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Omega Investment株式会社

HYUGA PRIMARY CARE (Price Discovery)

Wait and See

 高ROEとトップライン成長は魅力だが、ROICの急低下と将来収益性への不透明感から投資判断は慎重。

Profile

在宅医療・介護分野における多角的サービスを展開する新興企業。

 HYUGA PRIMARY CAREは、在宅訪問薬局(きらり薬局)を基盤に、M3グループの出資を受けつつ、薬局支援事業(きらりプライム)や住宅型有料老人ホーム(プライマリケアホーム)を展開する。薬剤師による365日体制の訪問調剤に加え、施設運営やIT支援などを組み合わせた多層的な事業ポートフォリオを形成している。FY2025/3の売上高は99.8億円(+20.5% YoY)、営業利益は10.5億円(+48.0% YoY)と成長を維持。事業別売上比率(営業利益率):在宅訪問薬局 71%(9%)、きらりプライム 13%(61%)、プライマリケアホーム 16%(12%)、その他 0%(-744%)。

証券コード
東証GRT:7133
時価総額
10,705 百万円
業種
小売業

Stock Hunter’s View

在宅医療・介護時代に対応した地域包括ケア。訪問薬局・運営支援が好調。

 HYUGA PRIMARY CAREはエムスリー(2413)の持ち分法適用関連会社で在宅訪問薬局サービスを展開。調剤薬局「きらり薬局」を拠点に、薬剤師が患者の自宅や入居施設を訪問、処方箋に基づき調剤した医薬品を届けたり服薬指導などを行う。

 訪問・オンライン服薬指導、365日配達の「在宅訪問薬局事業」のほか、同事業で培ったノウハウやシステムを中小薬局に提供する「きらりプライム事業」、定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスを行う住宅型有料老人ホームを運営する「プライマリケアホーム事業」で構成され、2025年3月期はきらりプライムが創業以来初の全社で最大の利益貢献事業となり、在宅訪問薬局事業から主役交代。薬局運営企業に対して高齢者施設建設・運営に関するコンサルティングサービスを提供するリージョンプライム案件の獲得により、同事業は売り上げ・利益ともに四半期ベースでの過去最高を更新した。

 2026年3月期業績は売上高121億9400万円(前期比22.1%増)、営業利益13億1400万円(同25%増)と、前期の20%増収、48%増益に続く2ケタ成長を計画。施設数拡大に伴い、下期からプライマリケアホームの売上高が大きく伸びる。きらりプライムは前期の反動からいったん調整も、パッケージプランの付加価値拡大で営業利益は高水準を維持する見通し。

 

Investor’s View

高ROEとトップライン成長を備えながらも、急低下するROICが株価の重し。

 HYUGA PRIMARYの予想PERは12.2倍、PBRは4.44倍であり、予想ROEは37.1%である。市場が織り込んでいるEPS成長率は+0.7%にとどまり、中長期の成長力については慎重な見方が支配的であると読み取れる。

 このような乖離が生じている背景には、足元の収益モメンタムは強い一方で、ROICが急低下し、資本効率が大きく悪化しているという事実がある。プライマリケアホーム事業への積極投資により、借入による資産取得が進み、総資産回転率が2.4回から1.3回へと大きく低下した。ROICマージンの低下は経済価値の毀損を意味し、同事業への経営陣の足早な傾斜が市場の慎重な評価の根拠となっている。

 プライマリケアホームの収益見通しは未だ不透明であり、投下資本拡大が将来的にリターンをさらに希薄化させるリスクを孕む。短期的には利益成長が続くものの、中長期ではROICとトップライン成長のバランスをどう取るか、経営陣の方針と実行力が厳しく問われる局面に入っていると見るべきであろう。

収益モメンタムは強いが、資本効率の悪化が評価の重石に。

 HYUGA PRIMARYは、FY2025/3において前年比20.5%の増収、48.0%の営業増益を達成し、主要3事業すべてで収益を伸ばした。特にきらりプライム事業は構成比13%ながら営業利益率は61%に達し、全社利益の中核を担う。プライマリケアホーム事業も3棟目の施設開業により黒字転換し、売上・利益ともに高成長となった。

 一方で、急速な設備投資に伴う資本効率の低下が鮮明となっている。総資産は前年比+696百万円の7,051百万円となる一方、総資産回転率は大幅に低下。ROICも落ち込んだ。これは、施設取得のための借入によって投下資本が膨張し、利益成長が資本コストを上回っていないことを意味する。

 FY2026/3は売上121.9億円(+22.1%)、営業利益13.1億円(+25.0%)と2桁成長を計画しているが、きらりプライムの伸長が鈍化し、プライマリケアホームの収益性が読みにくい中、投資対効果への疑念は払拭されていない。


株主構成

創業者とM3グループによる安定支配構造。流通株比率は限定的。
 筆頭株主は創業者である黒木哲史氏(資産管理会社保有を含めて31.15%)であり、CUC(11.55%)、M3(9.61%)、M3キャリア(6.87%)などの関連企業がこれに続く。経営陣および関係先を含めた持株比率は概ね60〜65%に達し、加えて自己株式2.02%を含めると、実質的な浮動株比率は20%を下回ると推定される。

 機関投資家の保有はAsset Management One(4.42%)を除くと小口に分散しており、ガバナンスや流動性確保の面では限定的な役割にとどまっている。

Financials and Valuations

Price

PBR (LTM)

PER (LTM)

ROE (LTM)

EPS (LTM)

Dividend Yield (LTM)