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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Investment report – 2Q update)

株価(9/3)82 円予想配当利回り(26/12予)ー %
52週高値/安値65/142 円ROE(25/12実)-65.1 %
1日出来高(3か月)613.8 千株営業利益率(25/12実)-165.1 %
時価総額66.5 億円ベータ(5年間)1.8
企業価値54.3 億円発行済株式数 81.150 百万株
PER(26/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(25/12実)4.1 倍
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株式需給の重石が後退。次の焦点は創薬収益をどこまで具体化できるか。

投資判断

同社株に対するやや強気の投資判断を維持

2026年12月期第2四半期累計の売上高は2.73億円と前年同期比8.7%増加し、営業損失は4.79億円と前年同期の5.36億円から縮小した。創薬事業では引き続き売上計上がないものの、創薬支援事業でバイオシミラー関連収益が伸び、研究開発費も前年同期の3.95億円から3.68億円へ減少した。CBA-1205では肝細胞がんおよびメラノーマの登録を完了してデータ解析へ移行し、小児がんパートも進行している。CBA-1535も2026年6月から臨床第1相試験前半パートの最終コホートに入り、同社が単剤データによる導出可能性を判断する段階へ近づいている。

今回の投資判断で従来以上に重要なのは、業績改善だけではない。2025年12月に発行された第23回新株予約権は、2026年8月12日までに全て行使された。発行時の潜在株式数は1,361万株、2025年6月末の議決権数を基準とした最大希薄化率は20.01%だった。7月だけで220.98万株、8月には残っていた71.37万株が交付され、未行使残高はゼロとなった。これまで株価上昇局面で意識されていた新株供給の直接的な重石は、少なくとも第23回新株予約権については解消した。

したがって、現在の株価80円については、前回レポート作成時より投資家が負担するバリュエーションと需給の両面のリスクが低下したと考える。一方、同社が事業として黒字化したわけではない。上期営業キャッシュフローは5.38億円のマイナスであり、13.72億円まで増えた現金残高は、事業からのキャッシュ創出ではなく、新株予約権行使を中心とする財務活動によって支えられている。

したがって、現在の投資判断をさらに引き上げる条件は明快である。CBA-1205またはCBA-1535で導出の経済条件が具体化すること、IDDやバイオシミラーで継続的な利益貢献を確認できること、あるいは営業キャッシュフローの資金流出が明確に縮小することである。

前回レポートでは、創薬収益の可視化、IDD案件の収益化、資金消費の鈍化を株価の転換条件とした。この見方に変更はない。ただし今回は、株価を抑えてきた株式供給要因の一つが終了したことで、今後の株価は従来より事業ファンダメンタルズを直接反映しやすい局面へ移ると考える。

1. 2Q決算の評価

増収と赤字縮小は継続。ただし2Q単独では改善が一直線に進んでいるわけではない

2026年12月期第2四半期累計の売上高は2.73億円と前年同期の2.51億円から0.21億円増加した。全額が創薬支援事業の売上であり、製薬企業向けの研究支援売上は減少した一方、バイオシミラー関連売上が拡大した。研究開発費は3.68億円と前年同期から0.26億円減少し、営業損失は4.79億円、経常損失は4.81億円、当期純損失は4.83億円となり、いずれも前年同期から0.57億円改善した。

単独四半期を見ると、1Q売上高1.47億円に対し2Qは1.26億円、営業損失は1Qの2.32億円から2Qは2.47億円へ若干拡大した。売上総利益率は1Qの54.7%から2Qは61.7%へ改善しているため、2Q単独の売上減少を事業採算の悪化とみる必要はないものの、創薬支援事業が四半期ごとに安定成長していると評価するにはまだ早い。

表1 2026年12月期 四半期業績

百万円 1Q 2Q単独 上期 前年上期
売上高 147 126 273 251
売上総利益 81 78 159 139
営業損失 232 247 479 536
当期純損失 233 250 483 540
研究開発費 174 194 368 395

出所:FactSet、会社資料

重要なのは、上期増収の中身である。同社は2025年12月期にもバイオシミラー関連収益によって創薬支援事業売上が会社計画を上回った。2026年上期でも同じ領域が増収要因となったことで、バイオシミラーが単発収益にとどまらず、創薬支援の売上基盤を厚くする可能性が一段高まった。

一方、創薬事業では引き続き売上高がゼロである。同社の損益構造は、創薬支援事業が一定の利益を生み、創薬事業で臨床開発費を先行投入する構造のままである。したがって、上期の赤字縮小は評価できるものの、企業価値を大きく変えるのは営業損失が数千万円改善したことではなく、創薬事業で契約一時金、マイルストーン、ロイヤリティにつながる導出が実現するかどうかである。

2. キャッシュフローと研究開発資金

PL赤字を創薬支援だけでは賄えず、資本市場からの資金調達が研究開発を支える

同社を評価するうえでは、損益計算書以上にキャッシュフローを見る必要がある。

上期営業キャッシュフローは5.38億円のマイナスだった。前年同期の6.73億円のマイナスからは改善しているが、依然として半年で5億円を超える現金を事業活動に使用している。一方、財務キャッシュフローは7.09億円のプラスとなり、その結果、現金及び現金同等物は2025年12月末の12.05億円から2026年6月末には13.72億円へ増加した。

つまり、現金残高の増加は事業収益の改善によるものではない。研究開発資金の不足部分を株式市場から調達しながら開発を継続している。

第23回新株予約権は1,361万株を対象とし、当初行使価額115円、差引手取概算額15.69億円として発行された。調達資金は、バイオシミラー製造JVへの出資、IDDおよび抗体創薬プラットフォームの技術強化や事業整備、新規創薬パイプラインの研究開発、運転資金などに充てる計画だった。また、ネクスト・グロースを引受先として2億円の無担保社債も発行した。

上期の営業キャッシュ流出5.38億円を単純に年率換算すれば年間約10.8億円となる。6月末現金13.72億円はこの水準の資金流出に対して約1.3年分に相当する。ただし、7月と8月には新株予約権の追加行使があり、約1.94億円の払込資金が入った。したがって、短期的な資金繰りが直ちに逼迫しているとはみない。

問題は、中長期的にこの調達方法を繰り返す必要があるかどうかだ。

創薬支援事業の売上規模は年間6億円前後であり、現在の研究開発投資を全て自己資金で賄うには小さい。CBA-1205またはCBA-1535の導出が進まず、IDDの収益化にも時間を要する場合、数年単位では追加資金調達が必要となる可能性がある。

したがって、今後の投資家にとっては、現金残高だけを見るのではなく、四半期ごとの営業キャッシュフローと、次の資金調達までの期間が延びているかを確認する必要がある。

3. 希薄化と株式需給

大きな希薄化は発生したが、第23回新株予約権による潜在株式は消滅

今回の株価下落を理解するうえで、第23回新株予約権の影響は無視できない。

発行時の対象株式数は1,361万株であり、2025年6月末の総議決権数を基準とした最大希薄化率は20.01%だった。株式数だけで見れば、既存株主にとって軽微とはいえない希薄化である。

2026年7月には220.98万株が新たに交付され、行使価額は月初の72.7円から月末には63.0円まで低下した。7月末に71.37万株が残っていたが、8月12日までに全て行使され、未行使残高はゼロとなった。

7月末の発行済株式数は8,115万株だったため、8月の交付分71.37万株を加えると、現在の発行済普通株式数は約8,186万株となる。

表2 第23回新株予約権と株式数

項目 株式数
発行時点の普通株式数 約6,805万株
第23回新株予約権の潜在株式 1,361万株
最大株数増加率 約20.0%
2026年7月交付株式 220.98万株
2026年8月交付株式 71.37万株
行使完了後発行済株式数 約8,186万株
第23回新株予約権の残存潜在株式 0株

第23回新株予約権の希薄化はすでに現実の発行済株式数に取り込まれた。そのため、今後は同新株予約権による潜在株式をバリュエーションの分母に追加する必要はない。

また、BPSへの影響は株数だけを見た場合とは異なる。

FactSet算定による2026年6月末BPSは19.84円だった。その後、7月と8月に残っていた292.35万株が平均約66円で行使され、約1.94億円の払込みが行われた。7月以降の損益を考慮せず単純にプロフォーマ計算すると、行使完了後BPSは約21.5円となる。

つまり、今回の資金調達では株主一人当たりの持分比率と将来EPSの分母は大きく希薄化したが、行使価額が簿価を上回っていたため、BPS自体は低下していない。

投資家にとってより深刻だったのは、一株純資産の希薄化ではなく、新株の継続的な市場供給による株価需給と、将来利益をより多くの株式で分けることになるEPS希薄化だった。

4. 株価下落の背景

長期下落というより、2024年の期待上昇が2025年以降急速に剥落

同社株の長期チャートを見ると、2020年以降単純に一方向へ下落したわけではない。長期的には低迷傾向だったものの、2024年にはPFKRの導出、IDD、バイオシミラー関連の期待から大きく株価が見直された。その後2025年から2026年にかけて下落が加速している。

したがって、2025年以降の下落は、単純な業績悪化だけで説明するべきではない。

第一の要因は、創薬収益への期待と実績のタイムラグである。

2024年にはPFKRライセンス契約の契約一時金が売上に寄与したが、2025年にはその反動で創薬事業の売上がなくなった。創薬支援事業は計画を上回り、営業損失も縮小したものの、市場が企業価値の上昇要因として期待するCBA-1205、CBA-1535の次の導出はまだ実現していない。

第二は資金消費である。

営業キャッシュフローの赤字が続き、研究開発を継続するためには外部資金が必要だった。創薬収益が読みにくい段階で大型の株式調達が行われれば、投資家は将来の希薄化を株価に織り込む。

第三が実際の株式供給である。

第23回新株予約権は、株価に応じて行使価額が修正され、割当先が行使した株式を売却して資金を回収することを想定した仕組みだった。2026年7月に株価が70円台から60円台へ低下する中でも大量の行使が継続したことから、株価下落局面でも新株供給が続いた。

FactSetデータによれば、グロース・キャピタルの普通株保有は2026年7月1日時点で48.4万株、0.60%にとどまる。大量の新株予約権が行使されながら普通株保有が大きく積み上がっていないことは、取得株式の多くが市場で消化された可能性と整合する。

したがって、2025年以降の株価急落には、創薬収益の具体化が遅れていることへの失望と、資本調達に伴う現実の需給悪化の双方が影響したと考える。

今回、このうち後者の第23回新株予約権による新規株式予約権の付与は終了した。

ここから株価がなお低迷する場合は、従来よりも創薬事業そのものへの市場評価、資金消費、次の資本調達への警戒を直接反映していると判断しやすくなる。

5. CBA-1205

臨床試験の進行から、導出交渉に使えるデータの質が焦点へ

CBA-1205はDLK1を標的とするADCC活性を高めた抗体であり、同社の主要な自社開発パイプラインである。

臨床第1相試験の前半パートでは、30mg/kgまでの投与で高い安全性を確認した。メラノーマ患者では腫瘍縮小を伴うSDが4年以上継続した症例が確認されている。後半パートでは、DLK1発現が確認された肝細胞がん患者でPR、30%以上の腫瘍縮小が確認された。

今回の2Q資料では、肝細胞がんおよびメラノーマの患者登録が完了し、データ解析を実施中としている。また、小児がんパートでは肝芽腫等の患者を組み込み、投与を進める。欧州のIGTPとの共同研究では小児がんでDLK1の高い発現率を確認している。

知財面では、CBA-1205とレンバチニブ併用に関する欧州特許に加え、CBA-1205とFGFR4阻害剤併用に関する日本特許の査定通知を受領した。

同社はCBA-1205を、製品価値と導出時対価の最大化を狙うプログラムと位置付ける。肝細胞がんのPRだけで早期に導出するのではなく、メラノーマでの長期SD、小児固形がん、併用治療の知財を組み合わせることで導出時の経済条件を高めようとしている。

投資家にとっての次の焦点は、臨床試験が予定通り進んでいるかどうかではない。

肝細胞がんでのPRが再現されるか、奏効患者とDLK1発現との関係がより明瞭になるか、小児固形がんで有効性を示唆するデータが出るか、その結果が製薬企業との導出条件にどう結び付くかである。

臨床データがこの段階まで進めば、CBA-1205は単なる研究開発資産ではなく、契約金額を伴う企業価値に変換される可能性が高まる。

6. CBA-1535

最終コホート入り。単剤データでライセンス交渉を成立させられるか

CBA-1535は5T4、CD3、5T4を標的とするTribody型のT cell engagerであり、同社独自の抗体技術を代表する臨床開発品である。

臨床第1相試験では、固形がん患者を対象に単剤で用量を段階的に増量し、安全性、忍容性、初期の薬効シグナルを評価している。

2026年6月から前半パートの最終コホートを開始した。同社によれば、本抗体の作用機序であるT細胞活性化を示すパラメーターに反応が見えつつあり、現時点では軽微な副作用のみで、開発上の懸念を示す安全性データは確認していない。

重要なのは、同社がCBA-1535について単剤パートのデータのみでの導出を視野に入れている点である。

固形がんのT cell engager領域では大手製薬企業を含む研究開発競争が進む。この環境では、小規模なバイオベンチャーが単独で臨床開発を長期間続けるより、安全性と初期薬効シグナルを示した段階で資金力のある企業へライセンスし、開発成功確度を高める戦略は合理性がある。

したがって、CBA-1535については臨床試験の後半パートへの移行そのものより、最終コホートから得られる安全性、T細胞活性化、初期薬効データが、導入候補企業から見て契約判断に足る水準となるかが重要である。

CBA-1205がより高い導出価値を目指してデータを積み増す資産であるのに対し、CBA-1535は早期導出によって開発負担を外部へ移す役割を持つ。両パイプラインの導出戦略は異なり、この違いが資金配分上も重要になる。

7. 創薬支援、IDD、バイオシミラー

創薬が生む大きな収益の谷間を埋める事業として存在感が増す

創薬支援事業は、現在の同社にとって唯一継続的な売上を生み出す事業である。

2026年上期売上高2.73億円は前年同期比8.7%増となり、バイオシミラー関連売上が増収を牽引した。

過去データでは、2025年12月期の全社売上高は5.93億円であり、2020年の4.81億円から5年間のCAGRは約4.3%となる。売上成長そのものは急激ではないが、2024年のPFKR一時金を除けば、創薬支援が安定収益の土台を形成してきた。

IDDでは、Axcelead Drug Discovery Partnersとの業務提携のもと、新たな案件が開始した。バイオベンチャーの創業前後でのサイエンス支援相談も増えており、同社の研究および臨床開発ノウハウを外部企業へ提供する事業機会が拡大している。

DoppeLibでは、二重特異性抗体のハイスループットスクリーニングを可能にする技術を構築し、複数企業と共同検討を進める。同社はこれを今後のIDDにおける重要技術と位置付けている。会社資料の13ページでは、従来は200種類ずつの親抗体を組み合わせると4万通りの組み合わせを個別に扱う必要があったのに対し、DoppeLibでは一括ライブラリ化して効率的に評価する考え方を示している。

バイオシミラーは、研究開発型の創薬と受託研究の中間に位置する事業として注目したい。

創薬のように一件の導出で大きな契約金を得るモデルではないが、共同開発やCMC関連機能を使うことで売上の継続性を高められる可能性がある。2025年に続き2026年上期でもバイオシミラー関連収益が増収要因となったことは、この領域の企業価値上の重要度が高まりつつあることを示している。

今後確認すべきなのは、案件数ではなく売上高と利益への寄与である。

IDDやDoppeLibについて、相談中、共同検討中という段階から、契約額、継続期間、マイルストーンなどが開示される段階へ進めば、同社の評価は創薬パイプラインだけに依存しにくくなる。

8. 株主構成と経営陣

高い浮動株比率は株価反応を大きくする一方、安定株主の薄さも残る

FactSet データによると、2026年8月12日時点で浮動株比率は89.4%、機関投資家保有比率は0.16%である。上位株主は個人株主が中心で、小川恭弘氏2.09%、渡邊賢二氏1.68%、太田邦史氏1.20%、江平文茂氏1.19%などとなっている。グロース・キャピタルの普通株保有は0.60%である。

この株主構成は、好材料に対して株価が大きく動きやすい一方、長期保有を前提とする機関投資家が少なく、材料が途切れた局面では株価を支える安定需要も弱いことを意味する。

第23回新株予約権の行使完了によって新たな大量供給は一巡したが、行使された株式の最終的な投資家への移転が完全に落ち着いたかは、出来高や主要株主の変化を通じて今後確認する必要がある。

小池社長は協和キリンでがんR&D、研究ユニットなどを担当し、美女平取締役は経営企画・管理、田岡取締役は臨床開発、河合氏は大手製薬企業で研究開発から生産、経営まで経験している。

経営陣の構成は創薬企業として研究開発経験が厚い。一方、現在の同社にとって資本配分は研究開発そのものと同じ程度に重要である。第23回新株予約権で大規模な資金調達を終えた後、どのパイプラインへどれだけ資金を投入し、どこで導出によって外部資本へ開発負担を移すかが経営評価を左右する。

9. バリュエーション

PBRはなお高いが、現在の株価は創薬成功を全面的には織り込んでいない

株価80円、行使完了後の発行済株式数約8,186万株を用いると、時価総額は約65.5億円となる。

2026年6月末BPS19.84円に、7月および8月の新株予約権行使による資本流入を単純反映したプロフォーマBPSは約21.5円であり、現在株価のPBRは約3.72倍となる。

同社は赤字であり、会社も創薬事業を含む全社利益予想を公表していない。そのため、通常の予想PERによる評価は適切ではない。FactSet算出の直近ROEもマイナス60.0%であり、通常のROEとPBRの関係から適正PBRを計算する方法も、足元利益をそのまま使う限り意味を持たない。

また、過去5年間はEPSが継続してマイナスであるため、EPSの実績CAGRを通常の方法で計算できない。

この点は、無理に成長率を算出するよりも、株価がどの程度の将来収益力を要求しているかを見るほうが適切である。

売上高は2020年の4.81億円から2025年の5.93億円へ増え、5年間CAGRは約4.3%である。現在のPBR3.72倍を正当化するには、単なる4%程度の売上成長では足りない。10%程度の株主資本コストと4%程度の長期成長率を置くと、現在のPBRは将来的に20%台半ば程度の持続的ROEを要求する水準となる。

ただし、同社の場合、このROEは創薬支援事業だけから生まれるものではない。CBA-1205、CBA-1535の導出一時金、マイルストーン、IDDおよびバイオシミラー収益を含めた収益構造の転換が必要である。

したがって、現在の株価は赤字継続だけを前提とした水準ではないが、複数の創薬パイプラインが成功することを全面的に織り込んだ水準とも考えにくい。

適正株価

今回はPBR、DCF、ROICの三法を用いた。

・PBR法

プロフォーマBPS約21.5円に対し、継続赤字と将来の創薬価値を考慮してPBR3.5倍から5.0倍を適用すると、75円から108円程度となる。

・DCF法

創薬支援売上6億円程度を基礎事業とし、CBA-1205、CBA-1535、IDD、バイオシミラーを成功確率で調整して評価した。WACCは約10%、永久成長率は1%を基本前提とした。短期FCFは赤字であるため通常の定常型DCFではなく、導出収入を確率調整した結果、85円から145円程度とみる。

・ROIC法

現在はROICがWACCを大幅に下回っている。創薬支援の利益とIDD収益を積み上げ、導出収入によって投下資本利益率が改善するシナリオを評価すると、75円から125円程度となる。ChartsでもROICとWACCのスプレッドは過去を通じてマイナスが続いており、現時点では継続的な経済価値創出局面に入ったとは評価できない。

三法を総合すると、

適正株価レンジ 75円から145円

中心値 100円から105円程度

とみる。

株価80円はレンジの下側に位置している。前回レポート時よりも株価が低下し、第23回新株予約権の直接的な供給が終了したため、リスク・リワードは改善した。

一方、中心値への上昇を実現するには、創薬収益の具体化を確認する必要がある。株価が安いという理由だけで評価を一段引き上げるのではなく、現在は株価水準の魅力が高まった段階と考える。

10. 今後の株価を動かす条件とリスク

今後の株価再評価に最も影響するのは、以下の順だと考える。

第一はCBA-1205のデータ解析である。肝細胞がんのPRに続く追加の奏効データ、DLK1発現との相関、小児がんでの薬効シグナルが確認されれば、導出時の経済価値を引き上げる材料となる。

第二はCBA-1535の最終コホートである。安全性だけでなく、T細胞活性化や薬効を示唆するデータが確認され、単剤データでの導出交渉が具体化すれば、同社が将来負担する研究開発費も低下する可能性がある。

第三はIDDとバイオシミラーの収益化である。DoppeLibを含む共同研究や創薬支援相談が契約金額を伴う事業へ移るかを確認したい。バイオシミラー関連収益が2025年、2026年と継続すれば、創薬支援事業の収益安定性に対する評価が高まる。

第四は営業キャッシュフローである。上期5.38億円の資金流出が下期に縮小するかが、新たな株式調達までの期間を左右する。

第五は資本政策である。第23回新株予約権は終了したため、少なくとも同権利による追加希薄化はない。ただし、創薬導出が遅れ、現金消費が続けば、数年単位では新たな資金調達が再び必要となる可能性がある。

下振れリスクは、CBA-1205のデータが既存症例以上に広がらないこと、CBA-1535で十分な薬効シグナルを確認できないこと、導出交渉が長期化すること、バイオシミラー関連収益が単発にとどまること、研究開発費が再び増加すること、新たな株式調達への警戒が早期に強まることである。

11. 今後の同社株式への投資の焦点

同社株を今後評価するうえでは、株価が何円まで下落したかだけを見るべきではない。

2025年以降の株価下落には、創薬収益の具体化が遅れていることだけでなく、第23回新株予約権による大規模な株式供給が重なっていた。現在はその供給源が終了したため、投資家は同社の事業価値を以前より判断しやすくなった。

一方、株価が80円まで下落したからといって、同社のリスクがなくなったわけではない。

年間10億円前後に達し得る資金消費を、創薬支援売上6億円だけで支えることは難しい。創薬企業としての企業価値を引き上げるには、CBA-1205またはCBA-1535を資金回収可能な段階まで進める必要がある。

現在は、株式需給の改善を先に評価し、創薬収益の具体化を待つ局面と考える。

第23回新株予約権の行使完了後も株価が低迷する場合には、単純な需給要因ではなく、導出時期や資金消費に対する市場の評価が株価に表れている可能性が高まる。

逆に、CBA-1205またはCBA-1535で契約条件を伴う導出が実現した場合、株式供給の重石が小さくなった現在は、以前より株価が材料に反応しやすくなる可能性がある。

中長期投資ではこの非対称性に注目したい。

適正株価中心値100円から105円に対し、現在株価80円には一定の上値がある一方、創薬導出が長期間実現しなければ、再び資金調達への警戒が高まり、株価の下振れ要因となる。

したがって現段階では、やや強気を維持しながら、CBA-1205の解析結果、CBA-1535最終コホート、IDDおよびバイオシミラーの収益化、営業キャッシュフローを四つの主要確認項目とする。

会社概要

カイオム・バイオサイエンスは、抗体医薬品の研究開発を手掛ける創薬ベンチャーである。2005年設立、2011年に上場し、東京証券取引所グロース市場に株式を上場している。独自の抗体作製技術ADLibシステムや多重特異性抗体技術Tribody、二重特異性抗体のハイスループットスクリーニング技術DoppeLibなどを基盤として、自社パイプラインの創薬事業、製薬企業等向けの創薬支援事業、外部企業の研究・臨床開発やバイオシミラー開発を支援するIDDを展開している。

創薬事業ではCBA-1205とCBA-1535を主力パイプラインとして開発し、製薬企業への導出による契約一時金、マイルストーン、ロイヤリティの獲得を目指す。創薬支援事業は抗体作製、抗体エンジニアリング、タンパク質調製等を提供し、同社の継続的な売上基盤となっている。IDDでは、抗体創薬に関する技術と開発ノウハウを外部企業へ展開し、DoppeLib、臨床開発支援、バイオシミラーなどへ事業領域を広げている。

主要財務データ

単位: 百万円 2021 2022 2023 2024 2025 2026
CE
売上高 713 631 682 781 593 NA
EBIT -1,334 -1,259 -1,205 -1,031 -980 NA
税引前収益 -1,466 -1,238 -1,215 -1,018 -980 NA
親会社株主帰属利益 -1,480 -1,243 -1,220 -1,021 -983 NA
現金・預金 1,791 1,727 1,326 2,063 1,205  
総資産 2,339 2,215 1,751 2,469 1,728  
債務合計 183 184 291 282 262  
純有利子負債 -1,608 -1,543 -1,035 -1,782 -943  
負債総額 446 425 594 549 605  
株主資本 1,893 1,791 1,158 1,920 1,122  
営業活動によるキャッシュフロー -1,131 -1,191 -1,069 -1,001 -936  
設備投資額 0 0 0 0 40  
投資活動によるキャッシュフロー -35 0 0 0 -55  
財務活動によるキャッシュフロー 271 1,127 667 1,738 133  
ROA (%) -50.73 -54.57 -61.51 -48.37 -46.84  
ROE (%) -59.16 -67.48 -82.76 -66.33 -64.61  
EPS (円) -36.7 -28.3 -24.6 -17.5 -14.5  
BPS (円) 46.4 37.0 22.0 28.7 16.4  
一株当り配当(円) 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 40.31 48.42 52.19 66.97 68.05  

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。

株価推移

主要株価関連データ

財務データI(四半期ベース)

単位: 百万円 2024/12 2025/12 2026/12
  2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q
[損益計算書]                  
売上高 134 159 358 139 113 118 223 147 126
前年同期比 -29.2% -3.8% 126.1% 7.0% -15.7% -25.7% -37.6% 6.1% 11.8%
売上原価 56 74 145 58 55 53 72 67 48
売上総利益 78 85 213 81 58 65 151 81 78
粗利率 58.0% 53.4% 59.5% 58.1% 51.5% 55.3% 67.8% 54.7% 61.7%
販管費 337 425 323 345 330 334 326 313 325
EBIT(営業利益) -259 -340 -110 -265 -272 -269 -174 -232 -247
前年同期比 -40.2% 38.1% -63.3% -17.9% 5.1% -21.0% 58.7% -12.2% -9.1%
EBITマージン -193.1% -213.9% -30.7% -190.7% -240.7% -227.5% -78.1% -157.9% -195.6%
EBITDA -259 -340 -110 -265 -272 -267 -172 -230 -245
税引前収益 -259 -351 -105 -265 -273 -259 -182 -232 -249
当期利益 -260 -352 -105 -266 -274 -260 -183 -233 -250
少数株主損益 0 0 0 0 0 0 0 0 0
親会社株主帰属利益 -260 -352 -105 -266 -274 -260 -183 -233 -250
前年同期比 -40.4% 38.0% -65.1% -12.5% 5.5% -26.1% 73.4% -12.4% -8.8%
利益率 -193.9% -221.2% -29.4% -191.8% -242.5% -220.3% -81.7% -158.4% -197.7%
                   
[貸借対照表]                  
現金・預金 1,104 1,241 2,063 1,819 1,475 1,006 1,205 1,142 1,372
総資産 1,557 1,694 2,469 2,205 1,963 1,549 1,728 1,670 1,907
債務合計 292 303 282 282 261 79 262 87 68
純有利子負債 -812 -938 -1,782 -1,537 -1,214 -926 -943 -1,055 -1,305
負債総額 487 478 549 443 443 299 605 358 341
株主資本 1,071 1,216 1,920 1,761 1,519 1,250 1,122 1,312 1,566
                   
[収益率 %]                  
ROA -69.09 -70.61 -48.37 -49.66 -56.65 -55.84 -46.84 -49.03 -47.84
ROE -101.15 -100.30 -66.33 -65.33 -77.00 -73.45 -64.61 -61.82 -60.01
[一株当り指標: 円]                  
EPS -4.6 -6.1 -1.7 -3.9 -4.0 -3.8 -2.7 -3.3 -3.3
BPS 19.0 19.9 28.7 26.0 22.3 18.4 16.4 18.1 19.8
一株当り配当 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 56.39 61.24 66.97 67.77 68.05 68.05 68.05 70.89 77.99

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。

財務データII(通期ベース)

単位: 百万円 2016年12月期 2017年12月期 2018年12月期 2019年12月期 2020年12月期 2021年12月期 2022年12月期 2023年12月期 2024年12月期 2025年12月期
[損益計算書]                    
売上高 252 260 213 448 481 713 631 682 781 593
前年同期比 -10.0% 3.0% -18.1% 110.3% 7.4% 48.3% -11.5% 8.2% 14.4% -24.0%
売上原価 228 94 107 167 238 292 283 285 349 238
売上総利益 25 166 106 281 243 421 348 398 432 356
粗利率 9.7% 64.0% 49.6% 62.7% 50.5% 59.0% 55.1% 58.3% 55.3% 59.9%
販管費 1,067 1,054 1,645 1,683 1,526 1,755 1,606 1,603 1,463 1,335
EBIT -1,042 -888 -1,539 -1,402 -1,284 -1,334 -1,259 -1,205 -1,031 -980
前年同期比 -17.9% -14.8% 73.4% -8.9% -8.4% 3.9% -5.7% -4.2% -14.5% -5.0%
EBITマージン -413.3% -341.6% -723.1% -313.2% -266.9% -187.2% -199.5% -176.6% -132.0% -165.1%
EBITDA -929 -877 -1,532 -1,397 -1,280 -1,331 -1,257 -1,204 -1,030 -976
税引前収益 -1,501 -880 -1,531 -1,401 -1,291 -1,466 -1,238 -1,215 -1,018 -980
当期利益 -1,491 -883 -1,534 -1,404 -1,294 -1,480 -1,243 -1,220 -1,021 -983
親会社株主帰属利益 -1,491 -883 -1,534 -1,404 -1,294 -1,480 -1,243 -1,220 -1,021 -983
前年同期比 16.3% -40.8% 73.8% -8.5% -7.8% 14.4% -16.0% -1.8% -16.3% -3.7%
利益率 -591.2% -339.6% -720.5% -313.6% -269.1% -207.6% -197.0% -178.8% -130.7% -165.6%
                     
[貸借対照表]                    
現金・預金 4,553 4,027 2,329 2,106 2,686 1,791 1,727 1,326 2,063 1,205
総資産 4,789 4,419 2,831 2,808 3,495 2,339 2,215 1,751 2,469 1,728
債務合計 54 4 0 0 180 183 184 291 282 262
純有利子負債 -4,499 -4,023 -2,329 -2,106 -2,506 -1,608 -1,543 -1,035 -1,782 -943
負債総額 224 202 154 187 385 446 425 594 549 605
株主資本 4,565 4,218 2,677 2,622 3,110 1,893 1,791 1,158 1,920 1,122
                     
[キャッシュフロー計算書]                    
営業活動によるキャッシュフロー -970 -867 -1,689 -1,537 -1,360 -1,131 -1,191 -1,069 -1,001 -936
設備投資額 11 5 0 0 0 0 0 0 0 40
投資活動によるキャッシュフロー 1,989 -137 0 -26 -4 -35 0 0 0 -55
財務活動によるキャッシュフロー 1,434 479 -10 1,341 1,944 271 1,127 667 1,738 133
                     
[収益率 %]                    
ROA -30.72 -19.17 -42.30 -49.79 -41.06 -50.73 -54.57 -61.51 -48.37 -46.84
ROE -32.67 -20.10 -44.49 -52.99 -45.15 -59.16 -67.48 -82.76 -66.33 -64.61
当期利益率 -591.23 -339.59 -720.46 -313.65 -269.06 -207.58 -197.03 -178.77 -130.73 -165.65
資産回転率 0.05 0.06 0.06 0.16 0.15 0.24 0.28 0.34 0.37 0.28
財務レバレッジ 1.06 1.05 1.05 1.06 1.10 1.17 1.24 1.35 1.37 1.38
[一株当り指標: 円]                    
EPS -65.9 -33.5 -57.3 -44.6 -36.1 -36.7 -28.3 -24.6 -17.5 -14.5
BPS 179.3 157.5 99.9 78.8 78.7 46.4 37.0 22.0 28.7 16.4
一株当り配当 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
発行済み株式数 (百万株) 25.31 26.78 26.78 33.28 39.51 40.31 48.42 52.19 66.97 68.05

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。