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Omega Investment株式会社

キッズウェル・バイオ(Company Note – 2Q update)

株価(11/16)292予想配当利回り(23/3予)ー %
52週高値/安値540/200 円ROE(TTM)-32.17 %
1日出来高(3か月)1,160.1 千株営業利益率(TTM)-34.10 %
時価総額91 億円ベータ(5年間)0.98
企業価値97 億円発行済株式数 31.471 百万株
PER(23/3予)- 倍上場市場 東証グロース
PBR(22/3実)5.82 倍
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SHEDプロジェクトが順調に進展、世界唯一のMCBが完成。2023/3期2Q、営業黒字を達成

2023/32Q決算サマリー

 キッズウェル・バイオの2023/3期2Qは、 GBS–007を含めたバイオシミラー(BS)事業を始めとして好調に推移、半期で10億円の売上を計上。8月には、SHED(乳⻭⻭髄幹細胞、Stem cells from Human Exfoliated Deciduous teeth)のMCB(Master Cell Bank)が完成。実用化に向けてアカデミアとの共同研究も着実に進展している。MCBは今後の同社のSHEDを用いた事業の要となる技術開発であり、その完成をもって2Q以降に各種開発活動の加速化が見込まれている。このような背景により2Qまでの研究開発費は抑制されていたため、営業利益レベルで黒字を確保した。加えて、バイオシミラー事業が引き続き伸長していることも黒字化の要因であり、2025年度の売上30億円、営業利益10億円の目標が益々現実味を帯びてきた。

◇好決算を受け、株価は急反発

 5月の2022/3期通期決算発表以降、大きく調整してきた同社株価であるが、11月7日の浜松医科大学との協働による研究成果の論文発表を受けて、大きく反発。今回の営業黒字の決算公表で、更に伸長した。決算発表翌日9日はストップ高となり、10日の出来高は22.9百万株と近年稀に見る出来高も記録した。MCBの完成に加えて、SHEDの様々な疾患への応用プロジェクトが具体的に見えてきたことで、同プロジェクトに関しての不透明感が晴れてきたことが大きいといえよう。

2023/32Q決算実績:営業黒字化を達成

 同社の2023/3期2Q決算は、売上高 1,116百万円、営業利益 11百万円、四半期純利益は 42百万円の損失となった。売上高は半期ベースで初めて10億円を超え、また営業利益の黒字化も実現した。(2022年4月に、連結子会社の株式会社日本再生医療を株式会社メトセラに譲渡したため、今期より単独決算となっている)

 売上面では、BS第3製品目のGBS–007が2021年12月の販売開始後、想定を超える受注を獲得、売上増に大きく寄与している。また、既存のBS、GBS–001、GBS–011の売上も堅調に推移。加えて、2QはSHEDのMCB完成に伴う売上高を計上。更に、BS4製品目のマイルストーン収益も含まれているもようだ。

 BS事業の伸長により売上総利益が拡大したことに加え、継続的なコスト削減、更にMCB完成まで研究開発投資を抑制したことに伴い、営業利益段階での黒字化を達成した。

 GBS–007の売上増に伴う運転資金を確保するために 10億円の銀行借入を6月末に実施しており、その支払利息(13百万円)と支払手数料(30百万円)を営業外費用に計上。更に、海外での原薬製造に係る為替差損(10百万円)も営業外費用に計上した結果、経常利益は 42百万円の損失となっている。

決算期 売上高
(百万円)
前期比
(%)
営業利益
(百万円)
前期比
(%)
経常利益
(百万円)
前期比
(%)
当期利益
(百万円)
前期比
(%)
EPS
(円)
2019/3 1,021 -3.6 -805 -816 -856 -43.84
2020/3 1,077 -1,161 -1,187 -7,316 -264.65
2021/3 996 -7.5 -969 -991 -1,001 -34.79
2022/3 1,569 57.7 -919 -952 -535 -17.35
2023/3(会予) 2,900 -980 -999 -1,000 -31.82
2022/3 2Q*
2023/3 2Q 1,116 11 -42 -42 -1.36

* 2023/3期までは、連結決算。2023/3期1Q以降は単独ベース。従って、前年同期比は記していない。

 

2023/3期2Q 業績結果(PL)

出所:同社資料

 BS(貸借対照表)においては、既報の銀行借入の実行、及び第4回無担保転換社債型新株予約権付社債の発行等により、2Q末の現預金は18.7億円に。一方で、対応する固定負債が増加し、19.0億円となった。その結果、2Q末の資産合計は、42.5億円と2022/3期末より 7.9億円増加した。

◇細胞治療事業(再生医療):SHED MCBが完成。共同研究も成果が出始める

*MCB完成: SHEDの実用化を進めるにあたっては、研究開発に必要な原料の安定供給体制の確立が重要な要素で、同社では原料の製造のためドナー募集のChiVo Net、大学病院との提携、ニコン・セル・イノベーション等とのMCB供給体制の構築等を進めてきた。同社では、MCB確立に必要なGMP製造を2021年10月より開始。22年8月にMCBの構築を完了した。

世界初のSHED MCB完成

出所:同社資料

*アカデミア、企業との協業が進展: SHEDの製品化には、外部との協力が不可欠で、同社ではアカデミアや企業との共同研究等を進めている。その分野においても、2Q中に進展が見られた(下表)。

アカデミア等との協働進展

公表日 提携先 内 容
11月7日 国立大学法人浜松医科大学脳神経外科 第二世代 SHEDを用いた脳腫瘍の新規治療法に関する基礎研究において、高い研究成果を確認。共同で論文を発表
10月24日 国立大学法人東海国立大学機構 脳性まひ治療に関する研究において、当該疾患モデル動物に対するSHEDの治療効果を確認。SHEDを含む治療剤候補の創出に成功。東海国立大学機構と特許共同出願等契約書を締結し、本発明に関する特許を出願
9月27日 昭和電工マテリアルズ SHEDの特長を生かした再生医療等製品の実用化に向けた製法開発及び治験薬製造に関する基本取引契約を締結

出所:同社資料

MCB完成による研究開発ステージアップ

出所:同社資料

*SHEDの実用化に向けた事業展開: MCBが完成したことにより、同社のSHED事業は大きく前進したといえる。今後の研究開発のステージアップは上図を参照。アカデミア等との協働を進めることにより、第一世代SHEDにおける早期の実用化、次に第二世代SHEDでのデザイナー細胞への応用を検討することになる。更に、その先には、SHEDを提供することによる他のモダリティへの活用も視野に入れる。

*COO職の新設:同社では研究開発型の創薬ベンチャーとして、川上 雅之氏がCTOとして基礎研究・探索を率いてきた。今後、SHED事業を拡大、製品化をより意識した臨床開発・製品戦略を進めていくために、経営執行体制を強化。川上氏が新設のCOO(Chief Operating Officer:最高執行責任者)職に就任。基礎研究から臨床開発・製品化へのトランスレーションを担っていく。

執行役員 最高執行責任者(COO):川上 雅之

経歴:

京都大学大学院工学研究科修了(工学博士)
富士フイルム(株)にて医薬および診断薬の研究開発に従事。Harvard Univ.と抗がん剤を共同開発し、Sandoz(現Novartis)にライセンスアウト。富山化学工業(株)(現富士フイルム富山化学(株))に出向し抗インフルエンザ薬の臨床開発に従事後、FUJIFILM Pharmaceuticals USAにて、同薬の米国臨床開発を推進。2017年同社入社。2018年執行役員CTO、2022年執行役員COO就任。

*知財戦略の強化:同社は、創薬ベンチャー企業として、研究開発戦略、事業開発戦略を立案、推進してきた。今回、SHED事業が拡大していくのに伴い、研究開発戦略、事業開発戦略と連携した知財戦略にもに力を入れてゆく計画である。戦略的な特許出願と、特許ライフサイクルマネージメントを推進。また、国内だけでなく、欧⽶アジア主要各国での権利化も進めてゆく。具体的には、SHEDと他細胞との差別化による「物質(細胞)特許」の出願、対象疾患治療の権利を確保する「用途特許」の出願、特許期間延⻑に向けた「製剤化」「投与法」特許などの出願等で、知財戦略を進めてゆく考えである。

◇バイオシミラー事業:GBS–007の売上が予想を上回る好調

*ラニビズマブ(GBS–007): 2021年12月9日より、BS事業3製品目である加齢黄斑変性症の治療薬、抗VEGF抗体薬ラニビズマブBSが開発パートナーである千寿製薬より販売が開始された。同BSは、眼科領域では初のBSであるため注目度も高く、販売状況は好調で当初予想を上回る受注を獲得。既報の通り、同社では増産に対応した資金調達を実行している。

*フィルグラスチム(GBS–001)既に提携先より上市されているBS、GBS–001は原価低減策も講じており、収益性の向上が図られている。なお、GBS–001については、持田製薬が販売中止を決めたと報じられているが、同社の当期業績予想及び中期経営計画には影響がないとされている。

◇バイオ新薬事業:カイオム・バイオサイエンスと共同研究契約を締結

*カイオム・バイオサイエンスとの共同研究同社では、将来の重要な成長戦略の一環として、バイオ新薬事業を位置付けている。しかしながら、バイオ新薬の開発には膨大な研究リソースを必要とするため、それぞれの専門分野に強い他社との共同研究が効果的である。同社は、6月、抗体医薬分野に強みを有するカイオム・バイオサイエンス(TYO: 4583)との提携を発表している。

2023/3期見通し:期初予想より変更なしだが、営業損失は縮小する可能性も

 2023/3期通期業績予想の売上高 29億円、営業損失 9.8億円、当期純損失 10億円は期初予想より変更していない。2Q終了時点での、通期予想に対する売上高の進捗率は4割弱であるが、今後もGBS–007をはじめとしたBSの販売が好調に推移すると見られるため、達成は可能と見られる。一方、同社では通期の研究開発費の見通しを 14億円と置いて、9.8億円の営業損失を見込んでいる。しかしながら、2Q時点までの研究開発費は 2.5億円で、下期偏重で研究開発費が掛かることを考慮しても、下半期で10億円+を費やすことは考えづらい。通期の営業損失は期初予想より縮小して着地する可能性が高いといえよう。

パイプラインの進捗状況

出所:同社資料

◇株価動向:好決算とSHEDの進捗を受け反発

 同社株価は、5月の2022/3期決算発表時の2023/3期黒字化先送り公表後、大きく調整してきた。しかしながら、11月7日の浜松医科大学との協働による研究成果の論文発表を受けて大きく反発。今回の営業黒字の決算公表で、更に伸長した。決算発表翌日9日はストップ高となり、10日の出来高は22.9百万株と近年稀に見る出来高も記録した。MCBの完成に加えて、SHEDの様々な疾患への応用プロジェクトが具体的に見えてきたことで、同プロジェクトに関しての不透明感が晴れてきたことが大きいといえよう。今後、5月以前の水準に戻るのはいつの時点か、引続き同社株価の動向に注目したい。

キッズウェルバイオ(4584)株価動向(直近6ヵ年)

相対株価推移(4584, TOPIX)

財務データ

 
2020/3
     
2021/3
     
2022/3
     
2023/3
 
 
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
損益計算書
                           
売上高
284
30
419
345
121
53
547
276
303
438
642
186
610
505
売上原価
77
8
359
209
5
35
46
34
122
154
183
91
292
128
売上総利益
207
22
60
136
116
19
500
242
182
283
460
94
318
377
販売費及び一般管理費
417
423
381
365
354
463
465
565
491
425
442
580
356
328
 研究開発費
235
249
201
213
138
265
198
363
297
236
237
380
105
147
営業利益(損失
-210
-401
-321
-229
-238
-445
36
-323
-309
-142
18
-486
-37
49
営業外収益
0
0
1
0
0
1
1
1
2
0
0
1
0
3
営業外費用
2
1
20
4
7
5
4
8
6
8
15
7
43
13
経常利益(損失)
-212
-402
-340
-233
-244
-450
33
-330
-314
-150
4
-493
-80
39
特別利益
4
0
0
2
 
 
 
 
 
 
418
0
特別損失
5,939
0
0
194
0
1
8
0
 
 
   
税引前当期純利益(損失)
-6,147
-402
-340
-425
-244
-451
26
-331
-314
-148
421
-493
-80
39
法人税等合計
1
0
3
-2
1
0
0
1
0
1
52
-51
0
1
当期純利益(損失)
-6,147
-403
-342
-424
-245
-451
25
-330
-314
-149
369
-441
-80
38
貸借対照表
                           
流動資産
2,761
2,390
3,238
3,322
3,573
3,218
3,329
3,346
2,794
3,203
3,722
3,326
4,079
4,035
 現金同等物及び短期性有価証券
1,654
1,602
2,482
2,033
2,658
2,502
1,830
1,461
874
974
1,253
1,187
1,532
1,874
固定資産
330
427
418
270
379
393
340
588
728
656
178
177
225
224
 有形固定資産
2
2
2
2
2
2
2
3
3
2
2
2
1
1
 投資その他の資産
328
425
416
268
374
389
336
582
722
651
173
173
220
220
資産合計
3,091
2,817
3,656
3,592
3,952
3,611
3,670
3,934
3,522
3,859
3,901
3,503
4,304
4,259
流動負債
421
550
529
881
772
858
925
1,114
823
1,034
1,045
1,129
1,175
651
 短期借入金
25
25
25
25
25
 
 
 
 
 
       
 1年内返済予定の長期借入金
                     
75
250
300
固定負債
25
24
1,224
1,224
1,384
1,287
1,231
1,209
1,051
826
718
656
1,485
1,908
 長期借入債務
 
 
1,200
1,200
1,340
1,240
1,200
1,100
900
700
700
625
1,450
1,875
  長期借入金
 
 
600
600
600
600
600
600
600
600
600
525
1,350
1,275
  転換社債
 
 
600
600
740
640
600
500
300
100
100
100
100
 
負債合計
446
573
1,752
2,105
2,156
2,145
2,156
2,324
1,873
1,860
1,763
1,785
2,661
2,560
純資産合計
2,644
2,244
1,904
1,487
1,796
1,466
1,514
1,610
1,648
1,999
2,138
1,719
1,643
1,699
株主資本合計
2,644
2,244
1,904
1,487
1,796
1,466
1,514
1,610
1,648
1,999
2,138
1,719
1,444
1,500
 資本金
612
612
612
612
842
892
912
1,032
1,150
1,420
1,420
1,421
1,424
1,433
 資本剰余金
9,917
9,917
9,917
9,917
10,147
10,197
10,217
10,338
10,456
10,725
10,726
10,727
10,730
10,739
 利益剰余金
-7,908
-8,311
-8,653
-9,077
-9,322
-9,773
-9,748
-10,079
-10,393
-10,542
-10,173
-10,614
-10,710
-10,672
 新株予約権
38
43
51
57
70
82
101
116
134
145
165
185
199
199
負債純資産合計
3,091
2,817
3,656
3,592
3,952
3,611
3,670
3,934
3,522
3,859
3,901
3,503
4,304
4,259
[キャッシュ・フロー計算書]
                           
営業活動によるキャッシュ・フロー
 
-604
 
-1,325
 
-104
 
-1,267
 
-857
 
-1,169
 
-709
 税引前当期純損失
 
-6,548
 
-7,314
 
-695
 
-999
 
-462
 
-533
 
-42
投資活動によるキャッシュ・フロー
 
-106
 
-137
 
-5
 
-22
 
 
526
 
-23
 無形固定資産の取得による支出
 
 –
 
 –
 
 -3
 
-3
 
 –
 
-1
 
 投資有価証券の取得による支出
 
-100
 
-100
 
 –
 
 –
 
 –
 
 –
 
-50
 投資有価証券の売却による収入
 
 –
 
 –
 
 –
 
 –
 
 –
 
526
 
財務活動によるキャッシュ・フロー
 
40
 
1,221
 
579
 
718
 
370
 
369
 
1,446
 長期借入れによる収入
                         
970
 転換社債型新株予約権付社債の発行による収入
 
 –
 
599
 
599
 
 599
 
 –
 
 –
 
499
 新株予約権の行使による株式の発行による収入
 
40
 
40
 
 –
 
138
 
370
 
369
 
 新株予約権の発行による収入
 
 –
 
3
 
4
 
4
 
 –
 
 –
 
現金及び現金同等物の増減額
 
-670
 
-240
 
468
 
-571
 
-486
 
-273
 
713
現金及び現金同等物の期首残高
 
2,009
 
2,009
 
2,032
 
2,032
 
1,461
 
1,462
 
1,160
現金及び現金同等物の四半期末残高
 
1,602
 
2,032
 
2,501
 
1,461
 
974
 
1,187
 
1,874

注)  2022/3期までは連結ベース。2023/3期1Qより単独決算ベース。キャッシュ・フロー計算書については、2Qは 1Q〜2Qの累計、4Qについては 1Q〜4Qの累計の数値となっている。従って、期首残高も、それぞれ1Qの期首残高となる。
出所:同社資料より Omega Investment 作成