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Omega Investment株式会社

キッズウェル・バイオ (Company Note 4Q update)

株価(5/19)272予想配当利回り(23/3予)ー %
52週高値/安値864/254 円ROE(TTM)-32.14 %
1日出来高(3か月)188.2 千株営業利益率(TTM)-58.57 %
時価総額85 億円ベータ(5年間)1.24
企業価値80 億円発行済株式数 31.437 百万株
PER(23/3予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/3実)5.57 倍
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中期経営計画をアップデート
細胞治療事業(再生医療)を一層拡大へ

◇2022/3期通期決算サマリー

 キッズウェル・バイオの2022年3月期通期決算は、前期比 57.5%増収、営業損失は前期とほぼ変わらない9.1億円となった。期初計画との比較では、一部収益の計上のタイミングがずれたこと等により、売上高は計画比 3.3億円の未達、営業損失は縮小した。一方、中期経営計画の見直しを行い、主にSHED(乳歯歯髄幹細胞、Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)の細胞治療事業(再生医療)に注力することを公表。その結果、2023/3月期に計画していた営業黒字の達成が先送りされることとなった。

◇株価動向

 5月12日の決算発表を受け、翌13日、同社株価は一時ストップ安をつけ終値は 358円と前日比大きく下落した。黒字化の見通しが不透明なバイオベンチャーが多い中、同社はバイオシミラー(BS)事業の進展による2023/3期黒字化を示唆してきた。従って、中計見直しによる黒字化の先送りへの投資家の失望が大きかったと思われる。しかしながら、BSは同社が参入した数年前と比較して事業環境が急速に変化してきている。一方、同社の細胞治療事業(再生医療)は順調に進んできており、この時点でのSHEDへの注力は時宜を得たものといって良いだろう。今後、新たな中期経営計画を実現するための資金調達を含めた詳細について、より具体的な内容についての説明が待たれよう。

2022/3期通期決算実績

 同社の2022年3月期通期決算は、前期比 57.5%増収(1,569百万円)、営業損失 9.1億円(前期は 9.6億円の損失)、親会社に帰属する当期純損失は 5.3億円(前期は 10.0億円の損失)となった。

 売上面では、バイオシミラー(BS)GBS-001、GBS-011の売上が計画を上回るとともに、第3製品目のGBS-007が2021年12月より販売を開始し売上に寄与。BS第4製品目の原薬製造プロセスに係る原薬販売も一部計上した。一方で、当初、計上見込みであったSHEDマスターセルバンク(MCB)の完成に伴う売上を次年度に繰り越すこととなったこと等により、通期予想の 19億円には届かなかった。

 利益面では、BSの順調な収益により粗利益ベースで予想を上回る実績。また、子会社(JRM)譲渡によりJRM-001に係る開発を見直す等、開発費の機動的な修正を行ったことにより、研究開発費が当初予想の18億円より大幅に縮小(11.5億円)。その結果、営業損失は当初見込みの 17.2億円から 9.1億円にとどまった。3Q決算時に既報の通り、投資有価証券売却益 4.1億円を計上したため、親会社株主に帰属する当期純損失は前期比 4.6億円減少している。

決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
(円)
2018/3 1,059 -2.7 -913 -903 -904 -47.27
2019/3 1,021 -3.6 -805 -816 -856 -43.84
2020/3 1,077 -1,161 -1,187 -7,316 -264.65
2021/3 996 -7.5 -969 -991 -1,001 -34.79
2022/3 1,569 57.7 -919 -952 -535 -17.35
2023/3(会予)* 2,900 -980 -999 -1,000 -31.82

2023/3期より、⾮連結決算に移⾏するため、個別業績ベースの予想

 

バイオシミラー事業パイプラインの進捗

出所:同社資料

バイオシミラー事業GBS-007が製造販売開始

ラニビズマブ(GBS-007)BS事業3製品目である加齢黄斑変性症の治療薬、抗VEGF抗体薬ラニビズマブBSが開発パートナーである千寿製薬から12月9日より販売が開始。抗VEGF抗体薬市場は国内だけで 2020年度約1,000億円弱と見込まれ、うち直接の競合と考えられるルセンティス(ノバルティスファーマ)だけでも約270億円。眼科領域では初のBSであるため注目度も高い。販売に先立ち原薬を千寿製薬に販売しており、3Qより収益に寄与した。

フィルグラスチム(GBS-001)、ダルベポエチンアルファ(GBS-011) :既に提携先より上市されているBS、GBS-001及びGBS-011については、それぞれ原薬販売、ロイヤリティによる収益が計画を上回るペースで推移。継続的な原価低減策も講じており、収益性の向上が図られている。

第4のBS:上記3品目に加えて、同社では第4のBSの開発が進行中。2022/3期に原薬製造プロセス開発に関わる原薬販売を計上しており、2025年度までの上市を目標としている。

 

細胞治療事業(再生医療):各プロジェクトが進展

 同社が今後の注力事業としている再生医療事業において、以下の各分野での進展がみられた。

マスターセルバンク(MCB)構築MCB確立に必要なGMP製造を、2021年10月より開始した。SHED事業を進めるにあたっては、研究開発に必要な原料の安定供給体制の確立が重要な要素で、同社では、原料の製造のためドナー募集のChiVo Net、大学病院との提携、ニコン・セル・イノベーション等とのMCB供給体制の構築等を進めている。GMP製造の完了により、MCBの完成に向けて更に前進した。

デザイナー細胞2021年12月、株式会社バイオミメティクスシンパシーズ(BMS)社と「デザイナー細胞」の開発に向けた委託開発契約を締結した。BMS社は培地開発技術を保有しており、同社のSHEDと組み合わせることで、骨・神経疾患に適性のあるSHEDの細胞特性を強く残したまま、更に疾患部位指向性を強化した細胞を取得することを目指すとしている。同社は、2021年9月にナノキャリア株式会社と共同研究契約を締結したことを発表しており、他社との提携も梃子に、モダリティ多様化への対応の一環としての「デザイナー細胞」開発に注力してゆく。

JRMの株式をメトセラに譲渡同社は 2022年4月、子会社である株式会社日本再生医療(JRM)の株式を株式会社メトセラに譲渡することを決定した。メトセラとは2022年1月に業務提携を開始していたが、JRMの有する心臓内幹細胞を活用した再生医療等製品の開発はメトセラが主体となって進めることが最適であるとの結論に達したため。同社では引き続きJRMの開発支援を行うとしている。なお、今回の株式譲渡に伴い同社の保有するJRMに対する債権(5.7億円)を放棄するとともに、メトセラの株式を取得することとなった。

 

2023/3期見通し

 同社は2023/3期通期業績予想を、売上高 29億円、営業損失 9.8億円、当期純損失 10億円と公表した。子会社の株式譲渡により連結子会社が存在しなくなったことにより、予想は個別業績ベースとなる。2022/3期に計画していた一部売上が、2023/3期に計上される予定で売上高は大きく伸長する見込み。一方で、研究開発費用において、2022年3月期と比較しJRM-001に関連する開発費用が無くなったものの、下記、中期経営計画の見直しによりSHED等への成長投資を拡大する。その結果、2023/3期に前倒して達成するとしていた収益の黒字化は先送りすることとなった。

 

◇中期経営計画の見直し:KWB2.0

 同社では、決算と併せて中期経営計画のアップデートを公表した。同社の強みを活かしながら同社のビジョンである「こどもの力になること、こどもが力になれること “KIDS WELL, ALL WELL”」の早期実現を目指すための修正(KWB2.0)としている。

 修正の理由として、先ずBS市場の外部環境の変化をあげている。同社はBSの先行企業として実績を積んできたが、バイオセイムの市場参入もありBS事業の収益性が予想より早く低下して来たと認識。今後、十分な収益性を確保できるBSプロジェクト数が減少することも想定され、BS事業のみに依存した収益構造からの脱却が早まったとの判断に至った。

 一方で、近年注力して来ている細胞治療事業(再生医療)は順調に開発が進んできており、独自性のあるSHEDを基盤に細胞治療・遺伝子治療製品等を創出するオンリーワン企業を目指すことが、同社のビジョンを早期に実現し、結果として企業価値の向上にも資するとの経営判断に至ったもようだ。

 同社の過去10年程の株価の推移を見ても、BS3製品を着実に上市してきたものの、BSの上市による業績拡大だけでは株式市場での評価は十分得られなかったと経営陣は認識している。

 

KWB2.0 -SHED(細胞治療)のブレイクスルーに向け先行投資を拡大-

出所:同社資料

 

 今回のSHED事業の強化にあたり、同社では、1)第一世代SHEDの早期実用化を目指し、安定供給体制を早々に確立、2)第二世代SHEDの製品化を目指し、次世代技術を創製する、3)そのために人材及び海外拠点の設立も視野に開発体制を強化する、4)戦略実行のために、海外市場からのエクイティファイナンスも考慮した資金調達、を具体策として掲げている。

 海外拠点の設立による海外での臨床開発や海外の医療機関・アカデミア等とのネットワーク醸成といった新しい施策が公表されており、それら海外での事業展開に同社では 50億円以上の資金が必要としている。日本国内での投資・開発資金と合わせて、総額では100億円以上の資金が必要と見込んでおり、その資金確保にあたっては海外での調達も視野にいれているとのこと。同社では、海外経験の豊富な人材も多数抱えているが、一段と大きな投資、チャンレンジとなろう。

 今回の見直しにより、目先の収益黒字化は先送りとなるが、一方で細胞治療事業(再生医療)の市場のポテンシャル、同分野における同社の競争力に同社経営陣は自信を深めている。KWB2.0の詳細については、2022年11月開示予定の2Q決算発表と同時期に公表するとしている。新しい経営計画の元での同社の今後の動向について注視していきたい。

相対株価推移(4584, TOPIX)

財務データ

  2020/3       2021/3       2022/3      
  1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
損益計算書                        
売上高 284 30 419 345 121 53 547 276 303 438 642 186
売上原価 77 8 359 209 5 35 46 34 122 154 183 91
売上総利益 207 22 60 136 116 19 500 242 182 283 460 94
販売費及び一般管理費 417 423 381 365 354 463 465 565 491 425 442 580
 研究開発費 235 249 201 213 138 265 198 363 297 236 237 380
営業利益(損失 -210 -401 -321 -229 -238 -445 36 -323 -309 -142 18 -486
営業外収益 0 0 1 0 0 1 1 1 2 0 0 1
営業外費用 2 1 20 4 7 5 4 8 6 8 15 7
経常利益(損失) -212 -402 -340 -233 -244 -450 33 -330 -314 -150 4 -493
特別利益 4 0 0 2             418 0
特別損失 5,939 0 0 194 0 1 8 0        
税引前当期純利益(損失) -6,147 -402 -340 -425 -244 -451 26 -331 -314 -148 421 -493
法人税等合計 1 0 3 -2 1 0 0 1 0 1 52 -51
当期純利益(損失) -6,147 -403 -342 -424 -245 -451 25 -330 -314 -149 369 -441
貸借対照表                        
流動資産 2,761 2,390 3,238 3,322 3,573 3,218 3,329 3,346 2,794 3,203 3,722 3,326
 現金同等物及び短期性有価証券 1,654 1,602 2,482 2,033 2,658 2,502 1,830 1,461 874 974 1,253 1,187
固定資産 330 427 418 270 379 393 340 588 728 656 178 177
 有形固定資産 2 2 2 2 2 2 2 3 3 2 2 2
 投資その他の資産 328 425 416 268 374 389 336 582 722 651 173 173
資産合計 3,091 2,817 3,656 3,592 3,952 3,611 3,670 3,934 3,522 3,859 3,901 3,503
流動負債 421 550 529 881 772 858 925 1,114 823 1,034 1,045 1,129
 短期借入金 25 25 25 25 25              
固定負債 25 24 1,224 1,224 1,384 1,287 1,231 1,209 1,051 826 718 656
 長期借入債務     1,200 1,200 1,340 1,240 1,200 1,100 900 700 700 625
  長期借入金     600 600 600 600 600 600 600 600 600 525
  転換社債     600 600 740 640 600 500 300 100 100 100
負債合計 446 573 1,752 2,105 2,156 2,145 2,156 2,324 1,873 1,860 1,763 1,785
純資産合計 2,644 2,244 1,904 1,487 1,796 1,466 1,514 1,610 1,648 1,999 2,138 1,719
株主資本合計 2,644 2,244 1,904 1,487 1,796 1,466 1,514 1,610 1,648 1,999 2,138 1,719
 資本金 612 612 612 612 842 892 912 1,032 1,150 1,420 1,420 1,421
 資本剰余金 9,917 9,917 9,917 9,917 10,147 10,197 10,217 10,338 10,456 10,725 10,726 10,727
 利益剰余金 -7,908 -8,311 -8,653 -9,077 -9,322 -9,773 -9,748 -10,079 -10,393 -10,542 -10,173 -10,614
 新株予約権 38 43 51 57 70 82 101 116 134 145 165 185
負債純資産合計 3,091 2,817 3,656 3,592 3,952 3,611 3,670 3,934 3,522 3,859 3,901 3,503
[キャッシュ・フロー計算書]                        
営業活動によるキャッシュ・フロー   -604   -1,325   -104   -1,267   -857   -1,169
 税引前当期純損失   -6,548   -7,314   -695   -999   -462   -533
投資活動によるキャッシュ・フロー   -106   -137   -5   -22     526
 無形固定資産の取得による支出    –    –    -3   -3    –   -1
 投資有価証券の取得による支出   -100   -100    –    –    –    –
 投資有価証券の売却による収入    –    –    –    –    –   526
財務活動によるキャッシュ・フロー   40   1,221   579   718   370   369
 転換社債型新株予約権付社債の発行による収入    –   599   599    599    –    –
 新株予約権の行使による株式の発行による収入   40   40    –   138   370   369
 新株予約権の発行による収入    –   3   4   4    –    –
現金及び現金同等物の増減額   -670   -240   468   -571   -486   -273
現金及び現金同等物の期首残高   2,009   2,009   2,032   2,032   1,461   1,462
現金及び現金同等物の四半期末残高   1,602   2,032   2,501   1,461   974   1,187

注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ1Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成