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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company note – 1Q update)

株価(5/31)204 円予想配当利回り(23/12予)ー %
52週高値/安値261/135 円ROE(TTM)-67.48 %
1日出来高(3か月)1,234 千株営業利益率(TTM)-199.53 %
時価総額98 億円ベータ(5年間)1.87
企業価値86 億円発行済株式数 48.503 百万株
PER(23/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/12実)6.38 倍
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創薬支援事業が拡大し増収、営業損失は縮小。
CBA–1205の導出価値最大化に向けて計画を延長予想

2023/121Q決算サマリー

 カイオム・バイオサイエンス(以下、同社)の2023/12期1Q決算は、創薬支援事業の売上が好調で3割の増収、営業損失は縮小した。同社の主要事業である創薬事業においては、CBA–1205の臨床第1相試験後半パートで部分奏功が確認される等、導出に向けて明るいニュースが公表されている。同社では、導出時の価値を一層高めるべく、更なる臨床開発を進めてゆく考えである。

 同社株価は、2022年9月28日の136円をボトムに上昇傾向が続いてきたが、1Q決算発表の翌日(5月12日)には、前日比 12.4%上昇した。創薬企業は短期間で結果を出すのは難しいが、臨床試験が進展しポジティブな兆候が出ていることに対しての評価といえよう。同社では、導出契約締結に向けて営業活動も続けており、遠くない将来での契約一時金計上の可能性も見えてきた。引続き、創薬パイプラインの進捗状況に注目したい。

2023/121Q決算実績:創薬支援事業において 3割増収

 同社の2023/12期1Q決算は、売上高 169百万円(前年同期比 31.8%増)、営業損失 225百万円(前期は 486百万円の営業損失) 、当四半期純損失 227百万円(前期は 492百万円の当期純損失)となった 。今1Qは導出一時金やマイルストーン収入といった創薬事業に関連する売上は計上されず、創薬支援事業の売上のみとなったが、同事業は順調に伸長している。

 創薬事業の各パイプラインの進捗状況等は次頁の図を参照。それぞれのパイプラインは順調に進行しているが、2023/12期1Q中の売上は計上されていない。臨床開発の進展により、研究開発費 193百万円を計上。CMC費用が減少した結果、前年同期比 252百万円減少した。その結果、同事業のセグメント損失は、研究開発費に相当する 193百万円となった。

 創薬支援事業は、同社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムを中心とした、抗体作製技術プラットフォームを活かした抗体作製業務や抗体の親和性向上業務、たんぱく質調製業務を受託し、国内の主要製薬企業における抗体医薬にかかる研究支援を展開。創薬支援事業による安定的な収益の獲得が、創薬事業の研究開発費確保の一助となっている。同事業は、着実に取引件数、案件数を拡大しており、2023/12期1Qの売上高は 169百万円(前期比 40百万円増加)、セグメント利益は 95百万円(25百万円増加)となった。セグメント利益率は 56.6%と目標である50%をクリアしている。

 BSにおいては、2023年3月末の総資産は 2,085百万円。 2022年12月末比 129百万円減少した。現預金は 1,566百万円(2022年12月末 1,727百万円)。総じて、2022/12期末と比較して、大きな変化は見られない。

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12 630 -11.5 -1,258 -1,243 -1,242 -28.26
2023/12(会予)
2022/12 1Q 128 -47.8 -486 -491 -492 -11.66
2023/12 1Q 169 31.8 -225 -227 -227 -4.70

注:同社の業績予想は、創薬事業における合理的な業績予想の算定が困難であるとして、創薬支援事業の数値(売上高 640百万円)のみ公表している

創薬事業パイプライン

2023年5月11日時点
出所:2023年12月期第1四半期決算補足資料(2023年5月11日)

パイプラインの進捗状況 CBA–1205の導出価値最大化に向けて計画を延長

<自社開発品>

*CBA–1205;臨床第1相試験において、ポジティブな兆候を確認。開発計画を変更へ

 CBA–1205は、国立がん研究センターにおいて、固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートを実施。また、後半パートにおいては、肝細胞癌の患者を対象として、試験を行なっている。既に、前半パートでは、高い安全性が確認されているが、登録されたメラノーマの患者において腫瘍縮小を伴うSD(安定)評価が続き18ヶ月以上の継続投与が確認され、現在も投与を継続中。また、後半パートで登録された肝細胞がん患者1例においてPR(部分奏功:30%以上の腫瘍縮小)を確認。長期投与症例に対応すべく治験薬の追加製造に着手することとした。また、本剤の治療薬としてのポテンシャルを検証するため、PR症例と本剤投与の科学的な関連性を解析することを目的とし、治験登録患者さんの選定基準厳格化し及び治験期間の延長を決定した。但し、導出見込みのスケジュールの変更はない。

 同社では、それぞれのパイプラインの導出活動において、早期の導出を図るもの、あるいは社内での研究開発活動を進め、より多くの症例を獲得することにより導出時の経済価値を高めるもの、とに分けて開発を続けていこうとしている。CBA–1205については、後者として、導出一時金の最大化を狙うとしている。

CBA–1205 臨床開発

出所:2023年12月期第1四半期決算補足資料(2023年5月11日)

CBA–1535;臨床第1相試験前半パート(単剤)

 同社は2022年2月、PMDAに治験計画届を提出、6月末より国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院及び静岡県立静岡県がんセンターの2施設において、臨床第1相試験の投与を開始している。臨床第1相試験前半パートにおいて、固形がん患者を対象に安全性評価及び薬効シグナルの評価を実施。低容量から段階的に投与し、安全に投与できる最大量を求め、初期の薬効シグナルを評価する。後半パートにおいては、がん免疫療法薬との併用による効率的な薬効評価を行う。前半パートは2024年前半まで続く予定だが、後半パートを2023年中頃から並行して実施することにより 、安全性及び有効性を最速で確認することを目的とした開発計画を立てている。

 CBA–1535はTribodyTMとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する TribodyTMの適用の可能性が広がることとなる。結合する標的や結合する手の数の組み合わせにより、通常の抗体以上の効果や、複数薬剤の併用投与により、1剤の投与のみで複数の薬効が期待されることから、患者のQOLや、医療経済的メリットが期待される。

<導出品>

LIV-1205;スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。ADCTが米国国立がん研究所(NCI)と共同で、神経内分泌がんを対象とした臨床試験に向けて準備を進めており、2023年中に臨床入第1相試験を開始予定。ADCT社の財務状況を鑑み、同試験の開発主体はNCIが担うこととなった。

<導出候補品>

PCDCADC用途を中心とした導出活動の推進、並びに動物試験データを蓄積中。ADCとしてパイプラインを拡充したい製薬企業、及び独自のADC技術を有するADC用の抗体が欲しい製薬企業を、導出戦略・ターゲットとして、国内外のカンファレンス等でコンタクトを進めている。

PTRY;新規パイプライン。新たな分子の組み合わせにより強活性のTribodyTM抗体を創生。「5T4xCD3xPD–L1」を標的とする「PTRY」を新規パイプライン化した。イタリアの公的研究機関 Ceinge–Biotechnologie Avanzateと行ったがん免疫療法に関する共同研究の成果を、国際的な学術雑誌である Journal of Experimental & Clinical Cancer Research誌に掲載。同共同研究によって得られた成果についての特許出願を完了している。肺がんモデルでの in vivo 薬効データにおいて、強い腫瘍増殖抑制効果を発揮することが確認されている。

◇創薬支援事業の進捗:国内大手製薬企業と新たに委受託包括契約を締結

 創薬支援事業は、前述のとおり 今1Qにおいて 3割増収、169百万円の売上高を計上した。国内大手製薬企業より同社の技術サービス力に対する高い評価を獲得しており、既存顧客との取引が着実に伸長。また、具体的な企業名は明かされなかったものの、国内大手製薬企業と新たな委受託包括契約を締結。新たな顧客とのスポット取引も開始した。

2023/12期通期見通し:現状、変更なし

 2023/12期の業績見通しに関して、同社では継続的な収益が見込まれる創薬支援事業の売上のみを 640百万円と公表している。費用面では、今まで通り各パイプラインの進捗に伴い、臨床試験費用や治験薬製造費用が嵩むこと等により、研究開発投資は年間10数億円程度の支出が続く。創薬事業において、導出一時金等の収入が見込まれない場合は、相応の損失を計上することとなろう。 1Q決算発表時において、通期見通しに関しての修正は無い。

◇株価動向:今後のパイプラインの価値向上と導出一時金の可能性を注視

 同社株価は、2022年9月28日の136円をボトムに上昇傾向に転じた。2023/3期1Q決算発表の翌日(5月12日)には、前日比 12.4%と大幅な上昇を記録。創薬支援事業で新たな顧客との取引が開始されたことが公表されたことに加え、CBA–1205の治験におけるポジティブ・ニュースを好感した結果と推測される。同社では、 CBA–1205において複数の症例を獲得し、経済価値を高めることにより、導出一時金の最大化を狙う計画。その他の創薬パイプラインにおいても研究開発は順調に進展しており、同社のパイプライン全体の経済価値も着実に向上していると考えられる。研究開発活動や臨床試験と合わせて、導出のための営業活動も積極化しており、遠くない将来での導出一時金獲得を期待し、引続き、今後の展開を注視したい。

株価推移(直近4年間)

相対チャート、4583、TOPIX(直近3年間)

財務データ

 
2020/12
   
2021/12
   
2022/12
   
2023/12
 
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
損益計算書
                         
売上高
91
82
139
169
246
139
157
171
128
149
156
197
169
 創薬事業
1
1
0
1
103
0
0
0
0
0
0
0
0
 創薬支援事業
90
82
138
168
143
138
157
171
128
149
156
197
169
売上原価
61
46
59
70
64
62
78
86
57
69
72
83
73
売上総利益
30
36
80
99
182
77
79
84
70
80
84
114
95
販売費及び一般管理費
456
346
424
303
337
337
515
568
557
373
344
334
321
 研究開発費
343
266
342
206
216
243
401
451
446
245
225
219
193
営業利益
-426
-310
-344
-204
-155
-260
-436
-483
-486
-292
-260
-220
-225
営業外収益
2
0
3
0
7
0
2
4
0
16
0
5
0
営業外費用
0
2
10
1
1
0
1
6
4
1
1
-1
1
経常利益
-425
-311
-351
-205
-150
-259
-434
-486
-491
-278
-261
-214
-227
特別利益
 
 
0
0
 
 
 
0
   
6
0
1
特別損失
 
 
 
 
 
 
 
           
税引前当期純利益
-425
-310
-351
-205
-149
-247
-433
-636
-491
-278
-255
-214
-226
法人税等合計
1
0
1
1
11
1
1
0
1
2
1
1
1
当期純利益
-425
-311
-352
-206
-161
-248
-434
-637
-492
-279
-257
-215
-227
                           
貸借対照表
                         
流動資産
2,309
2,805
3,316
3,249
3,294
3,088
2,675
2,216
2,005
1,792
1,955
2,092
1,964
 現金及び預金
1,967
2,472
2,881
2,686
2,580
2,302
2,071
1,790
1,744
1,471
1,592
1,727
1,566
固定資産
247
249
249
246
244
241
274
122
121
128
126
123
120
 有形固定資産
10
9
8
7
6
6
4
4
3
3
2
2
2
 投資その他の資産
237
240
241
238
237
235
269
118
117
124
122
120
118
資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
流動負債
315
427
378
343
378
428
468
392
419
390
376
370
469
 短期借入金
142
199
199
180
180
190
199
183
183
188
188
184
304
固定負債
42
42
42
42
42
42
53
53
53
54
54
54
54
負債合計
357
469
420
385
420
470
522
446
473
444
431
424
523
純資産合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,893
1,653
1,476
1,650
1,790
1,562
株主資本合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,857
1,621
1,445
1,631
1,777
1,549
 資本金
6,133
846
1,303
1,388
1,471
1,471
1,472
1,515
1,642
1,695
1,916
2,097
2,097
 資本剰余金
6,123
2,446
2,903
2,987
3,071
3,071
3,072
3,115
3,242
3,295
3,516
3,696
3,696
 利益剰余金
-10,080
-736
-1,088
-1,294
-1,455
-1,703
-2,136
-2,773
-3,262
-3,544
-3,801
-4,016
4,244
 新株予約権
24
30
28
29
30
19
19
35
31
30
18
13
12
負債純資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
                           
[キャッシュ・フロー計算書]
                         
営業活動によるキャッシュ・フロ
 
-528
 
-1,361
 
-560
 
-1,131
 
-660
 
-1,191
 
 税引前当期純損失
 
-734
 
-1,290
 
-396
 
-1,466
 
-768
 
-1,237
 
投資活動によるキャッシュ・フロ
 
 
 3
 
 
-35
 
 
 
 有価証券の取得
 
 –
 
  –
 
 –
 
 –
 
 
 
財務活動によるキャッシュ・フロ
 
894
 
1,944
 
176
 
271
 
341
 
1,127
 
 株式の発行
 
697
 
 1,769
 
166
 
253
 
336
 
1,126
 
現金及び現金同等物の増減額
 
366
 
580
 
-384
 
-895
 
-319
 
-63
 
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,105
 
2,105
 
2,686
 
2,686
 
1,790
 
1,790
 
現金及び現金同等物の期末残高
 
2,472
 
2,686
 
2,301
 
1,790
 
1,471
 
1,727
 

(単位:百万円)
注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ前4Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成