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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company Note 2Q update)

株価(8/31)167予想配当利回り(22/12予)ー %
52週高値/安値276/156 円ROE(TTM)-84.99 %
1日出来高(3か月)373.0 千株営業利益率(TTM)-280.13 %
時価総額74 億円ベータ(5年間)1.05
企業価値61 億円発行済株式数 44.023 百万株
PER(22/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(21/12実)5.01 倍
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CBA–1535がTribodyTMで初めてとなる臨床試験入り
その他パイプラインも順調に進捗

CBA–1535が臨床第1相試験の投与を開始

 創薬事業は各パイプラインが順調に進捗。同社が近年力を入れているTribodyTMで初めてとなるCBA–1535の臨床第1相試験が6月より開始されたことが注目に値しよう。CBA–1205は第1相試験後半パートにおいて、肝細胞がん患者への投与が開始。また、新たな創薬プロジェクトにおいては、TribodyTMの創薬プロジェクトの研究が進展し、6月に新規特許出願を完了した。各パイプラインの研究・開発は滞りなく進展している。

 同社株価は、各社との提携のアナウンスに反応して動きがあるものの、概ね150〜200+円のボックス圏で推移する状態が続いている。 今後、提携先とのライセンス契約やマイルストーン収入等、具体的な収益に結びつくイベントの公表も見込まれる。株価への好影響を期待したい。

2022/122Q決算実績

 カイオム・バイオサイエンスの2022/12期2Q決算は、売上高 278百万円(前年同期比 27.7%減)、営業損失 779百万円(前年同期は 415百万円の営業損失)となった。前年同期は1QにおいてHenlius社への創薬事業の導出契約一時金(103百万円)を計上したが、今期は創薬支援事業の売上のみとなったことによる。

 創薬事業は、臨床開発が進んだことにより研究開発費が 906百万円と前年同期比 231百万円増加し、そのままセグメント損失 690百万円(前年同期は356百万円の損失)となった。

 創薬支援事業は、引続き国内製薬企業を中心に既存顧客との安定的な取引が継続。売上高 278百万円(前年同期比 3百万円減少)、セグメント利益 151百万円(4百万円減少)に。前年1Qに大型のスポット案件が入っていたことが減収の主要因。セグメント利益率は 54.3%と目標である50%をクリアしている。

 BSにおいては、2022年6月末の総資産は 1,920百万円。 2021年12月末比 419百万円減少した。現預金は 319百万円減少し、1,471百万円に。 また、CBA–1535の治験薬の製造完了に伴い、前渡金を取り崩し当期費用に計上したこともあり、流動資産が 105百万円減少している。純資産合計は 1,476百万円(前期末は 1,893百万円)。新株予約権の行使により資本金及び資本準備金が、それぞれ 180百万円増加したが、当期純損失の計上により利益剰余金が 770百万円減少した。

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2018/12 212 -18.1 -1,539 -1,533 -1,533 -57.26
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12(会予)
2021/12 2Q 384 122.1 -415 -409 -408 -10.16
2022/12 2Q 278 -27.7 -779 -768 -771 -18.17

創薬事業パイプライン

◇パイプラインの進捗状況:

<自社開発品>

CBA–1205国立がん研究センターで実施していた固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートにおいて、高い安全性と忍容性が示された。全ての解析にはもう少々時間を要するが、途中経過では標準治療に不応な患者においてSD(安定)評価が続き4ヶ月以上投与が継続されている患者を複数確認している。第1相試験後半パートに移行し、肝細胞がん患者を対象とした投与を開始した。

 第1相試験後半パートの進捗により、CBA–1205は今後2023〜2025年の導出を想定。導出候補先については、早期に開発パイプラインを拡充したい企業群と、事業性、成功確率を重視する企業群とで、導出のタイミング及び導出一時金の目安が異なるが、同社では様々な導出先候補を検討している。早ければ2023年以降、遅くとも2025年迄には導出一時金の受領による単年度黒字化を目指したいとしている。

CBA–1535同社は2022年2月、PMDAに治験計画届けを提出、6月末より国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院及び静岡県立静岡県がんセンターの2施設において、臨床第1相試験の投与を開始した。臨床第1相試験前半パートにおいて、固形がん患者を対象に安全性評価及び薬効シグナルの評価を実施。後半パートにおいては、がん免疫療法役との併用による効率的な薬効評価を行う。前半パートは2024年前半まで続く予定だが、後半パートを2023年中頃から並行して実施することにより 、安全性及び有効性を最速で確認することを目的とした開発計画を立てている。

 CBA–1535はTribodyTMとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する TribodyTMの適用の可能性が広がることとなる。

<導出候補品>

BMAAこれまでに取得した研究データとともに、セマフォリン3Aの関与する新たな疾患の探索及び導出活動を継続中。

*PCDC;ADC用途を中心とした導出活動の推進、並びに動物試験データを蓄積中。ADCとしてパイプラインを拡充したい製薬企業、及び独自のADC技術を有するADC用の抗体が欲しい製薬企業を、導出戦略・ターゲットして導出活動を継続中。
 また、7月には Heidelberg Pharma社とADC技術導入及びオプション契約を締結。Heidelberg Pharma社のアマニチンを用いた動物モデル薬効薬理データも導出データパッケージに追加し、導出活動を一層本格化した。

*創薬研究プロジェクトTribodyTM分野において、CBA–1535に続き、新たな分子の組み合わせにより強活性のTribodyTM抗体を組成、この分子を含む新規特許出願が2022年6月に完了した。2022年1月のがん領域のプロジェクトの新規特許出願に続き、2件目の特許出願となった。

 同社では、上記を含め常時10テーマ程度の創薬研究を行い、今後の新たな創薬パイプラインの創出に向けた取り組みを継続している。

<導出品>

LIV-1205スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。ADCTが米国国立がん研究所(NCI)と共同で、神経内分泌がんを対象とした臨床試験を準備中である。

*LIV-2008;2021年1月に、中国の Shanghai Henlius Biotech, Inc. とライセンス契約締結。中国、台湾、香港、マカオにおける開発・製造・販売権を許諾している。Henlius 社は、今後のIND申請に向けて複数の開発プランを検討中。更に、他の製薬企業への導出活動も継続中。

◇創薬支援事業の進捗:ロート製薬と委受託契約締結

 2022年7月11日、同社はロート製薬と治療用抗体作成に関する新規のオプション権付き委受託契約を締結した。同社のADLib®︎システムを用いてロート製薬が治療標的とする抗原に対する抗体の取得や取得した抗体の親和性を実施することで対価を受領する。また、作成された抗体が商業化・開発段階に移行する場合、オプション権が行使され、ロート製薬と実施許諾契約を締結する(オプション権の行使期間は同委受託契約にかかる業務終了後5年間)。

 また、富士レビオ社からADLib®︎抗体を用いて開発する診断薬キットが発売されている。

 従来からの国内製薬企業を中心とした既存顧客との取引は着実に継続している。

◇コア技術:ADLib®︎システム/TribodyTMの活用と改良を進化、深化

 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に参画する等、同社のコア技術である、ADLib®︎システムの活用と改良を継続。日本及び欧州において、ADLib ®︎システムの特許査定を受領した。加えて、TribodyTM 技術を利用したがん免疫療法に関する研究成果を学会誌に公表。創薬支援事業に関連する技術の向上を図るとともに、自社開発の創薬パイプラインの強化にも資することが期待されている。

◇ ファイナンス動向:今期中の研究開発資金は確保

 同社は2021年12月15日、第三者割当による第 18 回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、約 17億円の資金調達契約を締結。今年度中の研究開発投資の確保には目処をつけている。2022年7月末時点での未行使残存個数は 43,999個で、45%まで行使が進んだ。

2022/12期通期見通し:創薬支援事業(通期 6.2億円)は計画通り進捗

 2022/12期の業績見通しに関して、同社では継続的な収益が見込まれる創薬支援事業の売上を 620百万円と公表している。現状では想定通りに進捗しているもようである。各パイプラインの進捗に伴い、臨床試験費用や治験薬製造費用が嵩むこと等により、研究開発投資は年間10数億円程度の支出が続くと見込まれる。

◇株価動向:バイオ株調整の影響を受けるも底打ち感(次頁図参照)

 2021年後半以降の世界的なハイテクグロース株調整の余波を受け、国内の創薬ベンチャーの株価も低下傾向が続いてきたが、2022年に入ってからは下げ止まり感が出ている。

 一般的にバイオ創薬の研究・開発には長期間を要し、またその開発リスクも高い。導出一時金やマイルストーン収入実現の可能性はあるが、時期、金額とも未確定という不安要素もある。一方、同社においては治験申請や特許出願といったポジティブなニュースが継続的に発信されている。また創薬プロジェクトは、複数のパイプラインを抱え、CBA–1205、CBA–1535の臨床試験が着実に進捗。投資家へのコミットメントを前倒しで実現してきている。以上の点を考慮すると、現状の株価水準は中長期的視点でリスクを許容できる投資家にとっては、魅力的な投資対象といえるだろう。

株価推移(直近3年間)

相対チャート、4583、TOPIX(直近3年間)

財務データ

(単位:百万円) 2019/12     2020/12     2021/12     2022/12
  1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q
損益計算書                            
売上高 64 77 142 165 91 82 139 169 246 139 157 171 128 149
 創薬事業 0 1 1 28 1 1 0 1 103 0 0 0 0 0
 創薬支援事業 63 76 142 137 90 82 138 168 143 138 157 171 128 149
売上原価 27 26 58 52 61 46 59 70 64 62 78 86 57 69
売上総利益 37 51 84 113 30 36 80 99 182 77 79 84 70 80
販売費及び一般管理費 464 374 503 346 456 346 424 303 337 337 515 568 557 373
 研究開発費 363 273 407 256 343 266 342 206 216 243 401 451 446 245
営業利益 -426 -324 -419 -233 -426 -310 -344 -204 -155 -260 -436 -483 -486 -292
営業外収益 0 1 4 0 2 0 3 0 7 0 2 4 0 16
営業外費用 6 4 4 0 0 2 10 1 1 0 1 6 4 1
経常利益 -432 -327 -418 -233 -425 -311 -351 -205 -150 -259 -434 -486 -491 -278
特別利益 2 1 6 0     0 0       0    
特別損失                            
税引前当期純利益 -430 -326 -412 -233 -425 -310 -351 -205 -149 -247 -433 -636 -491 -278
法人税等合計 1 0 1 0 1 0 1 1 11 1 1 0 1 2
当期純利益 -431 -326 -413 -234 -425 -311 -352 -206 -161 -248 -434 -637 -492 -279
                             
貸借対照表                            
流動資産 3,048 3,206 2,807 2,561 2,309 2,805 3,316 3,249 3,294 3,088 2,675 2,216 2,005 1,792
 現金及び預金 2,776 2,899 2,469 2,106 1,967 2,472 2,881 2,686 2,580 2,302 2,071 1,790 1,744 1,471
固定資産 219 217 242 247 247 249 249 246 244 241 274 122 121 128
 有形固定資産 15 14 12 11 10 9 8 7 6 6 4 4 3 3
 投資その他の資産 204 204 230 236 237 240 241 238 237 235 269 118 117 124
資産合計 3,267 3,423 3,049 2,808 2,556 3,054 3,566 3,495 3,537 3,329 2,950 2,339 2,126 1,920
流動負債 177 207 154 145 315 427 378 343 378 428 468 392 419 390
 短期借入金         142 199 199 180 180 190 199 183 183 188
固定負債 41 41 41 41 42 42 42 42 42 42 53 53 53 54
負債合計 219 248 196 187 357 469 420 385 420 470 522 446 473 444
純資産合計 3,048 3,175 2,853 2,622 2,199 2,585 3,146 3,110 3,118 2,859 2,428 1,893 1,653 1,476
株主資本合計 3,048 3,175 2,853 2,622 2,199 2,585 3,146 3,110 3,118 2,859 2,428 1,857 1,621 1,445
 資本金 5,856 6,084 6,132 6,132 6,133 846 1,303 1,388 1,471 1,471 1,472 1,515 1,642 1,695
 資本剰余金 5,846 6,074 6,122 6,122 6,123 2,446 2,903 2,987 3,071 3,071 3,072 3,115 3,242 3,295
 利益剰余金 -8,682 -9,008 -9,421 -9,655 -10,080 -736 -1,088 -1,294 -1,455 -1,703 -2,136 -2,773 -3,262 -3,544
 新株予約権 28 26 20 22 24 30 28 29 30 19 19 35 31 30
負債純資産合計 3,267 3,423 3,049 2,808 2,556 3,054 3,566 3,495 3,537 3,329 2,950 2,339 2,126 1,920
                             
[キャッシュ・フロー計算書]                            
営業活動によるキャッシュ・フロ   -677   -1,537   -528   -1,361   -560   -1,139   -660
 税引前当期純損失   -755   -1,401   -734   -1,290   -396   -1,466   -768
投資活動によるキャッシュ・フロ     -26      3     -35  
 有価証券の取得    –    –    –     –    –    –  
財務活動によるキャッシュ・フロ   1,248   1,341   894   1,944   176   271   341
 株式の発行   1,249   1,345   697    1,769   166   253   336
現金及び現金同等物の増減額   570   -222   366   580   -384   -895   -319
現金及び現金同等物の期首残高   2,328   2,328   2,105   2,105   2,686   2,686   1,790
現金及び現金同等物の期末残高   2,899   2,105   2,472   2,686   2,301   1,790   1,471

注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ1Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成