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Omega Investment株式会社

キッズウェル・バイオ(Company Note – 1Q update)

株価(8/15)232予想配当利回り(23/3予)ー %
52週高値/安値864/229 円ROE(TTM)-32.17 %
1日出来高(3か月)273.2 千株営業利益率(TTM)-58.57 %
時価総額73 億円ベータ(5年間)1.15
企業価値70 億円発行済株式数 31.444 百万株
PER(23/3予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/3実)4.37 倍
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SHED、MCBが最終段階に
GBS–007が順調に出荷、収益に貢献

2023/31Q決算サマリー

 キッズウェル・バイオの2023/3期1Q、SHED(乳歯歯髄幹細胞、Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)の細胞治療事業(再生医療)は順調に進捗。MCB(Master Cell Bank)の開発は最終段階に。当面の収益源であるバイオシミラー(BS)事業は 3品目目のラニビズマブBS(GBS–007)が好調で、売上に大きく貢献。その結果、2023/3期1Qの売上高は、610百万円(前年同期の連結売上高は 303百万円)、営業損失は 37百万円(同 309百万円の損失)となった。

◇株価の考察

 同社株価は2022/3期の決算発表時、2023/3期黒字化を先送りする経営計画の発表を受けストップ安をつけ、その後も下落傾向が続いてきた。1Q決算発表後も、株価の上値が重い状態が続き、同社PBRは過去3年間の平均=9.25を大きく下回っている。投資家は新たな成長ストーリーの判断に時間を要しているもようだ。 一方、今回の1Q決算ではGBS–007の売上が予想以上に好調なことが明らかになり、通期の業績見通しの達成確率は高いと思われる。また、今後、MCBが完成し、同社の擁する複数のSHED開発プロジェクトで具体的な開発・進展が明らかになるなどポジティブなニュースが発表されることになれば、株価反転の兆しが見えてくるだろう。

2023/31Q決算実績

 同社の2023/3期1Q決算は、売上高 601百万円、営業損失 37百万円、四半期純損失は 80百万円となった。2022年4月に、連結子会社の株式会社日本再生医療を株式会社メトセラに譲渡したため、今期より単独決算となる。従って、連結決算であった前年同期と単純比較はできないが、売上高、利益とも大きく進捗、改善している。

 売上面では、BS第3製品目のGBS–007が2021年12月の販売開始後、想定を超える受注を獲得、売上増に大きく寄与した。また、既存のBS、GBS–001、GBS–011の売上も堅調に推移している。

 利益面では、GBS–001の原価低減は引続き進捗しているが、新たなBSであるGBS–007が伸長したことで、粗利率は低下している(但し、前年同期は連結ベースであるため参考値)。販管費中の研究開発費、その他販管費とも、当初予定通りに進捗。MCB及びGBS–007の製造に係るコストが発生するのは2Q以降で1Qでの計上額が限られたため、営業損失は 37百万円と、前年同期比でも大きく損失が縮小した(前年同期は 309百万円の損失、但し連結ベース)。四半期純損失も 80百万円で、同 314百万円より縮小している。

決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
(円)
2019/3 1,021 -3.6 -805 -816 -856 -43.84
2020/3 1,077 -1,161 -1,187 -7,316 -264.65
2021/3 996 -7.5 -969 -991 -1,001 -34.79
2022/3 1,569 57.7 -919 -952 -535 -17.35
2023/3(会予) 2,900 -980 -999 -1,000 -31.82
2022/3 1Q* 303 150.1 -309 -313 -314 -10.50
2023/3 1Q 610 -37 -80 -80 -2.57

* 2023/3期までは、連結決算。2023/3期1Q以降は単独ベース。従って、前年同期比は記していない。2022/3期1Qは連結ベースの数値で参考値

 

出所:同社資料

 BSにおいては、既報の通りGBS–007の売上増に伴う運転資金を確保するために 10億円の銀行借入を6月末に実施。その結果、1Q末の現預金は15.3億円となった。資産合計は、43.0億円と2022/3期末より、8.3億円増加した。

 また、後発事象として、後述のエクイティファイナンスによる第4回無担保転換社債型新株予約権付社債等の発行に伴う約 5億円が、7月14日付けで入金している。

バイオシミラー事業GBS–007の売上が予想を上回る好調

ラニビズマブ(GBS–007): 2021年12月9日より、BS事業3製品目である加齢黄斑変性症の治療薬、抗VEGF抗体薬ラニビズマブBSが開発パートナーである千寿製薬より販売が開始。同BSは、眼科領域では初のBSであるため注目度も高く、販売状況は好調で当初予想を上回る受注を獲得。同社では後述の資金調達により、増産に対応する。

フィルグラスチム(GBS–001)既に提携先より上市されているBS、GBS–001は継続的な原価低減策も講じており、収益性の向上が図られている。なお、GBS–001については、持田製薬が販売中止を決めたと報じられているが、同社の当期業績予想及び中期経営計画には影響がないとされている。

細胞治療事業(再生医療)MCB開発は最終段階に

マスターセルバンク(MCB)構築: SHED事業を進めるにあたっては、研究開発に必要な原料の安定供給体制の確立が重要な要素で、同社では、原料の製造のためドナー募集のChiVo Net、大学病院との提携、ニコン・セル・イノベーション等とのMCB供給体制の構築等を進めている。同社では、MCB確立に必要なGMP製造を2021年10月より開始。現在、MCBの最終的な品質検査試験を実施中であり、MCB構築はほぼ完成に近づいている。2Q以降、MCB完成に伴う売上及び原価が計上される見込みである。

バイオ新薬事業:カイオム・バイオサイエンスと共同研究契約を締結

カイオム・バイオサイエンスとの共同研究: 同社では、将来の重要な成長戦略の一環として、バイオ新薬事業を位置付けている。しかしながら、バイオ新薬の開発には膨大な研究リソースを必要とするため、それぞれの専門分野に強い他社との共同研究が効果的である。カイオム・バイオサイエンス(TYO: 4583)は、抗体医薬品の創薬事業及び創薬支援事業を展開し、抗体医薬品の開発に求められる様々な技術・体制・ノウハウを有している。また、導出品、自社開発品及び導出候補品等、10数品目のパイプラインを擁し、がん領域の抗体医薬品(CBA–1205)は臨床試験を実施中である。同社では、バイオ新薬事業のうち、主に抗体医薬品開発分野において、両社の経営資源、知見、技術などを組み合わせることで、開発候補品の研究活動を加速させることを狙っている。

GBS–007の受注増加に対応した資金調達の実施

 同社では、GBS–007原薬および製剤の受注増への対応、及び長期安定供給等を目的とした製造販売体制に係る設備増強を目的としたファイナンスを実施した。同社のBSの事業モデルは、BSの研究・開発に特化し、製造を原薬製造・製剤会社に、販売は製薬会社に依存している。そのため製薬会社からの発注に対応し、原薬製造会社への発注・前払費用が生じ、運転資金の確保が必要となる。

 同社では、6月、GBS–007の受注増加に対応するための資金調達手段として、銀行からの長期借入(10億円)と、エクイティファイナンス(転換社債 5億円+新株予約権 4億円)による、合計19億円の資金調達を公表した。

 10億円の銀行借入は相当の金額といえるが、GBS–007の今後の確実な収益性が評価されたものといえよう。また、デッドとエクイティを組み合わせることにより、財務規律の安定も考慮されている

 同社によれば、銀行借入は主に運転資金に充当。エクイティファイナンスによる資金調達は、GBS–007の受注増加に対応した中長期的な安定供給体制の強化を目的とした製造能力拡大のための設備増強資金に充てる計画である。

(詳細は、 https://www.kidswellbio.com/LinkClick.aspx?fileticket=EX6nbMZJdlY%3d&tabid=106&mid=390&TabModule550=0 を参照)

2023/3期見通し

 2023/3期通期業績予想の売上高 29億円、営業損失 9.8億円、当期純損失 10億円は期初予想より変更していない。1Q時点での通期予想に対する進捗は、売上高ベースで若干ビハインドとなっているが、今後、SHEDのMCBの完成に伴う売上計上、及びGBS–007の売上が一層伸長することを考慮すると(そのために必要なファイナンスも済んでおり)、十分達成可能と思われる。

◇中期経営計画の見直し:KWB2.0

 同社は、2022/3期決算発表と併せて中期経営計画のアップデート、KWB2.0を公表した。同社のビジョンである「こどもの力になること、こどもが力になれること “KIDS WELL, ALL WELL”」の早期実現を目指すための修正(KWB2.0)としている。

 KWB2.0において、従来からのバイオシミラー事業、バイオ新薬事業は継続するが、SHED(細胞治療)事業への先行投資を積極化。SHEDを基盤に細胞治療・遺伝子治療製品等を創出するオンリーワン企業を目指すとしている。

 そのために、同社では今後、1)第一世代SHEDの早期実用化を目指し、その原料となるSHEDの安定供給体制をMCB完成により早々に確立、2)第二世代SHEDの製品化を目指し、次世代技術を創製する、3)そのために人材及び海外拠点の設立も視野に開発体制を強化する、4)戦略実行のために、海外市場からのエクイティファイナンスも考慮した資金調達、を具体策として掲げている。

 海外拠点の設立による海外での臨床開発や海外の医療機関・アカデミア等とのネットワーク醸成といった新しい施策が公表されており、日本国内での投資・開発資金とそれら海外での事業展開に同社では相当規模の資金が必要であり、国内のみならず海外を視野に入れた調達手法を検討している。

 1Q決算時にはMCBの開発が最終段階にあること以上の発表はなかったが、同社ではKWB2.0の詳細について、2022年11月開示予定の2Q決算発表と同時期に公表するとしており、新しい経営計画の具体的な内容の公表が待たれる。

◇株価動向

 2022/3期Q4のレポートで記したように、当初示していた2023/3期の黒字化の先送りに対する嫌気感から、同社株価は大きく下落してきた。1Q決算発表後も、株価の上値が重い状態が続き、同社PBRは過去3年間の平均=9.25を大きく下回っている。一方、目先GBS–007の売上は好調で、通期の業績見通しについても順調に進んでいる。今後、MCBが完成する等、同社のSHED(再生医療)ビジネスの確実な進捗が確認されれば、同社株価反転の兆しが見えてこよう。

相対株価推移(4584, TOPIX)

PBR推移(4584, 過去3年間, LTM)

パイプライン

バイオ新薬事業

バイオシミラー事業

細胞治療事業(再生医療)

出所:同社資料

財務データ

  2020/3       2021/3       2022/3       2023/3
  1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q
損益計算書                          
売上高 284 30 419 345 121 53 547 276 303 438 642 186 610
売上原価 77 8 359 209 5 35 46 34 122 154 183 91 292
売上総利益 207 22 60 136 116 19 500 242 182 283 460 94 318
販売費及び一般管理費 417 423 381 365 354 463 465 565 491 425 442 580 356
 研究開発費 235 249 201 213 138 265 198 363 297 236 237 380 105
営業利益(損失 -210 -401 -321 -229 -238 -445 36 -323 -309 -142 18 -486 -37
営業外収益 0 0 1 0 0 1 1 1 2 0 0 1 0
営業外費用 2 1 20 4 7 5 4 8 6 8 15 7 43
経常利益(損失) -212 -402 -340 -233 -244 -450 33 -330 -314 -150 4 -493 -80
特別利益 4 0 0 2             418 0
特別損失 5,939 0 0 194 0 1 8 0        
税引前当期純利益(損失) -6,147 -402 -340 -425 -244 -451 26 -331 -314 -148 421 -493 -80
法人税等合計 1 0 3 -2 1 0 0 1 0 1 52 -51 0
当期純利益(損失) -6,147 -403 -342 -424 -245 -451 25 -330 -314 -149 369 -441 -80
                           
貸借対照表                          
流動資産 2,761 2,390 3,238 3,322 3,573 3,218 3,329 3,346 2,794 3,203 3,722 3,326 4,079
 現金同等物及び短期性有価証券 1,654 1,602 2,482 2,033 2,658 2,502 1,830 1,461 874 974 1,253 1,187 1,532
固定資産 330 427 418 270 379 393 340 588 728 656 178 177 225
 有形固定資産 2 2 2 2 2 2 2 3 3 2 2 2 1
 投資その他の資産 328 425 416 268 374 389 336 582 722 651 173 173 220
資産合計 3,091 2,817 3,656 3,592 3,952 3,611 3,670 3,934 3,522 3,859 3,901 3,503 4,304
流動負債 421 550 529 881 772 858 925 1,114 823 1,034 1,045 1,129 1,175
 短期借入金 25 25 25 25 25                
 1年内返済予定の長期借入金                       75 250
固定負債 25 24 1,224 1,224 1,384 1,287 1,231 1,209 1,051 826 718 656 1,485
 長期借入債務     1,200 1,200 1,340 1,240 1,200 1,100 900 700 700 625 1,450
  長期借入金     600 600 600 600 600 600 600 600 600 525 1,350
  転換社債     600 600 740 640 600 500 300 100 100 100 100
負債合計 446 573 1,752 2,105 2,156 2,145 2,156 2,324 1,873 1,860 1,763 1,785 2,661
純資産合計 2,644 2,244 1,904 1,487 1,796 1,466 1,514 1,610 1,648 1,999 2,138 1,719 1,643
株主資本合計 2,644 2,244 1,904 1,487 1,796 1,466 1,514 1,610 1,648 1,999 2,138 1,719 1,444
 資本金 612 612 612 612 842 892 912 1,032 1,150 1,420 1,420 1,421 1,424
 資本剰余金 9,917 9,917 9,917 9,917 10,147 10,197 10,217 10,338 10,456 10,725 10,726 10,727 10.730
 利益剰余金 -7,908 -8,311 -8,653 -9,077 -9,322 -9,773 -9,748 -10,079 -10,393 -10,542 -10,173 -10,614 -10.710
 新株予約権 38 43 51 57 70 82 101 116 134 145 165 185 199
負債純資産合計 3,091 2,817 3,656 3,592 3,952 3,611 3,670 3,934 3,522 3,859 3,901 3,503 4,304
                           
[キャッシュ・フロー計算書]
                         
営業活動によるキャッシュ・フロー
 
-604
 
-1,325
 
-104
 
-1,267
 
-857
 
-1,169
 
 税引前当期純損失
 
-6,548
 
-7,314
 
-695
 
-999
 
-462
 
-533
 
投資活動によるキャッシュ・フロー
 
-106
 
-137
 
-5
 
-22
 
 
526
 
 無形固定資産の取得による支出
 
 –
 
 –
 
 -3
 
-3
 
 –
 
-1
 
 投資有価証券の取得による支出
 
-100
 
-100
 
 –
 
 –
 
 –
 
 –
 
 投資有価証券の売却による収入    –    –    –    –    –   526  
財務活動によるキャッシュ・フロー   40   1,221   579   718   370   369  
 転換社債型新株予約権付社債の
 発行による収入
   –   599   599    599    –    –  
 新株予約権の行使による株式の
 発行による収入
 
40
 
40
 
 –
 
138
 
370
 
369
 
 新株予約権の発行による収入
 
 –
 
3
 
4
 
4
 
 –
 
 –
 
現金及び現金同等物の増減額
 
-670
 
-240
 
468
 
-571
 
-486
 
-273
 
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,009
 
2,009
 
2,032
 
2,032
 
1,461
 
1,462
 
現金及び現金同等物の四半期末残高
 
1,602
 
2,032
 
2,501
 
1,461
 
974
 
1,187
 

注)  2022/3期までは連結ベース。2023/3期1Qより単独決算ベース。キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ1Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成