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Omega Investment株式会社

リケンテクノス (Price Discovery)

BUY

Profile

 コンパウンド、フィルム、食品包材など合成樹脂製品の製造・販売。塩ビコンパウンド国内トップ。建材分野では化粧フィルムに強い。海外売上比率51%。

証券コード
東証PRM:4220
時価総額
56,228 百万円
業種
化学

Stock Hunter’s View

大規模自社株買いのサプライズ。改善要請に対する“本気度”示す。

 11月に入り相場づきが一変したリケンテクノス。建築・土木資材や自動車外装、医療用具などに使用される樹脂コンパウンドをはじめ、廃プラスチック化の流れで需要が期待されるバイオマスコンパウンドや、EV(電気自動車)充電ケーブル・太陽光発電用電線も手掛けるなど切り口は多彩。

 10月30日に2024年3月期第2四半期(4〜9月)決算とともに、通期予想の上方修正を発表した。決算内容自体も良好だったが、同時発表した自社株買いが大きなサプライズとなった。上限70億円・850万株(発行済み株式の13.4%)とかなり大規模なもので、取得期間は2023年11月10日〜2024年1月31日。取得した自己株式は全株消却する予定だ。

 同日は「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」の具体的な取り組みが公表されたタイミングだったが、“有言即実行”の姿勢から会社側の本気度が垣間見られる。当面は需給面での下支え材料になるとみられ、年末にかけて「掉尾の一振」めいた動きも期待されるか。

 通期の業績予想について、営業利益は従来予想を8億円上回る84億円(前期比11.9%増)と最高益予想をさらに上方修正した。2Qで電力料などの各種コストの上昇を想定より抑えることができたほか、円安も追い風となっている。

 

Investor’s View

BUY:当社は世界経済成長をうまく取り込み、CFと経済価値を創出する優れた企業だが、BSの効率性はお粗末。その企業の経営陣が、ついにROEの重要性に目ざめ、鮮やかに動き始めたことは株価に大きくプラスに効くだろう。株価はまだ簿価割れで、現金と有価証券で水膨れしたBSの改善余地は大きい。製品値上げが進み、目先の収益モメンタムは強い。

(出所)会社資料

 当社はCFを創出し、安定的でバランスよく世界経済成長を取り込む、グッドカンパニーである。コロナ禍にもかかわらず、順調に経済価値を創出してきた。しかしながら、経営陣はこれまでCFを有効活用せず、BSは水膨れし、ROEは投資家に魅力ある水準に達することはなかった。

 株式は年初来、順調なアウトパフォーマーである。製品価格引き上げ浸透、旺盛な自動車生産回復、世界経済全般の回復を織り込んできたと思われる。株価は10月30日の会社ガイダンス上方修正と大規模な自社株買い発表でさらに跳ね上がった。しかしながらPBRは依然1倍以下であり、PBR調整後のROEは株価が魅力的な水準にあることを示唆している。

BSは水膨れ

 時価総額560億円に対して、9月末ネットキャッシュは117億円。これに投資有価証券101億円を加味した実質ネットキャッシュは218億円。投資有価証券のほぼ全ては上場日本株式。約30銘柄の株式ポートフォリオは多少の配当があるものの、投資家の目を疑うようなものである。投資有価証券は2023年3月末から16%増えている。日本株が上がったからである。すなわち、日本株式市場が堅調であれば当社のBSは水膨れする。このような財務構造を放置し、ROEもさほど高くない企業に投資家が資金を積極的に投じてこなかったのは当然である。

経営陣はなぜ低PBRなのかを正確に理解している

 10月末発表の会社資料で経営陣は、ROEが着実に改善しBPSも増加しているのにPBRが1倍を下回っているのは、自己資本が積み上がりROEが株主資本コストを上回る水準まで達していないこと、当社の成長性について株主・投資家の評価が得られていないため、と述べている。全くその通りである。2点目に関しては投資家は上でも述べたように、PBR調整後ROEが魅力的な水準にあることを認識すべきであろう。すなわち、株式はアンダーレートされている。

経営陣の資本政策は高く評価される

 こうした状況の中で、JPXの要請により当社は、株価と投資家に目線を向けた施策を発表。同時に、買い入れ後全額償却を前提とした発行済み株式数の13.4%、70億円にのぼる大規模な自社株買いを発動した。具体的には、政策保有株式の縮減、投資と株主還元によりネットキャッシュを残さない、資産を圧縮する一方で適正な財務レバレッジを達成し、自己資本の積み上がりを抑制すること、であり、これらはまさに的を得ている。2025年3月期でROE8%という経営陣の目標の低さは驚きである。しかしながら実際には維持可能なROEの水準は大きく引き上がるのではないかと予想する。順調な改善は株価にプラスに働くであろう。

(出所)会社資料