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Omega Investment株式会社

カウリス (Price Discovery)

HOLD

時価総額:78.3億円

株価1,199円、2026年7月30日時点の前提に基づく。時価総額は発行済株式数652.8万株で算出。

株価予想EPS予想PER実績BPS
1,19947.725.1253.8
実績PBR予想ROE予想配当予想配当利回り
4.7219.35.750.48

Conclusion

 HOLD。カウリスは、金融機関向け不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」を中核に、低い解約率、既存顧客への利用範囲拡大、規制当局や金融機関との連携を強みとする質の高いレグテック企業である。FY12/2026第1四半期には増収増益となり、新規事業「Grid Data KYC」も将来の成長余地を広げる。一方、株価1,199円は予想PER25.1倍、実績PBR4.72倍で、PBR、DCF、ROICの三法による適正株価中央値約1,170円を既に上回る。上場後のROE低下は資本構成の正常化が主因であるが、潤沢な資本を高い収益率で再投資できるかは未証明であり、Grid Data KYCも収益化前である。事業品質は評価するが、現時点の期待リターンは十分ではなく、保有継続を妥当と判断する。

Profile

 金融機関の不正取引対策を支えるクラウド型レグテック企業

 カウリスは、金融機関向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」を主力とするレグテック企業である。口座開設、ログイン、送金等のユーザーアクションをモニタリングし、金融機関横断で蓄積した不正利用端末やアクセス情報を用いて、マネーロンダリング、なりすまし、不正送金等のリスクを検知する。収益は契約社数、顧客当たり売上高及びコンサルティング売上で構成され、監視対象となるページ、端末、口座数、ユーザーアクション数の拡大が単価上昇につながる。2025年9月には、電力契約情報と実際の電力使用状況を活用して居住実態を確認する「Grid Data KYC」を開始し、Fraud Alertに続く本人確認・継続的顧客管理の基盤を構築している。

 事業別売上高比率%(営業利益率%):不正検知サービス事業 100.0%(29.1%)(2025年12月期)

Stock Hunter’s View

マネロン対策の導入拡大。間もなく2Q決算発表。

金融機関向けにマネーロンダリング(資金洗浄)対策の不正検知ツール「Fraud Alert(フロードアラート)」を提供するカウリスは、ガイドラインの作成や法改正などの政策提言を積極的に行い、官民連携を深めながら規制を変えていく、日本では珍しいレグテック(規制+テクノロジー)企業でもある。

 売り上げは契約社数×ARPU(顧客当たり売上高)+契約社数×コンサルティング売り上げで構成される。口座数やユーザーアクション数(ログイン数や口座開設数、送金回数など)、モニタリング対象範囲(ブラウザ・スマートフォンアプリ、口座開設/ログイン送金ページ)など、設置面積を広げることで単価を上げていくビジネスモデル。足元ではモニタリング対象ページの拡大が進展しており、8月14日発表予定の今12月期第2四半期(1~6月)決算内容にも期待が持てる。

 さらに2025年9月に新規事業として立ち上がった、電力契約情報を活用したKYC(本人確認)サービス「Grid Data KYC」の進捗も注目される。今期は各業界の先駆者(初期顧客)の獲得に注力するフェーズにあり、1Qでは飯田信用金庫の実証実験を開始した。

 送配電事業者が保有する情報と実際の電力使用状況を照合することで、その住所に継続的に居住している、あるいは転出しているなどの状況を見定めるサービス。北は北海道電力(9509・P)傘下の北海道電力ネットワークから、南は沖縄電力(9511)まで日本全国をカバーしており、地域差なく均一で高精度な不正検知が可能となる。

 

Investor’s View

HOLD:高品質な事業基盤は評価できるが、現在株価は利益成長の再加速を相応に織り込む

カウリスの投資価値の核心は、金融犯罪対策という不可逆的な規制需要を、継続課金型のソフトウエア収益へ転換している点にある。Fraud Alertは、金融機関横断で蓄積される不正アクセス情報、顧客業務への組み込み、規制対応の専門性を組み合わせており、単純なセキュリティ製品よりも解約されにくい。契約社数の増加に加え、既存顧客における監視ページ、口座数、端末及びユーザーアクションの拡大によってARPUを引き上げられるため、顧客獲得だけに依存しない成長構造を持つ。

業績は売上高の高成長と高い営業利益率を両立してきたが、株主価値への転換は一様ではない。FY12/2021からFY12/2025まで売上高は大幅に拡大し、FY12/2025の営業利益率も29.1%を維持した一方、フリーキャッシュフローマージンは14.7%、ROICは18.0%へ低下した。依然として資本コストを上回る水準ではあるが、上場によって得た資金や内部留保が売上高と利益の拡大に結び付く速度は鈍化している。Grid Data KYCを含む成長投資が高い追加収益を生まなければ、現金の積み上がりは財務安全性を高める一方で、資本効率と株価評価を抑制する。

上場後にROEが急速に低下した主因は、本業の競争力低下ではなく、資本構成の正常化である。FY12/2022のROE372%は、上場前の極端に薄い自己資本と高い財務レバレッジを基礎とした例外的な水準であった。その後、上場増資と利益蓄積により株主資本が急増し、エクイティ・マルチプライヤーはFY12/2022の8.94倍からFY12/2025には1.42倍へ低下した。総資産回転率も1.28倍から0.67倍へ低下しており、調達した現預金が直ちに売上高を生む資産へ転換されていない。予想ROE19.3%はなお高いが、今後の評価は、過去の異常値との比較ではなく、余剰資本を含む正常なバランスシートで20%前後のROEを維持できるかによって決まる。

純利益率の低下は、営業利益率の悪化だけでは説明できない。FY12/2022は税引前利益率28.6%に対して純利益率が32.5%となっており、繰越欠損金に係る税効果等による法人税等の利益計上、すなわち実効税率が一時的にマイナスとなった影響が大きい。その後は税負担が正常化し、FY12/2025には税引前利益率29.3%に対して純利益率19.7%となった。したがって、FY12/2022からの純利益率低下は本業の採算悪化を直接示すものではなく、一過性の税効果が剥落したことが主要因である。ただし、FY12/2025には粗利益率低下と設備投資増加もみられ、営業利益、税引前利益、フリーキャッシュフローを分けて確認する必要がある。

上場来の株価低迷は、業績悪化よりもIPO直後の過大な期待が修正された結果である。2024年3月の公開価格1,530円に対し、上場直後には成長企業としての希少性とレグテックへの期待から株価が3,900円台まで上昇し、PER及びPBRは持続困難な水準に達した。その後、売上高は伸びたものの、EPSはFY12/2022以降おおむね横ばいとなり、ROE、ROIC及びフリーキャッシュフローの低下が明確になったため、評価倍率が圧縮した。市場は現在、Fraud Alertの質を認めつつも、利用範囲の拡大がEPS成長へ転換する速度、Grid Data KYCの収益化時期、余剰資本の活用方法を慎重に評価している。

Grid Data KYCは、同社の株主価値を再評価させる最大のオプションである。電力契約情報と実際の使用状況を照合し、住所の実在性や継続居住を確認する仕組みは、口座開設時の本人確認だけでなく、継続的顧客管理、不正口座の検知、貸金、通信、保険等への展開余地を持つ。全国の送配電事業者をカバーするデータ基盤は模倣が容易ではない。一方、現段階は実証実験と初期顧客獲得の段階であり、契約単価、導入期間、継続収益、必要な追加投資は明らかではない。投資家は実証件数ではなく、本契約への移行、年間契約残高、ARPU及び営業利益への寄与を確認すべきである。

株価1,199円は予想EPS47.7円に対して予想PER25.1倍、実績BPS253.8円に対して実績PBR4.72倍である。株主資本コスト8%を前提とすると、市場は概ね年率5%程度の長期EPS成長を織り込んでいる。これはFY12/2021からFY12/2025までの見かけ上のEPS CAGRを大幅に下回るが、低い起点によるベース効果を除けば、FY12/2022以降のEPSがほぼ横ばいであった実績よりは高い。現在株価は、今期の増益だけでなく、その後も利益成長が継続することを要求している。

株主分布は長期経営を支える一方、流動性と外部規律を弱める。島津敦好社長が53.01%を保有し、GMOインターネットグループ、役員、事業会社が続くため、経営陣と株主の経済的利害は一致しやすく、規制形成や新規事業に長期的に取り組める。反面、機関投資家の保有は限定的で、主要運用会社による保有減少もみられる。創業者の支配力、少ない流通株式、自己株式取得は価格形成を不安定にし、少数株主にとって資本政策と取締役会の独立性を重要な評価項目とする。

投資判断はHOLDとする。Fraud Alertの競争優位、低い解約率、2026年第1四半期の増収増益及びGrid Data KYCの潜在価値は評価できる。しかし、PBR、DCF、ROICの三法による適正株価中央値は約1,170円で、現在株価1,199円はその水準を2.5%上回る。株価の上昇には、既存顧客へのアップセルが二桁のEPS成長へ結び付くこと、Grid Data KYCが実証から本契約へ移行すること、余剰資本を高いROICで再投資することが必要である。現時点では事業品質とバリュエーションが均衡しており、新規資金を積極的に配分するだけの安全余裕はない。

Financials and Valuations

 株価1,199円、予想EPS47.7円、実績BPS253.8円、予想ROE19.3%、予想配当5.75円を前提とすると、予想PERは25.1倍、実績PBRは4.72倍、予想配当利回りは0.48%、予想配当性向は12.1%となる。発行済株式数652.8万株に基づく時価総額は約78.3億円である。

評価手法主な前提適正株価
PBR法持続可能ROE17~20%、株主資本コスト8~9%、
長期成長率4~5%、正常化PBR4.0~5.2倍
1,020~1,320円
中央値1,170円
DCF法今後5年間のEPS成長率10~15%、
株主資本コスト8.5%、永続成長率2%
950~1,300円
中央値1,120円
ROIC法正常化ROIC16~20%、WACC8~9%、
ネットキャッシュ約10~11億円
1,180~1,500円
中央値1,330円

三法による総合的な適正株価レンジは950~1,500円、中央値は約1,170円である。現在株価1,199円は中央値を約2.5%上回り、適正価値レンジ内にある。ROIC法はネットキャッシュと高い資本収益性を評価するため高い価値を示すが、ROICが低下傾向にあるため、その上限の実現にはGrid Data KYCの収益化と資本効率の改善が必要となる。

株主分布

 FactSetが把握する株主の保有比率は73.50%で、島津敦好社長が53.01%を保有する。GMOインターネットグループ4.36%、造田洋典氏3.06%、カウリスの自己株式2.88%、Phillip Capital Management 2.30%、関西電力1.65%等が続く。創業者が過半数を保有するため、経営者と株主の利害が一致し、短期的な市場圧力に左右されず事業基盤を構築できる。一方、流通株式は限定され、国内外の機関投資家が十分なポジションを構築しにくい。アモーヴァ・アセットマネジメント及びアセットマネジメントOneは直近の保有を減らしており、機関投資家層の厚みは十分ではない。自己株式取得は1株当たり価値を支えるが、流動性を一段と低下させる可能性もある。少数株主にとっては、資本配分、取締役会の独立性及び創業者支配下での株主還元方針が重要な検証項目となる。

Price

PBR (LTM)

PER (LTM)

ROE (LTM)

EPS (LTM)

BPS (LTM)