証券コード |
東証PRM:9832 |
時価総額 |
125,865 百万円 |
業種 |
卸売業 |
日本最大のカー用品店。自動車用品の販売と自動車サービスを提供するフランチャイズ店を運営。自動車サービスは、取付、自動車販売・買取、自動車整備・車検、ボディ修理・塗装など。欧州、アジアでも展開。売上高構成比(OPM):国内オートバックス76%(11%)、海外6(-2)、ディーラーBtoBオンラインアライアンス17(1)、その他2(-12)。
新車販売回復、外出機会増、メンテナンス需要増加で好業績が見込まれる。中期ではETC買い替え需要が恩恵に。
半導体不足の影響が緩和され、自動車生産が改善傾向にある。今年上半期に国内で販売された新車の台数は前年同期比17.4%増と大きく回復。カー用品店最大手のオートバックスセブンにもフォローの風となる。
前2023年3月期決算は新車減産やコスト上昇の影響を受けながらも増収増益で着地。続く今期も売上高2430億円(前期比2.9%増)、営業利益123億円(同4.9%増)を計画する。新車生産の回復や外出機会の増加に伴うカーエレクトロニクス・アクセサリーの需要増加に加え、車齢の長寿化に伴うメンテナンス需要の増加が見込まれる。
直近発表の6月国内既存店売上高は前年同月比3.3%増と19カ月連続で前年実績を上回った。成長ドライバーに位置づけるディーラー・BtoB・オンラインアライアンス事業は前期に黒字転換。海外事業も今期は黒字化する見通しで、7月31日に予定する第1四半期(4〜6月)の決算発表も無事通過するものと思われる。
創業50周年を迎える来期は記念配当の実施が期待されるほか、中期的な視点では、「ETC2030年問題」によるETCの買い替え需要発生も想定される。セキュリティ規格の変更に伴うもので、新規格に対応していない機種は使用不可となる。
積極的なROE改善策を待ちたい
当社の特筆すべき経営施策は、積極的な株主還元である。過去10年間の配当性向平均は97%であり、直近の5年間でも85%に及ぶ。一方で、一貫して自社株買いを行ってきた。その結果、金庫株を差し引いた株式数は10年間で11%縮小している。
株価は冴えない
しかしながら株価は不振である。株価は2018年から2021年まで下がり続けた後、2022年には下げ止まりTOPIXも上回った。年初来で7%上昇しているが、TOPIXを12%下回っている。PBRは2020年3月に0.8倍をつけて以来、緩やかに拡大しているものの、未だに0.9倍である。
ROEは趨勢的に改善しているが十分な水準には程遠い
この背景はROEの低水準であろう。5年間平均は5%にすぎない。経営陣はROEは2024年3月期に改善すると予想しているが、その水準は5.8%と、9%前後の東証上場銘柄平均にはるかに及ばない。ROEは趨勢的に向上しており、主要因はコロナ以前からの持続的な営業利益率の上昇である。しかし、投資家の興味を惹く水準にはまだ遠い。JPXからは経営改善要請がきているはずである。策定中の中期経営計画でなんらかの施策が打ち出される可能性は株価のプラス要因である。
Dupont Model
PBR1倍以上での自社株買いを続けたことでBPS成長が鈍化
自社株買いはROEの押し上げ要因だが、2020年まではもっぱらPBR1倍を超える株価での自社株買い入れであったため、BPSの成長が犠牲になった。過去5年間CAGRでは売上+2%でEPSは+7%成長したのだが、BPSは+1%とほぼフラットで時価総額上昇には寄与しなかった。また、本来はROE上昇でPBR拡大が狙えるのだが、ROEは投資家にとって十分なレベルではなく、株式は人気の圏外でマルチプルも拡大することはなかった、と考えられる。
ROIC重視の経営は高く評価される
当社は全社をROICで管理する取り組みを進めており、日本の上場企業としては先進的である。2020年までの5年間での経済価値を生み出せない状況から脱して、ここ数年、ROICスプレッドを順調に拡大させている。この点は評価されるべきであろう。
ROIC-WACC
CFの使途の見直しに株価上昇のチャンスがある
CFを投資に充てることが経営陣の長期方針である。しかし、株価のためには、ROEを10%近くまで改善させるべく、株主還元の軸を配当から自社株買いに移すことが有意義な方策であろう。幸い当社のCF創出は良好である。経営陣は、10年間で1000億円の投資を行い、2032年には売上を5000億円と倍増させる、と述べている。いまのところ、その実現性は占えない。