証券コード |
東証PRM:4553 |
時価総額 |
149,087 百万円 |
業種 |
医薬品 |
国内2大ジェネリック医薬品メーカーの1つ。他社はサワイグループHD (4887)。高血圧や糖尿病などの生活習慣病、消化器系疾患、神経系疾患、アレルギー性疾患、ビタミン剤、抗生物質など、500品目以上の医薬品を提供。直販主力だが、卸も拡大。大阪、岡山、山形の3ヶ所に主力工場。1951年設立。
供給力強化に奮戦。後発薬市場の品不足長期化。
ジェネリック(後発医薬品)市場では2020年ごろから製造管理・品質管理上の不正が次々に発覚し、業務停止に追い込まれるメーカーが相次いだ。この影響で、医療機関・薬局が医薬品の十分な供給量を確保できない状況が続いている。
こうした背景から、東和薬品に新規オファーが集中している。1Q(4〜6月)は18%増収、2.3倍営業増益(いずれも子会社の会計期間を親会社に合わせた前年同期実績比)となった。医療機関などからの増産要請は強いものの、不採算の限定出荷品については計画以上の生産を行わず、主力商品の生産拡大で利益率の改善を進めることを優先させる方針のようだ。
経営再建中のジェネリック大手、日医工(2023年3月上場廃止)は7月21日に新たに258品目を販売中止にしたと発表。これで今年3月から進めてきた選定は完了し、販売中止品目はあわせて578品目になる。東和薬品は通期業績について11.4%増収、1.2%営業減益との見通しを示しているが、下期以降は製品構成の向上が進み、営業利益の計画上振れが予想される。
後発薬市場の供給不足解消には2〜3年を要するとの見方もあり、積極的な能力増強を進めている同社の存在感はさらに高まっていくだろう。同社では今年10月までに山形工場に第三固形製剤棟を建設し、来期以降、145億錠の生産能力を実現する計画。また、19日から関東出荷センターの稼働を開始し、東日本エリアの出荷能力を補完する。
BUY。構造的な後発医薬品供給不足を背景とした環境好転はまだ一時的なもので、中長期の利益率やROEが向上すると判断するのは早急。ファンダメンタルズの基本構造は変わらないのではないかと考える。潜在的なROEの質は必ずしも悪くはないが、政府の薬事行政に大きく左右されるリスクを内包している。しかしながら、後発医薬品業界の面白い転機であり、今後の短期収益やニュースフローは株価ポジティブだろう。10-12ヶ月では投資妙味のある銘柄である。
ストックハンターの指摘通り、株価にポジティブな諸点は以下の通り。
1)医薬品不正問題による後発品業界の供給不足
2)これに対して政府の対策が行われる期待
3)東和は生産能力を着実に拡大し、供給余力がある
4)2024年度の薬価改定で供給力のある後発薬大手の薬価が上がるという期待
5)厚生労働省が新たに金額ベースでの後発医薬品普及目標を新設するという観測
1Qの強い決算数値とブローカーの一斉格上げが株価の上昇に油を注いだ。過去10年間の前月比上昇率単純平均が+0.7%の株価が8月には55%上昇し、急騰は尋常なものではなかった。株価には当然、目先の調整があるだろう。しかしながら、今後の四半期決算やニュースフローは株価にプラスに働くのではと予想される。
ROEは予測困難な当期利益率に左右される
長期間のROEを振り返ると、財務レバレッジがかなり効いている一方で、資産回転率は著しく低い。利益率のボラティリティは大きく、シクリカルではないため予想は困難である。ROEはほぼ最終利益率によって決まる構造が見てとれる。
売上高総利益率のトレンドはネガティブ
近年売り上げは高成長してきたが、粗利率はFY3/2012をピークとして20%ポイント低下し、驚くほどの下落である。薬価と設備投資を通じて、政府方針の結果が当社のファンダメンタルズに結実しているといえよう。
Sales, GPM, EBIT Margin
設備投資に消費されるキャッシュフロー
営業キャッシュフローは潤沢だが、近年はその大半を設備投資に費やしてきた。数量シェア80%という政府目標がほぼ達成され、政府は後発医薬品普及の新たな目標を価額ベースで設定する模様である。売り上げ金額ベースの後発医薬品シェアは2021年で41%であり、かなりのアップサイドがあるとみられ、当社の売り上げ見通しに明るい材料である。反面、供給不足を満たすため、当社の設備投資負担は変わらないと予想され、利益率を下押しし、資産回転率も目に見えて改善することはなかろう。
Net Operating CF, Capex, FCF
後発医薬品の使用割合の推移
(厚生労働省)