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Omega Investment株式会社

内田洋行 (Investment report – 4Q update)

株価(10/15)2,389 円予想配当利回り(27/7)3.2 %
52週高値/安値2,393/1,916 円ROE(26/7実)16.0 %
1日出来高(3か月)182.5 千株営業利益率(26/7実)3.7 %
時価総額1,244.6 億円ベータ(5年間)0.22
企業価値780.8 億円発行済株式数 52.096 百万株
PER(27/7予)11.2 倍上場市場 東証プライム
PBR(26/7実)1.4 倍
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特需後も営業利益150億円を維持する確度が高まる。市場要因による株価下落で中長期投資家のエントリーの魅力は増した。

投資判断

 内田洋行に対する中長期の投資判断は、先日の4Q Flash Reportから大きく変える必要はない。むしろ、2027年7月期会社計画の営業利益150億円について、会社がその内訳と背景をより詳しく示したことで、特需後にも高い利益水準が残るという見方への確信度は高まった。適正株価中央値2,900円も変わらず、株価下落により上値余地は約39%へ拡大した。

今回の説明会をうけて最も重要なのは、2027年7月期の営業利益150億円が、公共関連事業の特需残だけで構成されているわけではない点が明らかにされたことである。公共関連事業はGIGAスクール構想に伴う端末更新需要と自治体情報システム標準化対応の反動により減収減益を見込む。一方、オフィス関連事業と情報関連事業は増収増益を計画している。つまり、2027年7月期の150億円は、公共ICTの反動を織り込みながら、民間ICT、オフィス環境構築、ソフトウエアライセンス、SmartRooms、SmartOfficeNavigator、中小企業向けSIの回復で支える計画である。

2026年7月期は、売上高4,257億円、営業利益156億円、親会社株主に帰属する当期純利益125億円となり、売上高およびすべての利益項目で過去最高を更新した。会社は、この好業績を単なる特需獲得ではなく、特需を受け止める力の拡大とベースラインの向上として説明している。この表現は投資家にとって重要である。過去のGIGAスクール構想特需では、需要一巡後に営業利益が大きく低下した局面があった。しかし、今回会社は、NEXT GIGA、自治体情報システム標準化、Windows 10更新需要の反動を織り込んでも、2027年7月期に営業利益150億円を計画している。

株価面では、決算発表直後の9月3日に株価が大きく切り返した後、9月11日にかけて下落した。9月3日の終値2,347円に対し、9月11日の終値は2,083円である。この下落は、同社固有の投資論点が弱まったためではなく、中東情勢の緊迫化、原油高、世界金利上昇を受けた市場全般のリスク回避の影響が大きいと考えられる。むしろ、説明会資料により中期の利益基盤への確信度が高まる一方で、株価だけが市場要因で下落したため、中長期保有の投資家にとってエントリー魅力は増している。

9月11日終値2,083円、予想EPS212.89円、実績BPS1,737.66円、予想配当76円を前提にすると、予想PERは9.8倍、実績PBRは1.20倍、予想配当利回りは3.6%となる。期末ネットキャッシュ325億円を控除した予想PERは約6.7倍、税負担考慮後の投資有価証券177億円を合わせて控除した調整後PERは約5.0倍となる。

本レポートの結論として、同社株は中長期投資に適した前向き評価を継続する。説明会資料は、先日の4Q Flash Reportで示した論旨、すなわち同社を短期特需株ではなく、公共ICT、民間ICT、環境構築を組み合わせて利益基盤を切り上げる企業として評価する見方を補強した。今後の確認点は、2027年7月期営業利益150億円の達成確度、公共ICTの継続需要への転換、民間ICTとオフィス関連事業の増益実現、粗利率と販管費率の関係、累進配当を含む資本政策である。

図表1 株価下落により予想PERは低下、適正株価中央値までの上値は拡大

出所:FactSet標準化データを基にオメガインベストメント作成。

1. 説明会資料は150億円計画の確信度を高めた

 説明会資料の中心メッセージは、2026年7月期の好業績が一時的な特需獲得だけではなく、特需を受け止める力の拡大と、特需後にも残る利益基盤の向上を伴っているという点である。

会社は、2026年7月期決算のポイントとして、GIGA更新、自治体情報システム標準化対応、Windows 10更新対応の特需獲得が想定以上だったことに加え、公共市場と民間市場の双方でベースラインの向上が進んだことを示した。公共市場では、文教ネットワーク需要、大学の理系人材育成に向けた学部新設や学科改編、公共施設案件が伸びた。民間市場では、ソフトウエアライセンス、大手企業向けIT、SmartRooms、オフィス需要が伸長した。

この説明は、先日の4Q Flash Reportで置いた投資論点と整合する。すなわち、2027年7月期を単なる減益予想として見るのではなく、特需後にも営業利益150億円が残るかを検証する年度として捉えるべきである。今回の説明会資料では、その150億円の中身がより具体的に示された。したがって、投資判断は大きく変えず、むしろ中期の利益基盤に対する確信度を高める方向で修正するのが妥当である。

出所:同社資料

2. 2026年7月期は過去最高益、特需獲得力とベースライン向上が両立      

 2026年7月期は、売上高4,257億円、営業利益156億円、経常利益168億円、親会社株主に帰属する当期純利益125億円であった。売上高は前期比26.3%増、営業利益は28.4%増、経常利益は27.8%増、親会社株主に帰属する当期純利益は27.1%増となり、売上高およびすべての利益項目で過去最高を更新した。

販管費は前期比34億円増加した。会社は、人材の採用、賃金のベースアップ等による処遇改善、職場環境の整備、グループ共通販売管理システムの導入・展開を、将来の成長を支える経営基盤の強化に向けた投資として説明している。ここは投資家が確認すべき点である。販管費増加は短期的には利益を抑えるが、同社の場合は大型案件の処理能力、グループマネジメント、SEリソース共有、民間ICTと公共ICTの連携を高めるための投資である。

同社は、2026年7月期の業績を、特需獲得の増大とベースラインの向上が同時に進んだ結果として示した。GIGA更新、自治体情報システム標準化、Windows 10更新需要は特需である。一方、教育ネットワーク、大学、公共施設、ソフトウエアライセンス、大手企業向けIT、SmartRooms、オフィス需要は、特需後にも残る事業基盤である。今回の説明会資料は、この二つを分けて説明しており、投資家にとっては分かりやすい。

3. 2027年7月期は公共反動を民間ICTとオフィスで補う計画

 2027年7月期会社計画は、売上高4,000億円、営業利益150億円、親会社株主に帰属する当期純利益105億円である。前期比では売上高6.0%減、営業利益4.0%減、当期純利益15.9%減となる。表面的には減収減益計画である。しかし、営業利益150億円は、2025年7月期の122億円、2024年7月期の93億円を大きく上回る。第17次中期経営計画策定時の2027年7月期営業利益計画115億円に対しても35億円高い。

セグメント別に見ると、2027年7月期の会社計画はより重要な示唆を持つ。

セグメント 2026年7月期営業利益 2027年7月期計画 増減 投資家の見方
公共関連事業 89.7億円 73.5億円 16.2億円減 GIGA端末更新と自治体標準化の反動を織り込む
オフィス関連事業 21.3億円 26.0億円 4.7億円増 環境構築が増益要因として機能する
情報関連事業 42.9億円 48.0億円 5.1億円増 民間ICTと中小企業向けSI回復が増益を支える

図表2 公共関連の反動を、オフィス関連と情報関連の増益で一部吸収

出所:FactSet標準化データを基にオメガインベストメント作成。

 この表から分かることは、営業利益150億円が公共関連事業の特需残だけで支えられているわけではないという点である。公共関連事業は大きく減益となるが、オフィス関連事業と情報関連事業は増益計画である。したがって、投資家が見るべき点は、公共ICTの反動減だけではない。民間ICT、オフィス環境構築、中小企業向けSI、SmartRooms、SmartOfficeNavigatorが、特需後の利益水準をどこまで支えられるかである。

4. 営業利益率3.8%計画は粗利率低下懸念を和らげる

 先日の4Q Flash Reportでは、2026年7月期に売上総利益率が低下する一方、販管費率が低下し、営業利益率が改善している点を評価した。今回の説明会資料では、この見方をさらに補強する図表が示された。2027年7月期の連結営業利益率は3.8%計画であり、2026年7月期の3.7%から小幅に上昇する。さらに、ソフトウエアライセンス事業を除く営業利益率は6.0%計画である。

この点は、粗利率低下への懸念を考えるうえで重要である。2026年7月期は、GIGA端末更新やソフトウエアライセンスなど、売上規模は大きいが相対的に粗利率の低い案件が増えた。そのため売上総利益率は低下した。しかし、販管費率の低下と事業規模の拡大により、営業利益率は上昇した。これは、単なる薄利多売ではなく、大型案件を取り込みながら営業利益を残す力が高まっていることを示す。

2027年7月期は、GIGA端末更新需要とWindows 10更新需要の反動がある一方、営業利益率は3.8%を計画している。もしこの計画が実現すれば、同社の利益基盤は売上規模だけに依存しているのではなく、公共ICTで蓄積した顧客接点、案件運営力、運用支援、民間ICT、環境構築によって支えられていると評価できる。

5. 公共ICTは端末販売から運用、ネットワーク、データ活用へ移る

 公共関連事業は、2026年7月期の成長の主役であった。GIGA端末更新需要がピークを迎え、自治体情報システム標準化対応も業績を押し上げた。2027年7月期には反動減が見込まれるが、会社は、公共ICTの顧客基盤が端末販売で終わらず、運用保守、ネットワーク、セキュリティ、統合ID、校務DX、教育データ活用へ広がる可能性を示している。

GIGA端末更新では、京都市と京都府の共同調達で総計約18万台、さいたま市で約10万台の端末と5年間の運用保守を含む案件が示された。重要なのは、端末のみではなく、キッティング、展開、運用保守までを含めて一体的に対応している点である。公共ICTの価値は、端末販売の数量だけではなく、導入後の運用支援とネットワーク構築に移っている。

教育ネットワークでは、ゼロトラストネットワークの導入実績が2021年の全国初導入後50件以上に広がっている。児童生徒・教職員用端末は、6年前の150万台から現在1,000万台まで拡大した。大量端末を前提とした学校ネットワークの安定運用、セキュリティ、統合ID、校務系と学習系の連携は、端末更新後にも残る需要である。

自治体情報システム標準化対応では、遅延団体が全体の56.8%と示された。前回発表時の52.3%から上昇している。これは短期的には期ずれリスクである一方、2027年7月期以降の需要を支える要因でもある。会社は、福祉系システムの多くは今期で完了し、翌期以降へ延伸する自治体が増加したものの、当期分の対応作業は完遂したと説明している。今後は、市町村の基幹系、地域を結ぶ福祉系、子どもたちを支える教育系との連携が期待される。

この点は、同社を単なる公共案件の受注企業として見るべきではないことを示している。公共ICTで広げた顧客接点を、運用保守、ネットワーク、教育データ、自治体データ活用へ転換できるかが、2028年7月期以降の利益水準を左右する。

6. 民間ICTはソフトウエアライセンスと会議室運用が収益基盤を補強

 民間ICTでは、ソフトウェアライセンス、SmartRooms、SmartOfficeNavigatorが、特需後の利益基盤を支える重要な事業である。

ソフトウエアライセンス事業では、ウチダスペクトラムの売上高が5年間で約2.5倍に拡大した。日経225企業における導入企業率は65%であり、国内トップクラスのポジションを持つ。大企業グループの系列会社や海外関係部門のライセンスを一括管理し、35カ国直接取引、4通貨対応、サポート対象90カ国というグローバル調達機能を持つ点は、大企業向けICT基盤として評価できる。

SmartRoomsは、国内640社、2万室超で稼働し、日経225企業での採用率は45%である。クラウド型会議室運用支援サービスとして、会議室予約、稼働分析、国際対応、社員証連携、デスク端末まで機能を広げている。これは単なるシステム販売ではなく、オフィスの利用データを継続的に取得し、働く場の運用改善につなげるサービスである。

SmartOfficeNavigatorは、大企業約30社に導入されている。KDDIグループ新本社では、グループ社員約13,000名、約600カ所の会議室・ミーティングエリアを統合管理する案件が示された。人と働く場の情報を統合するナビゲーションプラットフォームとして、大規模オフィスでの強みを発揮している。

これらの事業は、同社の民間ICTを一時的なIT投資需要ではなく、継続収益とデータ活用を伴う事業として見る材料である。2027年7月期の情報関連事業は、売上高2,200億円、営業利益48億円を計画しており、前期比で増収増益である。中小企業向けSI案件の回復に加え、大企業向けライセンス、SmartRooms、SmartOfficeNavigatorが伸びれば、公共ICTの反動減を一部吸収できる。

出所:同社資料

7. オフィス関連事業は環境構築とICTをつなぐ増益要因

 オフィス関連事業は、2026年7月期の売上高592億円、営業利益21億円であった。2027年7月期計画では、売上高637億円、営業利益26億円と、増収増益を見込む。公共関連事業が減益となるなかで、オフィス関連事業が増益計画となっている点は重要である。

会社は、東名阪の移転需要、地方拠点の機能強化、高級レンタルオフィス需要を取り込んでいる。オフィス投資は、単なる什器販売ではなく、ICT、空間設計、働き方、会議室運用、データ活用と結びつく。SmartOfficeNavigatorやSmartRoomsとの連携を考えると、オフィス関連事業は環境構築と民間ICTをつなぐ入口である。

投資家は、オフィス関連事業を成熟した家具・什器事業としてだけ見るべきではない。働く場の再設計、会議室やデスクの利用データ、総務DX、ビル情報との連携まで含めて捉えるべきである。2027年7月期にオフィス関連事業が増益計画であることは、特需後の利益水準を支える材料となる。

8. グループ共通基盤とSE共通管理が利益基盤を支える

 今回の説明会資料で新たに投資家が評価すべき点は、グループ共通基盤とSE共通管理システムへの投資である。会社は、2026年8月にグループ共通販売管理システムの全社統合を完了した。会計、人事、販売を一つのERPで管理し、共通データ、共通業務、共通リソースを使える体制にする。これは、同社がグループ内のリソースを会社単位ではなく、事業機会に応じて共有するための基盤である。

また、グループ全体約1,300人のSEが利用する共通管理システムを、2027年7月に統合稼働する予定である。会社は、システムエンジニア組織の再編とサポート工程の標準化を仕組みに落とすと説明している。これは、公共ICT、民間ICT、自治体、文教、民間事業の案件処理能力を高めるうえで重要である。

同社の事業は、顧客の現場に深く入り込み、ハード、ソフトウエア、ネットワーク、運用支援、空間構築を組み合わせることに特徴がある。そのため、利益基盤を高めるには、単に受注を増やすだけではなく、SE、人材、データ、販売管理、サポート工程をグループ横断で使える体制が必要になる。今回の説明会資料は、この経営基盤の変革が進んでいることを示した。

この点は、2027年7月期営業利益150億円を支える裏側の論点である。特需を受け止める力が増大した背景には、グループ共通基盤、SE共通管理、民間大手市場におけるICTとオフィス事業の融合がある。したがって、150億円計画を評価する際には、需要面だけでなく、供給能力と案件運営能力の改善も見るべきである。

9. 累進配当の導入は株主還元評価を高める

 会社は、2027年7月期の1株当たり配当を76円とし、前期の60円から16円増配する計画を示した。配当は11年で7.6倍となり、過去29年間減配なし。さらに、配当方針を変更し、累進配当を導入した。会社は、安定的な配当の維持を前提に、財務基盤の充実と中長期の経営戦略実現に向けた投資とのバランスを取りながら、配当水準の維持または引き上げを基本とする方針を示した。

これは、株主還元面で前向きな変化である。先日の4Q Flash Reportでは、ネットキャッシュと投資有価証券の厚さ、政策保有株式の縮減、資本効率改善を評価した。今回の説明会資料では、累進配当という明確な株主還元方針が加わった。株価2,083円を前提にすると、予想配当利回りは3.6%である。資本効率が改善し、営業利益150億円の維持が見込まれるなかで、配当利回り3%台半ばは株価の下支えとなる。

また、会社は2026年1月に株式分割を実施し、2026年7月20日時点で個人株主が2.1倍に増加したと説明している。株式分割は、投資単位当たりの金額を引き下げ、流動性の向上と投資家層の拡大を図る施策である。株価評価への直接効果は慎重に見るべきだが、投資家層を広げる取り組みとしては評価できる。

出所:同社資料

10. 株価下落は個別論点の悪化ではなく市場要因が大きい

 9月3日の株価反応は、決算発表後の初期評価として重要であった。9月2日終値2,304円に対し、9月3日は2,204円で始まり、一時2,172円まで下落した。その後は買い戻され、終値は2,347円となった。朝方は4Q単体の弱さと2027年7月期減益予想に売りが出たが、当日のうちに、投資家の視点は来期減益から、特需後にも営業利益150億円が残る可能性へ移ったと考えられる。

その後、株価は9月11日終値2,083円まで下落した。9月3日終値2,347円から見ると約11.2%の下落である。しかし、この下落は、同社固有の業績見通しが悪化したことを反映したものではない。むしろ、中東情勢の緊迫化、原油高、世界金利上昇を背景とする市場全般のリスク回避の影響が大きいと見るべきである。

説明会資料によって確認された内容は、個別企業として前向きである。2027年7月期営業利益150億円の内訳、民間ICTとオフィス関連事業の増益計画、営業利益率の安定性、累進配当の導入、公共ICTの継続需要が示された。したがって、株価下落を投資論点の弱まりとして見るのではなく、投資判断の確信度が高まった直後に市場要因で株価の評価が低下した局面として見るのが自然である。

11. 株価下落でバリュエーションの魅力は増した

 9月11日の終値2,083円を基準にすると、先日の4Q Flash Reportで使った株価2,283円に比べ、バリュエーションは一段と低下した。

基準 株価 予想PER 実績PBR 予想配当利回り 適正株価中央値
までの上値
9月4日基準 2,283円 10.7倍 1.31倍 3.3% 約27%
9月11日終値基準 2,083円 9.8倍 1.20倍 3.6% 約39%

期末ネットキャッシュ325億円を控除した予想PERは約6.7倍、税負担考慮後の投資有価証券177億円を合わせて控除した調整後PERは約5.0倍となる。これは、営業利益150億円が2027年7月期に維持されるという前提に対して、かなり慎重な株価の評価である。

株価 通常PER ネットキャッシュ調整後PER 投資有価証券控除後PER
2,283円 10.7倍 7.6倍 5.9倍
2,083円 9.8倍 6.7倍 5.0

出所:FactSet標準化データを基にオメガインベストメント作成。

 中長期投資家にとって重要なのは、株価が下がった理由である。会社固有の業績見通しが悪化したために株価が下がったのであれば、評価の見直しが必要になる。しかし、今回の下落は、市場全般のリスク回避による影響が大きいと考えられる。一方、説明会資料では、2027年7月期営業利益150億円への確信度を高める材料が増えた。個別企業の投資論点が補強されるなかで、株価の評価だけが低下したため、エントリー魅力は増している。

12. 適正株価中央値2,900円を維持し、乖離拡大を評価する

 適正株価は、先日の4Q Flash Reportで示した中央値2,900円を維持する。説明会資料は、投資判断の確信度を高める内容であるが、2027年7月期会社計画の営業利益150億円そのものは先日のレポートで既に織り込んでいた。したがって、適正株価をさらに引き上げるよりも、株価下落により現在株価と適正株価中央値の乖離が拡大したと整理する方が自然である。

PBR法では、予想ROE12.3%、株主資本コスト8.5%、実績BPS1,737.66円を前提に、適正株価レンジは2,690円から3,130円、中心値は2,910円とする。DCF法では、正常化FCF65億円から75億円、WACC6.5%から7.5%、永久成長率0.5%、期末ネットキャッシュを加算する前提で、適正株価レンジは2,550円から3,210円、中心値は2,880円とする。ROIC法では、オメガ算定の暫定ROIC16.0%が資本コストを上回る状態を中期的に維持する前提で、適正株価レンジは2,870円から3,390円、中心値は3,130円とする。

3つの評価手法を総合すると、適正株価レンジは2,550円から3,390円、中央値は約2,900円である。9月11日終値2,083円に対して、中央値までの上値は約39%である。株価が市場要因で下落した一方、説明会資料により営業利益150億円の質に対する説明が強まったことを考えると、現在の株価水準は中長期投資家にとって再検討しやすい位置にある。

13. 確認点は150億円の持続性と粗利率

 第一のリスクは、2027年7月期営業利益150億円が、特需後にも維持できる基礎的な利益水準ではなく、なお特需に支えられた一時的な高水準である可能性である。2027年7月期にも、翌期へ延伸した自治体情報システム標準化案件やGIGA端末更新案件の残りが含まれる。したがって、2028年7月期以降にこれらがさらに減った後も、150億円近辺を維持できるかを確認する必要がある。

第二のリスクは、粗利率低下である。2026年7月期は、低粗利の大型案件を取り込みながら、販管費率の低下で営業利益率を高めた。2027年7月期にも営業利益率3.8%を計画している。しかし、粗利率低下と販管費増が続く場合、販管費レバレッジで粗利率低下を吸収するという評価を再検討する必要がある。

第三のリスクは、公共ICTで広げた顧客基盤を、継続収益へ十分に転換できないことである。端末更新で広げた顧客接点を、ネットワーク、セキュリティ、保守、教育データ、自治体データ活用へ移せるかが重要である。今回の説明会資料では、ゼロトラストネットワーク50件以上、教育端末1,000万台、自治体システム標準化の延伸、福祉系と教育系の連携期待が示された。これらを継続的な収益へ転換できれば、2028年7月期以降の利益基盤を支えやすくなる。

第四のリスクは、政策保有株式とネットキャッシュがBSに滞留し、資本効率改善が止まることである。ROE16.0%まで改善した現在は深刻度が下がっているが、事業成長が落ち着けば、再び資本政策が株価の評価を左右する。累進配当の導入は前向きだが、今後は政策保有株式の縮減、自己株式取得、成長投資とのバランスを確認する必要がある。

次回以降の決算では、2027年7月期会社計画に対する進捗、セグメント別営業利益、売上総利益率、販管費率、公共ICTの運用保守とネットワーク案件、自治体情報システム標準化対応の進捗、民間ICTの中小企業向けSI回復、SmartRooms契約室数、SmartOfficeNavigatorの横展開、ソフトウエアライセンスの伸長、営業キャッシュフロー、政策保有株式の縮減、配当と自己株式取得の方針を重点的に確認する。

14. 結論:説明会で確信度が高まり、株価下落で魅力は増す

 今回の説明会は、先日の4Q Flash Reportの投資判断を弱めるものではない。むしろ、内田洋行の利益基盤が特需後にも残るという見方を補強する内容である。

特に重要なのは、2027年7月期営業利益150億円の計画が、公共関連事業の反動減を織り込みながら、オフィス関連事業と情報関連事業の増益を前提としている点である。SmartRooms、SmartOfficeNavigator、ソフトウエアライセンス、教育ネットワーク、自治体データ連携、グループ共通基盤、SE共通管理システムは、同社が単なる特需対応企業ではなく、人とデータを軸に利益基盤を広げる企業であることを示している。

株価は、決算発表直後に評価された後、市場全般のリスク回避に巻き込まれて下落した。しかし、説明会資料によって投資判断の確信度は高まっている。株価下落により、予想PERは9.8倍、ネットキャッシュ調整後PERは6.7倍、投資有価証券控除後PERは5.0倍まで低下し、適正株価中央値2,900円に対する上値は約39%へ拡大した。

したがって、同社株は中長期投資に適した前向き評価を継続する。説明会資料で中期利益への確信度が高まり、市場要因による株価下落でエントリーの魅力が増した局面と捉えるべきである。

注記

株価2,083円は2026年9月11日終値を用いた。予想EPS212.89円、実績BPS1,737.66円、予想配当76.00円は、2026年7月期決算短信および会社計画に基づく。予想ROEは、予想EPS212.89円を最新BPS1,737.66円で除した簡便法による当社試算である。

ROICはFactSet値が未算定のため、FactSetの算定方法に準じ、現時点で取得可能な短信ベースの数値を用いて算定したオメガ暫定値16.0%を用いた。FactSet値が後日確認できた場合はFactSet値を優先する。

財務データは原則としてFactSetの標準化データを参照するため、会社公表資料の表示科目、組替え、端数処理、セグメント開示等と一部一致しない場合がある。事業別数値、KPI、中期計画、資本配分方針等は会社資料を優先し、必要に応じてFactSetおよび当社試算で補完した。

ネットキャッシュは、2026年7月期末の現金及び預金344億円から短期借入金19億円を控除した借入金控除ベースで325億円とした。リース債務等を含む保守ベースは、短信上で明細表示を確認できないため、確認できないとした。

適正株価、PER、DCF、ROIC等の評価額は一定の前提に基づく当社試算であり、将来の株価または企業価値を保証するものではない。

主要株価関連データ

会社概要

 内田洋行は、1910年創業の老舗企業であり、現在は公共ICT、民間ICT、環境構築を軸に、学校、自治体、企業、オフィスの課題解決を支える企業である。一般的な業種分類では卸売業に含まれるが、現在の同社は単なる卸売業ではない。ハードウエア、ソフトウエア、ネットワーク、セキュリティ、運用支援、サポート、オフィス空間設計、教育環境構築までを一体で提供する点に特徴がある。

公共市場では、小中高、大学、自治体に対して、GIGAスクール構想、教育ネットワーク、校務DX、自治体情報システム標準化、大学施設、学校改築などを手がける。民間市場では、大企業向けソフトウエアライセンス、クラウド型会議室運用支援SmartRooms、中小企業向けERP、SmartOfficeNavigator、オフィス環境構築を展開する。環境構築では、オフィス家具、教育施設向け什器、公共施設向け空間づくりで全国販売網を持つ。

第17次中期経営計画では、人とデータをテーマに掲げている。同社の強みは、学校、自治体、企業、オフィスという人が活動する現場に入り、そこで生まれるデータを扱う環境を設計し、運用まで支える点にある。投資家は、同社を特需によって一時的に利益が膨らむ企業としてではなく、公共ICTで広げた顧客基盤を民間ICT、環境構築、データ活用へつなげる企業として評価する必要がある。

主要財務データ

単位: 百万円 2022 2023 2024 2025 2026 2027 CE
売上高 221,856 246,549 277,940 337,055 425,729  400,000
EBIT(営業利益) 7,775 8,423 9,292 12,149 15,631  
税引前収益 7,965 9,200 10,280 14,479 18,009  
親会社株主帰属利益 4,477 6,366 6,996 9,825 12,486  10,500
現金・預金 30,344 29,696 30,804 27,372 35,936  
総資産 125,503 133,008 150,753 174,917 187,176  
債務合計 2,983 3,011 3,163 2,925 1,910  
純有利子負債 -27,361 -26,685 -27,641 -24,447 -34,026  
負債総額 79,383 80,883 85,963 104,109 101,192  
株主資本 45,719 51,897 64,541 70,548 85,703  
営業活動によるキャッシュフロー -5,414 7,269 4,850 549 13,069  
設備投資額 2,248 1,960 1,979 1,968 1,960  
投資活動によるキャッシュフロー -2,198 -4,857 -1,816 -1,027 -1,331  
財務活動によるキャッシュフロー -8,632 -3,521 -2,354 -2,751 -3,466  
フリーキャッシュフロー -6,027 6,545 4,173 -176 12,181  
ROA (%) 3.43 4.93 4.93 6.03 6.90  
ROE (%) 9.84 13.04 12.02 14.55 15.98  
EPS (円) 91.2 129.5 142.2 199.5 253.2  212.9
BPS (円) 930.2 1,055.1 1,311.4 1,431.9 1,737.7  
一株当り配当(円) 28.00 38.00 44.00 60.00 76.00  76.00
発行済み株式数 (百万株) 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10  

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。

株価推移

財務データI(四半期ベース)

単位: 百万円 2024/7 2025/6 2026/7
  4Q 1Q 2Q 3Q 4Q 1Q 2Q 3Q 4Q
[損益計算書]                  
売上高 76,969 52,563 69,292 112,433 102,767 80,116 93,965 140,292 111,356
前年同期比 13.4% -1.2% 29.0% 19.5% 33.5% 52.4% 35.6% 24.8% 8.4%
売上原価 66,540 41,679 57,443 94,260 91,286 67,049 80,686 119,217 99,537
売上総利益 10,429 10,884 11,849 18,173 11,481 13,067 13,279 21,075 11,819
粗利率 13.5% 20.7% 17.1% 16.2% 11.2% 16.3% 14.1% 15.0% 10.6%
販管費 10,476 9,346 9,790 9,994 11,108 10,059 10,805 10,632 12,113
EBIT(営業利益) -47 1,538 2,059 8,179 373 3,008 2,474 10,443 -294
前年同期比 11.9% -48.5% -25837.5% 28.1% -893.6% 95.6% 20.2% 27.7% -178.8%
EBITマージン -0.1% 2.9% 3.0% 7.3% 0.4% 3.8% 2.6% 7.4% -0.3%
EBITDA 451 1,986 2,536 8,695 882 3,507 3,014 11,035 319
税引前収益 371 1,743 2,323 8,263 2,150 3,295 3,817 10,656 241
当期利益 310 1,203 1,542 5,674 1,448 2,316 2,581 7,316 328
少数株主損益 16 0 2 23 17 4 -1 31 20
親会社株主帰属利益 295 1,203 1,540 5,651 1,431 2,311 2,583 7,284 308
前年同期比 -39.0% -46.2% 1538.3% 29.3% 385.1% 92.1% 67.7% 28.9% -78.5%
利益率 0.4% 2.3% 2.2% 5.0% 1.4% 2.9% 2.7% 5.2% 0.3%
                   
[貸借対照表]                  
現金・預金 30,804 29,623 28,003 28,250 27,372 37,064 39,165 39,422 35,936
総資産 150,753 133,681 149,733 186,584 174,917 173,718 209,774 214,931 187,176
債務合計 3,163 6,432 6,066 6,460 2,925 6,396 6,145 6,452 1,910
純有利子負債 -27,641 -23,191 -21,937 -21,790 -24,447 -30,668 -33,020 -32,970 -34,026
負債総額 85,963 70,593 84,994 116,557 104,109 102,673 135,673 132,842 101,192
株主資本 64,541 62,871 64,520 69,786 70,548 70,814 73,871 81,828 85,703
                   
[収益率 %]                  
ROA 4.93 4.70 5.36 4.93 6.03 7.11 6.66 6.78 6.90
ROE 12.02 10.32 12.56 13.49 14.55 16.36 17.31 17.95 15.98
[一株当り指標: 円]                  
EPS 6.0 24.4 31.3 114.7 29.0 46.9 52.4 147.7 6.2
BPS 1,311.4 1,276.0 1,309.5 1,416.4 1,431.9 1,435.8 1,497.8 1,659.1 1,737.7
一株当り配当 44.00 0.00 0.00 0.00 60.00 0.00 0.00 0.00 76.00
発行済み株式数 (百万株) 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。

財務データII(通期ベース)

単位: 百万円 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025 2026
[損益計算書]                    
売上高 144,537 151,441 164,386 200,307 291,035 221,856 246,549 277,940 337,055 425,729
前年同期比 4.6% 4.8% 8.5% 21.9% 45.3% -23.8% 11.1% 12.7% 21.3% 26.3%
売上原価 111,123 117,957 128,969 160,438 245,976 180,373 203,259 231,483 285,953 366,489
売上総利益 33,414 33,484 35,417 39,869 45,059 41,483 43,290 46,457 51,102 59,240
粗利率 23.1% 22.1% 21.5% 19.9% 15.5% 18.7% 17.6% 16.7% 15.2% 13.9%
販管費 30,474 30,603 31,669 32,626 34,724 33,708 34,867 37,165 38,953 43,609
EBIT(営業利益) 2,940 2,881 3,748 7,243 10,335 7,775 8,423 9,292 12,149 15,631
前年同期比 -14.4% -2.0% 30.1% 93.2% 42.7% -24.8% 8.3% 10.3% 30.7% 28.7%
EBITマージン 2.0% 1.9% 2.3% 3.6% 3.6% 3.5% 3.4% 3.3% 3.6% 3.7%
EBITDA 4,669 4,835 5,737 9,386 12,652 9,598 10,320 11,177 14,099 17,875
税引前収益 3,352 3,198 4,137 6,618 10,976 7,965 9,200 10,280 14,479 18,009
当期利益 2,252 2,085 2,707 4,142 7,405 4,857 6,421 7,042 9,867 12,541
少数株主損益 286 253 291 651 1,244 380 54 46 42 54
親会社株主帰属利益 1,965 1,831 2,415 3,490 6,160 4,477 6,366 6,996 9,825 12,486
前年同期比 -12.5% -6.8% 31.9% 44.5% 76.5% -27.3% 42.2% 9.9% 40.4% 27.1%
利益率 1.4% 1.2% 1.5% 1.7% 2.1% 2.0% 2.6% 2.5% 2.9% 2.9%
                     
[貸借対照表]                    
現金・預金 26,143 18,871 19,817 28,453 46,265 30,344 29,696 30,804 27,372 35,936
総資産 95,260 89,410 102,685 111,264 135,494 125,503 133,008 150,753 174,917 187,176
債務合計 6,923 4,098 2,730 2,943 2,951 2,983 3,011 3,163 2,925 1,910
純有利子負債 -19,220 -14,773 -17,087 -25,510 -43,314 -27,361 -26,685 -27,641 -24,447 -34,026
負債総額 58,122 52,004 63,500 68,947 85,287 79,383 80,883 85,963 104,109 101,192
株主資本 34,338 34,432 35,984 38,531 45,282 45,719 51,897 64,541 70,548 85,703
                     
[キャッシュフロー計算書]                    
営業活動によるキャッシュフロー 4,610 -2,476 5,543 11,320 20,457 -5,414 7,269 4,850 549 13,069
設備投資額 2,065 2,045 1,457 1,688 1,701 2,248 1,960 1,979 1,968 1,960
投資活動によるキャッシュフロー -1,977 -2,091 -2,280 -1,600 -1,134 -2,198 -4,857 -1,816 -1,027 -1,331
財務活動によるキャッシュフロー -1,582 -2,861 -2,395 -1,200 -1,484 -8,632 -3,521 -2,354 -2,751 -3,466
フリーキャッシュフロー 3,935 -3,204 5,138 10,672 19,770 -6,027 6,545 4,173 -176 12,181
                     
[収益率 %]                    
ROA 2.11 1.98 2.52 3.26 4.99 3.43 4.93 4.93 6.03 6.90
ROE 6.00 5.33 6.86 9.37 14.70 9.84 13.04 12.02 14.55 15.98
当期利益率 1.36 1.21 1.47 1.74 2.12 2.02 2.58 2.52 2.91 2.93
資産回転率 1.55 1.64 1.71 1.87 2.36 1.70 1.91 1.96 2.07 2.35
財務レバレッジ 2.85 2.69 2.73 2.87 2.94 2.87 2.65 2.44 2.41 2.32
[一株当り指標: 円]                    
EPS 39.1 37.2 49.4 71.3 125.7 91.2 129.5 142.2 199.5 253.2
BPS 682.8 704.2 736.0 787.4 923.6 930.2 1,055.1 1,311.4 1,431.9 1,737.7
一株当り配当 15.00 15.00 18.00 24.00 28.00 28.00 38.00 44.00 60.00 76.00
発行済み株式数 (百万株) 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10 52.10

出所:Factsetのスタンダード基準による計算を元にオメガインベストメント作成、小数点以下四捨五入。