Japanese Home
Omega Investment株式会社

ピアラ (Price Discovery)

証券コード
東証PRM:7044
時価総額
4,385 百万円
業種
サービス業

Profile

 2005年創業のECマーケティング支援企業。ビューティーヘルス、食品に特化。代表的なサービスは「RESULT」「BeMattch」「Gibbons」。D2C(Direct to Consumer)市場環境の急激な変化により、2期連続営業損失。

 

Stock Hunter’s View

仕切り直しへ。まずは1年で過去最高益回復。

 ピアラは化粧品・健康食品などのEC事業者向けに成果報酬型のマーケティング支援を展開。景表法・薬機法等の規制強化や中国ロックダウンの影響から、業績は2期連続の営業赤字に沈んでいる。

 こうした中、3月28日に新中期経営計画を公表し、早期業績回復への道筋を示した。フェーズ1として2023年3Q〜2024年2Qの1年間で20年の過去最高益である営業利益5億円以上を回復、フェーズ2で2025年12月期の営業利益10億円〜15億円を目指す。会社側は「2023年下期から黒字転換し、V字回復へ」としており、まずこれを実現できるかが業績回復への本気度を測る試金石となろう。継続前提に重要事象の記載がある点は留意が必要だが、今期3Qでの業績改善の進展を待って株式購入を検討するのも一法。

 マーケティング事業2軸の早期安定化に加え、来期以降は新規事業の回収期入りで利益拡大スピードが加速するシナリオを描いている。新規事業のうち、開発が遅延していたエンタメDXプラットフォーム「サイバースター」は4月2日オープン予定。クリエイターは自身が持つ複数のリンク(SNS、ブログ、ECサイトなど)を1つのページに集約することでき、レーベルやIPコンテンツホルダーにとっても潜在ユーザーの会員化、マネタイズポイントの拡大といったメリットがある。100万人同時接続が可能なライブ配信環境も整っており、ピアラが資本参加しているSproot社(女性アイドルグループHKT48およびNGT48の持株会社)とのシナジーに思惑も。

 

Investor’s View

Avoid. ただし、直感による投機的な購入は止めない。時価総額35億円のマイクロキャップは、本稿読者の投資対象ではないだろう。

D2C(Direct to Consumer)事業の環境は厳しいまま

 当社はビューティーヘルス領域や食品領域に特化してECマーケティング支援を行う企業である。D2C市場の市況悪化により2期連続の営業赤字に陥っている。経営陣はその背景を、1)薬機法及び景表法の規制強化でクリエィティブ(ウェブサイトやアプリに配信する広告)制限が発生、2)サードパーティのCookie規制によりリターゲティング比率が低下、3)広告出稿の成長によりCPC(Cost per Click)が高騰し顧客獲得単価が上昇、したためであると説明している。

 2021年8月からの法制の厳重化で、「シワがなくなる」「3日で10キロ痩せる」などといった効果を逸脱した広告告知が規制されたことが当社の赤字転落の大きな理由であったといえる。2021年からはGoogl, Yahoo, Facebookなどが取り締まりを強化しており、現状でも当社のD2C(Direct to Consumer)事業の環境は厳しいままである。

中計は説得力に足りない。しかし粗利率はすでにV字回復。

 先日発表された中期経営計画は、かいつまんでいえば、今後、マーケティングDX立て直し、不動産や人材会社など新分野顧客の開拓、新規事業により事業を回復させるという内容である。まずは利益率の高い案件に絞って事業を進めており、その努力は早くも奏功している。TTMで売り上げは2022年Q2を底に急速に反転中、営業赤字も同四半期に底打ち、注目したいのはTTM営業利益率前年同期比の2022年1Qを底とした急回復である。これは売上回復に先行して、粗利益率がV字型の改善を遂げているためである。2022年4Qの粗利益率は2018年の上場来の最高値を記録している。以上より、遠からず営業利益は赤字を脱するのではないかと予想される。

Sales (left axis, in million yen) and GPM (right axis, %) by quarter

(Source) Omega Investment

 

当然株価リスクは大きい

 しかしながら、経営陣が描く数年内のV字型業績回復が実現できるかどうかは、投資家にはまだ判断できない状況である。業績回復が軌道にのってきたという証左が確認されれば、短株価マルチプルは拡大、20%近いROEへの回帰期待も形成され、株価は乗数倍に上昇するであろう。業績回復に失敗すれば投資家は資金を失いかねない。

ゴーイングコンサーンリスクの記載に留意

 当社は有価証券報告書に「継続企業の前提に関する重要事象」を記載し、その理由として営業損失が2期続いたことを挙げている。業績不振や財務資金的な問題からゴーイングコンサーンに不透明さがある場合、その企業は決算短信などにリスク情報を記載するルールになっている。2023年2月末で、当社が該当する「継続企業の前提に関する重要事象など」を記載する企業は140社ある。より深刻度の高い「継続企業の前提に関する注記」を記載する企業は52社である。業績が回復すれば記載対象から外れ、東芝やシャープはそのような例であった。当社が業績回復に失敗すれば投資家のリスクは大きい。

Dupont Model