構造的な成長ドライバーで利益率が上昇
後継契約や保証料の増加により利益率が向上
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サマリー
テンポイノベーション : 2023年3月期通期ガイダンスを上方修正
2023年3月期 通期連結業績予想数値の修正
財務指標
株価 (2/27) | 1,272 | | 23.3 P/E (会予) | 25.9x |
年初来高値 (23/2/27) | 1,272 | | 23.3 EV/EBITDA (会予) | 14.5x |
年初来安値 (22/1/27) | 790 | | 22.3 ROE (実績) | 21.1% |
10年来高値 (23/2/27) | 1,272 | | 22.3 ROIC (実績) | 18.6% |
10年来安値 (20/4/6) | 477 | | 22.12 P/B (実績) | 5.70x |
発行済株式数 (mn shrs) | 17.674 | | 22.3 DY (実績) | 1.29% |
時価総額 (¥ bn) | 21.916 | | | |
EV (¥ bn) | 17.740 | | | |
Equity ratio (12/31) | 29.4% | | |
パート① 外食産業アップデート
東京都の新規陽性者数、前週との比較(2023年2月2日現在)
一般財団法人日本フードサービス協会
1974年、農林水産省の認可を受けて設立。正会員・賛助会員数は800社で、推定規模約25兆円、従業員数500万人の日本市場を代表している。
JF外食産業市場 前年同月比動向調査 – 月次実績レポート
右の全店データにおける外食の純店舗閉鎖数は、売上高に対して明らかに遅行指標である。右のグラフは、世界的な感染症大流行による影響が、緩和されつつあることを示唆している。
しかし、前年同月比の数字は、あくまでも前年同月との比較である以上、大きな落ち込みの後では紛らわしく見える可能性がある。
そこで、JF月次調査結果報告書では、ベース効果の影響を取り除くため、2021年3月から、売上高と店舗数の対前年同月比の2つを設け、2019年の同月数値と比較している(右下グラフ参照)。
テンポイノベーションの転貸借取引は外食産業店舗市場と相関しない
2022年12月のJF外食産業市場の前年同月比動向調査によると、総店舗数は前年同月比-1.3%だが、2019年9月との比較では-6.7%と目に見えるような回復はまだ見られない。同時期に、テンポイノベーションの転貸借物件は、前年同期比+14.0%増、2019年6月との比較では+31.7%増を記録した。すなわち、テンポイノベーションの転貸借物件と、市場の基調である総店舗数の動向には相関がなく、両者は無相関といえるだろう。
下のグラフでは、当社の転貸借物件を過去10年間の月次推移で示している。
都心に多く存在する、比較的小規模で低家賃の居抜き店舗物件を発掘し、転貸借するノウハウをもつ。
転貸借物件の月次推移:「安定的な高成長」を体現したような成長
都心に多く存在する、比較的小規模で低家賃の居抜き店舗物件を発掘し、転貸借するノウハウをもつ。
コロナウイルス感染症発生後の転貸借契約取引の月次推移
テンポイノベーション: 安定的、かつ持続力ある二桁高成長を実現
上のグラフは、5,500件という当社の転貸借物件数の29年3月期末までの中期目標を示しており、6年間のCAGRは年率+16.3%となる。この目標は、単に一定のCAGR成長率を置いて策定したものではなく、2016年総務省経済調査による1都3県における飲食店総数16万店のうち、11万件を飲食店店舗物件候補と推定し、その約5%を当社の市場シェアとして策定している。この目標を達成するために、当社は中期経営計画で、営業人員を現在の40名(店舗仕入14名、転貸テナント探し26名)から100名(店舗仕入30名、転貸テナント探し70名)に増強することを重点施策として掲げている。
中期経営計画の取り組みの詳細については、参考資料の10ページを参照。
東京× TENPO INNOVATION
東京を掴め。
世界一の乗降客数 新宿駅:359万人
世界一の飲食店数 東京都:79,601店
世界一の美食都市 ミシュラン掲載店数:226店
最高のポテンシャルを秘めたこの都市で、私たちは勝負する。
世界一の横断者数 渋谷
世界一のサブカル街 秋葉原
やれることはもっとある。
未開拓市場99%
立ち止まらず、突き進む。
それが大きなうねりとなり、この都市を包み込んでいく。
だからやれる、をだからやる。
パート② 業績動向
9ヶ月累計で通期予想営業利益の97%を達成、通期ガイダンスを上方修正
第3四半期累計(9ヶ月)の業績は、下表のとおり。売上高は前年同期比17.1%増、営業利益は同59.5%増、売上総利益率は17.6%→19.7%へ上昇、営業利益率は7.6%→10.4%へ改善(P8 利益率グラフ参照)となった。利益率の高い新規の家賃保証事業の寄与に加え、高採算の大型物件を含む5物件を売却したことが利益率を大きく押し上げた(下記参照)。成約件数は131件と5四半期連続で100件を超え(過去最高)、収益性の高い後継契約も56件に増加。外食店舗の転貸借物件総数は2,152件(前年同期比14.0%増)となった。
出店・退店の動きは活発であり、現在の事業環境は非常に良好である。当社が得意とする物件は、①比較的小規模で賃料が低額、②立地が良い、③居抜き、などの特徴があり、常に高いニーズがある。不動産販売の四半期売上高は四半期ごとに変動するが、四半期毎に1物件売却、1物件仕入れの目標を達成している(3Qは売却5物件、仕入れ5物件、3Q末在庫3物件)。この事業は、売買取引を通して仲介業者との良好な関係を作り、優良な転貸借候補物件の情報提供を受けることを主目的としているが、最近では既存のオーナー家主からの物件購入希望もあり、紹介不要の安定供給パイプラインが強化されている。新規店舗家賃保証事業に関しては次ページに記載。
収入部門別売上構成の四半期推移(百万円)
テンポイノベーション2023年3月期第3四半期(累計)連結決算概要
パート③ トピック
2022年4月1日より店舗セーフティー株式会社の店舗家賃保証事業がスタート
2020年4月より改正民法が施行され、店舗賃貸物件の家賃保証は、物件の貸主と借主の双方にメリットがある制度として社会的に広がりを見せている。従来では、テナントが申込時に家賃保証契約を締結し、外部の家賃保証事業者に業務を委託していたが、当社は17年以上にわたる2,000件以上の飲食店店舗物件の転貸借経験と独自の審査ノウハウにより、転貸借物件のリスク評価を十分に行うことが可能。この収益源を自社に取り込むことを目的に、2022年3月24日の取締役会で100%子会社を設立することを決議した。
当社によれば、契約時に家賃保証契約が締結され、家賃保証料は賃料の1ヶ月分程度になる。このうち7〜8割を設立した店舗セーフティー株式会社が取り扱い、残りのリスクが高いと判断されるものは外部に委託している。したがって、四半期ごと100件超の契約件数のうち、約80件がグループ収益に直接貢献することになる。本レポートで最初に述べたように、この事業の営業利益率は事実上100%であり、利益成長は契約高の伸びに直結する。収益性の高い後継契約の増加とともに、店舗家賃保証事業が今後の利益率の構造的なドライバーになると思われる。
店舗セーフティー株式会社 店舗物件の家賃保証事業の概要
パート④ 株価
3年間 株価チャート、13週/26週/52週 移動平均、出来高、バリュエーションの推移
主なポイント:
❶現在のPERとEV/EBITDAは、過去の平均値に対してそれぞれ15%のプレミアムがついている。前回、上期の営業利益と親会社株主に帰属する純利益の進捗率に基づき我々が予想した通り、3Q決算で通期ガイダンスが上方修正された
❷自己資本比率は29.4%と一見低いが、これはB/Sに多額の預り保証金が計上されているため。当社は無借金経営であり、B/Sは極めて健全である。
❸期末配当金は、22/3期比4.0円増配の16.00円のガイダンスを開示。
❹短期テクニカル指標は、若干の過熱感を示唆している。14日RSI 91.5、MACD 62.7(シグナル 38.0、ヒストグラム 24.8)、26週移動平均乖離率 +26.8%、52週 +35.5%、ボリンジャーバンド標準偏差 +2.6 (+2.6σ)、ファーストストキャスティクス %K 97.0, %D 88.2。
3年間の相対株価、および5年間の売上総利益、営業利益と利益率のトレンド
過去2年半、株価はTOPIXをアンダーパフォームしていたが、これはCOVID-19で苦戦した外食産業との連想による誤解が主因である。
売上高が2桁成長を回復しただけでなく、後継契約の増加や利益率の極めて高い家賃保証事業が新たに加わったことが構造的な要因となり、利益成長が加速している。
◆COVID-19 に関する市場の誤解で株価はアンダーパフォームし、短期投資のチャンスが生じた。しかしながら、P4 のグラフが指し示す当社事業の長期拡大見通しを鑑みれば、株価には中期的にもまだ大きな上昇余地がある、とオメガインベストメントは考えている。
参考資料
テンポイノベーション中期経営計画
営業力強化・充実のための重点的な取り組み
当社は、以下の中期および長期目標を掲げている。
25年3月期までに営業部門を40名から100名に増員(現在、物件仕入担当14名→30名、テナント探し担当26名→70名)。
29年3月期までに転貸借物件数を5,500店舗にする。
飲食店向け店舗物件の転貸借事業を手掛ける専業企業は当社のみであるため、ヘッドハンティング会社に依頼するだけでは人材確保は実現できない(そもそもそのような人材は存在しない)。従って経営陣は、適切な人材を探し出し、既存の専門スタッフによる高度なOJTを行うことが今後の課題であると認識している。人材には物件の仕様、例えば電気供給のアンペア数、排水管の口径など、大量の技術的な背景知識が必要となる。
当社は営業部の人事戦略を、①営業社員の増員、②高度なOTJ研修、③物件仕入への異動、の3つのポイントに集約している。経営陣は、転貸借用テナント発掘のための営業社員の集中研修は1年間と考えている。具体的には、物件の紹介から転貸借契約締結までの237の項目・ステップについて、専門的な知識の標準的な教育方法を開発している。そして、難易度が高く、戦略的に将来の成長に最も重要な転貸借を目的とした賃貸物件の調達へと有能な人材の異動を行い、配置の最適化をしている。
そして、上記2つ目の長期目標である「転貸借物件数を29年3月期に5,500店舗にする」ために、「④仕入れエリア集中戦略」を採用した。具体的には、約30名の仕入担当者が約1,000の駅エリアと約2,000名の不動産業者をカバーし、さらに乗降客数100万人以上のターミナル駅や大手不動産会社には、複数の調達担当者を配置する。2016年3月期には年間約600件(月50件)の店舗物件の調達を目指す。
株主還元方針
当社は、経営基盤の強化を図りながら安定的な配当を行うことを基本方針としている。2023年3月期の1株当たり配当金(DPS)は2月2日に開示され、2期連続の増配となる。
支払配当金と配当性向の推移
大株主(2022年3月31日現在)