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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company note – 4Q update)

株価(4/8)135 円予想配当利回り(24/12予)ー %
52週高値/安値174/129 円ROE(TTM)-83.6 %
1日出来高(3か月)726.9 千株営業利益率(TTM)-176.6 %
時価総額74 億円ベータ(5年間)1.1
企業価値65 億円発行済株式数 52.634 百万株
PER(24/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(23/12実)6.23 倍
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創薬事業が順調に進捗。創薬支援事業も着実増。

2023/124Q決算サマリー

 カイオム・バイオサイエンス(以下、同社)の2023/12期4Q決算は、創薬支援事業が着実に成長、売上高682百万円(前年度比+8%増)となり、営業利益以下各段階の利益において赤字幅がわずかながらも縮小した。

 創薬事業における第4四半期の進捗については、自社パイプラインであるCBA-1205において第1相試験前半パートで登録されたメラノーマ患者の腫瘍縮小効果をともなうSD(安定)評価が継続し30ヶ月を超えて継続投与中である。第1相試験後半パートの遂行のため追加の原薬・治験薬の供給を開始した。

 導出したADCT-701はNCI(米国国立がん研究所)が米国での第1相試験に向けたIND申請を完了し、小児の神経内分泌がんを対象とした臨床試験開始にむけた準備を進めている。

 前臨床試験段階にあるPCDCの海外企業に対する導出活動は引き続き続いている。また、同じく前臨床試験段階にあるPFKR 、PXLRの新規導出活動が開始された。

 創薬支援事業の売上高は売上高682百万円となり業績予想を上回り、セグメント利益は399百万円(同+14%増)となった。既存顧客との取引が着実に増加している。なお、 2024年2月には、スポット取引を行なっていた武田薬品工業と新たに業務委託基本契約を締結しており、今後一層の業績拡大が期待される。

 

2024/12会社予想と今後の注目点

 創薬事業について合理的な業績予想の算定が困難であることから、創薬支援事業の売上高のみ開示されている。これは720百万円(同+6%増)とされている。

 なお、最大の注目点は第一相の臨床試験が進んでいるCBA-1205とCBA-1535の治験の進捗、およびこれらとPCDCなどの導出の成否である。近年は研究開発資金の捻出のために新株予約権の行使による株式発行が増えてきたが、導出に成功すれば中長期的な業績期待が高まると同時に、契約一時金・開発マイルストン収入により単年度黒字になる公算がある。加えて、これが研究開発の原資となるため、新株発行による資金調達に対する依存度が下がる。同社にとって重要な転換点が接近しつつあると言えるため、これらの導出動向に対して従来以上に株式市場の注目が集まるだろう。

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12 630 -11.5 -1,258 -1,243 -1,242 -28.26
2023/12 682 8.2 -1,205 -1,217 -1,220 -24.62
2023/12(会予)

注:同社の業績予想は、創薬事業における合理的な業績予想の算定が困難であるとして、創薬支援事業の数値(売上高 720百万円)のみ公表している

出所:2023年12月期第4四半期決算補足資料(2024年2月13日)

2023/124Q決算実績:創薬支援事業が順調に拡大

 2023/12期4Q決算は、創薬支援事業が着実に成長、売上高682百万円(前年度比+8%増)となり、営業利益以下各段階の利益においてその赤字幅が縮小した。

 創薬事業の各パイプラインの進捗状況等は上記の図を通り。それぞれのパイプラインは順調に進行しているが、2023/12期4Q中の売上は計上されていない。販管費中の研究開発費は 1,052百万円(同84百万円減)、前年度にCBA–1535のCMC関連費用を計上し今期は治験製剤の費用を計上していない分が減少した。その結果、同事業のセグメント損失は、研究開発費に相当する1,052百万円となった。

 パイプラインの状況については後述する。

 創薬支援事業は、同社の独自の抗体作製手法であるADLib®システムを中心とした、抗体作製技術プラットフォームを活かした抗体作製業務や抗体の親和性向上業務、たんぱく質調製業務を受託し、国内の主要製薬企業における抗体医薬にかかる研究支援を展開するものである。創薬支援事業による安定的な収益の獲得が、創薬事業の研究開発費確保の一助となっている。

 同事業の売上高は売上高682百万円となり業績予想を上回り、セグメント利益は399百万円(同+14%増)となった。 当事業年度において新たに国内大手製薬企業との委受託包括契約の締結、国内診断薬企業との新たな委受託業務を開始したほか、複数の新規顧客との取引を開始している。また、ADLib®システムを利用した抗体作製にかかる委受託契約として、国立研究開発法人との業務も推進している。 なお、2024年2月、スポット取引を行なっていた武田薬品工業と、新たに業務委託基本契約を締結している。

 BSに関しては、2023年12月末の総資産は1,629百万円(2022年12月末比463百万円減少)、現預金は1,326百万円(2022年12月末 1,727百万円)である。新株予約権の行使に伴う株式発行で555百万円調達を行なっており、期末の純資産は1,158百万円である。

◇パイプラインの進捗状況: CBA–1205の導出価値最大化に向けて計画を延長

<自社開発品>

CBA–1205 ADCC活性増強型 ヒト化抗DLK-1モノクローナル抗体。ファーストインクラス。臨床第1相試験後半パート。臨床第1相試験において、ポジティブな兆候を確認。肝細胞がん患者における複数のPR症例の獲得と導出一時金の最大化を狙う。

 CBA–1205は、国立がん研究センターにおいて、固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートを実施。また、後半パートにおいては、肝細胞癌の患者を対象として、試験を行なっている。前半パートでは、既に高い安全性が確認されているが、登録されたメラノーマの患者において腫瘍縮小を伴うSD(安定)評価が続き30ヶ月以上の継続投与が確認され、現在も投与を継続中である。

 また、後半パートで登録された肝細胞がん患者1例においてPR(部分奏功:30%以上の腫瘍縮小)を確認している。

 本剤の治療薬としてのポテンシャルを検証するため、PR症例と本剤投与の科学的な関連性を解析することを目的とし、治験登録患者の選定基準を厳格化し、並びに治験期間の延長を決定している。これに対応して治験薬の追加製造が完了し4Qに供給を開始している。

 臨床第1相試験後半パートの完了は2025年を予定しており、並行して事業提携・導出活動を進めていく。

 肝細胞がん患者における複数のPR症例の獲得ができれば導出に弾みがつくと想定される。

CBA–1535; ヒト化抗5T4・抗CD3多重特異性抗体。世界初の創薬モダリティ。臨床第1相試験前半パート、2024年に後半パート入りをうがかう

 同社は2022年2月、PMDAに治験計画届を提出、6月末より国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院及び静岡県立静岡県がんセンターの2施設において、臨床第1相試験の投与を開始している。臨床第1相試験前半パートにおいて、固形がん患者を対象に安全性評価及び薬効シグナルの評価を実施。低容量から段階的に投与し、安全に投与できる最大量を求め、初期の薬効シグナルを評価する。

 後半パートにおいては、がん免疫療法薬との併用による効率的な薬効評価を行う。前半パートでの薬効シグナルの確認後に、後半パートを開始する計画であり、後半パート開始時期は2024年中である。

 CBA–1535はTribodyTMとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する TribodyTMの適用の可能性が広がることとなる。結合する標的や結合する手の数の組み合わせにより、通常の抗体以上の効果や、複数薬剤の併用投与により、1剤の投与のみで複数の薬効が期待されることから、患者のQOLや、医療経済的メリットが期待される。

<導出品>

ADCT-701;米国で臨床第1相試験に向けたIND申請完了

 スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。米国において、米国国立がん研究所(NCI)が開発主体となり、小児の神経内分泌がんを対象とした臨床第1相試験を行うためINDInvestigational New Drug)の申請が完了している。

<導出候補品>

PCDCCDCP1を標的分子とするファーストインクラスのADC、導出活動継続

 同社が創製したヒト化抗CDCP1抗体の薬物複合体(ADC)であり、独自のADC技術を持つ製薬企業でCDCP1を標的分子とする抗体を使いたい企業などをターゲットに導出活動を展開している。 現在複数の製薬企業と科学面を中心とした協議を進めている。

  CDCP1は、標準治療耐性のがん種を含む幅広い固形がんで発現しており、同剤はファーストインクラスとなる可能性がある。

PTRY; ヒト化抗5T4・抗CD3・抗PD-L1多重特性抗体 。CBA-1535のT cell engagerとしての機能に免疫チェックポイント阻害機能を加えることを期待したTribody™抗体。

 初期の動物モデルを用いた評価では強い抗腫瘍効果を示している。イタリアの公的研究機関 Ceinge–Biotechnologie Avanzateと行ったがん免疫療法に関する共同研究の成果を、国際的な学術雑誌である Journal of Experimental & Clinical Cancer Research誌に掲載。同共同研究によって得られた成果についての特許出願を完了している。肺がんモデルでの in vivo 薬効データにおいて、強い腫瘍増殖抑制効果を発揮することが確認されている。

 現在研究開発を重点的に進めるとともに早期の導出機会も探っている。

PFKR; ヒト化抗CX3CR1抗体 。GPCRの1種であるCX3CR1を治療標的としており、同社が国立精神・神経医療研究センターと共同研究を進める自己免疫性中枢神経領域の新しい導出候補品。二次進行型多発性硬化症(SPMS)等を想定適応疾患とし、特許出願を完了。多発性硬化症の患者数は、国内で7,000人程、世界全体では 300万人以上の患者がいると見込まれている。導出活動を開始している。

*PXLR;ヒト化抗CXCL1/2/3/5抗体。XLR抗体の投与により免疫抑制細胞を減少させ、薬剤耐性を克服およびがんの再発抑制が期待される。固形がん(胃がん、乳がん、卵巣がんなど)を想定している。当社が大阪公立大学と共同研究を進めてきた新たな導出候補品。特許出願は完了。新たに導出活動を開始している。

2024/12期通期見通し:創薬事業の売上は計画通り。前期並みの着地を見込む

 創薬事業について合理的な業績予想の算定が困難であることから、創薬支援事業の売上高のみ開示されている。これは720百万円(同+6%増)とされている。同事業においては顧客基盤が強化が進んでいることから、引き続き安定的な収益源として研究開発活動を資金面で下支えすることが期待される。

◇株価動向と今後の注目点:CBA-1205CBA-1535等の臨床試験の進捗とPCDCの導出の行方を注視

 同社の過去1年間の株価推移は下記の通りで、総じてじり安に推移してきたものの、やや下げ止まりの兆しが出ている。

 じり安に推移してきた要因のひとつは、現在の収益構造にあるとみられる。創薬支援事業が順調に成長しているもののそれだけでは研究開発費をフルにカバーできるには至っていない。このため、新株予約権を通じた株式発行等によって必要な資金を手当てする状況が続いており、これを投資家が意識してきたと見られる。

 しかし、先に見たようにパイプラインの拡充には着実な進捗が見られ、特にCBA-1205では薬効を期待できそうな事例が出てきている点は注目に値する。CBA-1205およびCBA-1535は2025年中に臨床第1相試験後期パートを終了する予定であることを踏まえると、日程的に見て、投資家が導出によるアップサイドポテンシャルを意識し始めていると言えるだろう。導出に至れば、一時金収入による単年度黒字化に加えて、新株予約権ではない研究開発原資を獲得することになり、投資家のセンチメントは好転する。

 足元下げ止まりつつある株価動向は、こうしたアップサイドを意識した投資家の存在を推察させる。これから1-2年の同社のパイプラインの進展は今後一層注目度を高めると考えられる。

財務データ

 
2020/12
   
2021/12
   
2022/12
   
2023/12
   
 
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
[損益計算書]
                               
売上高
91
82
139
169
246
139
157
171
128
149
156
197
169
189
165
159
創薬事業
1
1
0
1
103
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
創薬支援事業
90
82
138
168
143
138
157
171
128
149
156
197
169
189
165
159
売上原価
61
46
59
70
64
62
78
86
57
69
72
83
73
76
67
68
売上総利益
30
36
80
99
182
77
79
84
70
80
84
114
95
112
98
94
販売費及び一般管理費
456
346
424
303
337
337
515
568
557
373
344
334
321
545
344
394
研究開発費
343
266
342
206
216
243
401
451
446
245
225
219
193
408
202
249
営業利益
-426
-310
-344
-204
-155
-260
-436
-483
-486
-292
-260
-220
-225
-433
-246
-301
営業外収益
2
0
3
0
7
0
2
4
0
16
0
5
0
0
1
0
営業外費用
0
2
10
1
1
0
1
6
4
1
1
-1
1
1
9
2
経常利益
-425
-311
-351
-205
-150
-259
-434
-486
-491
-278
-261
-214
-227
-434
-254
-302
特別利益
   
0
0
     
0
   
6
0
1
0
1
0
特別損失
                         
0
0
0
税引前当期純利益
-425
-310
-351
-205
-149
-247
-433
-636
-491
-278
-255
-214
-226
-434
-254
-301
法人税等合計
1
0
1
1
11
1
1
0
1
2
1
1
1
1
1
2
当期純利益
-425
-311
-352
-206
-161
-248
-434
-637
-492
-279
-257
-215
-227
-435
-254
-304
                                 
[貸借対照表]
                               
流動資産
2,309
2,805
3,316
3,249
3,294
3,088
2,675
2,216
2,005
1,792
1,955
2,092
1,964
1,566
1,633
1,629
現金及び預金
1,967
2,472
2,881
2,686
2,580
2,302
2,071
1,790
1,744
1,471
1,592
1,727
1,566
1,245
1,341
1,326
固定資産
247
249
249
246
244
241
274
122
121
128
126
123
120
118
119
122
有形固定資産
10
9
8
7
6
6
4
4
3
3
2
2
2
1
1
1
投資その他の資産
237
240
241
238
237
235
269
118
117
124
122
120
118
117
117
121
資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
1,685
1,753
1,751
流動負債
315
427
378
343
378
428
468
392
419
390
376
370
469
486
4887
539
短期借入金
142
199
199
180
180
190
199
183
183
188
188
184
304
298
316
291
固定負債
42
42
42
42
42
42
53
53
53
54
54
54
54
54
54
55
負債合計
357
469
420
385
420
470
522
446
473
444
431
424
523
540
542
594
純資産合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,893
1,653
1,476
1,650
1,790
1,562
1,144
1,211
1,157
株主資本合計
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,857
1,621
1,445
1,631
1,777
1,549
1,132
1,189
1,139
資本金
6,133
846
1,303
1,388
1,471
1,471
1,472
1,515
1,642
1,695
1,916
2,097
2,097
2,106
2,262
2,388
資本剰余金
6,123
2,446
2,903
2,987
3,071
3,071
3,072
3,115
3,242
3,295
3,516
3,696
3,696
3,706
3,861
3,988
利益剰余金
-10,080
-736
-1,088
-1,294
-1,455
-1,703
-2,136
-2,773
-3,262
-3,544
-3,801
-4,016
-4,244
-4,679
-4,934
-5,236
新株予約権
24
30
28
29
30
19
19
35
31
30
18
13
12
12
22
18
負債純資産合計
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126
1,920
2,081
2,215
2,085
1,685
1,753
1,751
                                 
[キャッシュ・フロー計算書]
                               
営業活動によるキャッシュ・フロー
 
-528
 
-1,361
 
-560
 
-1,131
 
-660
 
-1,191
 
-595
 
-1,069
税引前当期純損失
 
-734
 
-1,290
 
-396
 
-1,466
 
-768
 
-1,237
 
-661
 
-1,215
投資活動によるキャッシュ・フロー
 
 
3
 
 
-35
 
 
 
0
 
0
有価証券の取得
 
 
 
 
 
 
 
 
財務活動によるキャッシュ・フロー
 
894
 
1,944
 
176
 
271
 
341
 
1,127
 
113
 
667
株式の発行
 
697
 
1,769
 
166
 
253
 
336
 
1,126
 
 
555
現金及び現金同等物の増減額
 
366
 
580
 
-384
 
-895
 
-319
 
-63
 
-481
 
-402
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,105
 
2,105
 
2,686
 
2,686
 
1,790
 
1,790
 
1,727
 
1,727
現金及び現金同等物の期末残高
 
2,472
 
2,686
 
2,301
 
1,790
 
1,471
 
1,727
 
1,245
 
1,326

注)  キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ前4Qの期首残高となる
出所:同社資料より Omega Investment 作成