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Omega Investment株式会社

カイオム・バイオサイエンス (Company Note – 4Q update)

株価(3/3)189予想配当利回り(23/12予)ー %
52週高値/安値217/135 円ROE(TTM)-67.48 %
1日出来高(3か月)1,728 千株営業利益率(TTM)-199.53 %
時価総額91 億円ベータ(5年間)1.00
企業価値71 億円発行済株式数 48.423 百万株
PER(23/12予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/12実)5.15 倍
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2022/12期通期決算、ほぼ予想通りで着地
既存のパイプラインは順調に進捗

2022/12期通期決算は想定内で着地、株価は回復傾向に

 カイオム・バイオサイエンス(以下、同社)の2022/12期通期決算は想定内で着地した。同社の主要事業である創薬事業においては、自社開発品の臨床第1相試験が順調に進捗。導出候補品及び創薬プロジェクトにおいても、複数の候補品が導出活動中である。

 同社株価は、2022年9月28日の136円をボトムに切り上がってきている。通期決算発表の翌日(2月15日)には、前日比 8.5%上昇した。同社の事業が投資家の期待通り着実に進行していることへの評価の現れといえよう。2023/12期以降には新たな導出も期待され、その際には導出契約一時金の計上の可能性も見えてきた。引続き、創薬プロジェクトの進捗を注視したい。

2022/12期通期決算実績

 同社の2022/12期通期決算は、売上高 630百万円(11.5%減)、営業損失 1,258百万円(前期は 1,334百万円の営業損失) 、当期純損失 1,242百万円(前期は 1,479百万円の当期純損失)となった 。2021/12期は1QにおいてHenlius社への創薬事業の導出契約一時金(103百万円)を計上したが、今期は創薬支援事業の売上のみとなったことが減収の主要因。

 創薬事業の、各パイプラインの進捗状況等は次頁の図を参照。それぞれのパイプラインは順調に進捗しているが、2022/12期中の売上は計上されていない。臨床開発の進展により研究開発費を 1,135百万円を計上。CMC費用が減少した結果、前期よりは 176百万円減少した。その結果、同事業のセグメント損失は 1,135百万円(前期は 1,209百万円の損失)となった。

 創薬支援事業は、同社の抗体作成業務やタンパク質調整業務を受託し、国内主要製薬企業を中心にバイオ医薬の研究支援を展開している。創薬支援事業による安定的な収益の確保が、創薬事業の研究開発費確保の一助となっている。同事業は、着実に取引件数、案件数を拡大。売上高 630百万円(前期比 20百万円増加)、セグメント利益は 348百万円(29百万円増加)となった。セグメント利益率は 55.3%と目標である50%をクリアしている。

 BSにおいては、2022年12月末の総資産は 2,215百万円。 2021年12月末比 124百万円減少したが、ほぼ変わっていない。現預金は 1,727百万円(2021年12月末 1,790百万円)。 また、CBA–1535の治験薬の製造完了に伴い、前渡金を取り崩し当期費用に計上したため、流動資産中のその他が61百万円減少した。純資産合計は 1,790百万円、前期末比 102百万円減少した。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金が、それぞれ 582百万円増加したが、当期純損失の計上により利益剰余金の赤字が1,243百万円拡大したことによる。

 キャッシュ・フローの概況については、2022年12月末の現金及び現金同等物の残高は 1,727百万円で、前期末比 63百万円減少した。営業活動によるキャッシュ・フローが、税引前当期純損失 1,237百万円を計上したことにより、△1,208百万円。一方、財務活動によるキャッシュ・フローは、主に新株予約権の行使による株式の発行で 1,126百万円の資金を獲得した。

注:本レポート中、今期は2022/12期、前期は2021/12期を示す

 決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
()
2018/12 212 -18.1 -1,539 -1,533 -1,533 -57.26
2019/12 447 110.3 -1,401 -1,410 -1,403 -44.61
2020/12 480 7.4 -1,283 -1,291 -1,293 -36.06
2021/12 712 48.3 -1,334 -1,329 -1,479 -36.74
2022/12 630 -11.5 -1,258 -1,243 -1,242 -28.26
2023/12(会予)

注:同社の業績予想は、創薬事業における合理的な業績予想の算定が困難であるとして、創薬支援事業の数値(売上高 640百万円)のみ公表している。

 

創薬事業パイプライン

2023年2月14日時点
出所:2022年12月期決算補足資料(2023年2月14日)

パイプラインの進捗状況

<自社開発品>

*CBA–1205;引続き臨床第1相試験が進捗中

 国立がん研究センターで実施していた固形がんの患者を対象とした臨床第1相試験前半パートは既に終了。前半パートの最終結果には、全ての解析の終了を待つ必要があるが、高い安全性と忍容性が示されている。途中経過では標準治療に不応な患者においてSD(安定)評価が続き、最長で1年半以上投与が継続されている患者を確認。継続的な投与により、何らかの効果が期待されるようだ。2022年からは第1相試験後半パートに移行し、肝細胞がん患者を対象とした投与を開始している。

 第1相試験後半パートの進捗により、CBA–1205は今後2023〜2025年の導出を想定。導出候補先については、早期に開発パイプラインを拡充したい企業群と、事業性、成功確率を重視する企業群とを考えている。導出のタイミングにより導出一時金の目安が異なるが、同社では様々な導出先候補を検討中。早ければ2023年以降、遅くとも2025年迄には、導出一時金の受領による単年度黒字化を目指すとしている。

*CBA–1535;臨床第1相試験前半パート(単剤)

 同社は2022年2月、PMDAに治験計画届を提出、6月末より国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院及び静岡県立静岡県がんセンターの2施設において、臨床第1相試験の投与を開始している。臨床第1相試験前半パートにおいて、固形がん患者を対象に安全性評価及び薬効シグナルの評価を実施。低容量から段階的に投与し、安全に投与できる最大量を求め、初期の薬効シグナルを評価する。後半パートにおいては、がん免疫療法薬との併用による効率的な薬効評価を行う。前半パートは2024年前半まで続く予定だが、後半パートを2023年中頃から並行して実施することにより 、安全性及び有効性を最速で確認することを目的とした開発計画を立てている。

 CBA–1535はTribodyTMとして世界で初めての臨床試験であり、このコンセプトが確認されれば、多くのがん抗原に対する TribodyTMの適用の可能性が広がることとなる(上図)。結合する標的や結合する手の数の組み合わせにより、通常の抗体以上の効果や、複数薬剤の併用投与により、1剤の投与のみで複数の薬効が期待されることから、患者のQOLや、医療経済的メリットが期待される。

TribodyTMの応用可能性

出所:2022年12月期決算補足資料(2023年2月14日)

<導出品>

LIV-1205スイスのADC Therapeutics 社に ADC用途に限定して導出。ADCTが米国国立がん研究所(NCI)と共同で、神経内分泌がんを対象とした臨床試験に向けて準備中が進められており、2023年中の臨床入りが見込まれている。

<導出候補品>

*PCDC;ADC用途を中心とした導出活動の推進、並びに動物試験データを蓄積中。ADCとしてパイプラインを拡充したい製薬企業、及び独自のADC技術を有するADC用の抗体が欲しい製薬企業を、導出戦略・ターゲットとして、国内外のカンファレンス等でコンタクトを進行中。

*PTRY;新規パイプライン。新たな分子の組み合わせにより強活性のTribodyTM抗体を創生。「5T4xCD3xPD–L1」を標的とする「PTRY」を新規パイプライン化した。イタリアの公的研究機関 Ceinge–Biotechnologie Avanzateと行ったがん免疫療法に関する共同研究の成果を、国際的な学術雑誌である Journal of Experimental & Clinical Cancer Research誌に掲載。同共同研究によって得られた成果についての特許出願を完了している。肺がんモデルでの in vivo 薬効データにおいて、強い腫瘍増殖抑制効果を発揮することが確認されている。

BMAAセマフォリン3Aが関与する疾患に狙いを定めた海外研究機関との共同研究を実施完了。これまでに取得したセマフォリン3Aのデータ及びセマフォリンファミリーに関する探索研究のデータとともに、今後の事業開発活動に繋げる計画である。

*LIV-2008;同社は、2021年1月、Shanghai Henlius Biotech, Inc.(本社、中国・上海市)とライセンス契約を締結したが、2023年1月17日、同ライセンス契約が終了したことを公表した。先行品の開発状況など事業戦略上の判断によるとのこと。今後は、他の創薬パイプラインと合わせて、LIV–2008についても新たな導出先の開拓を進める計画。

◇創薬支援事業の進捗:ロート製薬と委受託契約締結

 創薬支援事業は 2022/12期、630百万円の売上高を計上。前期比 20百万円増加、業績予想比でも 10百万円増となり、同事業は着実に成長してきている。国内製薬企業からは、同社の技術サービス力に対して高い評価を得ており、既存顧客との取引が着実に伸長。また、2022年7月11日にはロート製薬と治療用抗体作成に関する新規のオプション権付き委受託契約を締結する等、新たな顧客との取引も拡大している。

◇コア技術:ADLib®︎システム/TribodyTMの活用と改良を進化、深化

 同社では、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成事業に参画する等、コア技術である ADLib®︎システムの活用と改良を継続している。また、日本及び欧州において、ADLib ®︎システムの特許査定を受領した。これらの研究も引続き進めることによって、創薬支援事業に関連する技術の向上を図るとともに、自社開発の創薬パイプラインの強化にも役立てる方針である。

◇ ファイナンス動向:今期中のファイナンスも視野に?

 同社は 2021年12月15日、 CBA–1205、CBA–1535への開発投資及び創薬支援事業への設備投資を目的に、第三者割当による第18回新株予約権(行使価額修正条項付)を発行した。同新株予約権の行使は 2022年12月26日に完了。資金調達額は 1,208百万円となった。同社は創薬ベンチャーとして、毎年10億円+の研究開発費の投入が必要で、既述の通り創薬支援事業から 3億円+の利益を上げているが、年間の研究開発費を賄うには十分とは言えない。2022年12月末の現預金残高は17.3億円となっているが、創薬事業において近々導出一時金等の収入が見込まれない場合には、新たなファイナンスも日程に上ってくるだろう。

2023/12期通期見通し:創薬支援事業による収益は 6.4億円を見込む

 2023/12期の業績見通しに関して、同社では継続的な収益が見込まれる創薬支援事業の売上のみを 640百万円と公表している。費用面では、今まで通り各パイプラインの進捗に伴い、臨床試験費用や治験薬製造費用が嵩むこと等により、研究開発投資は年間10数億円程度の支出が続く。創薬事業において、導出一時金等の収入が見込まれない場合は、相応の損失が見込まれよう。

◇株価動向:

 同社株価は、2022年9月28日の136円をボトムに切り上がってきている。通期決算発表の翌日(2月15日)には、前日比 8.5%上昇した。同社の事業が投資家の期待通り着実に進行していることへの評価の表れといえるだろう。同社においては、治験申請や特許出願といったポジティブなニュースが継続的に発信されている。また創薬プロジェクトは、複数のパイプラインを抱え、CBA–1205、CBA–1535の臨床試験が着実に進捗。2023/12期以降には新たな導出も期待され、その際には導出契約一時金の計上の可能性もある。引続き、創薬プロジェクトの進捗に注視したい。

 株価は、直近 200円近辺まで戻してきているが、これらの点を考慮すると、更なる上値の可能性も期待できよう。

株価推移(直近4年間)

相対チャート、4583、TOPIX(直近3年間)

財務データ

 
2019/12
   
2020/12
   
2021/12
    2022/12    
 
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q 2Q 3Q 4Q
損益計算書
                               
売上高
64
77
142
165
91
82
139
169
246
139
157
171
128 149 156 197
 創薬事業
0
1
1
28
1
1
0
1
103
0
0
0
0 0 0 0
 創薬支援事業
63
76
142
137
90
82
138
168
143
138
157
171
128 149 156 197
売上原価
27
26
58
52
61
46
59
70
64
62
78
86
57 69 72 83
売上総利益
37
51
84
113
30
36
80
99
182
77
79
84
70 80 84 114
販売費及び一般管理費
464
374
503
346
456
346
424
303
337
337
515
568
557 373 344 334
 研究開発費
363
273
407
256
343
266
342
206
216
243
401
451
446 245 225 219
営業利益
-426
-324
-419
-233
-426
-310
-344
-204
-155
-260
-436
-483
-486 -292 -260 -220
営業外収益
0
1
4
0
2
0
3
0
7
0
2
4
0 16 0 5
営業外費用
6
4
4
0
0
2
10
1
1
0
1
6
4 1 1 -1
経常利益
-432
-327
-418
-233
-425
-311
-351
-205
-150
-259
-434
-486
-491 -278 -261 -214
特別利益
2
1
6
0
 
 
0
0
 
 
 
0
    6 0
特別損失
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
         
税引前当期純利益
-430
-326
-412
-233
-425
-310
-351
-205
-149
-247
-433
-636
-491 -278 -255 -214
法人税等合計
1
0
1
0
1
0
1
1
11
1
1
0
1 2 1 1
当期純利益
-431
-326
-413
-234
-425
-311
-352
-206
-161
-248
-434
-637
-492 -279 -257 -215
                                 
貸借対照表
                               
流動資産
3,048
3,206
2,807
2,561
2,309
2,805
3,316
3,249
3,294
3,088
2,675
2,216
2,005 1,792 1,955 2,092
 現金及び預金
2,776
2,899
2,469
2,106
1,967
2,472
2,881
2,686
2,580
2,302
2,071
1,790
1,744 1,471 1,592 1,727
固定資産
219
217
242
247
247
249
249
246
244
241
274
122
121 128 126 123
 有形固定資産
15
14
12
11
10
9
8
7
6
6
4
4
3 3 2 2
 投資その他の資産
204
204
230
236
237
240
241
238
237
235
269
118
117 124 122 120
資産合計
3,267
3,423
3,049
2,808
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126 1,920 2,081 2,215
流動負債
177
207
154
145
315
427
378
343
378
428
468
392
419 390 376 370
 短期借入金
 
 
 
 
142
199
199
180
180
190
199
183
183 188 188 184
固定負債
41
41
41
41
42
42
42
42
42
42
53
53
53 54 54 54
負債合計
219
248
196
187
357
469
420
385
420
470
522
446
473 444 431 424
純資産合計
3,048
3,175
2,853
2,622
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,893
1,653 1,476 1,650 1,790
株主資本合計
3,048
3,175
2,853
2,622
2,199
2,585
3,146
3,110
3,118
2,859
2,428
1,857
1,621 1,445 1,631 1,777
 資本金
5,856
6,084
6,132
6,132
6,133
846
1,303
1,388
1,471
1,471
1,472
1,515
1,642 1,695 1,916 2,097
 資本剰余金
5,846
6,074
6,122
6,122
6,123
2,446
2,903
2,987
3,071
3,071
3,072
3,115
3,242 3,295 3,516 3,696
 利益剰余金
-8,682
-9,008
-9,421
-9,655
-10,080
-736
-1,088
-1,294
-1,455
-1,703
-2,136
-2,773
-3,262 -3,544 -3,801 -4,016
 新株予約権
28
26
20
22
24
30
28
29
30
19
19
35
31 30 18 13
負債純資産合計
3,267
3,423
3,049
2,808
2,556
3,054
3,566
3,495
3,537
3,329
2,950
2,339
2,126 1,920 2,081 2,215
                                 
[キャッシュ・フロー計算書]
                               
営業活動によるキャッシュ・フロ
 
-677
 
-1,537
 
-528
 
-1,361
 
-560
 
-1,131
  -660   -1,191
 税引前当期純損失
 
-755
 
-1,401
 
-734
 
-1,290
 
-396
 
-1,466
  -768   -1,237
投資活動によるキャッシュ・フロ
 
 
-26
 
 
 3
 
 
-35
   
 有価証券の取得
 
 –
 
 –
 
 –
 
  –
 
 –
 
 –
   
財務活動によるキャッシュ・フロ
 
1,248
 
1,341
 
894
 
1,944
 
176
 
271
  341   1,127
 株式の発行
 
1,249
 
1,345
 
697
 
 1,769
 
166
 
253
  336   1,126
現金及び現金同等物の増減額
 
570
 
-222
 
366
 
580
 
-384
 
-895
  -319   -63
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,328
 
2,328
 
2,105
 
2,105
 
2,686
 
2,686
  1,790   1,790
現金及び現金同等物の期末残高
 
2,899
 
2,105
 
2,472
 
2,686
 
2,301
 
1,790
  1,471   1,727