーガルテックの100億円の目標はかなり保守的に見えます。
Revenue Simulation for Fronteo
FY (million yen) | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020A | 2021Co | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 6YR CAGR % |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AI Solution | 120 | 311 | 910 | 1,427 | 1,353 | 2,124 | 2,560 | 3,578 | 5,017 | 7,056 | 9,954 | 14,087 | 20,000 | 41 |
Life Science | 461 | 860 | 1,294 | 1,948 | 2,933 | 4,414 | 6,644 | 10,000 | 51 | |||||
Business Intelligence | 1,662 | 1,700 | 2,284 | 3,069 | 4,123 | 5,540 | 7,443 | 10,000 | 34 | |||||
Legal Tech | 10,433 | 10,896 | 11,307 | 9,865 | 9,117 | 8,245 | 7,940 | 8,251 | 8,575 | 8,911 | 9,260 | 9,623 | 10,000 | 4 |
Legal Tech AI | 1,170 | 1,547 | 2,500 | |||||||||||
Non-AI | 7,947 | 6,698 | 5,440 | |||||||||||
Total Sales | 10,553 | 11,207 | 12,217 | 11,292 | 10,470 | 10,370 | 10,500 | 11,830 | 13,592 | 15,966 | 19,214 | 23,710 | 30,000 | 19 |
Market Size Forecast
(100mn US $) | Sub-segment | Region | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | 6YR CAGR % |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
AI Solution | 223 | 262 | 310 | 372 | 451 | 556 | 694 | 881 | 1,135 | 24 | ||
Life Science | 147 | 176 | 213 | 262 | 328 | 416 | 537 | 703 | 934 | 28 | ||
AI Diagnosis (AI診断) | Global | 36 | 52 | 75 | 108 | 156 | 224 | 323 | 464 | 668 | 44 | |
Drug Discovery | Global | 111 | 124 | 138 | 154 | 172 | 192 | 214 | 239 | 266 | 12 | |
Business Intelligence | Digital Transformation | Japan | 76 | 86 | 97 | 109 | 123 | 139 | 158 | 178 | 201 | 13 |
Legal Tech | eDiscovery | Global | 112 | 127 | 143 | 161 | 182 | 206 | 233 | 263 | 297 | 13 |
Fronteo Market Share
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | 2025 | 2026 | 2027 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Life Science | 0.02% | 0.04% | 0.04% | 0.05% | 0.06% | 0.07% | 0.09% | 0.10% |
Business Intelligence | 0.18% | 0.16% | 0.19% | 0.23% | 0.27% | 0.32% | 0.38% | 0.45% |
OP by Segment
(million yen) | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 Co |
---|---|---|---|---|---|---|
AI Solution | -715 | -282 | 97 | -178 | 286 | 360 |
Legal Tech | -491 | 460 | 119 | -665 | 220 | 240 |
Total OP | -1,206 | 177 | 216 | -844 | 507 | 600 |
AIソリューションの売上高は、2018年度から大幅に増加し、2020年度の連結売上高の13%を占めています。この事業の営業利益は前年の赤字から黒字に転じ、13%の営業利益率を記録し、見違えるような改善です。投資家にとってより重要なのは、AIソリューションとリーガルテックセグメント内のAIビジネスであるKBIT活用案件の合計売上高が前年比で40%以上増加し、連結売上高の36%を占めたというという事実です。株式投資を考える上での大きな要因ですので、社長がこの指標をあまり強調しないのは、少し不思議に思えます。
投資家は以前には、Fronteoのコアビジネスであるリーガルテックは、厳しい経営環境により近年低迷しているとみており、AIによる成長はあるのかもしれないが会社全体は脆弱で、先行きを楽観的に考えるべきではない、と感じていました。リーガルテックは利益を生み出すが、成長の機会は見当たらないという見方です。現在は、KIBIT Automatorと呼ばれる独自のAIソリューションを拡大しており、リーガルビジネスもAI比率を高め、売上と利益の両方を成長させる戦略です。この成果も顕著になってきています。ちなみに、東芝(6502)のコーポレートガバナンスを巡って、2021年6月10日に提出された第三社委員会の報告書は、Fronteoの AI解析手法を採用して、三人の弁護士が52万通のメールと25万件の添付文書のフォレンジック調査を行って作成したものでした。
KBITはリーガルテック事業でFronteoが開発したAIで、2015年11月に発表されました。大まかに言えば、このAIを他の分野に適用した事業がAIソリューションであり、KBITは当社のAI技術の基盤といえます。技術。医療および創薬のためのライフサイエンスAI、金融および製造業向けのビジネスインテリジェンスは、AIテクノロジーを使用して運用されています。当社のAIの特徴は言語に特化していることです。さらに、少量の教師データと少量のコンピュータパワーのみを必要とし、非常に正確です。リーガルテックには大量のドキュメントを処理するステップがあり、弁護士のコストは法外に高くなっています。 KIBITを使えば、そのままドキュメントを教えることができ、KIBITは単語の順序や特徴を捉え、少量の教師データで分析します。
Bulls
Bears
Shareholding situation
機関投資家は昨年以来の株価高騰を受けてポジションを売却し、二名の大口個人投資家も合計23万株弱の持分を売却しました。その後は少数の機関投資家が若干購入したのみで、一概に機関投資家は、株価急騰後の高いバリュエーションではエントリーしづらいと考えているところでしょう。インサイダーを除いて、ほとんどの株式は個人が所有していると推定されます。そのため、当面、株価は目先のニュースフローに左右されやすいでしょう。株価がタイムリーに値下がりしたり、刺激的な好材料が出てきた時にすぐ株式を買えるよう、会社について理解を深めておきたい投資家は少なくないと察します。外国人株主も少ないようです。四季報によれば2018年3月の外国人保有比率は12.5%でしたが、2021年3月には1.98%でした。昨年の3月には1.2%でしたから若干増加しています。
現在の株主構成は、機関投資家が1.2%、インサイダーが36.4%であり、そのうち25.1%が守本社長をはじめとする個人、上場会社であるフォーカスシステムズ(4662)と学研ホールディングス(9470)の合計持分10.3%、非上場会社と従業員持株会の微少な持分で構成されています。残りの62.4%は主に個人によって所有されていると推定されます。浮動株比率は63.5%で、うち1.9%が機関投資家の持分です。
2021年の年初からの半年で、上位の機関投資家が株式を売却した結果、2019年3月期に10%を超えていた機関投資家の持分は現在1.2%となっています。 ある大口の1社は180万株全てを売却し、またもう1社は大きくポジションを減らしました。経営陣ではない個人株主としてはトップ2であった白石氏、野崎氏はそれぞれ11万株、11万7000株を売却しました。株価急騰後の唯一の機関投資家は、昨年中に205,000株を購入した日本の資産運用会社であり、現在、0.52%の株主として機関投資家の株式の半分未満を占めています。2020年12月には第三者割当てがあり、以前から株主であったフォーカスシステムズ(4662)と学研ホールディングス(9470)が766円の価格で合計104万株を取得しました。その前の新株発行は2014年9月で、ドイツ銀行ロンドン支店が1155円で100万株を取得しています。これまでに、資本市場での資金調達は活発ではなかったという印象です。
Business
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