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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company note – 2Q update)

株価(9/20)152 円予想配当利回り(23/12予)ー %
52週高値/安値261/135 円ROE(TTM)-86.66 %
1日出来高(3か月)3,342 千株営業利益率(TTM)-160.13 %
時価総額75 億円ベータ(5年間)0.91
企業価値65 億円発行済株式数 49.323 百万株
PER(23/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/12実)6.51 倍
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引続き創薬支援事業が拡大傾向。
各パイプラインも順調に進捗

2023/122Q決算サマリー

 カイオム・バイオサイエンス(以下、同社)の2023/12期2Q決算は、引続き創薬支援事業の売上が好調、前年同期比約3割の増収に。営業損失は縮小した。また。同社の主要事業である創薬事業においては、各パイプランが着実に進捗。更に、新規パイプラインとして自己免疫性神経疾患等の病態進行を抑制する治療用抗体 PFKRを加えた。目先一番の導出候補であるCBA–1205の臨床第1相試験後半パートも着実に進行しており、複数のPR症例(部分奏功:30 %以上の腫瘍縮小)の獲得による導出契約締結が期待される。

 同社株価は、決算発表などのイベントによりボラタイルな動きを示してきたが、このところは150円台をボトムとした展開が続いている。周知の如く、創薬事業は短期間で結果を出すのは難しく、各パイプラインの進捗、導出の可能性を見極めることが重要である。その中で、CBA–1205の治験においては、ポジティブな兆候が多く見られている。今後の導出時の価値最大化が期待でき、遠くない将来での導出一時金計上の可能性が視野に入りつつあることを考えると、今の株価は魅力的な水準といえるだろう。

2023/122Q決算実績:創薬支援事業が順調に拡大、約3割の増収に

 同社の2023/12期2Q決算は、売上高 358百万円(29.0%増)、営業損失 659百万円(前期は 779百万円の営業損失) 、四半期純損失 663百万円(前期は 771百万円の四半期純損失)となった 。今2Qは導出一時金やマイルストーン収入といった創薬事業に関連する売上は計上されず、創薬支援事業の売上のみとなったが、同事業は順調に伸長している。

 創薬事業の各パイプラインの進捗状況等は次頁の図を参照。それぞれのパイプラインは順調に進行しているが、2023/12期2Q中の売上は計上されていない。販管費中の研究開発費は 601百万円(前年同期比 89百万円の減少)、前年同期はCBA–1535のCMC関連費用を計上しており、同費用分が減少した。その結果、同事業のセグメント損失は、研究開発費に相当する 601百万円となった。

 創薬支援事業は、同社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムを中心とした、抗体作製技術プラットフォームを活かした抗体作製業務や抗体の親和性向上業務、たんぱく質調製業務を受託し、国内の主要製薬企業における抗体医薬にかかる研究支援を展開。創薬支援事業による安定的な収益の獲得が、創薬事業の研究開発費確保の一助となっている。同事業は、着実に取引件数、案件数を拡大しており、2Qにおいては新たに国内大手製薬企業との委受託包括契約を締結したほか、国内診断薬企業との新たな委受託業務を開始した。その結果、2023/12期2Qの売上高は 358百万円(前年同期比 80百万円増加)、セグメント利益は 208百万円(同、57百万円増加)となった。セグメント利益率は 58.1%と目標である50%をクリアしている。

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12 630 -11.5 -1,258 -1,243 -1,242 -28.26
2023/12(会予)
2022/12 2Q 278 -27.7 -779 -768 -771 -18.17
2023/12 2Q 358 29.0 -659 -662 -663 -13.70

注:同社の業績予想は、創薬事業における合理的な業績予想の算定が困難であるとして、創薬支援事業の数値(売上高 640百万円)のみ公表している。

創薬事業パイプライン

2023年8月9日時点
出所:2023年12月期第2四半期決算補足資料(2023年8月9日)

 BSにおいては、20236月末の総資産は 1,685百万円。 2022年12月末比 529百万円減少した。現預金は 1,245百万円(2022年12月末 1,727百万円)。通常通り、研究開発費による出費が続くことで、総資産は減少している。

パイプラインの進捗状況 CBA–1205の導出価値最大化に向けて計画を延長

<自社開発品>

*CBA–1205;臨床第1相試験において、ポジティブな兆候を確認。複数のPR症例の獲得による導出一時金の最大化を狙う

CBA–1205 臨床開発

出所:2023年12月期第2四半期決算補足資料(2023年8月9日)

 CBA–1205は、国立がん研究センターにおいて、固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートを実施。また、後半パートにおいては、肝細胞癌の患者を対象として、試験を行なっている。既に、前半パートでは、高い安全性が確認されているが、登録されたメラノーマの患者において腫瘍縮小を伴うSD(安定)評価が続き24ヶ月以上の継続投与が確認され、現在も投与を継続中。

 また、後半パートで登録された肝細胞がん患者1例においてPR(部分奏功:30%以上の腫瘍縮小)を確認。長期投与症例に対応すべく治験薬の追加製造に着手することとした。また、本剤の治療薬としてのポテンシャルを検証するため、PR症例と本剤投与の科学的な関連性を解析することを目的とし、治験登録患者さんの選定基準厳格化し及び治験期間の延長を決定した。なお、導出見込みのスケジュールの変更はない。

 同社では、それぞれのパイプラインの導出活動において、早期の導出を図るもの、あるいは社内での研究開発活動を進め、より多くの症例を獲得することにより導出時の経済価値を高めるもの、とに分けて開発を続けている。CBA–1205については、自社での治験が順調に推移しているため、導出のターゲットを事業性、成功確率を重視する企業群に定め、導出一時金の最大化を狙うとしている。

CBA–1535;臨床第1相試験前半パート(単剤)

 同社は2022年2月、PMDAに治験計画届を提出、6月末より国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院及び静岡県立静岡県がんセンターの2施設において、臨床第1相試験の投与を開始している。臨床第1相試験前半パートにおいて、固形がん患者を対象に安全性評価及び薬効シグナルの評価を実施。低容量から段階的に投与し、安全に投与できる最大量を求め、初期の薬効シグナルを評価する。後半パートにおいては、がん免疫療法薬との併用による効率的な薬効評価を行う。従来は前半パートと並行して、後半パートを開始するとしていたが、今回、前半パートでの薬効シグナルの確認後に、後半パート開始とする計画に変更した。後半パート開始時期は2024年中となった。本剤の導出可能性も踏まえて自社での臨床開発投資を合理的にコントールできるようにとの計画変更である。

 CBA–1535はTribodyTMとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する TribodyTMの適用の可能性が広がることとなる。結合する標的や結合する手の数の組み合わせにより、通常の抗体以上の効果や、複数薬剤の併用投与により、1剤の投与のみで複数の薬効が期待されることから、患者のQOLや、医療経済的メリットが期待される。

<導出品>

LIV-1205;スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。ADCTが米国国立がん研究所(NCI)と共同で、神経内分泌がんを対象とした臨床試験に向けて準備を進めており、2023年中に臨床第1相試験を開始予定。ADCT社の財務状況を鑑み、同試験の開発主体はNCIが担うこととなっており、現状大きな変更はない。

<導出候補品>

PCDCADC用途を中心とした導出活動の推進、並びに動物試験データを蓄積中。ADCとしてパイプラインを拡充したい製薬企業、及び独自のADC技術を有するADC用の抗体が欲しい製薬企業を、導出戦略・ターゲットとして、国内外のカンファレンス等でコンタクトを進めている。導出先企業のADC技術と当社抗体の組み合わせによる開発ニーズが高いことから、独自のADC技術を有しておりADC用の抗体が欲しい製薬企業への導出活動を優先的に進めることとした。

PTRY新たな分子の組み合わせにより強活性のTribodyTM抗体を創生。「5T4xCD3xPD–L1」を標的とする「PTRY」を2022年に新規パイプライン化した。イタリアの公的研究機関 Ceinge–Biotechnologie Avanzateと行ったがん免疫療法に関する共同研究の成果を、国際的な学術雑誌である Journal of Experimental & Clinical Cancer Research誌に掲載。同共同研究によって得られた成果についての特許出願を完了している。肺がんモデルでの in vivo 薬効データにおいて、強い腫瘍増殖抑制効果を発揮することが確認されている。

*PFKR;新規パイプライン。PFKRはGPCRの1種であるCX3CR1を治療標的としており、当社が国立精神・神経医療研究センターと共同研究を進める自己免疫性中枢神経領域の新しい導出候補品。二次進行型多発性硬化症(SPMS)等を、想定適応疾患とする。既に特許出願を完了。多発性硬化症の患者数は、国内で7,000人程、世界全体では 300万人以上の患者がいると見込まれている。

◇創薬支援事業の進捗:国内大手製薬企業と新たに委受託包括契約を締結

 創薬支援事業は、前述のとおり約 3割の増収、358百万円の売上高を計上した。国内大手製薬企業より同社の技術サービス力に対する高い評価を獲得しており、既存顧客との取引が着実に伸長。また、 2Qにおいては新たに国内大手製薬企業との委受託包括契約を締結したほか、国内診断薬企業との新たな委受託業務を開始した。創薬支援事業も着実に進展しているといっていいだろう。

2023/12期通期見通し:現状、変更なし

 2023/12期の業績見通しに関して、同社では継続的な収益が見込まれる創薬支援事業の売上のみを 640百万円と公表している。費用面では、今まで通り各パイプラインの進捗に伴い、臨床試験費用や治験薬製造費用が嵩むこと等により、研究開発投資は年間10数億円程度の支出が続く。創薬事業において、導出一時金等の収入が見込まれない場合は、相応の損失を計上することとなろう。 2Q決算発表時における売上高の進捗率は55.9%。通期見通しに関しての修正は無い。

◇株価動向:CBA–1205の導出の行方及び今後のパイプラインの価値向上を注視

 同社株価は、決算発表などのイベントによりボラタイルな動きを示してきた。 2023/3期1Q決算発表の翌日(5月12日)には、前日比 12.4%と大幅な上昇を記録したが、その後は再度調整し、このところは150円台をボトムとした展開が続いている。周知の如く、創薬事業は10億円単位の研究開発費と10年単位の歳月を要し、短期間で結果を出すのは難しい。時間は掛かるものの、各パイプラインの進捗、導出の可能性を見極めることが重要である。現在の同社のパイプラインでは、CBA–1205の治験においてポジティブな兆候が多く見られており、CBA–1205の導出が視野に入ってきている。同社では、CBA–1205の導出による一時金収入を計上することにより、早期の黒字化を目指すべく導出活動を活発化している。遠くない将来での導出一時金計上の可能性を考慮すると、今の株価は魅力的な水準といえるだろう。引続き、今後の展開を注視したい。

株価推移(直近4年間)

財務データ

 
2020/12
   
2021/12
   
2022/12
   
2023/12
 
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
損益計算書
                           
売上高
91
82
139
169
246
139
157
171
128
149
156
197
169
189
 創薬事業
1
1
0
1
103
0
0
0
0
0
0
0
0
0
 創薬支援事業
90
82
138
168
143
138
157
171
128
149
156
197
169
189
売上原価
61
46
59
70
64
62
78
86
57
69
72
83
73
76
売上総利益
30
36
80
99
182
77
79
84
70
80
84
114
95
112
販売費及び一般管理費
456
346
424
303
337
337
515
568
557
373
344
334
321
545
 研究開発費
343
266
342
206
216
243
401
451
446
245
225
219
193
408
営業利益
-426
-310
-344
-204
-155
-260
-436
-483
-486
-292
-260
-220
-225
-433
営業外収益
2
0
3
0
7
0
2
4
0
16
0
5
0
0
営業外費用
0
2
10
1
1
0
1
6
4
1
1
-1
1
1
経常利益
-425
-311
-351
-205
-150
-259
-434
-486
-491
-278
-261
-214
-227
-434
特別利益
 
 
0
0
 
 
 
0
   
6
0
1
0
特別損失
 
 
 
 
 
 
 
           
0
税引前当期純利益
-425
-310
-351
-205
-149
-247
-433
-636
-491
-278
-255
-214
-226
-434
法人税等合計
1
0
1
1
11
1
1
0
1
2
1
1
1
1
当期純利益
-425
-311
-352
-206
-161
-248
-434
-637
-492
-279
-257
-215
-227
-435
                             
貸借対照表
                           
流動資産
2,309
2,805
3,316
3,249
3,294
3,088
2,675
2,216
2,005
1,792
1,955
2,092
1,964
1,566
 現金及び預金
1,967
2,472
2,881
2,686
2,580
2,302
2,071
1,790
1,744
1,471
1,592
1,727
1,566
1,245
固定資産
247
249
249
246
244
241
274
122
121
128
126
123
120
118
 有形固定資産
10
9
8
7
6
6
4
4
3
3
2
2
2
1
 投資その他の資産
237
240
241
238
237
235
269
118
117
124
122
120
118
117
資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
1,685
流動負債
315
427
378
343
378
428
468
392
419
390
376
370
469
486
 短期借入金
142
199
199
180
180
190
199
183
183
188
188
184
304
298
固定負債
42
42
42
42
42
42
53
53
53
54
54
54
54
54
負債合計
357
469
420
385
420
470
522
446
473
444
431
424
523
540
純資産合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,893
1,653
1,476
1,650
1,790
1,562
1,144
株主資本合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,857
1,621
1,445
1,631
1,777
1,549
1,132
 資本金
6,133
846
1,303
1,388
1,471
1,471
1,472
1,515
1,642
1,695
1,916
2,097
2,097
2,106
 資本剰余金
6,123
2,446
2,903
2,987
3,071
3,071
3,072
3,115
3,242
3,295
3,516
3,696
3,696
3,706
 利益剰余金
-10,080
-736
-1,088
-1,294
-1,455
-1,703
-2,136
-2,773
-3,262
-3,544
-3,801
-4,016
-4,244
-4,679
 新株予約権
24
30
28
29
30
19
19
35
31
30
18
13
12
12
負債純資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
1,685
                             
[キャッシュ・フロー計算書]
                           
営業活動によるキャッシュ・フロ
 
-528
 
-1,361
 
-560
 
-1,131
 
-660
 
-1,191
 
-595
 税引前当期純損失
 
-734
 
-1,290
 
-396
 
-1,466
 
-768
 
-1,237
 
-661
投資活動によるキャッシュ・フロ
 
 
 3
 
 
-35
 
 
 
0
 有価証券の取得
 
 –
 
  –
 
 –
 
 –
 
 
 
財務活動によるキャッシュ・フロ
 
894
 
1,944
 
176
 
271
 
341
 
1,127
 
113
 株式の発行
 
697
 
 1,769
 
166
 
253
 
336
 
1,126
 
現金及び現金同等物の増減額
 
366
 
580
 
-384
 
-895
 
-319
 
-63
 
-481
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,105
 
2,105
 
2,686
 
2,686
 
1,790
 
1,790
 
1,727
現金及び現金同等物の期末残高
 
2,472
 
2,686
 
2,301
 
1,790
 
1,471
 
1,727
 
1,245

注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ前4Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成