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Omega Investment株式会社

中外炉工業 (Company note – Basic report)

株価(7/8)4,020 円予想配当利回り(27/3予)4.5 %
52週高値/安値5,220/3,245 円ROE(26/3実)15.7 %
1日出来高(3か月)37.7 千株営業利益率(26/3実)7.71 %
時価総額313.6 億円ベータ(5年間)0.44
企業価値221.3 億円発行済株式数 7.800 百万株
PER(27/3予)11.6 倍上場市場 東証プライム
PBR(26/3実)0.93 倍
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工業炉と工業用バーナーの国内トップ。カーボンニュートラルに中長期的商機到来、企業価値向上にも正攻法で取り組む。新社長のもと、次の中計に対する期待高まる

サマリー

中外炉工業概要:「サーモテックで未来をひらく」を掲げる国内工業炉トップ企業。技術志向が強く、1945年に設立以来、100種類を超える工業炉の開発実績を誇り”工業炉のデパート”と呼ばれている。工業炉に関する幅広い知見が強みである。

工業炉に求められるカーボンニュートラル対応:日本のCO2排出量の約3割を製造業が占め、とりわけ金属加熱に代表される熱プロセスでは工業炉のウエイトが高いため、そのカーボンニュートラル対応は重要な課題だ。国内の工業炉は約37,000基あり、そのうち同社の手がけたものは5,000-7,000基である。これら同社製の工業炉が産み出すCO2排出量は年1,200万トン(基準年2013年度)であり、日本全体の排出量の1%に相当する。カーボンニュートラルを実現するためにはこの排出量を実質的に100%削減する必要があり、同社にとって重要な商機である。

カーボンニュートラルを商機ととらえる中期経営計画:同社はこうした背景を踏まえ、2022年5月13日「中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)」を発表した。これは「カーボンニュートラルを中心に新市場の創出」、「既存商品ブラッシュアップで拡販と利益向上」、「働きがいのある職場作り 」という3つの重要戦略を推進し、最終年度である2027年3月期に、売上高415億円、営業利益36.2億円(売上高営業利益率8.7%)、ROE10.0%を目指すというものである。その進捗は概ね順調だ。

PBR1倍定着に向けて:同社はPBR1倍の達成と定着に向けて「企業価値向上に向けた取り組み」に従った諸施策を実行している。現在は7つの項目に取り組んでおり、ほぼ達成済みである。株式市場ではこのような経営方針を好感しPBRの水準が切り上がり1倍近辺で推移している。

業績動向:足元の業績は堅調だ。2026年3月期連結決算は、受注高こそ371億円(前年度比6%減)となったものの、売上高は373億円(同3%増)、営業利益、経常利益はそれぞれ29億円(同5%増)、31億円(同4%増)となった。5期連続の増収、営業増益である。政策保有株式の売却も着実に進め、ROEは15.7%、1株当たり期末配当金は166円(同16円増)になった。

 2027年3月期業績見通しは、事業環境の不透明さも残るため中期経営計画に対して受注高、売上高はやや未達になるものの、営業利益・経常利益は着地目標通り、親会社株主に帰属する当期純利益は上振れを見込んでいる。受注高387億円(同4%増)、売上高403億円(同8%増)、営業利益36.2億円(同26%増)、経常利益37.2億円(同20%増)、親会社株主に帰属する当期純利益25.2億円(同46%減)、一株当たり配当金180円(同14円増)である。なお政策保有株式売却を除く予想ROEは8.0%である。

株価動向とカタリスト:直近の株価(4,100円)は現在の中期経営計画の進捗を受けて上昇を続け、PBRは1倍近辺にまで回復している。ただし2027年3月期業績見通しが中期経営計画の着地に対して大幅に上振れなかったこと、受注高の勢いがやや鈍ったことから、足元の株価は足踏みしている。

 2026年4月から社長が交代し、次の中期経営計画の策定作業中である。今期の業績の進捗も重要だが、カーボンニュートラルをはじめとする同社の得意領域によって中長期の業績ポテンシャルがどこまで高まるのかがより重要だ。ROEの10%超えが定着し、PBRが1倍を有意に超えていくのか、新社長のイニシアティブに注目が集まりそうだ。

目次

サマリー1
主要財務データ2
会社概要3
 沿革3
 グループ概要4
事業概要5
 工業炉市場5
 工業炉と工業用バーナーの国内トップメーカー、技術立社を標榜7
 セグメント構成9
 長期業績推移10
中外炉グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)12
 重要戦略116
 重要戦略220
 重要戦略 3 21
決算動向22
 2026/3期決算実績22
 2027/3期業績見通し23
企業価値向上に向けた取り組み24
株価動向とカタリスト26
財務データ29
企業データ30
 企業概要/沿革30
 経営陣31
 取締役のスキルマトリックス/コーポレートガバナンス体制32
 大株主の状況/所有者別株主分布状況33

主要財務データ

単位: 百万円 2022/3 2023/3 2024/3 2025/3 2026/3 2027/3CE
売上高 26,317 27,976 29,283 36,247 37,332 40,300
EBIT(営業利益) 1,264 1,310 1,479 2,737 2,879 3,620
税引前収益 1,594 1,699 3,129 4,222 6,426  
親会社株主帰属利益 1,360 1,231 2,197 2,998 4,668 2,516
現金・預金 11,130 7,884 10,061 4,392 10,821  
総資産 38,141 41,178 48,863 48,736 51,282  
債務合計 3,988 3,988 7,288 5,507 4,445  
純有利子負債 -7,142 -3,896 -2,773 1,115 -6,376  
負債総額 14,928 17,134 21,092 20,125 19,798  
株主資本 23,068 23,860 27,570 28,329 31,201  
営業活動によるキャッシュフロー 6,090 -2,500 -891 -3,696 6,427  
設備投資額 216 244 1,355 723 1,318  
投資活動によるキャッシュフロー 510 -63 550 654 2,588  
財務活動によるキャッシュフロー -2,508 -727 2,451 -2,701 -2,641  
フリーキャッシュフロー 5,963 -2,688 -2,161 -4,419 5,413  
ROA (%) 3.55 3.10 4.88 6.14 9.33  
ROE (%) 6.08 5.25 8.54 10.73 15.68  
EPS (円) 177.2 162.0 293.8 407.6 643.7 347.7
BPS (円) 3,005.3 3,146.7 3,709.0 3,859.0 4,311.2  
一株当り配当(円) 70.00 70.00 80.00 150.00 166.00 180.00
発行済み株式数 (百万株) 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80  

出所:同社資料より Omega Investment 作成

会社概要

 中外炉工業は、「熱技術を核として新しい価値を創造し、これを通じて社会に貢献するとともに企業の反映と社員の幸福を実現する。」を経営理念とする、工業炉と工業用バーナーの国内トップメーカーであり、100種類を超える工業炉の開発実績を誇り、”工業炉のデパート”と呼ばれている。「サーモテックで未来をひらく」を掲げ、1945年の創業以来培った熱技術・エンジニアリング力・先進技術の基盤技術をもとに、鉄鋼・自動車・情報通信産業に対して工業炉等を提供している。現在、経営ビジョン2026「自らを変革し、カーボンニュートラル技術で未来をひらく!」に基づき、中期経営計画(2022年度〜2026年度)において同社はカーボンニュートラル技術による社会貢献と企業価値拡大を目指しており、株式市場の注目度が高まっている。

沿革

 同社は1945年に設立、1950年代にかけて熱技術を確立し工業炉を国内に普及させた。その契機は1954年にサーフェス・コンバッション社(米国)と結んだ技術提携であり、国産初のバッチ式ガス浸炭炉を完成させ、雰囲気熱処理法を日本に本格的に普及させた。これによって表面強度の高い金属部品を均一の精度で量産することが可能になり、自動車産業の発展の礎になった。翌1955年には鉄鋼、非鉄金属、電機、ガラスなど幅広い産業分野に最新鋭の工業炉の納入を開始した。1966年、上下焚ウォーキングビーム型加熱炉を開発、鉄鋼業界の発展を支えた。なお浸炭炉については最近では2014年に量産型真空浸炭炉“ハイファルコン”を開発・受注している。

 1960年代以降、環境対応も含む形で事業領域を拡大させてきた。1961年に各種コーティングライン、タイヤコード熱処理ライン、抄紙機用フードなど産業機械の製作を開始、1970年代の石油ショックを経て省エネバーナーを開発、1973年に下水汚泥焼却設備を起点に環境保全の分野に進出、1988年にインラインスパッタリング装置で情報・通信分野に進出、1994年に蓄熱脱臭装置で大気浄化分野へ進出、1996年にPDP(プラズマ・ディスプレー・パネル)製造装置でディスプレー分野へ進出、2004年に液晶・有機EL用超高精度塗工・乾燥システムを発売、2009年に太陽電池製造設備を開発・受注、2010年に昭和シェル石油株式会社とCIS太陽電池生産技術を共同開発、2018年にトヨタ自動車と共同で工業利用を目的とした世界初の汎用水素バーナーを開発し2023年にトヨタ自動車の製造工程にて稼働開始、2019年にフレキシブル有機EL基板用精密塗工システムを受注、2020年にアンモニアのみを燃料とする燃焼技術を大阪大学と共同研究し開発、2022年に水素燃焼式排ガス処理装置を受注している。

 海外展開は、1987年に台湾、2005年に中国、2012年にインドネシアおよびタイ、2016年にメキシコに拠点を設けてきた。

 また、2023年11月に堺事業所内に新研究所「熱技術創造センター」を開設した。その狙いは、製造プロセスにおいて多くのエネルギーを消費する工業炉や産業機械の脱炭素化を推進するため、アンモニア燃焼、水素燃焼、電化といった次世代の燃焼技術や、高効率な省エネルギー技術の開発を重点的に行うことである。

 なお、株式は1962年に大阪証券取引所市場第二部に上場、1969年大阪証券取引所市場第一部に上場、1970年に東京証券取引所市場第一部に上場、2022年に市場第一部からプライム市場へ移行している(P30の沿革表も参照) 。

グループ概要

 当社グループは、当社及び子会社7社で構成され、熱処理事業(主に自動車、機械、半導体、化学、電池製造関連)、プラント事業(主に鉄鋼、非鉄、窯業関連)、開発事業(主に脱炭素関連、精密塗工・乾燥関連、廃棄物処理・リサイクル関連)の3分野における、工業炉・産業機械・環境設備・燃焼設備についての設計・製作・施工及び燃焼機器などの製作・販売を主な内容とし、さらに各事業に付帯するエンジニアリング、研究開発並びにその他のサービスなどの事業活動を展開している。

同社グループの概要と商品の流れ

出所:同社資料

 同社の事業拠点をみると、国内では本社(大阪市中央区)、堺事業所、堺センター、小倉工場、東京支社、名古屋営業所が主要なものであるが、生産・研究開発などは堺事業所が担っている。海外では上海、台湾、タイ、インドネシア、メキシコに拠点を持つ。また米国と韓国には技術輸出にかかわるパートナーがいる。

堺事業所

出所:同社資料

事業概要

工業炉市場

 工業炉は、金属部品の特性を決める重要な製造プロセスを担っており、製造業のサプライチェーンの川上から川下まで幅広く使用されている。ユーザーの業界も、鉄鋼、自動車、電気、電子等幅広い。

 熱源別では、熱源が天然ガス等である燃焼炉と熱源が電気である電気炉がある。前者は燃料をバーナーで燃焼し加熱するもので、後者は電気を熱源とする。電気炉は工業炉の脱炭素化の有力な方法のひとつであり、燃焼炉からの置き換えを含めて需要が増えてきている。

 また、製品によって燃焼方法や制御技術が異なるため、新設案件毎に炉構造等をオーダーメイドで設計する点に事業としての特性がある。

 日本では約37,000基の工業炉が稼働しているとされ、うち同社の製品は5,000-7,000基と推定される。また、国内市場の規模は2,000億円程度と推察される(経済産業省の調査および同社からのヒアリングより) 。

工業炉

出所:経済産業省、「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」に関する国内外の動向について(令和6年10月2日製造産業局 素形材産業室https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/026_03_00.pdf

「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」に関する国内外の動向について(令和6年10月2日製造産業局 素形材産業室https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/026_03_00.pdf

「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」に関する国内外の動向について(令和6年10月2日製造産業局 素形材産業室https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/026_03_00.pdf

工業炉と工業用バーナーの国内トップメーカー、技術立社を標榜

 沿革で見たとおり、同社は多様な工業炉を幅広い産業向けに提供してきた実績を持つ。こうして培われた基盤技術は「Thermal Technology」 「Total Engineering」 「Advanced Technology」である。

中外炉工業の基盤技術

出所:同社資料

そしてこれら基盤技術は14のコア技術として磨かれている。

中外炉工業のコア技術

出所:同社資料

 同社の研究開発は上記の技術をもとに、カーボンニュートラル、高機能材料、資源循環(ゼロエミッション)などの社会的要請に応えるべく、熱処理事業、プラント事業、開発事業の3分野において進められている。2026年3月期の研究開発費は約11億円である。

 開発体制に関しては、2023年11月に「熱技術創造センター」を堺事業所内に開設した。これは、次世代燃料(水素やアンモニア)を用いた脱炭素・省エネ燃焼技術を開発する「燃焼ゾーン」、先端材料の熱処理技術を研究する「機能材ゾーン」、社内外の共同研究・開発を促進する「共創スペース」の3つのゾーンで構成されている。また、GXプロジェクト室が中心となって進めているNEDOのグリーンイノベーション基金事業にも活用されている。

 また、2025年4月1日付で開発本部を新設し、これまで独立していた商品開発部(熱技術を活かした商品開発)、コンバーテック部(ディスプレーパネル、電池、半導体向け精密塗布装置の開発・設計)、GXプロジェクト室(工業炉の脱炭素化に向けた水素・アンモニアを燃料とする新たな燃焼技術の開発および新しい電熱技術の開発)を傘下に統合し、開発効率の向上を目指している。

 なお、同社は開発、設計を主に担っており、製造、組立、据付などは協力会社に任せており、設備投資負担は軽い。

セグメント構成

 同社の現在のセグメント構成は次のとおりである。

熱処理事業

自動車・機械・半導体・化学部材熱処理炉、電池・基板・触媒・磁性材熱処理炉及び大気浄化設備などの設計・製作・施工・販売。当社が担当。

プラント事業

鉄鋼・非鉄金属等加熱炉・熱処理炉、金属ストリッププロセスライン、塗装ライン、各種工業用バーナ、省エネ制御機器などの設計・製作・施工・販売。当社が担当。

開発事業

脱炭素関連の研究開発、精密塗工・乾燥装置、キルン・環境プロセス設備などの設計・製作・施工・販売。当社が担当。

その他

国内・海外子会社の事業。

 

 2026年3月期の売上高などの構成比は次のとおりで、バランスがとれている。

売上高構成(2026年3月期)

出所:同社資料

長期業績推移

 現在推進中の中期経営計画を分析する前に、同社の長期の業績推移をレビューする。以下のグラフは2004年度(2005年3月期)から2025年度(2026年3月期)までの実績および2026年度会社予想を示している。

長期業績推移

出所:同社資料、Factset

 これらのグラフが示すように、同社の業績は2010年代の停滞期を脱し、2000年代の売上高規模と収益性と比肩しうる水準まで回復している。

 2000年代はディスプレイ製造用精密塗工システムや太陽電池製造設備などの新製品が収益に貢献し、2009年3月期には売上高543億円、営業利益51億円を上げていた。2000年代には売上高営業利益率のピークは10.1%、ROEのピークは14.2%であり、高収益性を誇っていた。

 その後、2010年代に中国市場の成長減速と現地メーカーの台頭、およびディスプレイ製造用精密塗工システムや太陽電池製造設備などの顧客層のアジアシフトと装置メーカーとの競争激化などから、業績が停滞した。

 この間、国内自動車メーカーに積極的に提案を進め、自動車部品の高強度化、軽量化、低コスト化、および環境対応のニーズを取り込みながら、採算確保のため諸施策を進めた。こうした対応力によって、2010年代後半以降、業績の回復が着実に進んできた。

 さらに、近年は主要顧客のカーボンニュートラルに対する長期的な対応推進を事業拡大に着実に結びつけ、2000年代と遜色ない収益力まで回復している。

 このように、同社は新技術で市場をリードする時にはそれを着実に業績につなげ、市場環境が向かい風に変化しても適切な対応を進めてきたことが読み取れる。工業炉のデパートとして、新しい価値を創造する力、そして事業環境の変化に柔軟に対応する力を同社の長期業績推移が物語っている。

中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)

中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)をみる視座

 同社は2022年5月13日に「中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)を発表した。

 この中期経営計画を紐解く際に有効な視座は次のとおりである。

  • 日本に稼働する約37,000基の工業炉が排出するCO2は年間1.5億トンといわれ、日本全体のCO2排出量の約15%を占めること
  • このうち同社の工業炉は5,000-7,000基と推定され、そのCO2排出量は1,200万トン  (基準年2013年度)、日本全体の排出量の1%に相当すること
  • これら工業炉の脱炭素化は重要な長期的社会課題であり、同社顧客のニーズであり、かつ同社自身のスコープ3のCO2排出量削減に直結すること
  • こうした課題解決は、熱技術を生かし、水素・アンモニアの活用や工業炉の電化推進を行うなど、熱技術によって「新しい価値を創造」する同社にとって絶好の収益化であること

技術開発と商業化に成功すれば、同社が手がけていない工業炉に対する事業拡大にもつながることにも留意しておきたい。

 次に、日本のマクロ的脱炭素化の必要性を示す資料を参考として示しておく。

日本のマクロ的脱炭素化の必要性

出所:経済産業省、「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」に関する国内外の動向について(令和6年10月2日製造産業局 素形材産業室)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/026_03_00.pdf

 また、経済産業省がイメージする工業炉の脱炭素化の方向性についても参考資料を示しておく。

工業炉の脱炭素化の目指す方向性

出所:経済産業省、「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」に関する国内外の動向について(令和6年10月2日製造産業局 素形材産業室)https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/green_innovation/industrial_restructuring/pdf/026_03_00.pdf

 なお、カーボンニュートラルに対する顧客の熱量の低下は懸念材料になりうるが、同社の主要顧客にはグローバルな業界のリーディングカンパニーが多く、彼らは長期的視点にたって真剣な取り組みを続けていると考えられる。

中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)

 2022年5月13日付の「中外炉工業グループ 中期経営計画(2022年度〜2026年度)」のポイントを見ていく。結論から言えば、先ほどの視座でも述べた”脱炭素化”というメガトレンドを始め事業環境を的確に認識し、同社の強みを活かす適切な打ち手を通じて業績の押し上げと資本効率の改善を目指す、という計画である。

 以下、詳しく見ていく。まず事業環境として、カーボンニュートラルの要請、マクロ環境の変化(具体的には内需成長鈍化、主要顧客である自動車業界におけるEV化と粗鋼生産量の減少)、技能労働者の確保を重要課題として認識している。

中期経営計画(2022年度〜2026年度)の前提となる事業環境認識

出所:同社資料

 次に、経営理念を踏まえ、以下に示す3つの重要戦略が提示され、これらをまとめる標語として経営ビジョン2026が設定されている。価値創造、付加価値の追求がテーマである。

経営理念と経営ビジョン2026

出所:同社資料

 連結業績目標は、2026年度売上高415億円、営業利益36.2億円(売上高営業利益率8.7%)、ROE10.0%である。2025年度(2026年3月期)までの実績も含む推移は以下の通りであり、その進捗は概ね順調である。

連結業績目標

出所:同社資料

これに関連する財務政策及び資本政策が次のとおりである。

財務政策及び資本政策

出所:同社資料

重要戦略1 カーボンニュートラルを中心に新市場の創出

 先に触れた3つの重要戦略の詳細を説明する。

 まず「カーボンニュートラルを中心に新市場の創出」の具体的施策である。

「カーボンニュートラルを中心に新市場の創出」の全容

 出所:同社資料 
 注:2023年11月に堺事業所内に新研究所「熱技術創造センター」を開設済み。

この施策に対する進捗は順調である。はじめにCO2排出量の削減の観点を見ると、同社の低炭素製品(省エネ製品)の浸透が進み、同社工業炉製品から排出されるCO2の削減は、2025年度実績がすでに2026年度目標を達成している。

目標:2013年度(基準年)1200万トンを起点として

  2026年度当初目標           17%削減

  2026年度現在目標           20%削減(240万トン削減)

  2030年度目標           25%削減

  2050年度目標        100%&以上削減

実績:

  2021年度実績              15%削減

  2025年度実績              23%削減(277万トン削減)

 次に、カーボンニュートラルを中心とした新商品による新市場創出の売上高の進捗も概ね順調である。直近の状況を踏まえると、40億円の達成は2027年度(2028年3月期)に期ずれする可能性が高い模様だが、2030年度の100億円到達の計画は維持されている。

  2024年度実績売上高    10.0億円

  2025年度実績売上高      8.7億円

  2026年度売上高目標    40.0億円

  2030年度売上高目標  100.0億円

 新商品の直近の実績のポイントは以下の通りである。

  • 電気炉ダストリサイクル設備を東京製鐵より受注:従来は産業廃棄物として外部委託処理していた電気炉ダストを自社工場内で焙焼処理することで、ダストに含まれる亜鉛を分離して粗酸化亜鉛として回収することを可能とした設備。
  • 神戸製鋼所高砂製作所向けに国内最大級となる水素燃焼金属加熱実証炉を納入:NEDOによって「熱エネルギー消費が主体の工場の脱炭素化に向けた燃焼式工業炉での水素利活用の実証」として採択。
  • NEDO「グリーンイノベーション基金事業/製造分野における 熱プロセスの脱炭素化」のステージゲート通過:2023年9月より推進した要素技術開発が、NEDOのステージゲート審査を2026年1月に通過、2026年4月1日より補助事業として中規模実証開発を開始。

新市場創出の実績

出所:同社資料

開発内容の例

出所:同社資料

重要戦略2 既存商品ブラッシュアップで拡販と利益向上

 次に「既存商品ブラッシュアップで拡販と利益向上」である。施策は以下の通り。

既存商品ブラッシュアップで拡販と利益向上のための施策

出所:同社資料

 進捗は次のとおりで、順調である。

  2024年度実績  売上高積上げ98億円

  2025年度実績  売上高積上げ110億円

  2026年度目標  売上高積上げ112億円 営業利益積上げ20.6億円

既存商品ブラッシュアップで拡販と利益向上の進捗

出所:同社資料

重要戦略3 働きがいのある職場作り

 最後に「働きがいのある職場作り」である。一人当たり営業利益の拡大と一人当たり総実労働時間の削減を両立させて労働生産性を引き上げ、従業員の働きやすさと働きがいを向上する施策である。

働きがいのある職場作りのための施策

出所:同社資料

 数値目標と進捗は次のとおりで、一人当たり営業利益は順調だが、一人当たり総実労働時間削減に課題を残している。

  (単体)    一人当たり営業利益 一人当たり総実労働時間

  2023年度実績  2,848千円       2,086時間        

  2024年度実績  5,000千円       2,109時間

  2025年度実績  6,255千円       2,041時間

  2026年度目標  5,668千円       1,800時間

働きがいのある職場作りの進捗

出所:同社資料

決算動向

2026/3期決算実績:5期連続の増収、営業増益

 2026年3月期連結決算は5期連続の増収、営業増益になった。売上高営業利益率も7.7%になり、過去15年間で最も高い水準である。

 受注高は371億円(前年度比6%減)、予想比2%未達になった。国内鉄鋼向け連続焼鈍ライン改造工事や、非鉄向け加熱炉、鉄鋼向け電気炉ダストリサイクル設備、電気炉用取鍋予熱装置、次世代電池関連熱処理装置、住宅設備部材向け焼成炉などの成約を得ている。なお、受注の伸び悩みは、期末にかけて地政学リスクの高まりなどから顧客の発注が鈍ったことが主因である。受注残は377億円(同0.3%減)だった。

 売上高は373億円(同3%増)、ほぼ予想通りに着地した。次世代太陽電池製造装置や、電極材料・固体電解質熱処理装置、国内鉄鋼向け加熱炉省エネ改造工事、脱臭炉、海外向けステンレス製造設備、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/製造分野における熱プロセスの脱炭素化」案件などの工事が順調に進捗した。

 営業利益、経常利益はそれぞれ29億円(同5%増)、31億円(同4%増)と順調に増加した。会社予想比には届かなかったが増収増益基調を維持し、利益率も改善している。これは適切な価格設定を進め、人件費・原材料費などの増加をカバーした結果であり、採算重視の浸透を示す。さらに政策保有株式の売却を着実に進め、親会社株主に帰属する当期純利益は47億円(同56%増)になった。この結果、ROEは15.7%になった。また1株当たり期末配当金は166円(同16円増)になった。 

連結業績動向

出所:同社資料

セグメント情報

 セグメント別の動向は次の通りである。売上高はプラント事業が牽引し、これが営業利益増加につながった。なお、熱処理事業、プラント事業ともに概ね想定通りの収益だったが、中国・メキシコ子会社が冴えなかった(現在、戦略見直しを進めている)。

出所:同社資料

 バランスシートに大きな変化はなく、引き続き高い自己資本比率(60.8%)、低い借入金依存度(8.7%)である。2026年3月末時点で政策保有株式の純資産比率20%未満の目標を達成した。これに伴い、投資キャッシュフローがプラスとなっている。

 

2027/3期業績見通し:中期計画最終年度。6期連続の増収、営業増益を目指す

 会社予想は受注高387億円(同4%増)、期末受注残361億円(同4%減)、売上高403億円(同8%増)、営業利益36.2億円(同26%増)、経常利益37.2億円(同20%増)、親会社株主に帰属する当期純利益25.2億円(同46%減)、一株当たり配当金180円(同14円増)である。なお政策保有株式売却を除く予想ROEは8.0%である。

 中期経営計画の最終年度にあたり、売上高、営業利益、経常利益は6期連続増収増益を見込んでいる。受注残の着実な消化に加えて、機能材熱処理設備、太陽電池関連設備、製鉄会社向け燃焼システムなどの受注を積み上げる計画だ。利益面では従来の採算重視が維持される見通しである。

 ただし、中期経営計画の着地目標に対しては、受注高、売上高(中期経営計画においてそれぞれ420億円、415億円)は未達になる。一方、営業利益・経常利益は着地目標通り、親会社株主に帰属する当期純利益は上振れを見込んでいる(中期経営計画においてそれぞれ36.2億円、37.2億円、24.5億円)。計画策定時と比べて、関税リスク、地政学リスクなどの事業環境の変化があったため受注高、売上高がやや下ブレるのは止むを得ない面があるが、利益については目標必達の体制が構築されてきたと評価したい。なお、ROE目標10.0%は現状未達になる公算であるが、上場企業に求められる目線である8%は確保できる見通しだ。 

企業価値向上に向けた取り組み

 同社は、中期経営計画の推進に加えて「企業価値向上に向けた取り組み」を発表し、PBR1倍の達成と定着に向けた施策を打っている。現在は以下に示す7つの項目に取り組んでおり、達成済みのものも多い。またPBRについてもほぼ1倍近辺にある。業績拡大とROE改善を株価がしっかり評価する局面に入ったと言えるだろう。

企業価値向上に向けた取り組みと追加施策

出所:同社資料

売上高営業利益率、ROE、PBRの推移

出所:同社資料

株主還元方針

出所:同社資料

株価動向とカタリスト

株価動向

 同社の株価は、2010年代以降上値の壁になっていた3000円近辺の水準を2024年に上抜け2022年以降の上昇基調を維持している。これは、株式市場が同社に対する認識をポジティブに捉え直していると見るべきだろう。すなわち

  • カーボンニュートラルという中長期的な社会的要請の追い風を受けていること
  • これに対して中期経営計画に従って技術立社に相応しい対応を進め、連続増収増益基調にあること
  • PBR1倍の定着に向けてROE改善、政策保有株式の圧縮、総還元性向の維持など財務戦略も推進していること

が評価されていると考えられる。

 ただし、足元では株価はやや足踏み状態である。とくに

  • 受注高の成長が鈍ってきたこと
  • 労働生産性の改善に課題が残り将来の成長力に対する懸念になりつつあること

などが気掛かりであり、今後ROEの伸び代について確信を持ちきれないでいると言えるだろう。

新社長就任

 そこで注目すべきは2026年4月1日付けで新社長に阪田守氏が就任し、次の中期経営計画の策定を責任を持って進めていることである。

 これまでの同氏のメディア等での発言を整理するとポイントは次のようになる。

  • 引き続き、カーボンニュートラル対応を進める。アンモニア・水素などを燃料とする工業炉やバーナーの開発を継続する。
  • 新製品売上高は2028年2月期に40億円とし、2031年3月期には従来計画通り100億円を目指す。
  • 既存事業のブラッシュアップなども継続する。今後は熱処理のメンテナンス事業を底上げする。
  • 北米、インドでの事業展開強化を検討する。

 以上を踏まえると、今後注目すべき株価のカタリストは次の諸点である。新中期経営計画においてROE10%超えの定着が見えれば、PBRは1倍近辺から切り上がっていく可能性を秘めているため、同社のニュースフローに注目を続けたい。

  • 2027年3月期業績が順調に推移すること
  • 受注高が増加基調に回復すること •労働生産性の改善が進むこと
  • 政策保有株式の追加売却が進み、代り金を有効活用すること
  • 新中期経営計画の方向性が見えること
  • 計数的には営業利益50億円の道筋が見えること
  • カーボンニュートラル関連に加えて、従来の主要顧客である自動車
  • 鉄鋼関連に加えて、次世代太陽電池製造装置関連、全個体電池関連、あるいは半導体製造装置関連などの領域のプレゼンスが高まり、業績ドライバーの拡充が進むこと
  • 海外展開の具体的戦略が示されること •リカーリング収益の拡充  
  • 資本コストの低減と資産効率の改善、およびキャッシュアロケーションの考え方について従来よりも踏み込んだ方針が示されること
  • 知財戦略の推進
  • 役職員のダイバーシティ推進

 なお、リスク要因として、主要顧客のカーボンニュートラル推進熱が冷めることがないか、サプライヤーとの関係が悪化しないか、従業員のエンゲージメントが維持向上できるか、知財リスクはないか、という点に留意をしておきたい。

財務データ

出所:同社資料

財務データ

単位: 百万円 17/3 18/3 19/3 20/3 21/3 22/3 23/3 24/3 25/3 26/3
[損益計算書]                    
売上高 31,146 30,829 37,089 38,089 24,717 26,317 27,976 29,283 36,247 37,332
前年同期比 -5.0% -1.0% 20.3% 2.7% -35.1% 6.5% 6.3% 4.7% 23.8% 3.0%
売上原価 26,575 25,795 32,140 32,023 20,282 21,007 22,494 23,448 29,032 29,218
売上総利益 4,571 5,034 4,949 6,066 4,435 5,310 5,482 5,835 7,215 8,114
粗利率 14.7% 16.3% 13.3% 15.9% 17.9% 20.2% 19.6% 19.9% 19.9% 21.7%
販管費 3,797 3,853 3,962 4,354 4,046 4,046 4,172 4,356 4,478 5,235
EBIT(営業利益) 774 1,181 987 1,712 389 1,264 1,310 1,479 2,737 2,879
前年同期比 14.3% 52.6% -16.4% 73.5% -77.3% 224.9% 3.6% 12.9% 85.1% 5.2%
EBITマージン 2.5% 3.8% 2.7% 4.5% 1.6% 4.8% 4.7% 5.1% 7.6% 7.7%
EBITDA 1,112 1,527 1,378 2,080 749 1,676 1,710 1,953 3,289 3,422
税引前収益 967 1,294 1,177 1,701 527 1,594 1,699 3,129 4,222 6,426
当期利益 1,000 905 781 1,158 364 1,429 1,295 2,216 3,072 4,653
少数株主損益 21 40 26 37 35 69 64 19 74 -14
親会社株主帰属利益 978 864 754 1,120 329 1,360 1,231 2,197 2,998 4,668
前年同期比 79.4% -11.7% -12.7% 48.5% -70.6% 313.4% -9.5% 78.5% 36.5% 55.7%
利益率 3.1% 2.8% 2.0% 2.9% 1.3% 5.2% 4.4% 7.5% 8.3% 12.5%
                     
[貸借対照表]                    
現金・預金 7,833 6,858 5,169 8,658 7,121 11,130 7,884 10,061 4,392 10,821
総資産 38,502 41,368 42,731 46,696 38,577 38,141 41,178 48,863 48,736 51,282
債務合計 3,988 4,010 4,995 9,988 5,988 3,988 3,988 7,288 5,507 4,445
純有利子負債 -3,845 -2,848 -174 1,330 -1,133 -7,142 -3,896 -2,773 1,115 -6,376
負債総額 18,131 20,131 21,774 26,006 16,784 14,928 17,134 21,092 20,125 19,798
株主資本 20,295 21,138 20,875 20,589 21,681 23,068 23,860 27,570 28,329 31,201
                     
[キャッシュフロー計算書]                    
営業活動によるキャッシュフロー 1,033 377 -1,348 -580 3,300 6,090 -2,500 -891 -3,696 6,427
設備投資額 145 512 380 305 449 216 244 1,355 723 1,318
投資活動によるキャッシュフロー 402 -837 -478 -442 -551 510 -63 550 654 2,588
財務活動によるキャッシュフロー -484 -468 279 4,510 -4,481 -2,508 -727 2,451 -2,701 -2,641
フリーキャッシュフロー 933 2 -1,725 -775 3,036 5,963 -2,688 -2,161 -4,419 5,413
                     
[収益率 %]                    
ROA 2.50 2.17 1.80 2.51 0.77 3.55 3.10 4.88 6.14 9.33
ROE 4.95 4.18 3.59 5.41 1.56 6.08 5.25 8.54 10.73 15.68
当期利益率 3.14 2.81 2.04 2.94 1.33 5.17 4.40 7.50 8.27 12.50
資産回転率 0.80 0.77 0.88 0.85 0.58 0.69 0.71 0.65 0.74 0.75
財務レバレッジ 1.97 1.93 2.00 2.16 2.02 1.71 1.69 1.75 1.75 1.68
[一株当り指標: 円]                    
EPS 125.7 111.0 97.2 145.9 42.9 177.2 162.0 293.8 407.6 643.7
BPS 2,607.8 2,716.9 2,718.6 2,681.5 2,824.1 3,005.3 3,146.7 3,709.0 3,859.0 4,311.2
一株当り配当 60.00 60.00 60.00 60.00 60.00 70.00 70.00 80.00 150.00 166.00
発行済み株式数 (百万株) 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80 7.80

企業データ

出所:同社資料

出所:同社資料

出所:同社資料より Onega Investment 作成