時価総額:298 億円
株価 4,290 円、2026 年 8 月 21 日時点の前提に基づく。
| 株価 | 予想 EPS | 予想 PER | 実績 BPS |
| 4,290 円 | 229.4 円 | 18.7 倍 | 1,063.36 円 |
| 実績 PBR | 予想 ROE | 予想配当 | 予想配当利回り |
| 4.03 倍 | 21.6% | 0 円 | 0.00% |
BUY。Arentは建設DXという構造的成長市場の恩恵を受ける小規模プレーヤーだが、DX事業の39.9%という高い利益率、PoCから本開発への移行率上昇、案件の大型化・長期化は、業界の追い風だけでなく同社固有の技術力、業務ナレッジ、顧客との共創力が成長を支えていることを示す。CY2025の株価下落はPlantStreamの減損、M&A、DX成長鈍化への懸念によるディレーティングであり、CY2026の反発はその不安の後退と事業ファンダメンタルズの再評価とみる。株価4,290円は予想PER18.7倍、実績PBR4.03倍で、無配かつM&A後のプロダクト事業の収益化や中長期の競争シェアには不確実性が残るものの、予想ROE21.6%とDX事業の成長再加速を勘案すれば過熱感は乏しい。三法による適正株価レンジ4,200~6,000円、中央値5,000円と試算し、リスク・リターンはBUYに傾くと判断する。。
建設業界の暗黙知と3D技術を核に、DX共創とプロダクトを展開する高収益ニッチプレーヤー
Arentは、建設業界を中心にDXコンサルティング、システム開発、ソフトウェア販売を展開する。DX事業は大手建設・設備会社などの業務課題を把握し、コンサルティングからPoC、本開発、事業化まで一気通貫で支援する。プロダクト事業では、自社開発およびM&Aで獲得したソフトウェアを販売する。3D/CADを基盤とする技術力、建設業務のナレッジ、顧客と共同で事業化まで進める事業創出力を強みとし、BIM/SaaS化が遅れたニッチ業務を主要な対象領域としている。FY6/2026はDX事業が高収益を維持する一方、M&Aでプロダクト群を拡充した。今後はDX案件の大型化とプロダクト収益化、AI活用による開発・営業生産性の改善が成長の焦点となる。
事業別売上高比率%(営業利益率%):DX事業65.4%(39.9%)、プロダクト事業34.6%(0.1%)(FY6/2026)
注:セグメント利益は、営業利益にのれん償却額を加えて戻したのれん償却前営業利益ベース。
建設業界向けDXコンサルで成長。案件大型化、本開発への移行率の上昇で業績拡大が加速。
Arent(5254)は建設業界に特化したDXコンサルティングからシステム開発までを行う「DX事業」と、サブスクリプション型で自社プロダクトを販売する「プロダクト事業」が2本柱。建設業界はBIMやSaaS化されていない非効率な部分が多く残るニッチ領域が集まって構成されており、同社はクライアント企業と共同でプロダクト開発を行う。
BIMはコンピューター上に建物の3D図面が自動生成され、設計から施工、維持管理まであらゆる情報を一元化して活用する手法。図面のデジタル化にとどまるCADと違い、図面だけでなく数量、品番、寸法、素材などオブジェクトベースの情報も一括管理できる。国土交通省は建設業界の生産性向上に向けて2023年から公共事業におけるBIM利用を原則化しており、建設業界のDXの基盤となっている。
2027年6月期業績は売上高84億6500万円(前期比45.2%増)、営業利益17億600万円(同84.9%増)を計画。DX事業では前期に大型受注案件や新規案件の本開発移行が進んだ。パイプラインは「量から質」へとシフトし、良質なリードが蓄積されている。今期は既存案件の進捗に加え、期ズレ案件などの寄与により、売上高のさらなる拡大が見込まれる。
一方、プロダクト事業はキーエンス元取締役の木村剛氏を迎え入れ、キーエンス型コンサルティング営業により営業効率が向上した。コスト最適化にも寄与し、収益構造が安定化しつつある。

CY2025のディレーティング後、DX本体の成長力を再評価する局面
CY2025の急落とCY2026の反発は、建設DX市場そのものよりもArent固有の実行リスクに対する評価の変化で説明できる。 CY2025はPlantStreamの減損、M&A先の業績不透明感、DX事業の成長鈍化懸念が重なり、高成長DX企業としてのプレミアムが剥落した。CY2026は年初来で株価が約46%上昇しているが、上限7億円・20.2万株の自己株買いに加え、DX案件の大型化、本開発への高い移行率、M&A子会社の利益貢献が確認され、前年に織り込んだ懸念が巻き戻されている面が大きい。価格チャートとPBR・PERの推移からも、上場直後の極端な成長プレミアムに戻ったというより、評価正常化の途中とみるのが妥当である。
業績好調には業界の追い風だけでなく、DX事業固有の競争力が明確に寄与している。 FY6/2026の連結売上高は58.3億円と前年比44.7%増えた一方、DX事業は39.7億円、同17.1%増、セグメント利益率39.9%を維持した。PoCから本開発への移行率は75.5%まで上昇し、本開発の継続期間も29カ月へ長期化しており、顧客内で案件が深掘りされている。FY6/2027は売上高84.65億円、営業利益17.06億円を計画するが、連結成長にはM&A子会社の通期寄与も含まれるため、Headlineの45%成長をそのままオーガニック成長とみるべきではない。重要なのはDX本体が大型化・長期化によって再加速できるかであり、AIによる開発効率向上はその上振れ要因となる。
財務面ではROE・ROICの改善を評価できる一方、M&Aによって資産の質が変わった点を見落とせない。 ROEが大きく上昇し、ROIC-WACCスプレッドも拡大しているが、総資産はFY6/2025の60.8億円からFY6/2026には106.2億円へ増え、のれんは25.4億円となった。営業キャッシュフローと設備投資後FCFはプラスを維持しているものの、Net Cash to Assetは過去のピークから低下している。DX事業は資産負担の軽い高ROICモデルだが、今後はM&Aで増えたプロダクト資産を含めて資本効率を維持できるかが株主価値の分岐点となる。プロダクト事業はFY6/2026に20.2億円まで拡大した一方、セグメント利益率はほぼゼロであり、次の評価材料は売上規模ではなく利益化である。
最大の中長期論点は、巨大なDX市場に対して同社がまだ小さく、将来の競争シェアを高い確度で確保できないことである。 会社推計では建設IT投資は約1兆円、大手建設会社のIT投資は約5,500億円、同社がアプローチ可能とする市場は約550億円で、FY6/2026売上高58.3億円は市場全体からみれば小さい。競争相手も大手SIer、BIM/CADベンダー、建設SaaS、顧客企業の内製まで広く、生成AIはArentの生産性を上げる一方で開発参入障壁を下げる可能性がある。ただし、同社は汎用BIM市場を正面から取りに行くのではなく、BIM/SaaS化が遅れた業務に入り込み、大手顧客と共創して長期案件へ展開する。したがって「小さいから生き残れない」とはみないが、中長期のシェア拡大を前提に高いマルチプルを付与する段階でもない。
バリュエーションはDeep Valueではないが、成長再加速を前提にすれば過熱とも言いにくい。 株価4,290円は予想PER18.7倍、実績PBR4.03倍、予想ROE21.6%で、ROE÷PBRによる益回りは約5.36%となる。無配であるため株主リターンは利益成長と株価上昇への依存度が高いが、DX事業が20%前後以上の成長と高い利益率を維持できれば現在のPERは許容可能である。逆に、プロダクト事業の収益化が遅れ、DX案件の大型化が一巡すればPBR4倍は下方調整余地を残す。適正株価中央値5,000円は現在株価を約17%上回り、安全余裕は厚くないものの、CY2025のディレーティング後という出発点と業績モメンタムを勘案し、投資判断はBUYとする。
Valuation
高ROEの持続性を割り引いても、三法の中央値は現在株価を上回る
| 評価手法 | 主な前提 | 適正株価レンジ | 中央値 |
| PBR法 | 正常化ROE19~22%、株主資本コスト8.5~10.0%、 長期成長率3~4%、正常化PBR4.0~5.0倍 |
4,250~5,300円 | 4,800円 |
| DCF法 | 今後5年間の売上高CAGR18~22%、正常化営業利益率20~23%、 WACC9~10%、永久成長率3~4% |
4,500~6,000円 | 5,250円 |
| ROIC法 | 正常化ROIC18~22%、WACC9~10%、 DX事業の高ROIC継続とM&A資産の収益性正常化を考慮 |
4,200~5,700円 | 4,950円 |
| 総合 | 三法を等価に参照 | 4,200~6,000円 | 5,000円 |
市場期待:予想PER18.7倍、実績PBR4.03倍、予想配当利回り0.00%。三法の総合レンジは4,200~6,000円、中央値5,000円で、株価4,290円は中央値を約17%下回る。上値余地は十分だが大きすぎず、BUY判断の前提はDX事業の高収益性維持とプロダクト事業の利益化である。
株主分布
創業者・経営陣の高い持株比率は長期志向を支える一方、流動性には制約が残る
最新の大株主では代表取締役社長の鴨林広軌氏が34.24%、代表取締役副社長の佐海文隆氏が5.20%、SBI4&5投資事業有限責任組合が4.51%を保有する。創業者・経営陣の持株比率が高いことは長期的な企業価値向上との利害一致に資する一方、流通株式が限られやすく、機関投資家にとっては売買流動性が制約となる。会社は資本効率向上と株主還元を目的に上限7億円・20.2万株の自己株式取得を実施中であるが、自己株買いはEPSを押し上げる一方で市場流通株を減らす側面もある。時価総額の拡大とともに、株主層の多様化と流動性の改善が中期的なリレーティングの条件となる。
Financials and Valuations
DX事業の高収益性が価値創造の中核。次はM&A資産の回転率とプロダクト収益化
出所:会社公表資料、FactSet、株価データより弊社にて作成。数値は特記のない限り2026年8月21日時点の前提。
株価4,290円、予想EPS229.4円、実績BPS1,063.36円、予想ROE21.6%、予想配当0円を前提とすると、予想PERは18.7倍、実績PBRは4.03倍、予想配当利回りは0.00%となる。FY6/2026末の発行済株式数6,954,295株を用いた時価総額は約298億円である。ROE÷PBRによる益回りは5.36%で、成長株として一定の収益力を織り込みつつも、上場直後の極端なプレミアムからは大きく正常化している。
売上高、ROE、ROIC、EPS、BPSが長期的に上昇する一方、FY6/2026の連結EBITマージンはM&A関連費用や事業構成の変化で低下している。これをDX事業の利益率39.9%と分けてみる必要がある。またBS CompositionとNet Cash to Assetは、M&Aにより総資産とのれんが大きく増え、従来より資産負担の重い企業構造へ移行したことを示す。今後のバリュエーション上昇には、DX事業の成長継続に加え、プロダクト事業の利益率改善と買収資産を含むROICの維持が必要である。

Price

PBR (LTM)

PER (LTM)

ROE (LTM)

EPS (LTM)

BPS (LTM)
