時価総額:6,963億円
株価15,020円、2026年8月6日時点の前提に基づく。
| 株価 | 予想EPS | 予想PER | 実績BPS |
| 15,020円 | 652.4円 | 23.0倍 | 3,109円 |
| 実績PBR | 予想ROE | 予想配当 | 予想配当利回り |
| 4.83倍 | 21.0% | 220円 | 1.46% |
Sell on Strength。オルガノは、半導体向け超純水設備で高い競争力を持ち、AI・先端半導体投資の拡大、台湾を中心とする大型案件、ソリューション事業の伸長を背景に、売上高、利益率、ROE、ROICを大きく引き上げてきた。今2027年3月期第1四半期も受注は強く、事業ファンダメンタルズの質は高い。一方、2021年以来の株価上昇はEPS成長だけでなく、利益率と資本効率の改善を織り込む大幅なリレーティングによって形成されてきた。足元では営業利益率とROEが20%前後まで上昇し、サイクル上かなり高い水準にあるため、市場はその一段の上昇や維持よりも、早晩ピークアウトする可能性を織り込み始めているとみる。株価15,020円は予想PER23.0倍、実績PBR4.83倍で、PBR、DCF、ROICの三法による適正株価中央値12,950円を16%上回り、総合レンジ9,300~15,100円の上限に位置する。5月高値から25%超調整しても安全余裕は乏しく、現在の株価の押し目を中長期上昇の再起点とみて追随するリスクは高い。業績の質を評価しつつも、株価上昇局面では利益確定を優先すべきである。
先端半導体向け超純水を中核に、プラントと高収益なソリューションを展開する総合水処理エンジニアリング企業
オルガノは、イオン交換樹脂、分離膜、活性炭などを用いた純水・超純水、用排水処理、排水回収、有価物回収などを手掛ける総合水処理エンジニアリング企業である。主力の水処理エンジニアリング事業は、半導体工場などに大型設備を設計・施工するプラント事業と、設備メンテナンス、運転管理、改造工事、設備保有型サービスなどのソリューション事業で構成される。機能商品事業では、水処理薬品、標準型純水装置、フィルタ・分離精製材、食品素材・添加剤を展開する。半導体製造に不可欠な超純水設備では、地域ごとに異なる原水特性への対応、極めて高い水質管理、長期運転ノウハウが参入障壁となっており、AI・先端半導体投資の拡大が需要を押し上げている。FY3/2026は水処理エンジニアリング事業の売上拡大に加え、比較的利益率の高いソリューション事業が利益成長を牽引した。
事業別売上高比率%(営業利益率%):水処理エンジニアリング事業 85.5%(22.6%)、機能商品事業 14.5%(12.9%)(2026年3月期)
AI・半導体市場拡大が追い風。リカーリング型ビジネスも好調。
オルガノは半導体製造に必要な超純水装置で高シェアを有する総合水処理エンジニアリング企業。台湾TSMCの投資拡大やAI市場拡大を追い風としている。今年5月に創立80周年を迎えた。
強みを持つ半導体向け超純水製造装置は世界市場の9割を同社を含む上位4社が占める。ほか3社は栗田工業(6370)、野村マイクロ・サイエンス(6254)、独クリスト。地域によって異なる原水含有物の分析、品質保持などのノウハウが必要で新規参入は困難な市場とされる。
3日発表の今2027年3月期第1四半期(4〜6月)決算は売上高421億8300万円(前年同期比10.7%増)、営業利益66億1200万円(同4.9%減)だった。電子産業分野では半導体関連の大型案件が牽引し受注高が大きく増加。台湾において複数の大型案件を受注したほか、米国、日本、中国でも大型案件の受注があった。
営業減益の要因は、主に前年同期に売上計上した好採算のプラント案件の反動によるもの。一方、設備保有型サービス各種メンテナンスなどの安定収益を得るソリューション案件(リカーリング型ビジネス)は好調に推移している。

事業の質は高いが、利益率とROEのピークアウト懸念を織り込み始めた株価を追う局面ではない
2021年以来の株価上昇は、半導体設備投資の拡大を起点に、EPS成長、利益率改善、ROE・ROIC上昇、バリュエーション上昇が同時進行した結果である。株価は2020年末から2025年末まで8倍超となり、特に2023年以降は先端半導体と生成AI関連投資への期待が加速した。売上高の拡大とともに売上総利益率、EBITマージンが大きく上昇し、ROEも20%台へ切り上がった。市場はオルガノを成熟した水処理会社ではなく、先端半導体設備投資の高付加価値なボトルネック企業として評価するようになった。
業績の質は高いが、現在は収益性と資本効率がサイクル上かなり高い水準にある。FY3/2026の営業利益率は21.2%、ROEは21%台となり、ROICも20%前後まで上昇してWACCとのスプレッドが大きく拡大した。ROE改善の主因はレバレッジではなく純利益率の上昇であり、価値創造の質は高い。ただし、好採算プラント案件、半導体設備投資、ソリューション事業の構成比上昇が重なった現在の利益率をさらに引き上げ続ける余地は限定的である。会社は高ROEの維持を目標としているが、株式市場は既に、利益率やROEの一段の上昇ではなく、早晩ピークアウトして正常化へ向かう可能性を意識し始めているとみる。
今2027年3月期第1四半期は、トップラインと受注の強さに対して営業減益となった点が、ピーク利益率への警戒を強める契機になり得る。売上高は前年同期比10.7%増となった一方、営業利益は4.9%減となった。主因は前年同期に計上した好採算プラント案件の反動であり、受注環境の悪化を示すものではない。台湾では複数の大型案件を獲得し、米国、日本、中国でも受注が拡大しており、リカーリング型のソリューション事業も好調である。それでも、株価が高い利益率を前提として形成されている局面では、増収でも利益率が低下するという事実そのものがマルチプル調整の材料になりやすい。
5月高値からの25%超の調整は、業績悪化というより、例外的な利益成長を前提として形成された評価の正常化と考える。2026年の株価は2025年末比ではなおプラスだが、5月高値20,145円から15,020円まで大きく下落した。過去5年間のEPS CAGRは30%台と極めて高かった一方、現在の株価に織り込まれる長期EPS成長率は株主資本コスト8~10%を前提に6.5~8.5%程度と試算される。市場は高成長の永続を前提としてはいないが、PBR4.83倍という評価はなお高いROEと利益率の長期持続を必要とする。したがって、足元の下落を単純に割安化とみるべきではない。
三法評価は、現在株価が安全マージンの乏しい水準にあることを示す。PBR法は正常化ROE19~21%などを前提に9,300~12,400円、DCF法は今後5年間のEPS成長率10~15%などを前提に10,800~15,100円、ROIC法は正常化ROIC18~21%などを前提に11,500~14,500円と試算する。三法の総合レンジは9,300~15,100円、中央値は12,950円で、株価15,020円は中央値を16%上回り、レンジ上限にほぼ達している。ROIC法が比較的高い価値を示すのは、高い技術的参入障壁とソリューション事業による継続収益を評価するためであるが、その強みを十分織り込んでも現在価格の上値余地は乏しい。
株主分布は安定性に優れる一方、東ソーの高い持株比率が流動性と外部規律を制約する。東ソーが43.96%を保有し、機関投資家保有比率は24.83%、実質floatは54.2%である。KBC、Vanguard、Norges Bank、BlackRockのほか、水・環境テーマの専門ファンドが上位に並ぶ点は、同社の技術的競争力と長期成長テーマへの評価を示す。一方、支配株主の存在によって市場で流通する株式は限定され、上昇局面では需給が株価を押し上げる一方、バリュエーション調整局面では価格変動を増幅する可能性がある。少数株主にとっては、資本政策、関連当事者取引、取締役会の独立性を継続的に確認する必要がある。
投資判断はSell on Strength。オルガノの事業競争力、半導体向け需要、ソリューション事業の拡大、高いROICは評価でき、業績ピークアウトを即座に断定する状況ではない。しかし、現在の利益率とROEは既にサイクル上かなり高い水準にあり、市場はその維持よりも正常化リスクを価格に反映し始めている。株価15,020円は三法の総合レンジ上限にあり、5月高値からの下落後も十分な安全余裕はない。現在の株価の押し目から中長期の再上昇を追うより、株価上昇局面では利益確定を優先するべきであろう。
Valuation
高ROICを評価しても、三法の中央値は現在株価を下回る
| 評価手法 | 主な前提 | 適正株価レンジ | 中央値 |
| PBR法 | 正常化ROE19~21%、株主資本コスト8.5~9.5%、 長期成長率3~4%、正常化PBR3.0~4.0倍 |
9,300~12,400円 | 10,850円 |
| DCF法 | 今後5年間のEPS成長率10~15%、株主資本コスト8.5~9.5%、 永久成長率3%、FCFを正常化 |
10,800~15,100円 | 12,950円 |
| ROIC法 | 正常化ROIC18~21%、WACC8~9%、 正のROIC-WACCスプレッド継続、ネットキャッシュを考慮 |
11,500~14,500円 | 13,000円 |
| 総合 | 三法を等価に参照 | 9,300~15,100円 | 12,950円 |
市場期待:予想PER23.0倍、予想配当利回り1.46%。株主資本コストを8~10%と置いた場合、株価に織り込まれた長期EPS期待成長率は6.5~8.5%程度となる。過去5年間のEPS CAGR30%台を大きく下回るが、これは現在株価が割安であることを意味しない。過去の成長は利益率と資本効率の大幅改善を伴っており、今後はそのピークアウトと正常化の速度が株価を左右する。
株主分布
東ソーの安定保有と質の高い機関投資家層は強みだが、流動性と外部規律には制約が残る
東ソーが43.96%を保有し、FactSetで把握される機関投資家保有比率は24.83%、実質floatは54.2%である。KBC Asset Management、Vanguard、Norges Bank、BlackRockなどに加え、KBC ECO Fund、Regnan Sustainable Water and Waste Fund、Fidelity Water & Waste Fundなど水・環境を長期テーマとする専門ファンドが上位に存在する。安定株主と長期志向の機関投資家が併存することは、長期投資と事業戦略の継続性に資する。一方、東ソーの高い持株比率により市場で流通する株式は限定され、需給が株価変動を増幅しやすい。少数株主にとっては、資本政策、支配株主との利益相反、取締役会の独立性が継続的な評価項目となる。
Financials and Valuations
出所:会社公表資料、FactSet、Charts for Price Discoveryより弊社作成。数値は特記のない限り2026年8月6日時点。
株価15,020円、予想EPS652.4円、実績BPS3,109円、予想ROE21.0%、予想配当220円を前提とすると、予想PERは23.0倍、実績PBRは4.83倍、予想配当利回りは1.46%である。発行済株式数46,359,700株を用いた時価総額は6,963億円となる。ROE÷PBRによる益回りは4.35%で、事業の収益力は高い一方、その価値を取得する価格には十分な安全余白がない。売上高、利益率、ROE、ROIC、EPS、BPSはいずれも長期的に改善してきたが、PBRも同時に大きく切り上がっており、現在の株価は収益性改善の相当部分を織り込んでいる。

Price

PBR (LTM)

PER (LTM)

ROE (LTM)

EPS (LTM)

BPS (LTM)
