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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company Note 1Q update)

株価(5/26)168予想配当利回り(22/12予)ー %
52週高値/安値386/156 円ROE(TTM)-59.16 %
1日出来高(3か月)351.7 千株営業利益率(TTM)-207.58 %
時価総額71 億円ベータ(5年間)1.13
企業価値54 億円発行済株式数 42.497 百万株
PER(22/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(21/12実)3.74 倍
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CBA-1535の国内臨床に向けて進捗
新規創薬プロジェクトも、2件特許出願段階へ

自社開発品が2品目臨床段階へ。パイプライン研究開発は順調に進捗

 創薬事業は、各パイプラインが順調に進捗。CBA-1535は国内での治験届を提出し、今年半ばからの患者への投与に向けて調整中。 CBA-1205は第1相試験後半パートに向けて、種々手続きが進行している。 また、新たな創薬プロジェクトも特許出願段階へ。2022/12期1Qの決算は想定通りでサプライズは無し。創薬支援事業の売上 128百万円を計上、営業損失は 486百万円に拡大した。

 バイオ関連の株価は下落傾向が続いてきたが、今年に入ってから下げ止まった感がある。同社株価も 150〜200+円のボックス圏で推移している。 今後、提携先とのライセンス契約やマイルストーン収入等、具体的な収益に結びつくイベントの公表も期待されており、引続き同社株価の動向を注視したい。

2022/121Q決算実績

 カイオム・バイオサイエンスの2022/12期1Q決算は、売上高 128百万円(前年同期比 47.8%減)、営業損失 486百万円(前年同期は 155百万円の営業損失)となった。前年同期は、創薬事業において導出契約一時金(103百万円)を計上しており、今期はそれが無くなったため。

 創薬事業は、CBA-1535の治験薬の製造完了に伴う費用を計上した結果、研究開発費が 446百万円と前年同期比 229百万円増加、セグメント損失は 446百万円(前年同期は113百万円の損失)となった。

 創薬支援事業は、引続き国内製薬企業を中心に既存顧客との安定的な取引が継続。売上高 128百万円(10.1%減)、セグメント利益 70百万円(10.7%減)に。前年同期に大型のスポット案件が入っていたことが減収の主要因。また、Q1だけでみると、今期より導入された新たな「収益認識に関する会計基準」も若干影響している。セグメント利益率は 55.1%と目標である50%をクリアしている。

 BSにおいては、2022年3月末の現預金は 1,744百万円。2021年12月末比 46百万円減少。また、CBA-1535の治験薬の製造完了に伴い、前渡金を取り崩し当期費用に計上したこともあり、流動資産は 211百万円減少している。新株予約権の行使により資本金及び資本準備金が、それぞれ 126百万円増加したが、当期純損失の計上により利益剰余金が 488百万円減少した結果、純資産合計は 1,653百万円(前期末は 1,893百万円)。負債純資産合計では 2,126百万円となった(同 2,339百万円) 。自己資本比率は2021年12月末の 79.4%から 3.1pt 低下し、76.3%となっている。

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2018/12 212 -18.1 -1,539 -1,533 -1,533 -57.26
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12(会予)
2021/12 1Q 246 171.1 -155 -149 -160 -4.00
2022/12 1Q 128 -47.8 -486 -491 -492 -11.66

創薬事業パイプライン

2022年5月13日時点
出所:同社資料

パイプラインの進捗状況

<導出品>

LIV-1205スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。ADCTが米国国立がん研究所(NCI)と共同で、神経内分泌がんを対象とした臨床試験を準備中である。

*LIV-2008;2021年1月に、中国の Shanghai Henlius Biotech, Inc. とライセンス契約締結。中国、台湾、香港、マカオにおける開発・製造・販売権を許諾している。Henlius 社は、今後のIND申請に向けて複数の開発プランを検討中。更に、他の製薬企業への導出活動も継続中。

<自社開発品>

CBA-1205国立がん研究センターで実施していた固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートにおいて、高い安全性と忍容性が示された。標準治療に不応な患者において、半年以上投与が継続された例も複数確認。開発スケジュールは順調に進捗している。 現在、肝細胞がん患者を対象とした第1相試験後半パートの患者の登録手続き、及び治験実施施設における手続きが進行中。第1相試験後半パートの進捗によって、2023〜2025年の導出を目指しており、導出一時金の受領が実現すれば単年度黒字化も期待される。

CBA-1535Tribody の製造法を確立し、GMP原薬及び治験薬の製造が完了。2月16日、PMDAに治験届けを提出した。Tribodyとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する Tribodyの適用の可能性が広がることとなる。

<導出候補品>

BMAAこれまでに取得した研究データとともに、セマフォリン3Aの関与する新たな疾患の探索及び導出活動を継続中。

*PCDC;ADC用途を中心とした導出活動の推進、並びに動物試験データを蓄積。2021年7月に世界知的所有権機関で出願特許情報が公開。標的分子はCDCP1で、固形がん(肺がん、頭頸部がん、食道がん、大腸がん、子宮頸がん等)を対象疾患とするファーストインクラスの抗体である。導出活動を継続中。

*創薬研究プロジェクト同社では、常時10テーマ程度の創薬研究を行い、今後の新たな創薬パイプラインの創出に向けた取り組みを継続している。具体的な標的分子は、特許公開まで非開示であるが、がん/中枢神経/自己免疫疾患等をターゲット領域としている。
そのうち、2つの重点プロジェクトに特に注力。2022年1月に、がん領域のプロジェクトで新規特許出願が完了。Tribodyに関連する新規創薬プロジェクトの研究が進展しており、 2022年中の特許申請が見込まれている(前ページ図、最下段)。

◇創薬支援事業の進捗:中外製薬グループとの委託契約研究延長

 創薬事業に多額の研究開発費の投資が必要である同社にとって、創薬支援事業は安定的な収益源として重要である。国内製薬企業を中心とした既存顧客との取引は着実に進行中。

◇コア技術:ADLib®︎システム/Tribodyの活用と改良を進化、深化

 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に参画する等、同社のコア技術である、ADLib®︎システムの活用と改良を継続。日本及び欧州において、ADLib ®︎システムの特許査定を受領した。加えて、TribodyTM 技術を利用したがん免疫療法に関する研究成果を学会誌に公表。創薬支援事業に関連する技術の向上を図るとともに、自社開発の創薬パイプラインの強化にも資することが期待されている。

◇ ファイナンス動向:今期中の研究開発資金は確保

 同社は2021年12月15日、第三者割当による第 18 回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行し、約 17億円の資金調達契約を締結。今年度中の研究開発投資の確保には目処をつけている(4月末時点での行使状況は約 26%)。同社では、引続き研究開発投資を緩めることなく続けてゆく計画。今後の創薬支援事業の収支動向及びマイルストーン収入等の状況にもよるが、来期以降のファイナンスについてはフレキシブルに対応する。

2022/12期通期見通し:創薬支援事業(通期 6.2億円)は計画通り進捗

 2022/12期の業績見通しに関して、同社では継続的な収益が見込まれる創薬支援事業の売上 620百万円を公表している。創薬プロジェクトの進捗によっては、契約一時金やマイルストーン収入が入る可能性もあるだろう。一方、各パイプラインの進捗に伴い、臨床試験費用や治験薬製造費用が嵩むこと等により、研究開発投資は年間10数億円程度の支出が続くことが見込まれる。

◇株価動向:バイオ株調整の影響を受けるも底打ち感(次頁図参照)

 2021年後半以降の世界的なハイテクグロース株調整の余波を受け、国内の創薬ベンチャーの株価も低下傾向が続いてきたが、5月に入ってからは下げ止まり感が出ている。

 同社株価は、2021年7月8日に同年の高値(386円)をつけた後、バイオ株下落のトレンドに引き摺られてきた。一方で、同社の創薬プロジェクトは着実に進捗しており、治験申請や特許出願といったポジティブなニュースも継続的に発信されている。今後、提携先とのライセンス契約やマイルストーン収入等、具体的な収益に結びつくイベントの公表による株価上昇にも期待したい。

株価推移(直近3年間)

相対チャート、4583、TOPIX(直近3年間)

財務データ

  2019/12       2020/12       2021/12       2022/12
  1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q
損益計算書                          
売上高 64 77 142 165 91 82 139 169 246 139 157 171 128
 創薬事業 0 1 1 28 1 1 0 1 103 0 0 0 0
 創薬支援事業 63 76 142 137 90 82 138 168 143 138 157 171 128
売上原価 27 26 58 52 61 46 59 70 64 62 78 86 57
売上総利益 37 51 84 113 30 36 80 99 182 77 79 84 70
販売費及び一般管理費 464 374 503 346 456 346 424 303 337 337 515 568 557
 研究開発費 363 273 407 256 343 266 342 206 216 243 401 451 446
営業損失 -426 -324 -419 -233 -426 -310 -344 -204 -155 -260 -436 -483 -486
営業外収益 0 1 4 0 2 0 3 0 7 0 2 4 0
営業外費用 6 4 4 0 0 2 10 1 1 0 1 6 4
経常損失 -432 -327 -418 -233 -425 -311 -351 -205 -150 -259 -434 -486 -491
特別利益 2 1 6 0     0 0       0  
特別損失                          
税引前当期純損失 -430 -326 -412 -233 -425 -310 -351 -205 -149 -247 -433 -636 -491
法人税等合計 1 0 1 0 1 0 1 1 11 1 1 0 1
当期純損失 -431 -326 -413 -234 -425 -311 -352 -206 -161 -248 -434 -637 -492
貸借対照表                          
流動資産 3,048 3,206 2,807 2,561 2,309 2,805 3,316 3,249 3,294 3,088 2,675 2,216 2,005
 現金及び預金 2,776 2,899 2,469 2,106 1,967 2,472 2,881 2,686 2,580 2,302 2,071 1,790 1,744
固定資産 219 217 242 247 247 249 249 246 244 241 274 122 121
 有形固定資産 15 14 12 11 10 9 8 7 6 6 4 4 3
 投資その他の資産 204 204 230 236 237 240 241 238 237 235 269 118 117
資産合計 3,267 3,423 3,049 2,808 2,556 3,054 3,566 3,495 3,537 3,329 2,950 2,339 2,126
流動負債 177 207 154 145 315 427 378 343 378 428 468 392 419
 短期借入金         142 199 199 180 180 190 199 183 183
固定負債 41 41 41 41 42 42 42 42 42 42 53 53 53
負債合計 219 248 196 187 357 469 420 385 420 470 522 446 473
純資産合計 3,048 3,175 2,853 2,622 2,199 2,585 3,146 3,110 3,118 2,859 2,428 1,893 1,653
株主資本合計 3,048 3,175 2,853 2,622 2,199 2,585 3,146 3,110 3,118 2,859 2,428 1,857 1,621
 資本金 5,856 6,084 6,132 6,132 6,133 846 1,303 1,388 1,471 1,471 1,472 1,515 1,642
 資本剰余金 5,846 6,074 6,122 6,122 6,123 2,446 2,903 2,987 3,071 3,071 3,072 3,115 3,242
 利益剰余金 -8,682 -9,008 -9,421 -9,655 -10,080 -736 -1,088 -1,294 -1,455 -1,703 -2,136 -2,773 3,262
 新株予約権 28 26 20 22 24 30 28 29 30 19 19 35 31
負債純資産合計 3,267 3,423 3,049 2,808 2,556 3,054 3,566 3,495 3,537 3,329 2,950 2,339 2,126
[キャッシュ・フロー計算書]
                         
営業活動によるキャッシュ・フロー   -677   -1,537   -528   -1,361   -560   -1,139  
 税引前当期純損失   -755   -1,401   -734   -1,290   -396   -1,466  
投資活動によるキャッシュ・フロー     -26      3     -35  
 有価証券の取得    –    –    –     –    –    –  
財務活動によるキャッシュ・フロー   1,248   1,341   894   1,944   176   271  
 株式の発行   1,249   1,345   697    1,769   166   253  
現金及び現金同等物の増減額   570   -222   366   580   -384   -895  
現金及び現金同等物の期首残高   2,328   2,328   2,105   2,105   2,686   2,686  
現金及び現金同等物の期末残高   2,899   2,105   2,472   2,686   2,301   1,790  

単位:百万円
注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ1Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成