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Omega Investment株式会社

コスモ・バイオ (Company note – basic)

株価(4/9)1,272 円予想配当利回り(26/12予)3.9 %
52週高値/安値1,486/971 円ROE(25/12)3.7 %
1日出来高(3か月)10.2 千株営業利益率(25/12)3.2 %
時価総額76.9 億円ベータ(5年間)0.17
企業価値42.9 億円発行済株式数 6.048 百万株
PER(26/12予)32.8 倍上場市場 東証スタンダード
PBR(25/12実)0.77 倍
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中期経営計画2028始動。ROE8%到達に向けて、成果の積み重ねに期待

サマリー

◇コスモ・バイオは、「生命科学の進歩に資する」を目的に掲げるライフサイエンス分野の専門商社。1983年旧丸善石油の子会社として創業後、MBOを経て現在の独立系専門商社となった。売上高の約8割は製薬企業・大学・研究機関等の研究施設で使用される研究用試薬である。同社の強みは、優良な顧客基盤、海外を含む約500社のサプライヤーから1,000万点に及ぶ商品・サービスを揃える充実した調達網、専門性の高い人材とその営業力である。近年、同社は仕入販売に加え、受託サービスの仲介、自社製品の販売、自社受託サービスの提供を国内外で展開する施策を推進している。

国内研究用試薬市場の安定成長と事業課題:国内のライフサイエンス研究用試薬市場は約 1,200億円と推定され年率1%程度で安定的に成長している。同社は、外資系の試薬メーカーの日本法人、国内の大手化学メーカー子会社等、独立系商社と伍して、およそ5%のシェアを占めている。 

 ただし、同市場の成長率停滞リスク、商圏リスク(例:試薬の供給元がM&Aにより再編されることで商権を失うリスク)、為替リスク(円建ての仕入原価の変化を価格転嫁するまでにタイムラグが発生、円高局面では損益メリット、円安局面では損益デメリットが出やすい)などの課題をかかえる。

長期ビジョン「ライフサイエンスの力で次代の価値を共創する」と5つの重点戦略:かかる課題認識も踏まえ、同社は新たに長期ビジョンを「ライフサイエンスの力で次代の価値を共創する」と設定し、従来から推進してきた施策を継承しつつ、5つの戦略に整理した。具体的には、ポートフォリオの転換、マーケティング機能の進化・強化、新規事業の本格展開、グローバル販売の強化、事業運営の最適化と強化である。これらの成果を通じてROE8%以上の達成、資本コストの低減、およびPBR1倍以上の達成を目指す。

中期経営計画2028:2025年12月期に終了した中期経営計画2025に続く中期経営計画2028が発表された。上記の5つの重点戦略を収益化し、2028年12月期に売上高130〜145億円、ROE5〜8%を目指す。

2025/12期実績:売上高107.6億円(前年度比+7.3%増)、営業利益343百万円(同+7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益337百万円(同+28.6%増)。売上高は2期連続100億円突破し計画を達成した。損益面では、ドル円相場が前年度比横ばいの149円/ドルになるなか減価率は改善したが、人的投資、DX推進、オフィス増床などで販売管理費が嵩み、営業利益は増益ながら計画未達となった。なお、関税影響も生じた。

2026/12期会社予想:売上高114.0億円(同+5.9%増)、営業利益270百万円(同▲21.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益220百万円( 同▲34.7%減 )、想定為替レート152円/ドルである。円安想定に加え、人員増、販売活動強化、社内管理体制強化に対する費用増によって、増収ながらも減益の予想である。なお1株あたり配当金は前年度と同額の年間50円予想である。

株価動向:株価は2024年以降上昇基調が続く。直近では2025年11月13日に発表された「鶏卵バイオリアクターを用いた甘味タンパク質「ブラゼイン」の開発・製造に成功」との開示によって1100円から1400円へと急騰しており、その後当決算もこなしつつ、総じて底堅い。株式市場は、 増収基調、 黒字体質、健全財務、低PBR、3%台後半の配当利回り、ROE8%・PBR1倍達成に向けたコミットメントなどを評価しており、好材料には敏感に反応する局面にある。為替動向から目が離せないものの、諸施策の効果が利益貢献を示し始めれば、PBR1倍を本格的に目指す展開になるだろう。

目次

サマリー1
主要財務データ2
会社概要3
 沿革/直近の売上内訳/グループ概要3
事業概要5
 日本の試薬市場/商品・サービス群5
 特徴・強み/事業課題(リスク要因)9
 収益動向9
「長期ビジョン」と「中期経営計画2028」を発表12
決算動向21
 2025/12期決算実績21
 2026/12期業績見通し22
株価動向とカタリスト23
財務データ25
企業データ27
 企業概要/沿革27
 経営陣/コーポレートガバナンス体制28
 大株主の状況/所有者別株主分布状況29

主要財務データ

  2020/12 2021/12 2022/12 2023/12 2024/12 2025/12 2026/12
[損益計算書]             会社予想
売上高 8,092 9,231 9,553 9,340 10,037 10,766 11,400
売上原価 4,940 5,572 6,112 6,090 6,708 7,064  
売上総利益 3,152 3,658 3,440 3,249 3,329 3,702  
販売費及び一般管理費 2,399 2,609 2,624 2,729 3,010 3,359  
営業利益 752 1,048 816 519 318 343 270
経常利益 817 1,099 790 653 364 489 340
税引前当期純利益 1,008 1,099 790 653 369 504  
親会社株主に帰属する当期純利益 674 737 517 442 262 337 220
[貸借対照表]              
流動資産 6,756 7,310 7,136 7,102 7,229 7,441  
現金同等物及び短期性有価証券 3,259 3,555 3,036 3,025 2,393 2,946  
固定資産 2,883 2,761 3,176 3,770 4,493 5,220  
資産合計 9,640 10,072 10,313 10,872 11,723 12,662  
負債合計 1,779 1,752 1,695 1,846 2,167 2,706  
純資産合計 7,861 8,319 8,617 9,026 9,555 9,955  
自己資本比率 76.3% 77.3% 78.1% 77.7% 76.5% 74.0%  
[キャッシュ・フロー計算書]              
営業活動によるキャッシュ・フロー 803 648 284 736 241 595  
投資活動によるキャッシュ・フロー 42 -145 -291 -758 -217 43  
財務活動によるキャッシュ・フロー -97 -420 -236 -201 -479 -283  
現金及び現金同等物の増減額 743 95 -218 -210 -433 -1  

出所:同社資料より Omega Investment 作成

会社概要

 コスモ・バイオは、「生命科学の進歩に資する」をグループの目的に掲げる、試薬*を中心としたライフサイエン分野の専門商社である。ライフサイエンスに関する研究用試薬、機器、受託サービス及び臨床検査薬の仕入卸売販売を主な業務としている。試薬は、診断薬や治療薬とは異なる市場規模であるが、世界のライフサイエンスの研究者が新たな新薬の開発等を進める際に不可欠な、極めて重要な商品・サービスである。

沿革

 同社は1983年に旧丸善石油(現 コスモ石油)の子会社として、バイオの基礎研究試薬事業を目的とし、丸善石油バイオケミカル株式会社として創業した。その後、親会社の合併・再編に伴い、コスモ・バイオ株式会社に社名を変更(1985年)。同年、バイオ研究用機器の販売を開始した。2000年9月、MBOによりコスモ石油より独立。2004年 8月、バイオベンチャー等の集積地であり、世界的なバイオ研究の中心地の一つであるカリフォルニア州サンディエゴ市にCOSMO BIO USA, INCを設立、試薬等の仕入探索及び日本製の試薬の輸出促進の拠点とした(2018年1月連結子会社化)。2005年9月には、ジャスダック市場への上場を果たしている。その後、関連する分野の企業への出資、吸収合併等により、業容を拡大。2006年12月、株式会社プライマリーセルを子会社化、製造分野にも進出した。2010年 3月、ライフサイエンス研究支援の機器類・消耗品の輸入商社であるビーエム機器株式会社を連結子会社化。2017年 10月、札幌事業施設を移転集約し、札幌事業所を開設、近年注力中である自社受託サービス、製造販売を強化する体制が整った。(P27の沿革表も参照)

直近の売上内訳

 2025/12期の同社の売上高10,766百万円のうち、研究用試薬、機器の構成比率はそれぞれ79.5%、20.5%である。

売上高商品別内訳

*試薬:(社)日本試薬協会によれば、試薬は法律的には「化学的方法による物質の検出もしくは定量、物質の合成の実験または物理的特性のために使用される化学物質」と定義されている。また、一般的な概念として「検査、試験、研究、実験など試験・研究的な場合において、測定基準、物質の検出・確認、定量、分離・精製、合成実験、物性測定などに用いられるものであって、それぞれの使用目的に応じた品質が保証され、少量使用に適した供給形態の化学薬品」としている。より具体的には、実験・研究・測定のために使われる薬剤で、化学物質や生物の体内から取り出した成分(タンパク質や細胞、核酸等)、それを反応させる溶剤などを指す。ライフサイエンス用の試薬は、主に生物から抽出し、あるいはその物質を合成したもので、数10マイクログラムなどの少量で提供される。
一方、診断薬は、医師により健康あるいは病気の状態を診断するための様々な検査で使われる薬のことで、体外診断用医薬品、臨床検査薬ともいわれ試薬と区別される。
 一般的に我々が病気を治すために服用するのは治療薬(医療用医薬品)となる。様々な疾患の治療のために投与され、国内外の大手をはじめとした製薬企業が、研究・開発、製造・販売している。
 市場規模としては、国内のライフサイエンス研究用の試薬の市場は1,200億円前後(2021年、同社資料)、同診断薬の市場規模は 8,000億円前後(2021年、(社)日本臨床検査薬協会)、治療薬(医療用医薬品)は約9.4兆円(2021年、IQVIA)と、市場規模としては治療薬が圧倒的に大きい。

グループ概要

 同社のグループ企業は、同社、ビーエム機器、COSMO BIO USA, INCの連結子会社 2社及び非連結子会社であるプロテインテック・ジャパンで構成されている。それぞれの事業内容及び商品の流れに関しては、以下の図を参照。なお、ビーエム機器及びプロテインテック・ジャパンは、同社所在地である東京都江東区の同じフロアに在り、グループとしての意思疎通を容易にしている。

同社グループの概要と商品の流れ

出所:同社資料

 同社の事業拠点としては、上記、本社の所在地である東京都江東区の他に、札幌事業所、新砂物流センターがある。札幌事業所は、沿革でも触れたように、2017年10月、同社の札幌地区の事業施設を移転集約して札幌事業所(北海道小樽市)を開設した。同施設は、今後の同社の成長分野として注力する自社受託サービス、製造販売を担う。

 新砂物流センターは、2013年1月開設。同社では、売れ筋商品については自社で在庫として保有し(2023年12月末の貸借対照表上の同社グループの商品・在庫は約10億円)、出荷する体制を整えている。製薬企業や大学・研究機関等の研究現場では、迅速な納品を求められることも多々あり、そのようなニーズにも的確に応えることが可能となっている。

出所:同社資料など

事業概要

世界のライフサイエンス研究者に不可欠な試薬・機器を提供

 同社は、世界のライフサイエンス研究者向けに、その基礎研究過程で不可欠な研究用試薬を提供している。医薬品の開発には、基礎研究、応用研究、開発、更には臨床試験といった、10年を越すような長期間を要するのが通常である。近年では、抗体医薬品の開発や、in silico といったITとの連携(量子コンピューターの応用による加速化等も)が期待されているが、研究現場での地道な研究活動が必要なことは言を待たない。

 同社の提供する試薬・機器はそのような、製薬企業、大学・研究機関の基礎研究の現場での必須アイテムであり、安定的に一定の利益率を確保できる需要が着実に伸びることが見込まれる。

ライフサイエンス研究とユーザー層

出所:同社資料

日本のライフサイエンス研究用試薬市場

  国内のライフサイエンス研究用試薬市場はこれまで平均年率成長率+1%程度で安定成長しており、その市場規模は約1,200億円程度と推定される。

 事業者別シェアは下右図の通り。北米等の試薬会社の日本法人、日本の大手化学品メーカーのグループ会社あるいは事業部門も一定程度のシェアを占めている。独立系専門商社もTop10に同社を含め2社入っており、同社のシェアは約5%と推測される。各社間での競争は激しいものの、それぞれの得意とする分野があり、一定の売上高、利益を確保している。

出所:同社資料

 次に、試薬のユーザー側の状況を見てみる。既述の通り、試薬の顧客は、製薬企業、大学・研究機関等のライフサイ

次に、試薬のユーザー側の状況を見てみる。既述の通り、試薬の顧客は、製薬企業、大学・研究機関等のライフサイエンス分野の研究施設である。

 まず、総務省「2025年(令和7年)科学技術研究調査」においてライフサイエンスを目的とする研究費の推移は以下の通りである。2024年度には3.7兆円であり、順調に増加している。これがライフサイエンス研究用試薬市場の成長を支えると見込まれる。

ライフサイエンスを目的とする研究費の推移

出所:総務省 2025年(令和7年)科学技術研究調査結果の概要より Omega Investment 作成

 次に、日本の大学・教育機関における科学研究費補助金(科研費)の動向は、以下のとおり。足元やや伸び悩みになっていること、光熱費の上昇が現場の予算を圧迫する局面があることは気にすべきであるが、基調はしっかりしているとみなせる。

 以上、ライフサイエンス研究用の試薬市場は安定成長市場といえよう。

科学研究費補助金予算額推移

出所:文部省HP等より Omega Investment 作成

同社の提供する商品・サービス群

 同社は、世界各地にある500社を超える仕入先から 1,000万品目に及ぶ最先端の商品を導入し、同社独自の付加価値をつけ、約200拠点の代理店を通じて、ライフサイエンス研究者向けに提供している。この商社機能の仕入販売を核に、受託サービス仲介への展開、製造販売・自社受託サービスの育成・拡大、海外展開を進める構想である。

同社の事業概況マトリックス

 同社の事業概況は以下のように整理できる。

出所:同社資料

特徴・強み

ークライアント及びサプライヤーとの強固な信頼関係:試薬を利用する研究開発の現場では、一つの試薬を大量に使用することは稀で、マイクログラム単位でさまざまな試薬をそれぞれの研究レベルで必要とする。同社は40年に及ぶクライアントとの信頼関係の構築、及び北米を中心とした最先端の試薬を提供するサプライヤーとの堅固な関係に基づき多様なニーズにきめ細かく対応している。

ーライフサイエンス分野の最先端の情報提供:同社は、ライフサイエンスの専門商社として、本社の情報収集能力に加えて COSMO BIO USA, INCとの協力の下、様々なバイオ関係のイベントにも出展・参加して、クライアントのニーズを先取りするべく、ライフサイエンス分野の最先端の情報を提供している。

ー自社製品の製造・開発によるユーザーニーズへの対応:同社はこれまでの主たる事業である輸入商社事業に加えて、輸入細胞で代替できない細胞の製造・販売、細胞を使った受託サービスの提供などを行っている。今後は、こうした自社製品の製造・販売、受託サービスの提供に一層力を入れ、更なる成長を目指してゆく計画である。

ー試薬ビジネスに関連した様々なノウハウの蓄積・保有:ライフサイエンス分野の商品、特に試薬関連は、通常の商品の輸出入とは異なった知識・ノウハウを必要とする。同社が取扱う商品の中には、薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)や、毒物及び劇物取締法、麻薬及び向精神薬取締法などの諸法令、行政指導に対応する必要があるものが多い。また、これらの法律は各国まちまちであり、国による違いに関しての知識・情報も重要である。また、試薬の中には動物由来のものもあり、その際には動物検疫の対象となる。更に、試薬にはタンパク質や核酸・細胞など生物由来のものもあり、その際には国際間の搬送手続きにおいてドライアイスを同梱する等、適切な温度管理も要求される。同社はこうしたノウハウ・知見を蓄積し強みの一つとしている。

リスク・ファクター

国内ライフサイエンス研究用試薬市場の成長率鈍化リスク:国内市場の成熟、研究者人口の伸び悩み、公的研究開発費の増加抑制と「選択と集中」、試薬のコモディティ化・価格競争の激化を背景に、市場成長が停滞気味になっており、これが継続するリスクがある。

ー商権リスク:同社の仕入れ先500社のうち約400社が海外(主に北米)で、これら仕入れ先の経営権がM&Aによって移動し、同社が日本での商権を喪失する可能性がある。海外の仕入れ先が独自に日本国内の販売網を築く、または競合他社に乗換える事態も生じうる。

ー為替リスク:米ドル建て仕入れが約3分の2を占めており、為替変動によって売上原価が上下する。同社では、社内方針に基づいて、実需の一定の範囲内で為替予約を実施しているが、急激な円安局面では、売価への転嫁が遅れて売上原価が急上昇し、業績に大きな影響を及ぼす。(下図参照)

ー競合リスク:国内市場における業界内の競争も厳しい。

ー法規制リスク:同社の取扱う商品の中には、様々な法規制への対応が必要とされる商品がある。事故等により法規制に違反する事象が発生する可能性があり、これら法規制が改正される場合には新たな対応が必要となる。昨今の関税政策の変更もリスク要因である。

円ドル為替レートと売上原価率の推移

出所:同社資料より Omega Investment 作成

収益動向

 同社の長期財務パフォーマンスを見る。売上高は先に述べた着実な市場の拡大と同社の的確な事業展開によって概ね右肩上がりで推移してきた。さらに利益面では会社設立以来黒字経営を続けており、投資家に一定の安心感をもたらしている。

 ただし、営業利益額は以下のグラフにあるように2億円から10億円台のレンジを振幅して推移し、増益基調とは言えない。輸入商材が多いため円安進行が損益へマイナスの影響を及ぼす構造であり、さらに、直近では米国関税政策が粗利の圧迫要因になった。さらに、人的投資、DX投資、および戦略投資が近年増えており、販売管理費率も上昇傾向にある。この結果、売上高営業利益率は2%台から11%台のレンジを振幅し、近年は低下傾向にある。

 この結果、ROAおよびROEも振幅の幅も大きく、近年はROEが目標の8%に到達していない。

売上高/営業利益の推移

出所:同社資料より Omega Investment 作成

ROA/ROEの推移

出所:同社資料より Omega Investment 作成

 なお、同社の収益は多くの顧客の決算期が3月であることから1-3月期(同社第1四半期)に売上高・利益が偏重する傾向であることに留意が必要だ。

売上高/営業利益の推移(四半期)

出所:同社資料より Omega Investment 作成

「長期ビジョン」と「中期経営計画2028」を発表

同社は、2025年12月期をもって「中期経営計画2025 」を終え、2026年2月、「長期ビジョン」と「中期経営計画2028」を発表した。

「中期経営計画2025」のレビュー

まず、2023年度から2025年度を対象とする「中期経営計画2025」および2024年8月に発表された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の進捗を確認する。端的に言えば、

  • 課題認識、対策は妥当 •取り組みは定性面で着実な成果を上げ、売上高も目標達成した
  • しかし、円安、米国関税、新規事業や体制強化費用が先行したことから利益が圧迫された
  • この結果ROEも低下した

とまとめられる。

出所:同社資料

「長期ビジョン」と「中期経営計画2028

つぎに、今回示された「長期ビジョン」および「中期経営計画2028」を確認する。

長期ビジョン

「長期ビジョン」として新たに「ライフサイエンスの力で次代の価値を共創する」を掲げた。そして「中期経営計画2025」の諸施策を継承し、”Japanese Distributor”から”Global Life-Science Company”への変貌を目指すと宣言している。これは、先にも触れた同社の課題のうち、特に国内ライフサイエンス研究用試薬市場の成長率鈍化リスクおよび為替リスクへの対応を強く意識した方針である。

5つの重点戦略

次に、長期ビジョン実現のための重点戦略が5つ示されている。これは、従来の戦略を踏襲しつつ整理し直したと言えるだろう。

具体的には、

ポートフォリオの転換:付加価値の高い商品の発掘・供給を不断に行う •

マーケティング機能の進化・強化:2024年に設立したマーケティング部を活用し、データに基づくマーケティングを幅広く行う •

新規事業の本格展開:Scientist3(研究者向け受託サービスマッチングプラットフォーム) 、鶏卵バイオリアクター(鶏卵を使った有用タンパク質の低コスト・大量生産技術)、ネオアンチゲン(がん免疫療法に用いられるネオアンチゲンペプチドの製造・供給)などの新規事業を本格展開し、製造/開発機能・サービス機能の強化を通じて成長を加速させる •

グローバル販売の強化:日本製品の米国販売という現状から、グローバルな調達とグローバルな販売を行う体制へ転換を図る。この結果為替リスクの低減も実現する •

事業運営の最適化と強化:人事、IT、財務の最適化と強化を行う

である。

出所:同社資料

5つの重点戦略を通じた企業価値向上への道筋

これら5つの重点戦略は企業価値の向上に紐づくもので、具体的にはROEの向上(期待)とPBR1倍以上の達成を目論んでいる。詳細は次の通りである。考え方を整理すると、下から順に、

  • IR手段の拡充・ESG対応とその開示・ガバナンス向上とその開示・PR開示の積極化を通じて、投資家との情報の非対称性を進め、株主資本コスト低減を図る
  • 重点戦略⑤(事業運営の最適化と強化)を推進、株主還元を強化し自己資本の肥大化を回避、ROEの分母を適正水準に保ち、かつ資本コストをコントロールする。なお、配当方針は株主資本配当率(DOE)3.5%と配当性向60%のいずれか高いほうを基準としており、2024年度以降、連結配当性向は100%前後で推移している
  • 重点戦略①(ポートフォリオの転換)を不断に行いながら、重点戦略②(マーケティング機能の進化・強化)および④(グローバル販売の強化)によって商社ビジネスのグローバル化を推進、為替変動に強く内外の成長ポテンシャルを捉えることで収益底上げ、ROEの分子を引き上げる
  • 重点戦略③(新規事業の本格展開)を育成し、将来の非連続的な成長ポテンシャルを具体化させる。この結果、ROEの将来期待値を向上させると同時に、業績が安定成長軌道に乗ることで資本コストを引き下げる •

というステップで企業価値を高めていく方針である。

この考え方は、2024年8月に発表された「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を実質的に踏襲するものである。

出所:同社資料

「中期経営計画2028

以上述べた5つの重点戦略を2026年から2028年までの3ヶ年の計画に落とし込んだものが「中期経営計画2028」である。財務数値に関しては、2025年度の売上高107億円、ROE3.7%を、2028年度には130〜145億円、5〜8%へ引き上げる計画である。まず重点戦略①、②、⑤によって着実に増収を実現し、さらに重点戦略③、④によって売上高の上積みを図る計画である。

出所:同社資料

決算動向

1) 2025/12期決算実績:7.3%増収、営業利益7.7%増益

 売上高107.6億円(前年度比+7.3%増)、営業利益343百万円(同+7.7%増)、親会社株主に帰属する当期純利益337百万円(同+28.6%増)。売上高は2期連続100億円突破し計画を達成した。一方、利益に関しては、ドル円相場は前年度比横ばいの149円/ドルだったが減価率は改善したものの、人的投資、DX推進、オフィス増床などで販売管理費が嵩み、営業利益等は増益になったものの計画に対しては未達となった。関税影響も生じた。

 なお1株当たり配当は50円(同横ばい)、配当性向84.4%であり、ROEを意識した配当政策が継続している。貸借対照表に関しては、自己資本比率が引き続き高いこと(74.0%)が示すように、財務体質に著変はない。

出所:同社資料

2) 2026/12期業績見通し

 新しい中期経営計画初年度となる2026年12月期の会社業績予想は、増収減益の想定だ。売上高114.0億円(同+5.9%増)、営業利益270百万円(同▲21.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益220百万円( 同▲34.7%減 )、想定為替レート152円/ドルである。円安想定に加え、人員増、販売活動強化、社内管理体制強化に対する費用増によって、増収ながらも減益の予想である。なお1株あたり配当金は前年度と同額の年間50円予想(配当性向129.0%)である。

出所:同社資料

株価動向とカタリスト

 株価は2024年以降上昇基調が続く。

 業績と照らし合わせると、増収基調であることを評価しており、足踏み状態の利益・ROEの推移に懸念を深めているとは見なしにくい。また、2025年11月13日に発表された「鶏卵バイオリアクターを用いた甘味タンパク質「ブラゼイン」の開発・製造に成功」との開示が出た際には、これを好感し、株価が1100円から1400円へと急騰した。2025年12月決算発表も、2026年12月期会社予想が増収減益となったものの、株価は底堅く推移している。

 こうした経緯を踏まえると、株式市場は、

  • 増収基調、 黒字体質、健全財務、低PBR、3%台後半の配当利回り、ROE8%
  • PBR1倍達成に向けたコミットメントなどを評価している •将来のROE向上につながる好材料に敏感に反応を始めている

といえるだろう。為替動向から目が離せないものの、諸戦略が具体化しその効果が利益貢献を示し始めれば、PBR1倍を本格的に目指す展開が想定できる。

 今後株価を動かすカタリストは次の諸点にまとめられる。

  • ル円相場の推移(大幅な円安にならないこと)
  • 国内の試薬商社機能の増販と高付加価値化が早期に実現すること
  • グローバル販売増加の道筋が立ち、為替リスクの削減・管理強化が進むこと
  • これらの結果、実績ROEが着実に上昇しはじめること
  • 新規事業である原料供給、 Scientist3の運用開始、鶏卵バイオリアクター、ネオアンチゲンなどの新規事業が本格展開し、将来におけるROE上昇期待が強まること
  • 健全な財務基盤を活用し、M&Aなどを積極的に展開すること

財務データ

出所:同社資料

金額単位:百万円  
2016/12期
2017/12期
2018/12期
2019/12期
2020/12期
2021/12期
2022/12期
2023/12期
2024/12期
2025/12期
2025/12期
[損益計算書]
                   
会社予想
売上高
7,427
7,068
7,261
7,590
8,092
9,231
9,553
9,340
10,037
10,766
11,400
前期比
1.0%
-4.8%
2.7%
4.5%
6.6%
14.1%
3.5%
-2.2%
7.5%
7.3%
5.9%
売上総利益
2,772
2,532
2,659
2,879
3,152
3,658
3,440
3,249
3,329
3,702
 
販売費及び一般管理費
2,257
2,339
2,330
2,474
2,399
2,609
2,624
2,729
3,010
3,359
 
営業利益
514
193
328
405
752
1,048
816
519
318
343
270
前期比
157.0%
-62.5%
69.9%
23.5%
85.7%
39.4%
-22.2%
-36.3%
-38.7%
7.7%
-21.3%
営業利益率
6.9%
2.7%
4.5%
5.3%
9.3%
11.4%
8.5%
5.6%
3.2%
3.2%
2.4%
営業外収益
21
208
89
72
71
71
57
136
86
158
 
営業外費用
51
3
13
7
6
20
83
2
40
12
 
経常利益
483
397
403
470
817
1,099
790
653
364
489
340
特別利益
55
8
   
190
     
53
69
 
特別損失
82
5
 
81
       
48
54
 
税引前当期純利益
456
400
403
388
1,008
1,099
790
653
369
504
 
法人税等合計
180
148
126
142
307
331
238
191
99
170
 
親会社株主に帰属する当期純利益
254
237
260
237
674
737
517
442
262
337
220
前期比
10.4%
-6.7%
9.7%
-8.8%
184.4%
9.3%
-29.9%
-14.4%
-30.0%
28.6%
-34.7%
当期純利益率
3.4%
3.4%
3.6%
3.1%
8.3%
8.0%
5.4%
4.7%
2.6%
3.1%
1.9%
[貸借対照表]
                     
流動資産
5,495
5,143
5,668
5,927
6,756
7,310
7,136
7,102
7,229
7,441
 
現金同等物及び短期性有価証券
1,948
1,483
2,268
2,516
3,259
3,555
3,036
3,025
2,393
2,946
 
固定資産
2,438
2,982
2,832
2,962
2,883
2,761
3,176
3,770
4,493
5,220
 
有形固定資産
319
690
636
695
636
599
577
572
701
862
 
投資その他の資産
1,842
2,041
1,943
2,068
2,081
1,979
2,428
3,042
3,629
4,190
 
資産合計
7,934
8,126
8,501
8,890
9,640
10,072
10,313
10,872
11,723
12,662
 
流動負債
916
799
945
987
1,226
1,093
1,038
1,123
1,166
1,422
 
短期借入金
20
20
20
20
20
20
20
20
20
20
 
固定負債
436
488
502
581
552
658
656
722
1,001
1,284
 
負債合計
1,352
1,288
1,448
1,568
1,779
1,752
1,695
1,846
2,167
2,706
 
純資産合計
6,581
6,838
7,053
7,321
7,861
8,319
8,617
9,026
9,555
9,955
 
株主資本合計
6,135
6,381
6,581
6,843
7,358
7,787
8,052
8,444
8,967
9,373
 
資本金
918
918
918
918
918
918
918
918
918
918
 
資本剰余金
1,251
1,251
1,251
1,251
1,251
1,258
1,260
1,261
1,263
1,267
 
利益剰余金
3,680
3,812
4,026
4,181
4,761
5,274
5,560
5,805
5,891
5,880
 
自己株式
-67
-67
-67
-67
-67
-239
-216
-194
-317
-379
 
評価・為替差額
352
466
451
558
494
574
530
654
1,211
1,687
 
負債純資産合計
7,934
8,126
8,501
8,890
9,640
10,072
10,313
10,872
11,723
12,662
 
(株主資本比率)
77.3%
78.5%
77.4%
77.0%
76.3%
77.3%
78.1%
77.7%
76.5%
74.0%
 
[キャッシュ・フロー計算書]
                     
営業活動によるキャッシュ・フロー
573
89
908
549
803
648
284
736
241
595
 
投資活動によるキャッシュ・フロー
99
-235
-185
-115
42
-145
-291
-758
-217
43
 
財務活動によるキャッシュ・フロー
-107
-109
-85
-85
-97
-420
-236
-201
-479
-283
 
現金及び現金同等物の増減額
549
-264
684
348
743
95
-218
-210
-433
354
 
現金及び現金同等物の期首残高
1,098
1,648
1,383
2,068
2,416
3,159
3,255
3,036
2,826
2,393
 
現金及び現金同等物の期末残高
1,648
1,383
2,068
2,416
3,159
3,255
3,036
2,826
2,393
2,747
 
フリーキャッシュフロー
672
-146
723
434
845
503
-7
-22
24
638
 

会社概要

企業概要

商品分類別売上高

コスモ・バイオ株式会社
【本社】
東京都東京都江東区東陽2-2-20
東陽駅前ビル

https://www.cosmobio.com/jp/

【札幌事業所】
北海道小樽市銭函3-513-2

【新砂物流センター】
東京都江東区新砂-12-39
日本通運(株)新砂3号倉庫B棟3階

従業員数:182人(連結ベース;2025年12月31日時点)

沿革

年 月事 項
1983年 8月    バイオの基礎研究試薬販売事業を目的として、東京都港区に丸善石油株式会社(現、コスモ石油株式会社)の子会社として丸善石油バイオケミカル株式会社を設立
1986年 4月コスモ・バイオ株式会社に社名変更、バイオ研究用機器販売を開始
1986年12月医薬品販売業の認可取得
1998年 4月仕入先の探索を目的として100%子会社のシービー開発株式会社を設立
2000年 9月MBO(マネージメント・バイ・アウト)によりコスモ石油株式会社から独立
シービー開発株式会社を株式譲渡により非子会社化
2000年12月シービー開発株式会社を吸収合併
2004年 8月仕入先探索と輸出促進を目的として100%子会社COSMO BIO USA,INC.を米国カリフォルニア州サンディエゴに設立
2005年 9月ジャスダック証券取引所へ上場
2006年12月初代培養細胞(プライマリーセル)の研究開発から製造・販売および同社細胞を用いた受託解析を行う株式会社プライマリーセルの80%の株式を取得、子会社化
2007年11月バイオ研究用の消耗品、機器類の輸入販売事業を行うビーエム機器株式会社の発行済株式の30%を取得、持分法適用の関連会社化
2008年 7月連結子会社である株式会社プライマリーセルを100%子会社化
2010年 3月ビーエム機器株式会社の発行済株式を約33%追加取得し、合計約63%の株式保有の連結子会社化
2013年 1月配送センターを移転し、新砂物流センターにて業務開始
2013年 7月株式会社プライマリーセルを吸収合併
2013年 7月東京証券取引所と大阪証券取引所の統合に伴い、東京証券取引所JASDAQ(スタンダード)に上場
2016年11月Proteintech Group, Inc.との共同出資により、株式会社プロテインテック・ジャパンを設立
2017年10月札幌事業施設を移転集約し、札幌事業所を開設
2018年 1月COSMO BIO USA, INC. を連結子会社化
2022年 3月監査等委員会設置会社へ移行
2022年 4月東京証券取引所の再編に伴い、東証スタンダードに上場

マネージメント

代表取締役:柴山 法彦

1994年  4月  丸善石油化学(株)入社
2000年  10月  同社入社
2012年  4月  同社情報システム部長
2014年  3月  ビーエム機器(株)取締役
2016年  11月  同社総務部長兼情報システム部長
2017年  3月  同社取締役総務部長兼情報システム部長
2020年  3月  同社常務取締役総務部長兼情報システム部長  ビーエム機器(株)取締役総務部長
2022年  3月  ビーエム機器(株)代表取締役社長(現任)
2022年  4月  同社常務取締役総務部長
2023年  3月  同社専務取締役総務部長
2023年  11月  同社代表取締役専務・社長業務代行総務部長
2024年  3月  同社代表取締役社長
2026年  4月  同社代表取締役社長 社長執行役員(現任)

常務取締役:栃木 淳子

1998年  4月  同社入社
2013年  4月  同社製品情報部長
2017年  3月  同社取締役製品情報部長
2017年  4月  同社取締役企画部長
2021年  3月  ビーエム機器(株)取締役
2022年  3月  COSMO BIO USA, INC. 代表取締役社長
      (株)プロティンテック・ジャパン代表取締役  (現任)
2023年  3月  同社常務取締役企画部長
2025年  11月  COSMO BIO USA, INC. 取締役CEO 最高経営責任者(現任)
2026年  4月  同社常務取締役 常務執行役員 経営企画部長(現任)

取締役:林 政徳

1994年  4月  協和発酵工業(株)入社
2012年  5月  同社入社
2019年  4月  同社財務部長
2022年  3月  ビーエム機器(株)財務部長
2023年  3月  同社取締役財務部長
2024年  3月  ビーエム機器(株)取締役財務部長(現任)
2026年  4月  同社取締役 執行役員 財務部長(現任)

取締役常勤監査等委員:佐藤 和寿

1987年  4月  住友不動産販売(株)入社
1993年  1月  コスモ石油(株)入社
2011年  6月  コスモ石油(株)札幌支店支店長
2014年  6月  コスモ石油(株)高松支店支店長
2015年  10月  コスモ石油マーケティング(株)高松支店支店長
2017年  6月  丸善石油化学(株)取締役執行役員総務部長
2020年  3月  同社社外監査役  ビーエム機器(株)監査役(現任)
2022年  3月  同社取締役常勤監査等委員(現任)

取締役監査等委員:佐々木 治雄

1974年  11月  監査法人中央会計事務所入所
1990年  2月  佐々木会計事務所設立 所長(現任)
2000年  12月  同社社外監査役
2022年  3月  同社取締役監査等委員(現任)

取締役監査等委員:島村 和也

1995年  10月  監査法人トーマツ(現 有限責任監査法人  トーマツ)入所
1998年  4月  公認会計士登録
2004年  10月  弁護士登録  阿部・井窪・片山法律事務所入所
2008年  3月  島村法律会計事務所開設 代表(現任)
2014年  3月  同社社外取締役
2022年  3月  同社取締役監査等委員(現任)

取締役監取締役監査等委員:原口 純一郎

1984年  4月  東京中小企業投資育成(株)入社
2017年  4月  東京中小企業投資育成(株) 参事役統括審査役代行
2017年  6月  株式会社きもと社外監査役(現任)
2020年 10月  東京中小企業投資育成(株) 特任参事役統括審査役代行
2021年  4月  東京中小企業投資育成(株)特任参事役(業務第五部 兼 営業統括部)
2023年  4月  東京中小企業投資育成(株)特任参事役(業務第五部 兼 業務統括部)(現任)
2024年  3月  同社取締役監査等委員(現任)

取締役のスキルマトリックス

出所:同社資料

コーポレートガバナンス体制

出所:同社資料

大株主の状況(As of December 31, 2025)

注)発行済株式の総数に対する所有株式数の割合(%)は、自己株式(374,053株)を除く
出所:同社資料より Omega Investment 作成

所有者別株式分布状況(2025年12月31日現在)

出所:同社資料より Onega Investment 作成

サステナビリティへの取り組み